平成18年度第一期短期研修 視覚障害教育コース専門講義等内容
専門講義・演習
講義題目等 | 講師氏名(所属・職名) | 講義内容 |
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視覚障害教育の歴史と制度 | 千田 耕基 (教育支援研究部・上席総括研究員) |
まず、我が国の視覚障害教育のあゆみについて、明治の草創期から21世紀の今日まで概説し、ついで、視覚障害教育制度の変遷について論じ、これからの視覚障害教育の動向を、受講者との協議を交えながら考える。 |
重複障害児の指導(1) -盲学校における重複障害児の指導- |
塙 忠蔵 (横浜訓盲学院・学院長) |
盲学校に在籍している幼児児童生徒の障害が重度化・多様化している現況においては、幼児児童生徒の保有する感覚を最大限に活用する手立てを講ずると共に、教材・教具等を工夫することによって、日常生活や学習の基礎となる基本的な概念を形成していくことが必要である。 本講義では、様々な触察教材等を用いて、段階的に基本的な概念形成を図る方法等について実践的な理解を深める。 |
弱視児の視知覚 | 千田 耕基 (教育支援研究部・上席総括研究員) |
弱視児の視知覚や視覚的認知について、弱視児の行動や弱視シミュレーションメガネを通して考えてみる。そして、その指導上の配慮事項について検討する。 |
視覚障害教育の今日的課題と教育課程 | 池尻 和良 (文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課・特殊教育調査官) |
最近の教育改革の動向、視覚障害教育の現状と課題、特殊教育における教育課程の編成、新しい学習指導要領や学力についての基本的な考え方、評価の在り方などについて説明するとともに、特別支援教育と今後の視覚障害教育の在り方について考える。 |
点字の表記・指導(1) -導入期の指導- |
大内 進 (企画部・総括研究員) |
点字以前の文字・ブライユ点字・日本点字の翻案など盲人の文字の歴史について概観した上で、「点字の表記」入門編として日本点字の基本的かなづかい、数学やアルファベットを用いた語の書き表し方などについて実習を通して解説する。点字の初期指導法や点字触読の研究成果についても紹介する。 |
視覚生理学概論 | 柿澤 敏文 (筑波大学大学院・助教授) |
眼の構造と生理機能の基礎について、視覚障害の原因となる主な眼疾患と関連付けながら学習する。加えて、視機能の基礎をロービジョンの視知覚・認知とその支援方法と関連付けて講義する。 |
視覚障害児教育論(1) -視覚障害児の認知と指導- |
木塚 泰弘 (日本ライトハウス・理事長) |
1.WHO国際生活機能分類と障害の捉え方 2.感覚情報障害とその補償 ①保有する感覚の活用 ②感覚代行と視覚補強 3.感覚情報の特性に応じた活用 ①聴覚情報の活用 ②筋感覚による運動のコントロール ③嗅覚・味覚の活用 4.空間概念の形成と活用 ①観察のストラテジー ②モデルによる図形・立体概念の形成 ③具対物の観察と地理的空間概念の形成 5.音声の聞き取りと点字の触読 |
自立活動の理念と展開 | 香川 邦生 (健康科学大学・教授) |
1.自立活動領域の基本的捉え方 2.教科と自立活動との関連 3.個別の指導計画の作成と評価 4.視覚障害領域における幾つかの中心的指導内容とその展開 (1)手による探索操作活動と空間のイメージ作り (2)歩行地図の基礎指導 (3)視覚認知の基礎指導 |
視覚障害教育に関わる検査法(1)(2) | 大内 進 (企画部・総括研究員) 金子 健 (企画部・主任研究員) 横尾 俊 (企画部・研究員) |
視覚障害児の実態把握のために用いることができる検査について、心理検査、聴覚検査など、現在、利用可能なものを中心に概説する。これらの検査のうちの幾つかについては、実習を行いながらそれらの検査の実施方法、評価方法、利用上の留意点などについて具体的に考察する。 |
点字の表記・指導(2) -学校教育における指導- |
澤田 真弓 (教育支援研究部・主任研究員) |
点字の表記・指導(1)を受け、「日本点字表記法2001年度版」をもとに、「点字の分かち書き」「書き方の形式」「点字の読み書きの指導」について実習を交えながら話を進めていく。 |
教科別指導法(1) -点字・国語教育を中心に |
小林 一弘 (日本点字委員会・副会長) |
視覚障害児の言葉の指導を、事物・事象や動作と言葉との対応、点字表記の体系的指導、点字常用者に対する漢字・漢語の指導等について、障害の理解を踏まえた指導のあり方、学ぶ者の立場に立った指導のあり方を考える。 |
視機能評価法 | 千田 耕基 (教育支援研究部・上席総括研究員) |
機能評価の目的、方法及びその実際について、特に教育的観点から講義する。 |
視覚障害児教育論(2) -乳幼児期の発達と指導- |
猪平 眞理 (宮城教育大学・教授) |
視覚障害のある乳幼児の発達支援は、親を励まし育児力を高める援助を基本とし、子どもは視覚情報の不足を他の感覚で補いながら環境とかかわる方法を学ばせて育つ力を養うことである。その具体的な方法を講述する。 |
視覚の病理 | 仲泊 聡 (神奈川県総合リハビリテーション病院・眼科医長) |
視覚の基礎的理解として、①目の構造と機能について、②視覚障害をきたす代表的な眼疾患、③眼疾患に伴う視覚障害の特徴などについて、病理及び医療的リハビリテーションの面から解説する。 |
弱視学級における指導と学習支援 | 田中 良広 (教育支援研究部・総括研究員) |
実態調査の結果をもとに、弱視学級及び通級指導教室の現状と課題について概観するとともに、弱視学級等における教育課程、指導内容・方法、施設・設備、教材・教具等について講述する。 また、今後の特別支援教育への転換へ向けて、弱視学級等が担うべき役割について受講者との協議をとおして考えていきたい。 |
点字の表記・指導(3) -専門点字入門- |
加藤 俊和 (京都ライトハウス点字図書館・館長) |
1.点配列と点字配列の科学性 2.自動点訳の限界と変換率向上の方法 3.数学・理科の2次元的拡がりの点字表現 4.世界共通の点字楽譜と変換ソフトウェア 5.触図は1文字の電光掲示板 |
点字学習とコンピュータ | 大内 進 企画部・総括研究員) 金子 健 (企画部・主任研究員) 田中 良広 (教育支援研究部・総括研究員) 澤田 真弓 (教育支援研究部・主任研究員) 渡辺 哲也 (教育支援研究部・主任研究員) |
コンピュータ上で点字を扱うために機器類としては点字プリンタ、ピンディスプレイ、点字電子手帳など、ソフトとしては点字エディタ、自動点訳ソフト、点字OCRなど様々なものがある。 ここでは、これらの活用法をデモンストレーション及び実習を交えて解説する。視覚障害教育情報ネットワークについても紹介する。 |
乳幼児期の触覚の活用 | 金子 健 (企画部・主任研究員) |
視覚障害児の乳幼児期における触覚の活用について、まず、触覚の特性について他の感覚との比較を交えて論ずる。その上で、環境の把握、物の操作、絵・図形・文字(点字)情報の入手などのそれぞれにおける触覚の活用についての考え方と具体的対処方法について述べる。 |
視覚障害関連教材の作成と活用(1)(2) | 大内 進 (企画部・総括研究員) 金子 健 (企画部・主任研究員) 田中 良広 (教育支援研究部・総括研究員) 澤田 真弓 (教育支援研究部・主任研究員) 渡辺 哲也 (教育支援研究部・主任研究員) |
視覚障害教育における、点字教材や触図教材などの盲児用教材、拡大教材などの弱視児用教材について、各種の作成方法、作成用の機器、作成上の留意点、活用方法などについて講義する。講義は、これらの教材を実際に作成する実習を含む。 |
「盲ろう」障害の理解と支援 (講義・演習) |
中澤 惠江 (教育支援研究部・総括研究員) 藤鹿 一之 (東京盲ろう者友の会・理事) 中山 喜崇 (長野県花田養護学校・教諭) |
盲ろうの代表的な困難は「外部からの情報摂取」「コミュニケーション」「移動・方向定位」にある。ここでは、全盲ろうの疑似体験によって、コミュニケーション能力や情報収集能力を著しく低下させ、その低下が自分の行動や思考や感情に何をもたらすのかを体験し、共感・理解を試みることで、盲ろうという重複障害の理解とともに、自らの児童・生徒とのかかわり合いについて見つめ直すきっかけを提供することを目的としている。 (聴覚コースと共通) |
教科別指導法(2) -算数・数学科を中心に- |
大内 進 (企画部・総括研究員) |
視覚障害教育における算数・数学科の内容の取扱いと留意点について全体的に整理した上で、基本的な留意事項、教材・教具とその活用法、自作教材作成上の配慮点などについて各領域毎に概説する。計算や図形などの重要な教具について実習する。新教科書の編集方針についても解説する。 |
視覚障害教育における情報処理とアクセシビリティ(1)(2) | 渡辺 哲也 (教育支援研究部・主任研究員) |
現代では視覚障害児にとってパソコンの活用能力は不可欠であり、これを習得することで、情報取得と発信を通じた社会参加が可能になる。視覚障害児のパソコン利用のためには、弱視児は画面拡大ソフトを、盲児は画面音声化ソフトを用いる。これらの利用法について実習を交えて説明する。 |
乳児と乳幼児期のロービジョンケア | 川瀬 芳克 (愛知淑徳大学・教授) |
乳幼児期は視覚発達の大切な時期であり、疾病の管理とともに、適切な屈折矯正やまぶしさの軽減などが必要である。講義ではロービジョン児の長期経過を示し視覚管理の効果を掲示するとともに、屈折異常の体験的解説や遮光眼鏡の機能の視覚的掲示を行う。 |
歩行指導の理論と演習(1)~(4) | 赤池 信夫 |
視覚障害児・者の歩行のメカニズムや歩行指導の内容等について、講義と演習を行う。 (1)では、歩行に必要な基礎的能力と、視覚障害児の歩行指導の方法について (2)では、歩行指導における白杖の基本的な使用法に関する講義と白杖歩行の演習 (3)では、歩行指導における指導計画作成の手続きと指導上の留意点等について (4)では、作成した指導計画に基づいた歩行指導の実践及び体験について 受講者は、演習において指導者及び生徒の両者をそれぞれ体験する。 |
重複障害児の指導(2) -重度・重複障害児との係わり- |
斉藤 由美子 (元 神奈川県立中原養護学校・教諭) |
重度の肢体不自由のある重複障害児の教育相談事例を中心に、人とのかかわり合いや探索活動を促す際の基本的な視点について述べると共に、身近な人やものへの自発的な働きかけを支援する教材教具を紹介し、人との相互性及びものの応答性からなる「応答する環境」をつくることの重要性について考える。 |
視覚障害教育における個別の教育支援計画 | 大内 進 (企画部・総括研究員) |
視覚障害教育の現状や課題をふまえて、視覚に障害がある児童生徒のための個別の教育支援計画策定の基本的な考え方、発達の各段階で想定される支援と地域の関係機関との連携の観点などについて、実践例等を紹介しながら概説する。 |
教科別指導法(3) -図工・美術科の指導- |
増岡 直子 (筑波大学附属盲学校・教諭) |
視覚障害教育における図工・美術教育の概要ならびに指導の実際について解説する。とくに小学部段階における造形活動に焦点をあて、保有する感覚にもとづく指導のあり方、指導上の配慮点、教材・教具の工夫についての紹介や実習を行う。 |
視覚障害の制度と教育課程 | 千田 耕基 (教育支援研究部 ・上席総括研究員) |
盲学校及び弱視特殊学級・弱視通級指導教室の教育課程を説明し、視覚障害児の学習指導の現状と課題について、それぞれの取り組みを紹介し、通級による指導の教育的支援及び援助の視点について論じる。併せて、特別な指導の場の今後の動向を受講者と協議する。 |
拡大教科書の作成とその活用 -拡大教科書作成マニュアルを中心に- |
相川 福江 (赤十字奉仕団拡大写本部会) 金子 健 (企画部・主任研究官) |
「拡大教科書」について、拡大写本ボランティアによる作成の実際や、当研究所によるDTPを用いたカラー版の作成などに関して、その作成方針及び活用方法も含めて、デモンストレーションを交えて講義する。 |
弱視用補助器具概論 | 田中 良広 (教育支援研究部・総括研究員) |
本講義では、弱視の児童生徒のための拡大システムについて、それぞれの長所・短所を整理した後、それらの中で最も手軽で活用範囲の広い弱視レンズについて、種類と特徴、選定の手順と方法、指導のプロセスについて理解を深めます。 |
視覚障害児教育論(3) -進路と職業教育- |
皆川 春雄 (筑波大学附属盲学校 ・校長) |
Ⅰ.視覚障害児の進路を、全国盲学校の動向調査から考える。 Ⅱ.これからの盲学校の在り方について特別支援教育体制における盲学校の今後について、保護者の意見等も考慮して考える。 |
教科別指導法(4) -観察と実験の指導- |
鳥山 由子 (筑波大学・教授) |
観察と実験の意義と、基礎的な内容の指導法について、講義と実習を行う。特に、感覚の活用、観察内容の言語化、見通しを持って主体的に学習するための全体像の把握の重要性、時間配分、安全対策などについて、具体的な理解を図る。 |
脳のはたらきと障害 | 西牧 謙吾 (教育支援研究部 ・上席総括研究員) |
正常な脳の仕組みや発達を概説し、感覚障害、発達障害等と関連する「感覚と運動」「思考と言語」「学習と記憶」「感情と人格」「社会性と道徳性」などについて、現在の脳科学の知見を概観し、さらに、最新の脳の形態・機能検査法を提示し、「脳科学と障害のある子どもの教育」研究の近未来について言及する。 |
バリアフリー時代のモノ・サービス・生活環境そして遊び -視覚障害を中心に- |
星川 安之 |
1981年の国際障害者年のテーマ「完全参加と平等」以来、国内外、公的・民間機関を問わず「障害の有無に係わらず共に使いやすい製品・サービス・生活環境」に関しての普及が進んできている。今回は、視覚障害を軸に「共用品・UD・アクセシブルデザイン」を紹介する。 また、1990年から日本玩具協会を中心に行われている「共遊玩具」に関しても、その始まりからの経過について紹介する。 |
教育相談・早期相談とネットワーク | 千田 耕基 (教育支援研究部 ・上席総括研究員) |
障害がある子どもたちに対する早期教育相談の必要性について考え、盲学校や弱視学級の役割、特に地域における相談のセンターとしてどのような支援ができるのか、その支援のあり方について、受講者との協議を行いながら考える。 |
教科別指導法(5) -体育・レクリエーションの指導- |
原田 清生 (筑波大学附属盲学校・教諭) |
盲学校体育の現状・課題等について概説し、視覚障害児の体育指導に関する指導のポイント・指導上の留意点・配慮事項や工夫の観点等について実践的に解説し、実技講習を通して理解を深める。 |
視覚障害児者のリハビリテーションと教育・医療・福祉の連携 | 渡辺 文治 (神奈川県総合リハビリテー ションセンター 七沢ライトホーム・副技幹 |
視覚障害者のニーズは、年齢や障害の状況により大きく異なる。この多様なニーズに応えるため、教育・医療・福祉・職業の各分野の専門家は、個々の分野内で努力するだけでなく、分野の枠を超えて連携した対応が求められる。連携の現状について神奈川県を例に説明する。 |
実地研修
題目等 | 研修先 | 研修内容 |
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筑波大学附属久里浜 養護学校の指導の実際 |
筑波大学附属久里浜養護学校 副 校 長 馬場 信明 小学部主事 浜津 平一 幼稚部主事 意東 純子 |
平成16年度より国立大学法人筑波大学付属久里浜養護学校となる。知的障害を伴う自閉症の児童の教育についての研修を行い、自閉症教育のあり方について考える機会とする。 筑波大学附属久里浜養護学校 〒239-0841 神奈川県横須賀市野比5-1-2 |
盲学校及び弱視通級指導教室における指導の実際 | 横浜市立盲学校 主幹教諭 神崎 好喜 主幹教諭 大澤 好彦 主幹教諭 太幡 慶治 横浜市立神奈川小学校 教諭 坂下 恵子 |
横浜市立盲学校は、早期教育相談から幼稚部・小学部・中学部・高等部普通科・専攻科理療科・専攻科保健理療科の各課程を設置している。施設設備も充実しており、情報教育や図書室の運営等においても特徴のある実践を行っている。授業場面を実際に見学し、盲学校における指導の実際について研修を深めていく。 横浜市立盲学校 〒221-0005 神奈川県横浜市神奈川区松見町1-26 横浜市立神奈川小学校は、我が国で唯一、弱視特殊学級と弱視通級指導教室とを併設している小学校である。神奈川小学校では他校通級という指導形態で実施している実際の指導の様子を見学し、教材・教具の工夫、教室環境、指導方法について研修を行う。 |
視覚障害情報提供施設における活動の実際 | 神奈川県ライトセンター 指導課長 宗 知英 指導課訓練係長 船津 久志 |
神奈川県ライトセンターでは、点字・録音図書などの情報提供や各種の相談・指導、またボランティアの育成等も行っている。実際にそれらの活動と施設設備を見学しながら研修を深めていく。 神奈川県ライトセンター 〒241-8585 神奈川県横浜市旭区二俣川1-80-2 |
研究協議・課題研究
題目等 | 内容先 |
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研究協議 | ここでは、各自が持ち寄った課題について協議をし、課題解決に向け研修を深めていく。そして9週間にわたる研修のまとめとして「短期研修視覚障害教育コースレポート集」を作成していく。全9回の研究協議を予定している。 (1)は、研究協議の進め方について話し合う。 (2)~(4)、(6)、(7)は、研修員の課題ごとに、グループを編成して、レポート作成に向けた協議を行う。 (5)については、テーマを「歩行」に絞り、(5)の日程前までに行われる歩行指導の理論と演習の総括を行う。 (8)(9)は成果報告会とし、総括協議を行う。 |
課題研究 | 研修員それぞれの課題の解決に向け、図書館での資料収集、他機関への訪問等、受講者が主体的に計画を立てて取り組む研修の時間である。 全体で10コマを設定している。所外での研修を行う場合は、所定の手続きによる。 |