障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第28号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      国立特別支援教育総合研究所メールマガジン
        第28号(平成21年 7月号)2009.7.1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE ━━
【目次】
■お知らせ
■NISEトピックス
 トピックス
 研究紹介
■特別支援教育関連情報
■研修員だより
■編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■お知らせ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★NEWS★
●研究所公開の報告

 平成21年度研究所公開及び筑波大学附属久里浜特別支援学校の授業公開が、
去る 6月27日(土)に行われました。天候にも恵まれ、270名程の学校関係
者や地域の方々などにご来場いただきました。
 当日は、研究所の概要や最新の研究成果、障害のある子どもの教育につい
てパネル等による展示、体験、実演を行いました。
 お越しいただきました皆様、まことにありがとうございました。

●「発達障害教育情報センター」Webサイトの最新情報

 Webサイト更新情報:「教材・機器」コーナー
・手先の巧緻性を高める教材「Wammy」、「ぬいぬいお絵かき」
・バランス感覚を養う教材「バランスボール」
・不注意を支援するする教材「ポケットカレンダー」の掲載

 Webサイトへのアクセス数は延べ9万6000件を超え、海外からも1000件(50
か国)を超えるアクセスがありました。

  6月 1日にWebサイトをリニューアルし、1ヶ月が経ちました。
 データベース化した「教材・機器」、「イベント情報」はご覧いただけま
したでしょうか。
 今後も新しい情報を全国に向けて発信するとともに、多くのユーザーの声
をいただきながら、充実したWebサイトにしていきたいと考えております。
 皆様のご意見、ご感想をお寄せください。

 ○本センターWebサイトはこちら→http://icedd.nise.go.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■NISEトピックス
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★トピックス★ 
●平成20年度に実施した研究において、下記の教材・教具を試作し、公開し
ました。

◇ネットで学ぶ発音教室
 言語障害特別支援学級・通級指導教室担当教員に必要な構音指導の知識・
技術について、動画を中心としたコンテンツで説明したもので、保護者や子
どもにも活用できる内容です。

 ○Webサイトはこちら→http://forum.nise.go.jp/kotoba/

◇盲児用基本図形作図用枠
 モンテッソーリ教具のメタルインセッツの原理を応用して、○△□の3種
類の形と3種類の大きさで型抜きしたステンレススチール板とシリコンゴム
の下敷きを組み合わせた盲児用作図教具です。凸線が描ける特殊な用紙を使
って、全盲児童の基本図形描画を支援することができます。

 →本研究所の「iライブラリー」に展示しております。

★研究紹介★
●専門研究A「障害のある子どもの教育制度の国際比較に関する基礎的研究
-我が国の現状と今後の方向性を踏まえて-」(平成20年度)

         研究代表者 笹本 健(教育支援部・上席総括研究員)
                       
 平成19年 9月に我が国は国連の「障害者の権利に関する条約」に署名しま
した。この条約は「インクルージョン(包容)」の考え方に基づき、人権を
基軸とした、世界(国連)の、障害がある人々に対する活動の基礎を形成し
ているもので、第24条には教育に関する条項があります。
 私たちはこの「障害者の権利に関する条約」が今後の特別支援教育を展開
していく上での基礎となると考え、署名先進国における制度や教育状況につ
いて調査し、比較検討を行い、日本の特別支援教育の制度が国際的にどのよ
うな立ち位置にあるのかを明らかにしようと試みました。調査対象国はイギ
リス、ドイツ、フランスで、実地調査も行いました。
 また、この研究では、制度や教育の範疇ばかりではなく、その結果を生活
実感としても受け止められるように、文献や統計情報から「暮らし」に関す
る国際比較指標を整理し、さらに調査対象国の利用者側(当事者側)の意見
の収集も試みました。
 なお、本研究は今後の我が国の特別支援教育の在り方を探るスタートアッ
プ研究として単年度で実施されたものです。

●専門研究A「特別支援学校の特性を踏まえた学校評価の在り方に関する基
礎的研究」(平成20年度)

           研究代表者 大内 進(企画部・上席総括研究員)

▽本研究の目的 
 特別支援学校の学校評価については、「学校評価ガイドライン[改訂]」
に、小・中学校に準じた評価とともに特別支援学校の特性についても考慮す
ることの必要性が示されています。しかし、特別支援学校における学校評価
の在り方などについては、今後の課題とされており、具体的な記述はなされ
ていません。
 本研究は,特別支援学校の特性に応じた学校評価を推進するためのスター
トアップ研究として、全国の特別支援学校を対象に実態調査を実施し、学校
評価への取組状況を把握することを目指して実施しました。 
  
▽実態調査の実施と結果 
 特別支援学校の特性に応じた学校評価(自己評価、学校関係者評価、第3
者評価)の実施状況について質問紙により調査しました。
 全国の特別支援学校1021校を対象として調査用紙を郵送し、回答を求め、
735校から有効な回答を得ました。回収率は72.0%でした。 

◎調査結果のまとめ  
(1)自己評価 について
 特別支援学校の特性への対応については、「個別の指導計画」「個別の教
育支援計画」「センター的機能」「交流及び共同学習」「環境の整備」等の
項目に関して学校評価項目に取り入れている学校が多いことがわかりました。 
 教職員の専門性については、多くの学校では、各学校の当該の障害種に関
する専門性を重視していることが示されました。
 体制整備については教育内容が中心であり、運営管理面への対応は今後の
検討課題だといえます。 
(2)学校関係者評価 について
 学校関係者評価は、多くの学校で実施されており、保護者や医療・福祉・
労働関係者への委嘱が進んでいることがわかりました。 
(3)第3者評価 について
 第3者評価の実施率は高いとはいえない結果でした。特別支援学校に対応
した第3者評価の在り方とその進め方については、今後検討が必要だといえ
ます。 
(4)評価の公表 について
 ほとんどの学校が、学校内や学校関係者に対して評価結果を公表していま
した。その方法は、文書、口頭、Webサイト等多岐にわたっていました。一
方、地域への公表は3割以上の学校で実施されていませんでした。
(5)評価の活用 について
 学校組織マネジメント及び指導内容、方法等の改善への学校評価の活用に
ついては、試行段階にあるといえます。
 本調査で示された課題等については、引き続き、継続の研究課題で検討し
ていくことにしています。

◆ちょっと一息  ~ 梅雨 ~

 梅雨明けが待ち遠しい今日この頃ですね。
 多くのメルマガ読者の方がご存知かも知れませんが、なぜ梅雨には「梅」
という字が使われているのでしょうか?...ウィキペディアで引いてみま
すと、中国に語源がある梅雨は、元々は「黴雨(ばいう)」、つまりカビの
雨と書き表されていたものが、同じ音の「梅(ばい)」を当てられるように
なったという説や、梅の実が熟す時期に降る雨ということで「梅雨」とされ
ている説など、諸説があるそうです。
 いずれにしても、長雨が続く暗い空ばかり見ていると、気分まで暗くなっ
てしまいそうです。外出も億劫になりがちですから、ここはひとつ、名作映
画の『雨に唄えば』でも観て、むしろ、この鬱陶しい雨を楽しんでしまうな
んていうのは、どうでしょうかね。
 メルマガ読者のみなさんも、梅雨を楽しむアイデアをお持ちでしたら、ぜ
ひ教えてください!

                   (教育相談部 植木田 潤 記)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■特別支援教育関連情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●平成21年度「発達障害等に対応した教材等の在り方に関する調査研究事業」
の委託団体について

 平成21年 6月に「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普
及の促進等に関する法律」が公布され、障害の有無にかかわらず児童生徒が
十分な教育を受けることができるよう学校教育を推進することとされたこと
を踏まえ、文部科学省では、平成21年度より、発達障害等の児童生徒の障害
の状態等に応じた教科用特定図書等や教材の在り方及びそれらを利用した効
果的な指導方法や教育効果等について実証的調査研究を実施します。
 この度、調査研究事業の委託先として4団体を選定しました。選定された
団体の名称及び調査研究テーマについては、以下の報道発表資料をご覧下さ
い。

 ○報道発表資料はこちら→
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/05/1267109.htm

●平成21年度「高等学校における発達障害支援モデル事業」の指定校について

 文部科学省では、平成19年度より、発達障害のある生徒への具体的な支援
の在り方について実践的な研究を行う高等学校をモデル校として指定し、
「高等学校における発達障害支援モデル事業」(指定期間2年間)を実施し
ています。
 平成21年度は、新規モデル校として、国公私立14校を指定しました。指定
された学校の名称や研究概要等については、以下の報道発表資料をご覧下さ
い。

 ○報道発表資料はこちら→
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/06/1268884.htm


●特別支援学校学習指導要領解説の出版について

 文部科学省では、学習指導要領改訂に伴い、その内容について詳しく解説
した学習指導要領解説を発行しております。現行の学習指導要領解説につい
ては、『総則等編』『各教科,道徳及び特別活動編』『自立活動編』の3種
類で構成していますが、新しい学習指導要領の解説は『自立活動編』『総則
等編(幼稚部・小学部・中学部)』『総則等編(高等部)』の3種類となる
予定です。出版状況は以下のとおりです。
・特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編(幼稚部・小学部・中学部・
高等部): 6月 5日、海文堂出版(株)、210円
・特別支援学校学習指導要領解説 総則等編(幼稚部・小学部・中学部): 
 6月30日、教育出版(株)、473円
(特別支援学校学習指導要領解説 総則等編(高等部)については出版社、
出版時期未定)
 なお、解説書の内容や出版状況など、新しい学習指導要領についての情報
は、以下のWebサイトに随時掲載してまいりますので、適宜御活用ください。

 ○新しい学習指導要領はこちら→
  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■研修員だより
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 今号は、平成20年度特別支援教育研究研修員修了の坪川寛司先生からお寄
せいただきました。

 「研究研修員としての一年」
                             
                坪川 寛司(北海道函館盲学校 教諭)

 窓から見える海を眺め、小鳥のさえずりを聴きながら、台湾リスやアライ
グマなどの小動物が闊歩する豊かな自然に囲まれた研究所で過ごしていたこ
とが懐かしく思い出されます。私は平成20年度特別支援教育研究研修員とし
て一年間という期間を与えられ、様々な研究研修活動に取り組みましたが、
思い返してみるとそれは非常に密度が濃く、あっと言う間の一年間でした。
 特別支援教育研究研修員制度は、研究所の研究に参画することが主な目的
でした。私は視覚障害教育研究班に所属し、弱視児童生徒のための拡大教材
に関する研究に携わりました。研究班の先生方に指導・助言をいただきなが
ら、研究に参画できたことは得がたい貴重な経験となりましたし、今年の1
月には、その研究成果をまとめ、弱視教育研究全国大会にて研究発表させて
頂くこともできました。
 また、研究班の研究に関連した自己課題の研究にも取り組み、弱視児童生
徒の学習環境の整備状況についての調査研究を行ないました。そして、北海
道における学習環境整備の現状をまとめ、道内の弱視児童生徒の在籍する学
校に配布させて頂きました。
 自らの研鑽に努めることもでき、大変有意義な研究ができたと思います。
 研修期間中には、研究研修員担当の先生方や研修係の方々をはじめ、研究
所の皆さんに大変良くして頂き、充実した研修生活を送ることができました。
また、所属校の先生方の理解と協力のおかげで研究を滞りなく進めることが
できました。多くの方々に支えられて、研究研修を無事終えることができた
ことを感謝しています。今後は、研究研修で学んだことを日々の教育実践に
活かすとともに、北海道における特別支援教育の推進のために役立ていきた
いと考えています。

 ○北海道函館盲学校のWebサイトはこちら→
  http://www.hakodatemou.hokkaido-c.ed.jp/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■編集後記
 今号では、研究所の研究紹介として2課題、また研究成果としての教材・
教具の試作2件についての情報が掲載されています。また、発達障害教育情
報センターの「教材・機器」コーナーの更新情報もお伝えしています。
 研修員便りでは、研究研修員として1年間、当研究所の研究活動に参加し、
研修をされた坪川先生より原稿をお寄せいただきました。
 現在、研究所の研修では、5月から始まった第一期の特別支援教育専門研
修(知的障害・肢体不自由・病弱教育コース)が終わろうとしているところ
ですが、学校等でも、やがて、夏休み前、一学期のまとめの時期に入ること
と思います。忙しい中、このメールマガジンが、皆様にとって有用な情報を
お伝えできていればと思います。
 今号の「ちょっと一息」にもありましたが、梅雨の季節、また、梅雨が明
ければ夏の暑い時期を迎えます。読者の皆様もご自愛ください。今後とも、
ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

                    (第28号編集主幹 金子 健)

 ○「メールマガジン」へのご意見・ご感想はこちら→
  a-koho@nise.go.jp(@を半角にして送信してください。)
 ○研究所メールマガジンの利用については、こちら→
  http://www.nise.go.jp/magazine/policy.html
 ○研究所メールマガジンPC版の登録は、こちら→
  http://www.nise.go.jp/blog/magazine.html
 ○研究所メールマガジン携帯版の登録は、こちら→
  http://www.nise.go.jp/magazine/keitai/index.html
 ○研究所メールマガジンのバックナンバーは、こちら→
  http://www.nise.go.jp/magazine/back.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第28号(平成21年 7月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho@nise.go.jp
           (@を半角にして送信してください。)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
サイトポリシー情報公開個人情報保護調達情報・契約監視委員会| Copyright © 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所