障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

神経症・緘黙症・精神病・脳の器質的障害等のある児童生徒への
教育的支援に関する研究

研究分担者
花輪敏男・渥美義賢・大柴文枝・廣瀬由美子・是枝喜代治・玉木宗久
研究協力機関
都立梅ヶ丘病院
研究協力者
広沢郁子(都立梅ヶ丘病院 医師)
三宅幸夫(青鳥養護学校梅ヶ丘分教室 教頭)
川端久詩(横須賀市立公郷中学校 教諭)
研究の趣旨及び目的

神経症・緘黙症・精神病・脳の器質的障害等のある児童生徒についての教育的対応は、通常の学級でなされていることが少なくないが、情緒障害特殊学級や情緒障害通級指導教室、病弱養護学校などで行われていることもあり、現状では多様である。このため、担当する教師の持つ専門性も多様であり、個々の児童生徒に合った適切な指導が十分に行われていない場合もある。今後の特別支援教育においては、通常の学級に在籍する児童生徒への支援が謳われており、これらの障害のある児童生徒への通常の学級における支援のあり方や、特別支援教室(仮称)や特別支援学校(仮称)における支援のあり方について、実際的・総合的に検討する必要がある。またこれらの障害は、近年注目されている軽度発達障害においては、健常児に比べて数倍の発症率であることが知られており、軽度発達障害児への支援を考える上でも重要な課題である。本研究では、神経症・緘黙症・精神病・脳の器質的障害等のある児童生徒への教育的支援に関して実際的・総合的に明らかにすることを目的とする。

研究全体の概要

まず、神経症・緘黙症・精神病・脳の器質的障害等に関する文献・資料の収集と整理を行い、障害特性や必要な支援ニーズについて先行研究における結果をまとめる。次いで、教育相談で本研究所が関わっている事例および研究協力機関・研究協力者が持っている事例について、個々の事例の特性や支援のあり方について詳細に調べ、適切な教育的支援のあり方について明らかにする。

期待する成果

現状では様々な教育的対応を受けている神経症・緘黙症・精神病・脳の器質的障害等のある児童生徒に関し、適切な教育的対応のあり方や指導内容・方法について明らかにでき、今後の教育的支援の充実が期待できる。また、軽度発達障害においては、これらの障害を合併することが多いので、軽度発達障害児への教育的支援のあり方についても有用な情報が得られると期待される。

研究の進捗状況
  1. 文献・資料の収集と整理
  2. ナショナルセンターとしてどのような研究を実施し成果をあげていくか、という視点から米国のNIH(National Institute of Health)およびその関連機関であるNIMH(National Institute of Mental Health)がホームページに掲載している以下のパンフレットや資料を収集した。

    • Question & Answers:Treatment of Children with Mental Disorders(精神疾患のある子どもたちの治療)
    • Anxiety Disorders(不安障害)
    • Anxiety Disorders Research(NIMHが実施している不安障害に関する研究)
    • Anxiety Disorders(不安障害:要因や治療について)
    • Do you feel trapped in a pattern of unwanted and upsetting thoughts?Obsessive-Compulsive Disorder(OCD)(強迫性障害)
    • Do you have sudden bursts of fear for no reason? Panic Disorder(パニック障害)
    • Have you lived through a very scary and dangerous event? Post-Traumatic Stress Disoeder(PTSD)(心的外傷後ストレス障害)
    • Do you feel afraid and uncomfortable when you are around other people?Social Phobia(社会恐怖症)
    • Borderline Personality Disorder- Raising questions, finding answers(境界性人格障害)
    • Childhood-Onset Schizophrenia(統合失調症)
    • Attention Deficit Hyperactivity Disorder(ADHD)
    • Attention Deficit Hyperactivity Disorder(ADHD)
    • Attention Deficit Hyperactivity Disorder(ADHD)
    • Medication(薬)
    • Depression in Children and Adolescents(子ども、青年期のうつ)
    • Depression(うつ)
    • Stories of Depression(うつ)
    • Helping Children and Adolescents Cope with Violence and Disasters(暴力や被害に対処の支援)
    • Child and Adolescent Violence Research(子どもと青年の暴力に関する研究)

    国内の書籍 国内の研究の動向や課題を明らかにするため以下のような書籍を収集する。

    他にも多数あるが、子どもについて書かれている本は少ないよう。

    • 貝谷 久宣 (著) (1996)不安・恐怖症―パニック障害の克服????健康ライブラリー
    • 貝谷 久宣 (著)(2002)対人恐怖―社会不安障害????講談社健康ライブラリー
    • ギャビン アンドリュースら (著) 不安障害の認知行動療法〈2〉社会恐怖―患者さん向けマニュアル?不安障害の認知行動療法 2
    • 貝谷 久宣, 不安・抑うつ臨床研究会 (1998) パニック障害 日本評論社
    • 久保木 富房, 不安・抑うつ臨床研究会(1999) 強迫性障害―わかっちゃいるけどやめられない症候群日本評論社
    • デイビッド・V. シーハン (著), その他 (2002) 社会不安障害 日本評論社
    • フィリップ ケンドール (著), その他 (2000) 子どものストレス対処法―不安の強い子の治療マニュアル 岩崎学術出版社
    • 河井 芳文 (著), 河井 英子 (著) (1994) 場面緘黙児の心理と指導―担任と父母の協力のために 田研出版
    • 坂野 雄二 (著) (1989) 無気力・引っ込み思案・緘黙????情緒障害児双書 黎明書房
    • 厚生労働省精神神経疾患研究委託費外傷ストレス関連障害の病態と治療ガイドラインに関する研究班 (編集) (2001) 心的トラウマの理解とケア

    軽度発達障害との関連から

    J・マーク エディ (著), その他 (2002) 行為障害―キレる子の診断と治療・指導・処遇 金子書房

    今後、収集した資料を可能な範囲で整理していく予定である。

  3. 事例の検討
    1. 行為障害
    2. 行為障害と診断された、現在、養護学校高等部の男子について、幼児期、小学校、中学校から高等部進学まで時間を追って詳細に検討する。本児は、通常の学級、病弱養護学校、情緒障害特殊学級、知的障害養護学校とさまざまな場で教育を受けてきた。本事例を検討することによって、教育的対応の現状と課題が、ある程度明確になってくるものと思われる。

    3. 緘黙
    4. 状態が比較的軽い小学校4年の女子の事例と、状態が重く、精神科で重度の精神障害と診断されてしまった中学生男子の事例を取り上げて検討を加えた。

      これら行為障害と緘黙の事例に関しては、平成17年度にまとめる予定である。

  4. アンケート調査の項目検討
  5. 可能ならば、A市全中学校において、アンケートを実施したいと考え、その項目について検討した。

今後の見通し
  • 収集した文献の整理を継続して行う。
  • 病弱養護学校の資料をも収集したいが、まず、梅ヶ丘分教室の資料を基に、教育的対応についての現状と課題を整理する予定である。
  • アンケートの実施については、校長会等と連携をとりながら考えていく予定である。
  • 事例をまとめ、対応のヒントを導き出したいと考えている。
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