障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

研究報告書の目次と成果の概略紹介

  1. 研究報告書の目次
  2. まえがき
    研究の組織
    第1章 はじめに
    • 研究の概要と本報告書の構成について ・・・牧野泰美
    第2章 研究の枠組みと論点
    • 吃音のある子どもの指導・支援における課題について
        -自己肯定感を支えることの意義- ・・・牧野泰美
    第3章 基礎的知見を踏まえて
    • 吃音問題について ・・・小林宏明
    •  
    • 吃音のある子どもの自己肯定感の形成をめぐって
        -関係性の中で作られる自己への支援という視点から- ・・・伊藤由美
    • 吃音のある子どもの自己意識と自己肯定感を高める支援  ・・・廣嶌 忍
    第4章 ことばの教室における指導・支援の現状
    • 吃音のある子どもの自己肯定感へのアプローチ
        -ことばの教室における実践- ・・・松村勘由
    •  
    • 吃音指導におけることばの教室担当者の悩み ・・・後上鐵夫
    第5章 ことばの教室からの実践報告とその検討
    • 吃音児の自分らしさを育むことばの教室 ・・・伊藤修二
    •  
    • 出会いから始まる主体的な学び ・・・桑田省吾
    • ことばの教室におけるグループ指導
        -子どもの自己肯定感形成との関連を考える- ・・・青山新吾
    第6章 教材開発とそれを用いた実践
    • 子どもとともに吃音と向き合うための教材開発の試みと実践 ・・・瀧田智子
    第7章 学校・教室以外の場における取り組み
    • デイ・キャンプの取り組みから ・・・板倉寿明
    • 「中・高校生の吃音のつどい」の実践報告 ・・・松村玲子
    第8章 おわりに
    • まとめと課題 ・・・牧野泰美
    資料
    • 吃音教育セミナー報告 ・・・牧野泰美

    あとがき
    <目次の補足>
     本研究報告書は大きく分けると、前半(第4章まで)の、実践・研究の動向や議論の整理から得られた知見のまとめと、後半(第5章から第7章)の、様々な実践報告からなる。
     第1章では、本研究の趣旨と目的、取り組みの概観を紹介した。
     第2章では、本研究の議論の観点や、吃音のある子どもへの指導・支援をめぐる主要なトピックを、全体を読み進めるために必要な基礎的情報の解説も加えながらまとめた。その上で、各章の論考・報告の位置づけを整理した。
     第3章では、吃音及び自己意識研究の概観、自己意識及び自己肯定感に関する心理臨床的知見を踏まえ、吃音問題の本質と必要とされる支援の視点、吃音のある子どもの自己意識と自己肯定感を支えるための視点を論究した。
     第4章では、各地のことばの教室、団体等への実地調査を通して、実際的取り組みの現状をまとめるとともに、そこから示唆される知見を整理した。
     第5章では、本研究の観点に基づいた、ことばの教室における実践的取り組みを報告した。
     第6章では、ことばの教室等での実践に役立つ教材開発と、それを用いた実践について報告した。
     第7章では、学校・教室外での吃音のある子どもの集いの場における実践的取り組みを報告した。
     第8章では、研究全体を簡潔にまとめるとともに、今後の課題にも触れた。
     以上に加えて、巻末には資料として、本研究活動の一環として企画・実施した「吃音教育セミナー」の報告を掲載した。
  3. 成果のまとめ(概略)
    1. 吃音研究、自己意識研究、及びことばの教室における実践の概観から
    2.  吃音のある子どもへの指導・支援を行うにあたり、吃音の抱える問題が何かを整理し、その解決を考える必要がある。そのためには、吃音のある子ども自身だけでなく、つまり個の内部だけを見るのでなく、その子どもが周囲との関係の中でどう過ごしているか、暮らしているか、どう存在しているかに着目する必要がある。社会、地域、学校といった比較的大きな視点でのアプローチ、学級や、吃音の子どもを取り巻く身近な子どもや家族といった小さな視点でのアプローチ、双方の視点が重要と考えられる。基本的には吃音の子どもにとってより良い、過ごしやすい集団、社会であるかどうかが問われる。吃音のある子ども自身の状態がどのようになったかという個を評価するのと同様に、集団がどうなったかという集団そのものを評価する教育の実践と研究の蓄積が重要である。
       この点では、通常の学級での教育活動は大きな意味を持ち、通常の学級とことばの教室の双方の教師の連携・協力を進めながら行う実践活動が重要となる。これは特別支援教育が目指す方向とも重なるものである。
       また、絶えず当事者の視点を教育に取り入れること、すなわち吃音当事者からの学びを重視すること、さらに様々な子どもの思いに沿う意味でも、多様な指導・支援及び評価の在り方に関する研究・実践も重要である。
       吃音のある子どもの自己肯定感を支えていく視点としては、上記の
      • 吃音の理解啓発を含めた周囲社会へのアプローチ
      に加えて、
      • 子どもが周囲から認められる経験をすること
      • 自分自身のことを学び自己理解を深めていくこと
      • 子どもが周囲に対して自分が役立つ存在であると実感できる経験をすること
      • 子どものよい側面を周囲他者に伝えていくこと
      • 日々子どもと関わる保護者の思いを支えていくこと
      等の重要性が指摘された。
    3. 様々な実践的取り組みの検討から
    4.  本研究で取り上げたことばの教室及び当事者団体等の実践的取り組みや、吃音の方の体験談などの検討を通して、以下のことが整理された。具体的な内容は研究報告書を参照されたい。
      • 子どもと関わる教師の側の吃音に対する考え方、吃音への向き合い方、そして自己への向き合い方が問われること。そして吃音をいけないことと捉えず、吃音を避けず、子どもとともに吃音と向きあう姿勢が重要であること。教師は身近な他者として、子どもの吃音を肯定する、子どもを認める存在であること。様々な子どもの悩み、状況に対しともに考える存在であること。
      • 教師と子どもの共感性を育む実践活動、子どもと周囲の共感性を育む実践活動が重要であること。一緒に夢中になれる、同じ思いを感じられる事物・事象を教師と子どもの間に持ち込むこと。それを他の子どもとの間にも拡げること。共感できる周囲との関係の中では自己を肯定しやすい可能性があること。
      • 子どもが吃音のことや自己について、主体的に学んでいけるような支援が重要であること。そのためにも吃音のある仲間や大人との出会い、語り合いが重要であること。それを通して、学んでいくための自己のテーマを見つけることが重要であること。
      • 個々の気持ちや状況を考慮する必要はあるが、吃音のことを話題にできること、吃音の話題に蓋をしないことが重要であること。直接「吃音」のことや、「吃音で困ること」でなくても、吃音に触れる、触れられる様々な事象・教材・方法が考えられること
      • 上記の、吃音のことを話題にしたり、吃音や自己についての学びを行っていく上で、グループでの指導・活動は有効であること。そこには、
        • どもる仲間の存在を知る
        • 自分は大丈夫と思える
        • 語り合うことのよさを知る
        • 仲間と出会い語ることで吃音に対する向き合い方を自分なりに考えることができる
        • 他者の体験談を聞いたり、相互に相談できたり、将来のモデルとなる人と出会える
        等のメリットがあること。
         ことばの教室においては、
        • 個別指導の併用
        • 継続性
        • 身近さ
        • 集まりやすさ
        といった強みが、
         外部の集いの場には、
        • 非日常性
        • 多くの出会い
        • 成人吃音者の方との出会い
        • 様々な立場の人との出会い
        等の強みがあること。
         相互のメリットを活かしつつ、補完することが重要であること。
      • 話し方に対するアプローチは、実践のありよう、教師の考え方によって、吃音のことを知る、自分の吃音と向きあう、自己を理解するための支援になりうること。
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