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特別支援教育法令等データベース 総則 / 報告・答申等 - 今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について -

今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について(答申) 昭和46年6月11日 中央教育審議会

※「前文」 および 「第1編 第2章 第2 7 特殊教育の積極的な拡充整備」抜粋


今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について(答申) 目次 前文 第1編 学校教育の改革に関する基本構想  第1章 今後の社会における学校教育の役割     1 今後の社会における人間形成の根本問題     2 教育体系の総合的な再検討と学校教育の役割  第2章 初等・中等教育の改革に関する基本構想   第1 初等・中等教育の根本問題   第2 初等・中等教育改革の基本構想     1 人間の発達過程に応じた学校体系の開発     2 学校段階の特質に応じた教育課程の改善     3 多様なコースの適切な選択に対する指導の徹底     4 個人の特性に応じた教育方法の改善     5 公教育の質的水準の維持向上と教育の機会均等     6 幼稚園教育の積極的な普及充実     7 特殊教育の積極的な拡充整備     8 学校内の管理組織と教育行政体制の整備     9 教員の養成確保とその地位の向上のための施策     10 教育改革のための研究推進措置  第3章 高等教育の改革に関する基本構想   第1 高等教育改革の中心的な課題     1 高等教育の大衆化と学術研究の高度化の要請     2 高等教育の内容に対する専門化と総合化の要請     3 教育・研究活動の特質とその効率的な管理の必要性     4 高等教育機関の自主性の確保とその閉鎖性の排除の必要性     5 高等教育機関の自発性の尊重と国全体としての計画的な援助・調整の必要性   第2 高等教育改革の基本構想     1 高等教育の多様化     2 教育課程の改善の方向     3 教育方法の改善の方向     4 高等教育の開放と資格認定制度の必要     5 教育組織と研究組織の機能的な分離     6 第5種の高等教育機関(「研究院」)のあり方     7 高等教育機関の規模と管理運営体制の合理化     8 教員の人事・処遇の改善     9 国・公立大学の設置形態に関する問題の解決の方向     10 国の財政援助方式と受益者負担および奨学制度の改善     11 高等教育の整備充実に関する国の計画的な調整     12 学生の生活環境の改善充実     13 大学入学者選抜制度の改善の方向 第2編 今後における基本的施策のあり方  第1章 総合的な拡充整備のための基本的施策     1 新しい学校体系の開発と現行学校教育の内容的な充実     2 教育改革の推進と教育の質的水準向上のための研究開発     3 教員の資質の向上と処遇の改善     4 高等教育の改革と計画的な整備充実の推進     5 国・公立大学の管理運営に関する制度的な改革     6 教育の機会と教育条件の保障に関する総合的な施策     7 教育制度における閉鎖性の是正     8 大学入学者選抜制度の改革  第2章 長期教育計画の策定と推進の必要性     1 長期教育計画の必要性と政府の役割     2 計画の基礎としての予測計量の意義     3 予測計量に関する試算     4 試算結果から指摘される問題点 〔参考資料〕 総合的な拡充整備のための資源の見積もり
前文  中央教育審議会は,昭和42年7月以来,標記の諮問事項について検討を重ね,こ こに,これまでの中間報告をも含めて最終的に答申をとりまとめる運びとなった。  この諮問は,戦後の学制改革以来20年の実績を反省するとともに,技術革新の急 速な進展と国内的にも国際的にも急激な変動が予想される今後の時代における教育 のあり方を展望し,長期の見通しに立った基本的な文教施策について答申を求めた ものである。これまでわが国では,明治初年と第2次大戦後の激動期に教育制度の 根本的な改革が行われたが,今日の時代は,それらとは別の意味において,国家・ 社会の未来をかけた第3の教育改革に真剣に取り組むべき時であると思われる。本 審議会が,4年という異例の長期間にわたって慎重に審議を行ったのは,まさにそ のためである。  これまでの審議は,三つの段階に区分される。その第1段階は,まず,明治以来 のわが国の教育発展の実績を多面的に分析評価し,その中に含まれる問題点を究明 することであった。その成果は,昭和44年6月に中間報告を行ったが,この答申の 付属資料がそれである。第2段階は,第1段階の検討の結果をふまえて,今後にお ける教育改革の中心的な課題とその解決の方向について本審議会の提案をとりまと めることであった。その結論は,昭和45年5月と11月に中間報告を行ったが,それ に若干の補正を加えたものをこの答申の第1編第2章および第3章とした。  第3段階は,この提案による改革を実施するとともに,学校教育全般の総合的な 拡充整備を計画的に推進するため,政府としてとるべき行政上・財政上の基本的施 策について検討することであった。また,今後の社会における学校教育の役割を広 い視野から展望することであった。それらの結論は,この答申の第1編第1章およ び第2編として新たに付加された。  この4年間にわたる審議は,七つの特別委員会の159 回の会合と72回の小委員会, 5回の公聴会,70以上の関係諸団体・審議会・官公庁からの意見聴取,10回の総会 によって行われた。その間に,昭和44年4月には「当面する大学教育の課題に対応 するための方策」について別途に答申を行った。その答申は,大学紛争の要因,大 学の内部管理の改善および大学における学生の地位と役割について本審議会の基本 的な考え方を示している点において,今回の答申と密接な関連がある。なお,今回 の答申の中で基本的な考え方は述べたが,その実施方策についてはさらに専門的・ 技術的な検討を要するものがいくつかある。いわゆる生涯教育の観点から全教育体 系を総合的に整備すること,教員の給与・処遇の改善について具体案を作成するこ と,高等教育の新しい教育課程の類型を作り出すこと,教育行政体制の再検討を行 うことなどがそれである。これらの課題について,政府がすみやかに適切な措置を とることを期待する。  わが国の学校教育は,これまでも急激な膨張を遂げてきたが,さらに今後10年以 内に,個人および国家・社会の要請にもとづき,後期中等教育の普及率は90%を突破 し,高等教育も 30%を越えることが予想される。しかも今日の社会は,人間の可能 性の開発をますます重視し,自主的・創造的な人間の育成を要求する方向に発展し つつある。今後の学校教育は,そのような量的な拡張に伴う教育の質的な変化に適 切に対処するとともに,家庭・学校・社会を通ずる教育体系の整備によって,新し い時代をになう青少年の育成にとってのいっそう本質的な教育の課題に取り組まな ければならない。この答申は,そのような観点から,今後実現に努力すべき学校教 育の改革について提案したものである。  およそどのような改革も,それに伴う障害を克服する熱意と勇気なしには,その 実現を期しうるものではない。当面の利害から現状維持を固執したり,現実に目を おおって観念的な反対だけを唱えたり,実行を伴わない改革論議に時を移したりし て,教育がますます時代の推移から取り残されるようになる危険を深く考慮し,こ の改革の実現に対して,教育関係者が積極的な努力を開始し,国民的な支持の盛り 上がることを心から期待する。また,この教育の改革と拡充整備は,国家的に巨大 な資源を必要とするが,わが国の今後における社会・経済発展の見通しを考慮すれ ばけっして実現困難なものではなく,それを実行できるかどうかは,もっぱら政府 の決意と努力のいかんにかかっている。政府の勇断を切望するものである。 第1編 学校教育の改革に関する基本構想   【 中略 】 第2章 初等・中等教育の改革に関する基本構想 第2 初等・中等教育改革の基本構想 7 特殊教育の積極的な拡充整備  すべての国民にひとしく能力に応ずる教育の機会を保障することは国の重要な任 務であって,通常の学校教育の指導方法や就学形態には適応できないさまざまな心 身の障害をもつ者に対し,それにふさわしい特殊教育の機会を確保するため,国は, 次のような施策の実現について,すみやかに行政上,財政上の措置を講ずる必要が ある。 (1) これまで延期されてきた養護学校における義務教育を実施に移すとともに,   市町村に対して必要な収容力をもつ精神薄弱児のための特殊学級を設置する義   務を課すること。 (2) 療養などにより通学困難な児童・生徒に対して教員の派遣による教育を普及   するなど,心身障害児のさまざまな状況に応じて教育形態の多様化をはかるこ   と。 (3) 重度の重複障害児のための施設を設置するなど,特殊教育施設の整備充実に   ついて国がいっそう積極的な役割をになうこと。 (4) 心身障害児の早期発見と早期の教育・訓練,義務教育以後の教育の充実,特   殊教育と医療・保護・社会的自立のための施策との緊密な連携など,心身障害   児の処遇の改善をはかること。 〔説明〕  これまでに特殊教育は,一部の熱心な教育者や有志の努力によって開拓され,近 年,しだいに多くの人の関心をひくようになったが,今日なお,これに関する行政 施策は,じゅうぶんであるとはいえない。このことは,すべての国民を個人として 尊重すべき国家の理想からみて,すみやかに改善がはかられなければならない。  精神薄弱,肢体不自由,病弱の3種の障害児に対する養護学校の義務制は,学校 教育法制定以来今日まで20年以上施行されずにきている。すみやかにその施行をは かるとともに,比較的軽度の精神薄弱児については,市町村に特殊学級を設置する 義務を課することによって,就学の機会を均等に保障する必要がある。また,弱視, 難聴などの障害児に対しても,特殊学級を設けることを促進すべきである。  療養などにより通学困難な者に対して教員を派遣して教育を行うことについては, 教育内容や実施方法をじゅうぶん検討のうえ,積極的にその普及をはかる必要があ る。さらに,心身障害児のうち普通児とともに学習させることが教育上適切な者に ついては,普通学級において専門教員の巡回指導を受けさせる方式を普及すべきで ある。  重複障害児に対しては,特殊教育諸学校に特別な学級を設けて教育すべきである が,その重度の者は対象者も少なく,教育方法も未開拓な分野が多いので,医療・ 保護などとの関連をじゅうぶん考慮した施設を国が設置すべきである。  心身障害児の幼児期における教育は,その後の発達に重大な影響を及ぼすもので あることから,早期に障害を発見し,早期から教育・訓練を開始できるようにする ため,必要な判別と就学指導を行い,それを適切に受け入れる教育の体制を確立す ることを早急に検討しなければならない。また,社会に対する適応力を高め,社会 的自立の助長をはかるため,養護学校高等部など義務教育以後の教育についても, 今後さらに拡充をはかる必要がある。これらの心身障害児に対する教育については, 普通児に対する就学期間を画一的に適用することなく,障害の状況や能力・適性に 応じて弾力的に取り扱うことができるよう配慮すべきである。  さらに,心身障害児が必要とするものは,狭義の教育だけでなく,障害の治療, 生活上の保護,社会的自立のための訓練など幅広いものであり,それらと切り離し て教育の効果を期待することもできない。これらは,行政上各分野に分かれて,と もすればじゅうぶんな連携を保ちにくいものであるだけに,政府としては一段のく ふうと努力が必要である。  以上のような特殊教育の拡充整備を進めるにあたっては,特殊教育の教育的意義 について一般社会の理解を深めるための努力が払われなければならない。また,さ まざまな障害に応じて適切な教育指導を行なう能力をもつすぐれた教員を養成する とともに,その教育の内容・方法を改善する基礎となる科学的研究を総合的に推進 する体制を整備することが重要である。   【 以下略 】
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