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特別支援教育法令等データベース 学校教育 / 健康診断 - 就学時の健康診断の実施について(通達) -

就学時の健康診断の実施について(通知)

 文体学第189号
 平成11年5月31日
 各都道府県教育委員会教育長 殿
 文部省体育局長 遠藤昭雄


 このたび,学校教育法施行規則等の一部を改正する省令(平成11年文部省令第5号)が公布され,学校保健法施行規則(昭和33年文部省令第18号。以下,「規則」という。)の改正規定についても平成11年4月1日から施行されていますが,これに伴い,学校保健法(昭和33年法律第56号。以下,「法」という。)第4条の規定に基づく就学時の健康診断の実施について留意すべき事項を下記のとおりとしましたので,事務処理上遺漏のないように願います。
 なお,「就学時の健康診断の実施について(昭和33年11月27日付け文体保第166号体育局長通達)」は廃止します。
 また,域内の市町村教育委員会に対し,本件に付き十分周知されるようお願いします。

 

1 就学時の健康診断を行う趣旨

 就学時の健康診断は,市町村の教育委員会が,就学予定者に対し,あらかじめ健康診断を行うことにより,就学予定者の状況を把握し,保健上必要な助言や適正な就学についての指導等を行い,もって,義務教育の円滑な実施に資するものであり,当該市町村の教育委員会が,あらかじめ学齢簿を作成し,入学期日の通知などを行う就学事務と関連があること。

2 対象者及び保護者への通知

(1)対象者
対象者は,学校教育法(昭和22年法律第26号)第22条第1項の規定により翌学年の初めから同項に規定する学校に就学させるべき者で当該市町村の区域内に住所を有するものである(法第4条)が,具体的には学校教育法施行令(昭和28年政令第340号)第2条の規定によりあらかじめ作成された学齢簿に記載された就学予定者であること。

(2)保護者への通知

市町村の教育委員会が就学時の健康診断を行うに当たっての保護者への通知(法第10条第2項,学校保健法施行令(昭和33年政令第174号。以下,「令」という。)第3条)については,別記第1を参考の上,当該市町村の教育委員会において定め,通知すること。


3 時期,検査の項目,方法及び技術的基準,健康診断票

(1)時期
就学時の健康診断は,学校教育法施行令第2条の規定により当該市町村の教育委員会において学齢簿が作成された後翌学年の初めから4月前までの間に行うものであること(法第10条第2項,令第1条)。

(2)検査の項目
就学時の健康診断における検査の項目は,法第10条第2項の規定に基づき令第2条に定められているが,特に伝染性又は学習に支障を生ずるおそれのある疾病等の発見に努めるなど法第5条の事後措置に関連して必要な検査の項目が定められているものであること。

(3)方法及び技術的基準
就学時の健康診断の方法及び技術的基準は,(2)の検査の項目ごとに,法第10条第2項の規定に基づき規則第1条に定められているが,このほか「児童,生徒,学生及び幼児の健康診断の方法及び技術的基準の補足的事項について」(平成6年12月8日付け文体学第168号文部省体育局長通知別紙)を参照すること。
また,知能の検査は,別記第2に留意して実施すること。
なお,就学時の健康診断は,幼児を対象として行われることなどから,室内の保温等を適切に行い,換気,採光に留意し,清潔を保つ等健康診断実施場所の環境衛生に配慮すること。

(4)健康診断票
市町村の教育委員会は,就学時の健康診断を行ったときは,規則の第1号様式により,就学時健康診断票を作成しなければならないこと(法第10条第2項,令第4条第1項,規則第2条)。
また,市町村の教育委員会は,翌学年の初めから15日前までに,就学時健康診断票を就学時の健康診断を受けた者の入学する校長に送付しなければならないこと(法第10条第2項,令第4条第2項)。


4 事後措置

 市町村の教育委員会は,就学時の健康診断の結果に基づき,担当医師及び担当歯科医師の所見に照らして,治療を勧告し,保健上必要な助言を行い,及び学校教育法第22条第1項に規定する義務の猶予若しくは免除又は盲学校,聾<ろう>学校若しくは養護学校への就学に関し指導を行う等適切な措置をとらなければならないものであること(法第5条)。
 この事後措置は,就学時の健康診断の結果を保護者に通知し,その通知においてあわせて所要事項を記載して行うのが適当であること。また,必要に応じ保護者に対し,直接,指導,助言を行う場合も考えられること。
 当該事後措置の留意事項を分類して記せば次のとおりであること。

(1)健康な者
発育も順調であり健康な者については,その旨を通知する。

(2)疾病等を有する者
疾病等を有する者については,治療のために必要な医療を受けるよう勧告し,又は必要に応じて更に必要な検査を受けるようあるいは予防接種を受けるよう指導し,また発育が順調でない者,栄養要注意の者などには,その発育,健康状態に応じて保健上必要な助言を行う。特に,伝染性又は学習に支障を生ずるおそれのある疾病にかかっている場合は,速やかに必要な医療を受けるよう勧告する。

(3)病弱,発育不完全などのため就学困難と認められる者。
明らかに学校教育法第22条第1項に規定する義務(以下,「就学義務」という。)を猶予又は免除することが適当と認められる者については,就学義務の猶予又は免除を受けることが適当である旨及びその申請をすべきことを指導する。
さらに必要な検査,精密検査を受ける必要があると認められる者については,こうした検査を受ける必要があることを指導するとともに,その検査を受けた結果を教育委員会に連絡すること,またそれにより就学義務の猶予又は免除が適当と認められる者には,その申請をすべきことなどを指導する。

(4)盲者,聾<ろう>者又は知的障害,肢体不自由その他障害のある者で盲学校,聾<ろう>学校又は養護学校へ就学することが適当と認められる者
これらの者で,盲学校,聾<ろう>学校又は養護学校へ就学することが適当であると認められる者については,その旨を保護者に指導し,かつ,都道府県の教育委員会に対し学校教育法施行令第11条の規定による通知などをしなければならない。
なお,更に必要な検査,精密検査を受ける必要があると認められる者については,(3)の場合に準じて指導する。

(5)身体虚弱者,知的障害者などで特殊学級に編入することが適当と認められる者
身体虚弱者,知的障害者などで特殊学級に編入することが適当と認められる者などについては,その旨を指導する。
更に,必要な検査,精密検査を受ける必要があると認められる者については,(3)の場合に準じて指導する。

 

別記第1

就学時の健康診断を行うに当たっての保護者への通知文(参考例)

 平成 年 月 日
 保護者名 殿
 市(町村)教育委員会名 印
 就学予定者に対する就学時の健康診断の実施について

 

 学校保健法(昭和33年法律第56号)の規定により,当教育委員会においては,下記によって, 就学予定者名 殿に対し,就学時の健康診断を行います。
 当日は,保護者又はこれに代わる方が必ず付き添いの上,この健康診断を受けさせてください。

 

1 就学時の健康診断を行う趣旨
この就学時の健康診断は,就学予定者に対し,あらかじめ健康診断を行い,就学予定者の状況を把握して,保健上必要な助言等を行うためのものです。

2 日時
平成 年 月 日 午前/午後  時から 午前/午後  時までに行います。
なお,当日病気その他やむを得ない事由によって健康診断を受けることのできなかった者については,別途改めて日時を通知します。

3 場所
○○○○小学校で行います。

4 実施の要領及び注意事項
(1)この健康診断は,法令の規定に従って行います。

(2)保護者又はこれに代わる付添の方は,お子さんの主な既往症とジフテリアなどの予防接種を受けた年月が答えられるようにして来てください。

 

別記第2

就学時の健康診断における知能検査実施上の留意事項

 1 就学時の健康診断における知能の検査は,知的発達の遅滞の有無を検査するために行うものである。
 2 就学時の健康診断における知能の検査は,1の目的に合致するよう簡便でしかも就学予定者の年齢層に適合した知能検査法によること。
 3 検査場は,明るい静かな部屋で,直接検査に関係のない者は,入らないようにすること。
 4 検査は,プライバシーの保護に十分配慮し行うこと。
 5 検査の時期は,被検査者の疲労などを考慮してなるべく短時間で終わるように努めること。
 6 検査に当たっては,次の事項に注意すること。

(1)検査は,正しい手続により,正しい教示を守って行い,正しい採点をするなど検査の条件をよく守ること。
(2)被検査者と十分心的融和ができるようにすること。 <
(3)検査者が多人数の場合は,検査開始前に動機付けの仕方,テストの練習問題の説明の仕方,説明時間,テストの全体の時間,事故の起きた場合の処置,補助者の仕事などについて,打合せを十分すること。

 7 規則第1号様式の(注)の11のただし書において,「重度の知的障害」とは,ほとんど言語を解さず,自他の意思の交換及び環境への適応が著しく困難であって,日常生活において 常時介護を必要とする程度のものを「中度の知的障害」とは,環境の変化に適応する能力が乏しく,他人の助けによりようやく身辺の事柄を処理することができる程度のものを,「軽度の知的障害」とは,日常生活に差し支えない程度に身辺の事柄を処理することができるが,抽象的な思考は困難である程度のものをいうものであること。
 8 知能検査の結果,知的障害の疑いのある者については,この通知の本文の記の4の(3),(4)又は(5)の事後措置の実施基準によって措置すること。ほとんどの場合,さらに知的障害に関する専門医,例えば精神科等どの医師又は大学の研究室若しくは教育研究所等において精密検査を受けるよう指導することが適当であること。
 なお,特に市町村教育委員会において専門の医療機関などに委嘱して精密な検査を行ったときは,その診断,判定などに基づきこの通知の記の4の(3),(4)又は(5)の事後措置の実施基準に照らして適切な措置をとること。


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