障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

運動に重度の障害のある子どもの意思表出支援に関する研究

2年間の研究成果

 本研究所における特別研究で検討されてきた表出援助法(STA)を中核に、特に肢体不自由を伴う重度・重複障害児の内的な表現能力の再評価と その支援のあり方という観点から実践研究を行い、教育現場の指導展開に貢献することを考えた。

 2年間における教育現場に還元できる主たる研究成果としては以下のような事柄等が挙げられる。これらに関しては、 「指導上のこつ」としてガイドブックに記載予定している。

  1. 特に、知的な側面で障害が重いといわれている子どもの場合、指導者の関わり方によってその表現意欲が大きく異なる(これは子どもの内的能力評価に大きく影響する)こと。 特に、小学高学年以上の子どもに対しては、歴年齢相応の言葉遣いや態度で接することが重要であり、指導者の関わりの留意点や態度等に関する多くの詳細な示唆をえた。
  2. 子どもの文字指導の場合、一般的には子ども自身によるなぞり書き等による指導法が用いられているが、特に運動に障害のある子どもの場合には、 直接手を触れて支援して書くことによる効果が大きい場合がある。
  3. 表出援助法によって「書字」が可能な子どもは、いわゆる生活面で全介助が必要とされる子どもであっても、それ以前に文字に関する何らかの体験的学習を行っている。 すなわち書字に必要な何らかの能力を備えていないと、書くことはできない。
  4. 従来、子どもの書字能力を評価する場合に、「書いている対象(文字や運筆状況)を見る」ということが「書いている」ことの判断要素とされてきていたが、 子どもによっては「見なくても」書く(表現する)ということがあり、従前以上に観察を繊細にせねばならない。
  5. ことばや身振り等による子どもとのやりとりが効果的に行われるには、相互のあいづちや応答のタイミングが重要である(0.02~0.03秒前後:普通の会話におけるやり取りの時間的間隔)。 すなわち、子どもの声や仕草や表情の表出に対し、指導者がすかさず文脈にあったあいづちを返すこと重要である。
  6. 手を添えて支援することにより、「書くこと含め、いろいろな表現ができる」ことを体験した子どもは、日常場面における表現意欲が急激に大きくなること、 また指導者との良好な関係性も急激に形成されることが全事例において観察された。
  7. 上記6より、「書くことを含め、いろいろな表現ができる」ということを体験した子どもには、手を添えた支援以外に、表現意欲の高まりを基礎として、 AAC等他の表現方法に比較的円滑に移行が可能であり、効果的であるとの知見を得た。
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