障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第24号

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      国立特別支援教育総合研究所メールマガジン
        第24号(平成21年 3月号)2009.3.9
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【目次】
■お知らせ
■NISEトピックス
 トピックス
 研究紹介
■特別支援教育関連情報
■研修員だより
■特別寄稿
■編集後記
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■お知らせ
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★NEWS★
●「世界自閉症啓発デー」について

 平成19年12月18日の国連総会において、毎年 4月 2日を「世界自閉症啓発
デー」(World Autism Awareness Day)とすることが決議され、この中で国
連加盟各国は自閉症の啓発活動を行うことが求められています。
 これに対応して、我が国で広く国民に自閉症についての啓発活動を行って
いくために、世界自閉症啓発デー・日本実行委員会が組織されました。国立
特別支援教育総合研究所も、厚生労働省、日本自閉症協会等と共に世界自閉
症啓発デー・日本実行委員会の構成メンバーとなり、自閉症の啓発を進める
諸活動に参加しています。主な活動としては、シンポジウムを行うとともに、
このシンポジウムの内容を主としたWebサイトの公開、ポスター、啓発パン
フレットの配布等が行われます。これらに関する情報は、3月初旬より本研
究所のWebサイトで提供していきます。
 また、我が国では 4月 2日からの1週間を発達障害啓発週間として、広く
国民に発達障害について啓発する活動も行っていくことになりました。これ
についても、発達障害教育情報センターで関連情報の提供を行っていきます。

                      (発達障害教育情報センター長 渥美 義賢 記)

 ○上記Webサイトはこちら→http://www.nise.go.jp/waad/

●研究職員の公募について

 研究職員候補者を下記のように募集いたしますので、ご応募をお待ちして
おります。

▼採用予定職種 主任研究員又は研究員
◆募集人員 1名
◆担当職務 主として、下記の職務に従事する。
 ・障害のある子どもの教育支援機器等及び情報教育に関する研究
 ・特別支援教育に関する研究
 ・本研究所が実施する研修等における講義・実習等及び本研究所が実施す
  る諸事業の担当
 ・所属部署における業務
◆応募資格
 ・大学院修士課程修了又はそれと同等以上の研究業績を有する者
 ・採用予定日において年齢満40歳以下の者
 ・原則として障害のある子どもの教育支援機器等又は情報教育に関する研
  究業績のある者
 ・障害のある子どもの教育経験があることが望ましい
◆採用予定日 平成21年 7月 1日
◆応募期限 平成21年 4月 8日(水)(必着)

 ○公募の詳細はこちら→
  http://www.nise.go.jp/PDF/koubo090210.pdf

●「発達障害教育情報センター」Webサイトの最新情報!

 「イベント」欄には 4月 2日~ 8日の「発達障害啓発週間」に関連して開
催される各地域のイベント等の情報を掲載しました。発達障害についての理
解啓発を進めるために、各地でいろいろな取組がありますので、ぜひご活用
ください。
 また、教材・教具、支援機器では「バランス感覚を養う教具」なども追加
されます。子どもたちが楽しんで身体を使った活動ができるよう工夫された
ものです。ぜひご覧いただき、ご意見、ご感想をお寄せください。

 ★3月Webサイト更新情報
  ・「イベント」コーナーに、「発達障害啓発週間」に関連したイベント
   情報を掲載
  ・「教材・機器」コーナー(「バランス感覚を養う教具」などを掲載)
 
 Webサイトへの新規アクセス数が3万件を超え、海外からのアクセスもイ
スラエル、カンボジアが加わり、43か国となりました。これからも、ますま
す皆様のお役に立てるようがんばってまいります。
 今後も新しい情報を全国に向けて発信するとともに、多くのユーザーの声
をいただきながら、充実したWebサイトにしていきたいと考えております。
 皆様のご意見、ご感想をお寄せください。

 ○本センターWebサイトはこちら→http://icedd.nise.go.jp

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■NISEトピックス
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★トピックス★ 
●教育相談部「教育相談担当」の業務について

              後上 鐵夫(教育相談部・上席総括研究員)

 教育相談部では業務を大きく二つに区分しています。一つは「相談連携・
普及」で、もう一つは「日本人学校・企業支援」です。
 まず「相談連携・普及」では、重複障害等の相談困難事例や海外日本人学
校等に在籍する支援が必要な子どもの相談とそうした子どもの帰国時の相談
を行っています。以前に行っていた保護者からの依頼による個別の教育相談
は、原則として地域の相談機関を紹介し、研究所では学校教員等からの依頼
に基づくコンサルテーションを中心とした相談活動を行っています。現在、
学校コンサルテーションの進め方等の研究を進めながらその実践を行ってい
るところです。地域の教育相談を一層発展させるために冊子等を刊行してい
ます。例えば、これから相談活動を担当する教員向けに「はじめての教育相
談」「地域を支える教育相談」の小冊子を刊行し、特別支援学校の地域支援
を担当する支援部等の教員向けには「学校コンサルテーションガイドブック」
「学校コンサルテーションケースブック」を刊行しています。さらに、各地
の相談機関等に関する情報提供や、相談活動をとおしてのデータベースを試
作しながら情報普及の在り方を検討しているところです。
 次に「日本人学校・企業支援」では、毎年、海外日本人学校や補習授業校
に対し特別支援教育に関する実態調査を行い、その実情を整理して情報を発
信しています。また、夏期には一時帰国する子どもを対象に教育相談を実施
し、保護者の了解のもと、その結果を日本人学校に伝えることで、その連携
を深めています。アジア地域の日本人学校とはICTによる特別支援教育協
議会を開催し、日本人学校教員への情報提供や日本人学校間での情報交換を
始めました。他機関との連携も積極的に行っています。例えば、海外子女教
育振興財団との連携により、支援を要する子どもたちが海外で教育を受ける
際の情報を提供する活動や、社団法人日本在外企業協会との連携により、職
員を海外に派遣する企業に対し、特別支援教育情報を提供したり、日本人学
校の学校運営協議会のメンバー(現地企業代表者等)と懇談し、特別支援教
育に対する理解活動を行ったりしています。
 今、こうした活動をまとめた支援冊子「障害のある子どもの海外学校生活
を支援するガイドブック―社員の海外赴任をサポートするために―」を作成
するところです。

●平成20年度国立特別支援教育総合研究所セミナーIIの報告

         西牧 謙吾(セミナーII 実施ワーキンググループ長)

 本研究所では、平成20年度国立特別支援教育総合研究所セミナーIIを 2月
13日(金)に、国立オリンピック記念青少年総合センターにおいて開催いた
しました。このセミナーの目的は、本研究所が実施している研究等諸活動の
内容とその成果を広く普及することにあります。本研究所では、今年度4月
に「発達障害教育情報センター」を設置したこともあり、テーマを「発達障
害のある子どもの支援を考える-これまでとこれから-」と題し、この「発
達障害教育情報センター」の事業の紹介や、発達障害教育関連の研究を中心
に報告いたしました。
 午前のシンポジウムでは、関係機関の連携・情報の共有化による総合的な
支援の確立を目指して、保護者、教育関係者、医療福祉関係者のそれぞれの
立場からご提言いただき、さらに「発達障害教育情報センター」に期待する
ことについてお話いただきました。その後、「同センター」の取組について
現在運用しているWebサイトを提示しながら紹介していきました。
 午後は二つの分科会に分かれ、第1分科会では、「一貫した支援システム
-後期中等教育に焦点を当てて-」というテーマを掲げ、高等養護学校、全
日制の高等学校、また定時制の高等学校からその取組や課題についてご報告
いただき、コメンテーターや参加者を交えて、高等学校段階での特別支援教
育の推進について意見が交わされました。また、第2分科会では、「発達障
害の脳機能に迫る-脳科学からの理解-」というテーマを掲げ、この分野の
研究者お二人をお招きし、脳科学の学校現場への応用の可能性について意見
を交わしました。
 また、発達障害のある子どもの教育に限らず、平成19年度に終了した研究
課題についてポスター形式で成果報告を行い、参加者と直接意見交換をする
ことができました。
 本セミナーでは、710名の方々のご参加があり、午前中の全体会では定員
を超え、別会場にて映像配信をいたしました。また参加者の所属についても
特別支援学校関係者の他、通常学校の先生方、保護者等と幅広く、テーマへ
の関心の高さを感じました。このセミナーを機会に特別支援教育がさらに広
く推進していくことを願っております。
 本セミナーの記録については、後日、本研究所Webサイトに掲載いたします。

★研究紹介★
●共同研究「高等教育機関における発達障害のある学生の支援に関する研究
-評価法の開発と教職員への啓発-」(平成19~20年度)

          研究代表者 原田 公人(教育支援部・総括研究員)

 平成19年度から平成20年度の2カ年間で、独立行政法人日本学生支援機構
との共同により、主に以下の2点を重点的に取り組むことにしました。
(1) 高等教育機関教職員及び保護者等を対象として、発達障害のある学生支
 援に関する理解啓発のためのセミナーを開催する。
(2) 平成19年度に作成したチェックリストを基に、発達障害のある学生に対
 しての支援内容・方法を検討する。
 (1)の理解啓発セミナーは、年度毎に開催し計2回執り行いましたが、ア
ンケート結果からは、高等教育機関における発達障害への理解や支援が未だ
十分とは言えず、発達障害のある学生に対する支援の具体的な方策や組織体
制の在り方などに教職員の方々の関心が高いと分かりました。
 また(2)のチェックリスト活用の可能性について、文科系大学の学生を対
象とした調査研究においては、発達障害に該当するような行動等のスクリー
ニングが可能であると示唆されましたが、項目のさらなる検討も必要である
と分かりました。学生相談等の臨床場面での活用に際しては、明らかな診断
がない学生に対する発達障害の可能性をアセスメントする際に有効ではあり
ながらも、生育歴等の情報と併せた包括的な理解が必要であると分かりまし
た。また、実際の教育現場において、チェックリストを活用して支援した事
例的な研究も行いました。本研究の報告書は今年4月に刊行し、全国の高等
教育機関に配布する予定です。

●共同研究「視覚障害児童・生徒向け仮名・アルファベットの説明表現の改
良」(平成19~20年度)

        研究代表者 渡辺 哲也(教育研修情報部・主任研究員)

 電話での会話のように声だけで情報をやりとりする状況では、1文字だけ
を発声しても正確に聞き取れないことがときどきあります。このような場合、
仮名文字であれば「朝日のあ」、あるいはアルファベットであれば「Alpha
のA」というように、その文字で始まる単語を読み上げることで、意図する
文字を正確に伝える工夫をすることがあります。
 同様の工夫は、視覚障害のある児童生徒が音声を頼りにコンピュータを使
う場面でもなされています。重度の視覚障害者がコンピュータを使うには、
画面上のテキスト情報や画面状況を音声で読み上げてくれるスクリーンリー
ダと呼ばれるソフトを利用します。このソフトには、仮名とアルファベット
を単語を使って説明する「フォネティック読み」という読み上げ方法が用意
されています。このフォネティック読み用単語の一部に、児童・生徒には分
からないものがあるのではないかという考えからこの研究は始まりました。
 単語の分かりやすさは、その単語が利用者の語彙に含まれるかどうか、含
まれる場合は馴染みの度合いが高いかどうかに左右されます。そこで、単語
の馴染みの度合である「単語親密度」を児童・生徒に評定してもらう調査を
行ないました。その結果をもとに、単語親密度が高かった一連の単語を、理
解しやすいフォネティック読み単語として提案しました。

 ○本研究の研究報告書はこちら→
  http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_g/g-7.html

 ○提案するフォネティック読み単語の一覧はこちら→
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/02/1238018.htm

●【お知らせ】高等学校学習指導要領、特別支援学校幼稚部教育要領、特別
支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支援学校高等部学習指導要領
の改訂並びに移行措置について 

       (文部科学省初等中等教育局教育課程課、特別支援教育課)

 文部科学省では、本日 3月 9日、新しい高等学校学習指導要領、特別支援
学校幼稚部教育要領、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支
援学校高等部学習指導要領並びに移行措置を公示しました。また、あわせて
事務次官通知「高等学校学習指導要領の全部を改正する告示及び移行措置に
ついて(通知)」及び「特別支援学校の学習指導要領等の公示及び移行措置
について(通知)」を都道府県・政令指定都市教育委員会等関係機関に対し
発出しました。
 高等学校学習指導要領等の改訂案については、平成20年12月23日から平成
21年 1月21日までホームページ等を通じてご意見を募集し、計3,592件のご
意見をいただきました。お寄せいただいた意見と、それらに対する当省の考
え方については、「新しい学習指導要領」ホームページに掲載しています。
今回、ご意見をお寄せいただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げます。

 新学習指導要領の全文等は、「新しい学習指導要領」ホームページに掲載
していますのでご覧ください。

 ○新しい学習指導要領へのリンクはこちら→
  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

 新学習指導要領の主なポイントは以下のとおりです。

《特別支援学校学習指導要領等について》

◆改訂の基本的な考え方◆
 特別支援学校の幼稚部教育要領、小学部・中学部学習指導要領、高等部学
習指導要領の改訂については、下記の方針に基づいて行った。

1.幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善に準じた
改善
(1)教育基本法改正等で明確となった教育の理念を踏まえ、「生きる力」を
 育成すること
(2)知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視
 すること 
(3)道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな身体を育成する
 こと 

2.社会の変化や幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化などに対応し
た改善
(1)障害の重度・重複化、多様化への対応
(2)一人一人に応じた指導の充実
(3)自立と社会参加に向けた職業教育の充実
(4)交流及び共同学習の推進

◆主な改善事項及び施行時期等◆
○特に2.に関する主な改善事項は以下のとおり。詳細は「新しい学習指導
要領」ホームページを参照のこと。
(1)障害の重度・重複化、発達障害を含む多様な障害に応じた指導を充実す
 るため、「自立活動」の指導内容として、「他者とのかかわりの基礎に関
 すること」などを規定
(2)重複障害者や訪問教育に関し、指導計画作成上の配慮事項を規定
(3)一人一人の実態に応じた指導を充実するため、すべての幼児児童生徒に
 「個別の指導計画」を作成することを規定
(4)教育、医療、福祉、労働等の関係機関が連携し、一人一人のニーズに応
 じた支援を行うため、すべての幼児児童生徒に「個別の教育支援計画」を
 作成することを規定
(5)特別支援学校(知的障害)における職業教育を充実するため、高等部の
 専門教科として「福祉」を新設
(6)地域や産業界等と連携し、職業教育や進路指導の充実を図ることを規定
(7)障害のある子どもと障害のない子どもとの「交流及び共同学習」を計画
 的、組織的に行うことを規定

○幼稚部教育要領は、平成21年 4月 1日から、小学部・中学部学習指導要領
のうち、小学部は平成23年 4月 1日から、中学部は平成24年 4月 1日から適
用するものとし、高等部学習指導要領については、原則として、平成25年 4
月 1日以降に入学した生徒から適用する。

◆主な移行措置の内容◆
○小学部における移行措置(平成21年度から平成22年度)
 ・総則については、原則として新指導要領による。
 ・移行期間中の総授業時数は、小学校の移行期間中の授業時数に準ずる。
 ・視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・病弱(以下「視覚障害等」という。)
  の特別支援学校における各教科の取扱いについては、小学校の移行措置
  期間中の取扱いに準ずるとともに、障害種別に示す配慮事項は新学習指
  導要領による。
 ・知的障害の特別支援学校における各教科の取扱いについては、新学習指
  導要領によることができる。
 ・総合的な学習の時間(知的障害を除く。)、道徳、特別活動及び自立活
  動については、新学習指導要領による。
 ・外国語活動(知的障害を除く。)を設ける場合は、新学習指導要領によ
  る。

○中学部における移行措置(平成21年度から平成23年度)
 ・総則については、原則として新学習指導要領による。
 ・視覚障害等の特別支援学校における各教科の取扱いについては、中学校
  の移行措置期間中の取扱いに準ずるとともに、障害種別に示す配慮事項
  は新学習指導要領による。
 ・知的障害の特別支援学校における各教科の取扱いについては、新学習指
  導要領によることができる。
 ・総合的な学習の時間、道徳、特別活動及び自立活動については、新学習
  指導要領による。

○高等部における移行措置
 1.平成21年度以降に入学した生徒に係る教育課程の移行措置
 ・視覚障害等の特別支援学校における福祉科については、新学習指導要
  領によることができる。
 2.平成22年度からの移行措置
 ・総則については、原則として新学習指導要領による。
 ・視覚障害等の特別支援学校における各教科・科目の取扱いについては、
  高等学校の移行期間中の取扱いに準ずるとともに、障害種別に示す配慮
  事項は新学習指導要領による。
 ・視覚障害又は聴覚障害の特別支援学校の独自教科・科目については、新
  学習指導要領によることができる。
 ・知的障害の特別支援学校における各教科の取扱いについては、新学習指
  導要領によることができる。
 ・総合的な学習の時間、道徳(知的障害に限る。)、特別活動及び自立活
  動については新学習指導要領による。
 3.平成24年度以降に入学した生徒に係る教育課程の移行措置
 ・視覚障害等の特別支援学校における数学、理科及び理数の各教科につい
  ては、高等学校における移行期間中の取扱いに準ずる。

◆留意事項◆
○小学部にあっては、現行学習指導要領及び新学習指導要領において目標及
び内容を2学年まとめて示している教科、また、中学部にあっては目標及び
内容を2学年又は3学年まとめて示している教科について、現行学習指導要
領から新学習指導要領に切り替わる前後の年度における指導に当たっては、
新学習指導要領実施を見通した適切な指導計画を作成して指導を行うととも
に、新学習指導要領実施後は、現行学習指導要領における指導内容を踏まえ
た指導計画を作成して指導を行うなど、新学習指導要領に円滑に移行できる
ようにすること。

○平成22年度から平成24年度までの間に高等部に入学する生徒は、中学部又
は中学校等を卒業する年度の違いにより、現行学習指導要領により学習した
生徒と、移行措置期間中における特例により学習した生徒がいることを踏ま
え、高等部に入学する生徒が中学部又は中学校等の各学年で履修した各教科
の内容を踏まえた適切な指導が行われるよう、指導計画等の作成に当たって
十分配慮すること。

◆その他◆
 小学校又は中学校(中等教育学校の前期課程を含む。)において特別支援
学級における指導又は通級による指導を行うに当たっては、学校教育法施行
規則第138条又は同規則第140条の規定に基づき特別の教育課程によることが
できることから、必要に応じて特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を
参考にし、実情に応じた教育課程を編成するとともに、児童生徒の障害の状
態等に即し適切な指導や必要な支援を行うことが重要です。
 今後とも、教育関係者におかれては、新学習指導要領の周知・普及にご理
解とご協力をいただくとともに、国民の皆様におかれては、教育に対して関
心を持っていただき、学校教育をご支援いただくようお願いします。

《高等学校学習指導要領について》

◆改訂の基本的な考え方◆
 小・中学校学習指導要領と同様に、
 (1)教育基本法改正等で明確となった教育の理念を踏まえ、「生きる力」
   を育成すること
 (2)知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重
  視すること 
 (3)道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな身体を育成す
    ること 
 といった基本的な考え方に基づいて改訂している。

◆主な改善事項及び施行時期等◆
○主な改善事項は以下のとおり。詳細は「新しい学習指導要領」ホームペー
ジまたはバックナンバー(第105号)を参照のこと。
 (1)共通性と多様性のバランスの重視
 (2)義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設ける
     ことを促進
 (3)言語活動の充実
 (4)理数教育の充実
 (5)伝統や文化に関する教育の充実
 (6)道徳教育の充実
 (7)体験活動の充実
 (8)外国語教育の充実
 (9)職業に関する教科・科目の改善

○新学習指導要領は、原則として、平成25年 4月 1日以降に高等学校に入学
した生徒から適用する。

◆主な移行措置の内容◆
○平成21年度以降に入学した生徒に係る教育課程の移行措置
 ・福祉科については、各学校の判断により、その全部又は一部を新学習
  指導要領によることができる。
○平成22年度からの移行措置
 ・総則については、現行学習指導要領第1章第2款「各教科・科目及び単
  位数等」及び第3款「各教科・科目の履修等」に規定するものを除き、
  原則として、新学習指導要領による。
 ・総合的な学習の時間及び特別活動については、新学習指導要領による。
 ・保健体育、芸術、体育、音楽及び美術の各教科については、各学校の判
  断により、その全部又は一部を新学習指導要領によることができる。
○平成24年度以降に入学した生徒に係る教育課程の移行措置
 ・ 数学、理科及び理数の各教科については、新学習指導要領による。

 なお、各高等学校においては、平成22年度以降に高等学校に入学する生徒
には、中学校を卒業する年度の違いにより、中学校学習指導要領(平成10年
文部省告示第175号)により学習した生徒や、平成21年 4月 1日から平成24
年 3月31日までの間における中学校学習指導要領の特例を定める件(平成20
年文部科学省告示第99号)で定める特例により学習した生徒がいることから、
高等学校に入学する生徒が中学校の各学年で履修した各教科の内容を踏まえ
た適切な指導が行われるよう、指導計画等の作成に当たって十分配慮するこ
とが必要です。

◆留意事項◆
○新学習指導要領の周知・徹底
  新学習指導要領の理念が各学校において実現するためには、各学校の教
 職員が新学習指導要領の理念や内容についての理解を深める必要がある。
 このため、文部科学省としては平成21年度に集中的に周知・徹底を図るこ
 ととしており、各教育委員会等においても、新学習指導要領に関する説明
 会や研修会を開催するなど、教職員に対して周知・徹底を図ること。
  また、学習指導要領は大綱的な基準であることから、その記述の意味や
 解釈などの詳細については、文部科学省が作成・公表する学習指導要領解
 説において説明することを予定している。このため、学習指導要領解説を
 活用して、教職員が学習指導要領についての理解を深められるよう周知・
 徹底を図ること。

○新学習指導要領への円滑な移行等
  平成24年度の入学生に係る教育課程は、数学、理科及び理数の各教科の
 必履修科目の構成やその標準単位数に変更がある。このことを踏まえ、各
 学校においては、必要に応じ、他教科も含めた教育課程全体を見通して教
 育課程の見直しを行うなどの配慮をすること。
  また、各高等学校及び教育委員会等においては、平成24年度及び平成25
 年度からの新学習指導要領に基づく各教科の指導を円滑に実施できるよう、
 各学校や生徒の状況に応じた指導計画の作成、教員研修の充実などの準備
 を計画的に進めること。さらに、指導体制、教材、学校図書、学校施設・
 設備、ICT環境などの整備や、外部人材の活用、学校の事務負担の軽減
 を図ることにも留意すること。

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■研修員だより
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 今号は、平成20年度第一期特別支援教育専門研修 情緒障害・言語障害・
発達障害教育コース(情緒障害・自閉症教育専修プログラム)修了の宮野佳
子先生からお寄せいただきました。

-『特別支援教育通信』毎月発行中(*^_^*)-

            宮野 佳子(青森県八戸市立根城中学校・教諭)

  平成20年 5月から9週間研修をさせていただきました。講義の内容の濃さ
やグループ協議の楽しさ、そして特別支援教育に熱い思いのある先生方との
お話・・・。特別支援教育にたずさわって3年目に入ったばかりの私にとっ
て、どれも新鮮で勉強になるものばかりでした。研修終了後も、メーリング
リストが作成され、全国の先生方からのメールが届くので心強く感じていま
す。
 研修後から、毎月『特別支援教育通信』を発行し、職員会議で発達障害に
ついて説明しています。発達障害の生徒は通常の学級や情緒障害学級に在籍
しているので、多くの先生方が、授業、部活動、委員会活動等何らかの形で
かかわりを持ちます。そこで先生方に発達障害について知ってもらい、生徒
に対する見方や考え方、かかわり方を見つめ直すきっかけになればと思って
います。同時に『特別支援教育通信』を発行することは私自身の勉強にもな
っています。
 春の訪れが感じられる 3月18日。特別支援学級を担当して初めての卒業生
を送り出します(*^_^*)。そして4月。今年も新入生を迎えます。生徒や保
護者との関係作りを大事にし、安心できる学級を目指したいです。そして一
つひとつの経験を大事にしながらさらに勉強を深め、先生方をサポートでき
るようになりたいと思っています。

 ○青森県八戸市立根城中学校のWebサイトはこちら→
  http://www.hachinohe.ed.jp/nejyo_j/

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■特別寄稿
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九州の実践が特別支援教育をリードする時代になるように!
-まずは「ネットワークづくり」から-

                  徳永 豊(福岡大学・教授)
                      (元企画部・総括研究員)

 約20年間研究所でお世話になり、平成20年の4月から福岡大学で仕事をし
ています。大学では「教育心理学」「生徒指導」の講義などを担当し、この
他に、九州北部の現職の先生方との研究会を行なっています。
 障害が重度な児童生徒の目標設定と学習評価を工夫するための「学習評価
と授業改善の研究会」を、平成20年度に2回開催しました。福岡、佐賀、長
崎、熊本の数名の先生に参加していただき、子どもの行動を段階的にみる目
標設定 また評価のための情報交換を行っています。
 また、研究所での研修で一緒に研究協議を行った研究所研修員OBの方々
と「久里浜の会」を立ち上げています。平成21年になり、佐賀「久里浜の会」、
福岡 「久里浜の会(準備会)」で、ワークショップ形式で情報交換を行い、
懇親会で、美味しい日本酒やビールを楽しみました。まだ少人数ですが、継
続していければと思っています。 
 研究所で仕事をしてきた財産は、チームで活動すること、支援の必要な子
どもたちのために、力を合わせてよりよいものを創造することです。一人で
頑張っても限界がありますが、話をすることで発想が広がり、またエネルギ
ーがもらえることを実感しています。これからは、現職の先生方とチームで
仕事をしていきたいものと考えています。
 今年度の仕事の一つは、科学研究費の補助を受けて「重度・重複障害児の
対人相互交渉における共同注意-コミュニケーション行動の基盤について-」
という書籍を出版しました。「学習評価と授業改善」の研究の基礎となるも
ので、お時間があればご覧いただければ幸いです。 

 ○上記書籍出版等の情報はこちら→ 
  http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766415759/

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■編集後記

  3月 1日(日曜日)に三浦国際市民マラソンが開催されました。晴れてい
れば、富士山の見える素晴らしいコースなのですが、今年は冷たい雨の中の
レースとなりました。ハワイのホノルルマラソンの姉妹大会であり、参加賞
として三浦の大根(三浦大根ではなく、普通の青首大根※)が配られます。
この大会当日、毎年恒例で京浜急行には1万人ほどの人が、マラソンシュー
ズにジャージ、リュックサック姿で乗車します。帰りは大根を1本入れた買
い物袋を持っていますから、すぐに、このマラソンを走った人だとわかりま
す。
 さて、今回のメルマガは、新しい高等学校学習指導要領、特別支援学校幼
稚部教育要領、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支援学校
高等部学習指導要領並びに移行措置の公示に合わせての発行となりました。
 最後に、元気がもらえる便りをお寄せくださった宮野佳子先生はじめ、原
稿執筆者の皆様に感謝しながら編集の筆を置きます。
 今後とも、メルマガご愛読の程どうぞよろしくお願い申し上げます。

                   (第24号編集主幹 棟方 哲弥)

※「まぼろしの三浦大根」の記事がメルマガのバックナンバー19号に紹介さ
れています。

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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第24号(平成21年 3月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
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