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平成21年度第三期特別支援教育専門研修 言語障害教育専修プログラム講義等内容

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言語障害教育専修プログラム講義等内容

※ 都合により一部変更する場合がある。

講義等題目等 講師氏名(所属・職名) 講義等内容
構音障害の基礎後上鐵夫
(教育相談部・部長)
 構音とその障害に関する基礎的事項及び関連知識は、言語障害教育に携わるうえで必要不可欠なものである。この講義では、構音器官、日本語の語音、構音部位と構音様式、国際音声記号等、構音に関する基礎事項を解説するとともに、構音の発達や様々な構音障害について整理し、構音障害の評価や指導について考え実践していくうえでの基礎を培う。
吃音の基礎後上鐵夫
(教育相談部・部長)
 吃音については、現在までの科学、医学において解明されていない要素もあるが明らかになっていることも多い。吃音は言語障害教育の主たる対象の1つであり、吃音をめぐる基礎事項は重要である。この講義では、吃音の特徴、発吃、進展に関する諸理論等、吃音に関して踏まえておくべき事項を解説するとともに、実践の動向も概観し、吃音及び吃音への支援に関する様々な捉え方や考え方にふれる。
コミュニケーション障害とその援助松村勘由
(教育支援部・総括研究員)
 言語障害を子どもと周囲・他者とのコミュニケーションの障害と捉えることで、子どもへの支援の幅が大きく拡がる。子どもを学校や家庭、地域の中で生活する主体として見つめ、子どもの暮らしの中で繰り広げられる周囲との関わり合いの中で捉えることを通して、子どものコミュニケーション上に生じる様々なつまずきに対して支援するという、子どもと周囲の関係に視点をおいた支援の在り方について言及する。

(講義・協議)
言語障害教育における実践研究
牧野泰美
(教育支援部・主任研究員)
後上鐵夫
(教育相談部・部長)
松村勘由
(教育支援部・総括研究員)
小林倫代
(教育相談部・総括研究員)
久保山茂樹
(企画部・主任研究員)
 言語障害教育においては、言語に障害のある子どもへの指導・支援、ことばの教室等の経営、子どもを中心とした様々な連携等、多様な観点から実践を検討し、担当者の力量を高めていくことが必要である。ここでは、実践研究会、事例検討会等での言語障害教育に関する実践報告・研究の動向、在り方等について概観するとともに、受講者の所属する学校・教室等における実践の課題等について協議する。
言語発達の遅れの基礎久保山茂樹
(企画部・主任研究員)
 言語障害教育の対象である言語の基礎的事項に遅れのある子どもは、ことばの教室に占める割合が多く、状態像も様々である。この講義では、乳幼児期からの言語・コミュニケーションの発達について、子どもの発達の全体像と関連させながら解説するとともに、言語に遅れや偏りがある子どもの見方、捉え方と、指導・支援を考えるうえでの基礎事項にふれる。
言語発達の遅れの指導
-言語・コミュニケーションの指導を中心に-
久保山茂樹
(企画部・主任研究員)
 言語の基礎的事項の発達に遅れや偏りが見られる子ども、とりわけ音声言語、コミュニケーションに課題を抱える子どもに視点を当て、指導・支援の在り方を考える。ことばに遅れのある乳幼児との「早期出会いの場」である乳幼児検診、「早期からのかかわり」の場である療育について、その内容を保護者の思いも含めて解説するとともに、ことばの教室での支援について考える。また、音声言語の育ちを支える様々な視点にもふれる。
言語機能とコミュニケーション牧野泰美
(教育支援部・主任研究員)
 言語指導に携わるうえで言語機能、言語機能の獲得と障害、コミュニケーションの成立や深まり等に関する知見を知っておくことは重要である。ここでは、人にとってのことば、ことばのもつ様々な側面・機能とその獲得、コミュニケーションの成立及び障害の本質・構造、等に関する知見を解説し、それらを踏まえて、コミュニケーションを深め拡げるという観点から子どものことばを支える関わりについて考える。
言語障害教育における個別の指導計画と子どもや保護者のニーズへの対応小林倫代
(教育相談部・総括研究員)
 言語障害教育の主たる場であることばの教室においては、個々の子どもへの個別の指導、対応が中心となる。ここでは、子どもと出会ってから指導計画を作成するまでにどのような視点で子どもをみて、どのようなことを考えて目標や課題を立てていくのか、また、設定された目標や課題はどのように評価されるのか等について全国調査の結果も紹介しながら考える。
言語心理学林部英雄
(横浜国立大学・教授)
 人はいかに言語を獲得し、人はいかに言語を利用するのか。人と言語に関するこのような事項についての知見は、言語指導を考えるうえでの基礎理論として重要である。ここでは、臨界期等の概念も含め、どのような時期にどのような事柄を習得するのかといった言語の生物学的基礎について論じる。さらに、機能主義的な観点から、言語指導に資する知見にもふれる。
構音障害の評価と指導中村勝則
(西東京市立保谷小学校・主任教諭)
 構音を主訴とする子どもに対する指導・支援を行うにあたっての必要事項を取り上げる。ここでは、「構音障害の基礎」を踏まえながら、子どもの構音の問題をどのように捉えるか、構音発達の条件、構音の評価と子どもの評価、構音の検査、構音指導の原則及び指導法について解説するとともに、様々な子どもの状態・状況に応じてどのように考え実践したらよいかについても言及する。
口蓋裂の医療大久保文雄
(昭和大学・准教授)
 口蓋裂の指導には医療との連携が不可欠である。この講義では口蓋裂の医療を概説する。口蓋裂は先天性の比較的頻度の多い疾患であり、その治療には多数の構成メンバーによるチーム医療が必要とされている。その理解のために、ここでは口蓋の解剖、生理、発生、口蓋裂の病理、外科的治療について解説する。
ことばの教室と福祉機関の連携清水英子
(横浜市南部地域療育センター・ソーシャルワーカー)
 ことばの教室で言語に障害のある子どもの指導・支援を行っていくうえでは、福祉等の関係機関との連携は重要なことである。ここでは、療育の場における支援について、制度、子どもや保護者への対応と関わりの実際等について概説するとともに、教育の場に求められる事項、どのような連携が望まれるのか、連携を図っていくうえでの課題等について考える。

(講義・演習)
言語障害と聴覚機能
横尾俊
(教育相談部・主任研究員)
 言語は聴覚機能と密接な関係がある。ことばの遅れを主訴とする相談等では、聴覚障害が疑われる場合も少なくない。したがって、言語障害教育に携わる場合に、聴覚機能とその障害に関する知見は不可欠である。ここでは、聴覚機能について生理学的、心理学的に解説するとともに実践事例にもふれる。さらに、聴力検査について解説し、演習を行う。

(講義・演習)
構音障害の指導の実践
西田立郎
(上尾市立西小学校・教諭)
 構音障害のある子どもへの指導・支援に関して主にことばの教室での実践を取り上げ、報告、解説、演習するとともに協議する。特に構音指導の基本事項である音作り、歪み音
(側音化構音、口蓋化構音)の指導について詳細にふれるとともに、実際の構音指導をいくつかの事例を通して述べる。また、様々な構音指導の教材も紹介し演習する。
吃音への指導・支援小林宏明
(金沢大学・准教授)
 現時点において吃音の原因は解明されておらず、したがって吃音に関して原因論に基づいた指導法、治療法は確立されていない。しかし、吃音に関する生理学的、心理学的、社会学的研究は日々進歩しており、指導・支援方法の研究も進んでいる。ここでは最新の吃音に関する知見を踏まえながら、吃音臨床における問題は何か、どのような指導・支援が可能なのか、吃音症状の捉え方も含めて論じる。
言語発達の遅れの指導
-読み・書きの指導を中心に-
大城政之
(発達障害教育情報センター・主任研究員)
 近年、ことばの教室での指導・支援が増加傾向にある、言語の基礎的事項の発達に遅れや偏りが見られる子ども、とりわけ、読み・書きが困難な子どもに視点を当て指導・支援の在り方を考える。ここでは、読み・書きに困難を抱える子どもの見方や理解、アセスメントの視点、方法、そして指導・支援の考え方やその実際について解説する。
吃音問題への支援と対応伊藤伸二
(日本吃音臨床研究会・会長)
 吃音の問題は症状のみではない。吃音に起因して生じる様々な困難さを視野に入れ、また、生涯にわたり吃音症状が消失しない可能性も念頭において指導・支援を考える必要がある。では、症状の軽減・消失にとらわれない支援とはどのようなものなのか、子どもが自らの吃音と上手く向き合い、つきあっていくことを支えるために教育の場で何ができるのか、様々な実践、試みを通して提示する。
器質的構音障害
(口蓋裂等)の指導
今富摂子
(目白大学・准教授)
 構音障害の子どもへの指導・支援においては、口蓋裂等の器質的構音障害に関する専門性も不可欠である。ここでは、口蓋裂及びその類似領域を取り上げ、構音の特徴、鼻咽腔閉鎖機能、構音の評価について解説する。さらに、指導法についても具体的に説明するとともに、口蓋裂の子どもの学齢期における留意点、医療との連携等についても言及する。
言語障害教育の現状と課題宍戸和成
(文部科学省初等中等教育局・視学官)
 言語障害教育の現状や抱える課題を概観することは、児童生徒の指導・支援、教室経営に携わるにあたり不可欠なことである。ここでは、言語障害教育の始まり、特殊学級における指導から通級指導教室での指導への移行等の歴史的推移を踏まえ、「通級による指導」の意義と今日的な課題、特別支援教育における言語障害教育の在り方等を展望する。
言語障害教育の教育課程宍戸和成
(文部科学省初等中等教育局・視学官)
 言語障害特別支援学級や通級指導教室において、児童生徒の指導に携わり学級・教室経営を行っていくうえでは、言語障害教育の教育課程編成の基本的な考え方を踏まえることが重要である。この講義では、教育課程の基準である学習指導要領に基づいた言語障害特別支援学級や通級による指導の教育課程編成について解説する。

(講義・演習)
吃音の指導の実践
杉原晃
(大阪市立上福島小学校・教諭)
 吃音のある子どもへの指導・支援について、主にことばの教室における実際的な取り組みを報告するとともに、それをもとに協議する。吃音について知る、個々の吃音の特徴を知る、子ども、保護者、担当教師自身の吃音についての感じ方を捉える、話し方を変化させる等の実践を提示し、実際の指導について考え合うとともに演習も行う。
言語発達の理論浜田寿美男
(奈良女子大学・教授)
 子どもの言語を支えるうえで、言語発達に関する理論を踏まえて実践を行うことは重要である。ことばは人と人をつなぐが、ことばによって初めて人と人がつながるのではない。むしろ、人と人がつながるところにことばは生まれると考えられる。ここでは、ことばの発生の問題を考えるとともに、言語発達と自我形成の絡みについて論じる。
学校・地域におけることばの教室の役割金曽奈穂美
(北海道中川郡幕別町立札内南小学校・教諭)
 特別支援教育体制においてことばの教室はその機能・役割が注目されているところであり、地域の状況に応じた柔軟な運営が求められている。ここでは、ことばの教室担当者の実践から、校内や地域においてことばの教室
(ことばの教室担当者)がどのような役割を果たせるのか、どのような教室経営が考えられるのか、力量を高めるために地域でどのように研修を積んでいくのか等について考える。

(講義・演習)
言語発達の遅れの指導の実践
阿部厚仁
(世田谷区立駒沢小学校・教諭)
 言語の基礎的事項に発達の遅れや偏りが見られる子どもの指導・支援について、主にことばの教室における実際的な取り組みを報告するとともに、それをもとに協議する。特に子どもをいかに理解するか、教材・教具の工夫と活用、ことば・コミュニケーションの基礎を育て拡げる指導実践等について提示し、共に考える。また、ことばの育ちを支えるうえでのことばの教室の経営、教室担当者の役割等についても考える。

○実地研修

題 目 等 研 修 先 研修内容
言語障害児の指導の実際葉山町立葉山小学校
 言語障害通級指導教室
 実地研修は、充実した取り組みを行っている関連機関を訪問・視察することを通して、環境整備の工夫や授業及び指導・支援の在り方等に関する知見を得ることを目的とする。
 今回、言語障害通級指導教室において行われている教育実践と施設の見学を行う。

葉山町立葉山小学校
〒240-0112  神奈川県三浦郡葉山町堀内2050

○課題研究

講義題目等 内容等
課題研究  本研修では、個々の研修員が各自の問題意識に基づき、問題の解決や課題の実現に向けて計画を立て主体的に取り組む「課題研究」の時間を10コマ設定しています。
 この時間は、現在、現場の課題となっている事柄について文献を調べたり、関連する講義の整理やまとめ等に充てる時間です。個人の関心事項や課題について学びを深めることのできる時間ですので、有意義なものにするためにあらかじめ研究課題を検討しておいてください。
 また、「課題研究」の遂行上、特に所外の関係機関での情報収集が必要な方は、事前にその目的や訪問先等について十分に検討しておいてください。
(所外での研修を行う場合は、所定の手続きによる。)
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