独立行政法人国立特殊教育総合研究所 特殊研D−190 視覚障害者のWindowsパソコン及びインターネット利用・学習状況 第2節 職場におけるWindowsパソコンの利用状況 1.回答者 職場のパソコン環境について回答した68人の内訳を図3-2-1から図3-2-4に示す。年齢構成において10代と70代を含まない点と,2年未満のパソコン利用歴の割合が低いことを除けば,いずれのデータも,回答者全員のプロファイル(図3-1-1から図3-1-4)と同じ傾向を示している。 括弧内の数字は人数を表す。 図3-2-1 年齢(n=68) 年齢:20代(4)30代(19)40代(23)50代(17)60代(5)平均年齢44.5歳 図3-2-2 障害等級(n=68) 障害等級:1級(58)2級(8)3級(0)5級(1) 等級なし(1) 図3-2-3 使用文字種(n=68) 使用文字:点字(43)墨字(13)点字と墨字両方(11)不明(1) 図3-2-4 パソコン利用年数(n=68) パソコン使用歴:2年未満(2)2年以上4年未満(10)4年以上6年未満(4)6年以上8年未満(7)8年以上10年未満(4)10年以上15年未満(18)15年以上20年未満 (12) 20以上(11) 平均使用歴11.4年 2.職業情報 職場のパソコン環境についての回答者数は68人であった。回答者の職場情報の内訳は表3-2-1と表3-2-2のとおりである。特徴的に多かった勤務先と職種は,自営で理療を営む者が22人,大学及びその他学校における教員が13人,民間企業における一般事務職が5人であった。 表3-2-1 回答者の勤務先(n=68。1人は複数回答)
表3-2-2 回答者の職種(n=68。1人は複数回答)
職種のその他の内訳は,顧客対応,会社経営,電話交換手,録音タイピスト,介護支援専門員,視覚障害リハ指導員,演奏家,開発職,出版・広報,各1人である。 3.パソコン利用状況 3.1 使用時間 職場でのパソコン使用時間は,2時間以上4時間未満が最も多く28人,次いで4時間以上6時間未満が13人,平均値は4.3時間であった(図3-2-5)。 3.2 基本ソフト 主に利用しているパソコンの基本ソフトは,Windows 98が最も多く39人,次いでWindows Meが15人であった(図3-2-6)。Windows 95もまだ7人が使っている。新しい基本ソフトWindows XPの利用者は,Home Editionが4人,Professionalは1人と少ない。その理由として,新しい機器購入の経済的負担のほかに,調査時点(2002年6月)では各スクリーンリーダがXPに十分に対応していなかったことが視覚障害者特有の問題として考えられる。 図3-2-5 パソコン使用時間 (n=68。2人は不詳) 2時間未満(8)、2時間以上4時間未満(28)、4時間以上6時間未満(13)、6時間以上8時間未満(7)、8時間以上10時間未満(7)、10時間以上15時間未満(2)、 15時間以上(1)、平均値は4.3時間。 図3-2-6 基本ソフト (n=68) Windows 98(39)、Windows me(15),Windows 95(7),Windows XP Home Edition(4),Windows 2000(2),Windows XP Professional(1) 3.3 ネットワーク環境 職場では,構内LAN及びインターネットに接続している回答者が23人いた(図3-2-7)。また,回答者の多くが自営業であることからISDN(13人),ダイアルアップ(11人),ADSL/xDSL(5人),CATV(3人),光ファイバ回線(1人)を経由してインターネット接続を行っていた。職場ではネットワークに接続していないという回答者も7人いた。 図3-2-7 ネットワーク環境 (n=68) 構内LANおよびインターネットに接続(23)、構内LANのみに接続(2)、ダイアルアップを経由してインターネットに接続(11)、ISDNを経由してインターネットに接続 (13)、ADSL/xDSLを経由してインターネットに接続(5)、CATVを経由してインターネットに接続(3)、光ファイバ回線を経由してインターネットに接続(1)、無線インターネットを経由してインターネットに接続(3)、ネットワークには接続していない(7)。 3.4 スクリーンリーダ 利用しているWindowsスクリーンリーダを,利用頻度の順に挙げてもらった。最もよく使うWindowsのスクリーンリーダは95Readerが32人,VDM100W-PC-Talkerが17人,PC-Talkerが16人,outSPOKENが2人であった。29人の回答者(43 %)は2種類以上のスクリーンリーダを使っていた。 表3-2-3 各Windowsスクリーンリーダを利用している回答者数( n=68。複数回答)。最上段の数字(1,2,3,4)は,複数のスクリーンリーダを使っている場合の使用頻度の順を表す。
表3-2-4 95Readerのバージョン別分類
表3-2-5 PC-Talkerのバージョン別分類
表3-2-6 VDM100W-PC-Talkerのバージョン別分類
JAWSの内訳はver. 3.7*が6人,2人はバージョン不詳で,合計8人。outSPOKENの内訳は,ver. 2.50が5人,ver. 2.01が1人,合計6人。 3.5 画面拡大 スクリーンリーダとあわせて画面拡大ソフトを使っている回答者は5人だった。画面拡大ソフトとしてZoomTextを3人,Microsoft拡大鏡を2人が利用していた。 3.6 ハードウェア ハードウェアの利用状況を図3-2-8に示した。スキャナは利用率が高く,39人(57 %)の回答者が使っていた。視覚障害者用のハードウェアとして,点字ディスプレイ,点字プリンタ,点字電子手帳をそれぞれ16 人,15 人,7人が使っていた。 各製品(または機種,メーカー)の利用人数を表3-2-7から表3-2-10に示した。ここでは,回答者が1人の製品もできるだけ記載した。 図3-2-8 ハードウェアの利用状況(n=68。複数回答)
表3-2-7 スキャナ(n=68。複数回答)
表3-2-8 点字ディスプレイ(n=68。複数回答)
表3-2-9 点字プリンタ(n=68。複数回答)
表3-2-10 点字電子手帳(n=68。複数回答)
3.7 ソフトウェア 利用しているWindowsアプリケーションの回答状況を図3-2-9に示した。また,各種類別のソフトウェア製品の利用人数を表3-2-11から表3-2-20に示した。ここでは,回答者数が1人のみの製品名も記すように努めたが,ワープロ・エディタ,電子メールソフト,音声化対応辞書・辞典では項目数が多いため「その他」にまとめた。DOSやUNIX用のアプリケーションを回答している場合は,集計から除いた。以下,回答者数の高いアプリケーション種別の順に概観する。 図3-2-9 Windowsアプリケーションの利用状況(n=68。複数回答)
ワープロ・エディタ 職場でワープロまたはエディタを使っている回答者は65人,そのうちの50%は複数のソフトを使っていた。使用者の多かったソフトはMicrosoft Word(39人),MYEDIT,MYWORD,WZ Editor(いずれも14人),MM-Editor(9人)などであった(表3-2-11)。 電子メールソフト 職場で利用しているWindowsの電子メールソフトについての回答者数は58人。回答数の多かった電子メールソフトはMMメール(38人)及びWinbiff(10人)であった(表3-2-12)。14人が2種類のメールソフトを使っていた。電子メールによるアンケート調査にもかかわらず回答率が100%とならないのは,一部の回答者は,(1)職場ではインターネットに接続していなかったり,(2)MS-DOSのメールソフトを使っていたりするためである。 表計算ソフト 表計算ソフトを使っている回答者は44人で,使われているソフトは2例を除きExcelであった(表3-2-13)。 OCRソフト OCRソフトを利用している回答者は44人,そのうち複数ソフト使用者が10人。視覚障害者用OCRソフト(よみとも,MYREAD,ヨメール,らくらくリーダー)の使用者数は39人だった(表3-2-14)。 ほかのアプリケーション使用者数は,点字編集ソフト(33人),CD-ROM辞書検索(33人),音声化対応の辞典・事典(21人),データベース・住所管理ソフト(20人),自動点訳ソフト(20人),DAISY録音図書閲覧ソフト(14人),プレゼンテーションソフト(5人),グループウェア(3人)である。 表3-2-11 ワープロ・エディタ(n=68。複数回答)
表3-2-12 電子メールソフト(n=68。複数回答)
表3-2-13 表計算ソフト(n=68。複数回答)
表3-2-14 OCRソフト(n=68。複数回答)
表3-2-15 点字編集ソフト(n=68。複数回答)
表3-2-16 CD-ROM辞書検索ソフト(n=68。複数回答)
表3-2-17 音声化対応辞書・辞典(n=68。複数回答)
表3-2-18 データベース・住所管理ソフト(n=68。複数回答)
表3-2-19 自動点訳ソフト(n=68。複数回答)
表3-2-20 DAISY録音図書閲覧ソフト(n=68。複数回答)
プレゼンテーションソフトの内訳は,PowerPointが4人,製品名不詳が1人であった。グループウェアの内訳は,TeamWAREが2人,製品名不詳が1人であった。 その他 その他利用しているアプリケーションとして17人がのべ49の製品名を挙げた。それらを分類すると,CD/DVDライティングソフト,データベースソフト,通信ソフト,(音楽等)レコーディングソフト,音声化システム(Windows用以外も含む),時刻表経路探索ソフト,翻訳ソフト,各種ユーティリティなどであった。アプリケーションの製品名を表3-2-21に列記する。 3.8 職場で使えなくて困っているアプリケーション 現在,職場で使えなくて困っているアプリケーションは28人から45件挙げられた。そのうち複数の回答者が挙げたのは,一太郎(回答数7人),Access(4人),Word(4人),Excel(3人),PowerPoint(2人),ファイルメーカー(2人)であった。これ以外は,Cake Walk SONAR,Lotus Notes,Outlook Express,Win-CDR,ウイルスバスター,AcrobatReader,AutoCAD,オフィス2002,Photoshop,PaintShop,ホームページ・ビルダー,駅すぱあと,TGDpro,クラウン仏和辞典をそれぞれ1人ずつ指摘した。ほかに,製品を正確に特定できなかった回答が9件あった。 この質問の意図は,スクリーンリーダによる音声化ができていないため視覚障害者が利用できないアプリケーションを挙げてもらうことだった。しかし,実際には,スクリーンリーダのメーカー・販売元は音声化対応としているがすべての機能を音声化できていない,操作が煩雑で使いにくい,操作方法を現在習得中でまだ使いこなせていない,アプリケーションや基本ソフトが古いバージョンのため音声化対応できていない,などの理由による回答も含まれた。 表3-2-21 その他利用しているソフト(n=68のうち回答者数17人。複数回答) 製品名の後に(件)と書かれているもの以外はすべて回答数1件である。
*Internet Explorerはスクリーンリーダと組み合わせてWebページの読み上げに用いられる。その利用者は,第4節インターネットの利用状況で記すように多数いるので,Internet Explorerの利用者はこの項目への回答者数1人より多いと推察できる。 3.9 MS-DOSの利用 Windowsパソコンとあわせて,MS-DOSパソコンを利用している回答者の数は33人で,利用していない回答者数34人を下回った(図3-2-10)。職場の利用状況への回答者数68を分母とした割合は49 %で,この数値は2000年の調査時の77 %より下がっている。 MS-DOSの使い方は,MS-DOS専用パソコンを使っている人が21人,WindowsパソコンのMS-DOSプロンプトを利用している人が17人,Windowsと同じパソコンでパーティションを分けてMS-DOSを使用している人が11人であった(図3-2-11)。 MS-DOS利用の用途は,文書作成,点訳・点字編集・点字印刷,ファイル管理が主なものであった(表3-2-22)。 図3-2-10 MS-DOSの利用率(n=68)
図3-2-11 MS-DOSの利用形態(n=33。複数回答)
表3-2-22 MS-DOSで行っている作業(n=33。複数回答)
その他の内訳は,タックシールでの宛名印刷,テキストファイル整形ツール(XTR),作表,外字検索(スクリプトを利用),電話番号検索,花子のデータの利用,Ygrep,エーデルによる点図,読み上げ辞書の整備,かな漢字変換辞書の整備,自作ダイアリングソフト,音楽関係の各1件ずつである。 前ページ / 次ページ 研究・教育資料のページに戻る 研究所刊行物のトップページに戻る 国立特殊教育総合研究所ホームページに戻る |