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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第144号

メールマガジン

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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第144号(平成31年3月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・世界自閉症啓発デー2019イベントについて
・第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催(終了報告)
・発達障害地域理解啓発事業(姫路市)について(終了報告)
・平成30年度国立特別支援教育総合研究所セミナーの開催(終了報告)
・平成30年度「第32回辻村賞」授賞式の開催(終了報告)
・「インターネットによる講義配信」に関するアンケートの実施について
【NISEトピックス】
・平成30年度地域実践研究フォーラムについて
【連載コーナー】
・共同研究「インクルーシブ教育場面における知的障害児の指導内容・方法
の国際比較~フィンランド、スウェーデンと日本の比較から~(平成28-29
年度)」の研究成果報告書から [第8回(最終回)]
【NISEダイアリー】
【特別支援教育関連情報】
・2019年度特別支援教育関連予算案について
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】
 
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【1】お知らせ
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●世界自閉症啓発デー2019イベントについて
 毎年4月2日は、国連総会で定められた世界自閉症啓発デー(World
Autism Awareness Day)です。本研究所を含む関係団体で組織された世
界自閉症啓発デー・日本実行委員会では、毎年、自閉症についての理解を広
めることを目的にシンポジウムを開催しています。
 今年のテーマは、『輝く人・照らす人』です。(1)「地域を照らす人」、
(2)「TVの中で輝く人・照らす人」、(3)「暮らしの中で輝く人・照
らす人」の3つのシンポジウムでは、自閉症のある人々の充実した生活を支
えるための地域やマスコミ、NPOの取組をご紹介します。
 
日時:平成31年4月6日(土)10:00~16:30
会場:全社協・灘尾ホール(新霞が関ビル内:東京都千代田区霞が関) 
 
 また、4月2日(火)には、東京タワーの屋外特設ステージで啓発イベン
トも予定されています。本シンポジウムの詳細や参加申込方法については、
世界自閉症啓発デー・日本実行委員会のWebサイトをご覧ください。
 
○世界自閉症啓発デー・日本実行委員会のWebサイトはこちら→
 http://www.worldautismawarenessday.jp
 
●第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催(終了報告)
 本研究所では2月2日(土)、東京都千代田区の一橋講堂にて「第4回
NISE特別支援教育国際シンポジウム」を開催しました。当日は、全国から
150名の方にご参加いただきました。
 本年度は、「障害のある子どもと障害のない子どもの交流をめざして
-日韓の取組から今後のインクルーシブ教育システム推進を展望する-」と
いうテーマで開催しました。本研究所における国際事業と諸外国におけるイ
ンクルーシブ教育システムに関する動向、韓国における特殊教育制度につい
て本研究所から報告を行いました。その後、韓国における統合教育の政策動
向について、韓国国立特殊教育院教育研究士オヨンソク氏から、韓国におけ
る障害のある子どもと障害のない子どもの交流に関する事例を、韓国大田市
立ソナン初等学校教員チェジョンヒ氏から、日本におけるインクルーシブな
学校づくりに向けた取組~障害理解授業・交流及び共同学習の実践から~を、
相模原市立青少年相談センター指導主事岡野陽一氏から、それぞれ話題提供
をしていただきました。ディスカッションでは、筑波大学人間系教授鄭仁豪
氏に指定討論者として加わっていただき、韓国の統合教育と特殊教育の違い、
交流活動における手ごたえを感じるポイントなどについて理解を深めました。
 参加者からは、「他国を知ることで何が必要なのかを考える(意識する)
ことができた」、「生徒一人一人の個性を認め、人として見る重要さを学べ
た」、「日本でも活用できるような実践が多く紹介されていたので参考にし
たい」等、多くの感想が寄せられました。皆様からいただいた貴重なご意見
等は次年度からの企画に生かしていきたいと思います。
 
●発達障害地域理解啓発事業(姫路市)について(終了報告)
 発達障害地域理解啓発事業は教育委員会等と本研究所が協働して行うもの
で、公募により年3か所程度で実施しています。今年度最後の本事業は、姫
路市教育委員会主催のイベント「姫路きょういくメッセ」の一環として2月
2日(土)に実施されました。常設展示(姫路市学校園教育実践紹介や自作
教材教具展、教育委員会取組紹介など)に並行してワークショップコーナー
(心理的疑似体験、ミニ研修講義、教材教具等展示、研究紹介)が設置され、
午後には、講演会「学校教育における合理的配慮の基本的な考え方について」
(講師:文部科学省特別支援教育調査官田中裕一氏)が行われました。一般・
教育関係者・児童生徒・保護者等、約260名もの参加があり、「発達障害につ
いて、疑似体験をしたり支援のヒントを得たりでき、大変勉強になった」な
どの声が聞かれました。
 
●平成30年度国立特別支援教育総合研究所セミナーの開催(終了報告)

本研究所では、研究活動等の成果普及や教育関係者・関係機関との情報共有
を図るために、研究所セミナーを毎年度開催しています。今年度のテーマは
「インクルーシブ教育システムの推進~多様な学びの場における研究所のコ
ンテンツ活用~」とし、平成31年2月15日(金)、16日(土)の2日間、国立オ
リンピック記念青少年総合センターを会場として実施しました。
 初日は、行政説明の後、研修や専門的な指導、教育現場での実践等、様々
な場面でご活用いただける研究所の各部・センター(研究企画部、研修事業
部、情報・支援部、発達障害教育推進センター、インクルーシブ教育システ
ム推進センター )が有する各種コンテンツを紹介いたしました。そして、
2日目午前は、基幹研究の2年間の研究成果として「視覚障害を伴う重複障
害の児童生徒等の指導について」、「精神疾患及び心身症のある児童生徒へ
の教育的支援・配慮に関する研究-「心の病気」のある子供への支援
(Co-MaMe)の提案-」、科研費による研究成果として「通常の学級における
多層指導モデルMIM-読みのつまずきの早期把握・早期支援-」、これまで
の研究成果を地域実践研究の中で活用した例として「校内における交流及び
共同学習の充実~多層的な支援システムを手がかりに~」を紹介しました。
2日目の午後には、障害種別研究班によるポスターセッション、
インクルDBやICT機器の展示を実施し、その後、発達障害に関するシンポジ
ウム「通級による指導に期待されること~高等学校における在り方を考える~」
を行いました。
 最終的に、624名の参加があり、充実したセミナーとなりました。ご参加
いただいた皆さま、ありがとうございました。残念ながらご参加いただけな
かった方は、下記のWebサイトに当日の資料を掲載しておりますので、ご覧
ください。
 なお、次年度も多くの皆様にご参加いただけるセミナーとなるように企
画・運営を行いますので、メルマガ、ホームページ等でご確認ください。

○平成30年度国立特別支援教育総合研究所セミナーのWebサイトはこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/special_seminar/h30

 

●平成30年度「第32回辻村賞」授賞式の開催(終了報告)
 本研究所では、2月15日(金)に平成30年度「第32回辻村賞」授賞式を国
立オリンピック記念青少年総合センターにて開催しました。
 「辻村賞」は、本研究所の初代所長であり、我が国の特別支援教育の第一
人者として、その振興・発展のために尽力された故辻村泰男先生のご遺徳を
永く記念するため、特別支援教育の領域において、特に顕著な功績のあった
個人あるいは団体や、特に優秀な研究を行った個人あるいは団体に対し、授
与しています。
 第32回辻村賞は、坂田紀行氏(全国病弱虚弱教育学校PTA連合会事務局専
従)が受賞者に決定し、授賞式では賞状の授与のほか、坂田紀行氏による記
念講演が行われ、会場からは盛大な拍手が送られました。
 坂田紀行氏は、養護学校や中学校での教員を経て、平成8年から約11年に
わたり養護学校の校長として勤務され、全国特別支援学校病弱虚弱教育校長
会第18代会長、退職後は全国病弱虚弱教育学校PTA連合会事務局長も歴任さ
れました。加えて、特に病弱教育の情報機器活用についての研究を長年続け
てこられ、今日の病弱教育におけるICT活用の礎を築かれる等、我が国の特
別支援教育の推進・発展に貢献した功績が高く評価されました。
 

●「インターネットによる講義配信」に関するアンケートの実施について
 本研究所では、障害のある児童生徒等の教育に携わる教職員の資質向上を
図る主体的な取組を支援するため、インターネットによる講義配信を行って
います。特別支援教育研修講座の基礎編・専門編として、現在、120近くの
コンテンツを配信しています。幅広くご活用いただくために、団体登録から
個人登録方式に変更してから3年が経過し、3,800人以上の方にご登録いた
だいています。
 そこで、本コンテンツをどのように活用いただいているのか等、ニーズや
実態を把握するために、登録者を対象としたアンケートを実施します。
(回答期間:平成31年3月1日(金)~3月22日(金))
 登録されていない読者におかれましても、これを機会にご登録の上、自
己研鑽や研修会等にて本コンテンツのご利用を検討していただければ幸い
です。 

○「インターネットによる講義配信」に関するアンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=14853&lang=ja

○「インターネットによる講義配信」の内容や登録などについてはこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/online

 

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【2】NISEトピックス
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●平成30年度地域実践研究フォーラムについて

     インクルーシブ教育システム推進センター地域実践研究事業担当

 

 平成28年度よりインクルーシブ教育システムの推進に向けて、地域や学校
が抱える課題に本研究所と教育委員会が協働して取り組む「地域実践研究事
業」を実施しています。地域実践研究に関するテーマから各教育委員会が地
域の実情・課題に応じたテーマを選択し、テーマごとに本研究所の研究員、
教育委員会から派遣された地域実践研究員による研究グループを組織して、
研究を推進しています。
 平成28・29年度に終了したテーマは、以下の4テーマで、平成28年度は4
県、平成29年度は13県市にご参画いただき、それぞれの地域において、研究
成果の報告を行い、成果の普及・発信に努めました。
・地域におけるインクルーシブ教育システム構築に関する研究
・インクルーシブ教育システム構築に向けた研修に関する研究
・交流及び共同学習の推進に関する研究
・教材教具の活用と評価に関する研究
 平成30年度においては、以下のテーマに、13県市が14の課題をもって参画
いただきました。( )内の県市は、参画自治体です。
・教育相談・就学先決定に関する研究(長野県)
・インクルーシブ教育システムの理解啓発に関する研究
(青森県、埼玉県、静岡県、釜石市、宮城県、鹿沼市、兵庫県、島根県)
・多様な教育的ニーズに対応できる学校づくりに関する研究
(静岡県、横須賀市、奈良県)
・学校における合理的配慮及び基礎的環境整備に関する研究
(和歌山県、富士見市)
 これらの研究成果については、地域実践研究事業に参画している各地域に
おいて、地域実践研究フォーラムを開催し、速やかに発信するとともに、活
用を図っていただいています。現在までに以下の地域で開催しました。
・釜石市 1月11日(金) 釜石市民ホールTETTO
・青森県 1月24日(木) 県総合学校教育センター
・静岡県 2月 4日(月) 藤枝市生涯学習センター
・埼玉県 2月 6日(水) 上尾市文化センター
・長野県 2月 7日(金) 県総合教育センター
・静岡県 2月21日(木) 静岡県男女共同参画センター
 各県市のフォーラムにおいて、地域における取組と課題等について教育委
員会からの説明、地域実践研究員からの地域実践研究の取組と成果について
の報告及び本研究所研究員からの研究や事業の報告等を行いました。当日は、
特別支援学校、幼稚園、認定こども園、保育所、小学校、中学校、高等学校
の教員、県教育委員会及び市町村教育委員会の職員、保護者などおよそ60名
から300名の参加があり、活発な質疑応答が行われました。地域実践研究フ
ォーラム終了後の参加者アンケートからは、本研究所及び地域実践研究事業
に対する期待や要望が多く寄せられました。
 地域実践研究フォーラムの開催に当たりまして、各県市教育委員会をはじ
め多くの方にご尽力いただきましたことに感謝いたします。

 

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【3】連載コーナー
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●共同研究「インクルーシブ教育場面における知的障害児の指導内容・方法
の国際比較~フィンランド、スウェーデンと日本の比較から~(平成28-29
年度)」の研究成果報告書から

第8回(最終回) 「連載のまとめ」

                    知的障害教育研究班 横尾 俊

      (インクルーシブ教育システム推進センター 主任研究員)

 
 このメルマガの連載では、平成28-29年度に実施した共同研究「インクル
ーシブ教育場面における知的障害児の指導内容・方法の国際比較~フィンラ
ンド、スウェーデンと日本の比較から~研究成果報告書(平成30年3月)」
より、知的障害特別支援学級に在籍する児童生徒の交流及び共同学習の実践
事例6例について紹介してきました。
 交流及び共同学習はインクルーシブ教育システムが目指す共生社会の形成
にとって重要な取組です。平成24年の中央教育審議会初等中等教育分科会
「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支
援教育の推進(報告)」では、交流及び共同学習が「障害のある児童生徒等
にとっても、障害のない児童生徒等にとっても、共生社会の形成に向けて、
経験を広め、社会性を養い、豊かな人間性を育てる上で、大きな意義を有す
るとともに、多様性を尊重する心を育むことができる」と述べられています。
 しかしながら、知的障害のある子どもが、通常の学級で行われている学年
相当の教科内容をそのまま学習することには困難が伴います。そのために、
交流及び共同学習で経験を広め、社会性を養い、豊かな人間性を育てるため
の教育活動のためには、場を共有するだけではなく、子どもの実態に応じた
支援や教材の工夫、学習目標の変更や学習内容の変更・調整が必要になりま
す。
 この連載で紹介した実践事例では、充実した学びを得るために、子どもの
実態に応じた学習目標の設定と、事前学習や内容の掲示の工夫等によって、
担当した教師は子どもに学習活動の見通しをもたせたり、個別的配慮または
合理的配慮として行われる学習内容の変更・調整を行ったりしています。各
事例からはこのような取組を行うことで、子どもが心理的に安定し、自身が
もっている力を発揮し、確かな学びにつながったということが分かります。
 知的障害のある児童生徒にとって、こうした交流及び共同学習の場は、特
別支援学級だけでは経験することが難しい大人数で行うダイナミックな学習
活動だったり、大きな成果を共同で作り上げる経験ができる場であったりす
るとも言えます。こうした経験ができるようにするためにも、学習の場を共
有するだけではなく、児童生徒の実態に応じた学習目標や支援計画を立てる
のと同時に、交流及び共同学習のための校内体制の整備が重要になります。
 
 この研究に関する成果報告書は以下のURLからダウンロードすることが
できます。
 
○本共同研究の研究成果報告書はこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/study/intro_res/joint
 
 また、関連する書籍がジアース教育新社から出版されました。
 
○関連書籍の情報はこちら→
 https://www.kyoikushinsha.co.jp/book/0489/index.html
 
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【4】NISEダイアリー
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           「研究所セミナーが終わる」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)
 
 先月の15日と16日、国立オリンピック記念青少年総合センター(オリセン)
で、今年度の研究所セミナーが行われた。テーマは、「インクルーシブ教育
システムの推進」で、副題として「多様な学びの場における研究所のコンテ
ンツ活用」と掲げられている。
 今回は、研究所の各部・センターが有しているコンテンツの紹介や様々な
研究活動の成果を多くの人に知っていただくことを意図して開催した。また、
二日目の土曜日を活用して、関心の高い発達障害に関するシンポジウムも盛
り込んだ。さらに、全体を通じて、これも世の中の関心事であるペーパーレ
ス化を一層進める観点から、紙媒体での資料を極力少なくし、電子データを
CDに焼いて配付したり、研究所のホームページにセミナーの資料等を掲載
したりして、参加予定者には、それらを自分の都合に合わせて、各自活用し
てもらうようにした。 
 当日配付したセミナーの要項には、セッション毎に二次元バーコードが添
えられ、HPにアクセスしやすいように工夫した。参加者の反応はどうだろ
う。主催者の一人としては、そんな心配も抱いた。
 16日の研究成果報告では、大ホールの後部座席に設けられた関係者席で、
会場全体を眺めながら、雰囲気を味わうとともに、周囲の席の参加者の資料
活用の様子に目をやりつつ、あれこれ考えていた。
 テーマの影響もあるせいか、様々な校種の参加者が見受けられた。特別支
援学校の先生と思われる人、リクルートスーツの大学生、小学校の先生と思
しき人、保護者と思える人や以前校長先生だったかなと思われる方も。二日
目は土曜日のせいもあり、600人近くの参加者を得た。
 私の周りでは、自分で打ち出してきたのか、紙媒体で資料を眺めている方。
タブレットのパソコンにファイルをダウンロードし、それを見ながら耳を傾
けている方。ラップトップのパソコンで、配付資料に入っていたCDで資料
を映し出している人も。私も、早速、自分の携帯で研究所のHPからセミナ
ーの資料のファイルを見付け、それをダウンロードし、それを眺めながら、
話を聞いた。中には、途中から入場されたのか、要項の空欄に一生懸命メモ
している人も。それで、繰り返し、資料のありかをアナウンスするよう司会
者にお願いした。ペーパーレス化を進めるための今回の試み、参加者には、
どんなふうに受け止められたのだろう。
 それに合わせて、もう一つ考えていたことがある。
 研究所の様々なコンテンツや研究成果等を紹介するにしても、説明の仕方
が大切だと。今回は、テーマのせいか、特別支援学校の関係者に止まらず、
小・中学校や幼稚園、高校等の関係者も数多く参加されていた。そうすると、
説明自体も、日頃、特別支援教育に馴染みのない方にも興味をもっていただ
けるような説明の工夫が必要になる。特別支援教育関係者であれば分かる説
明から、経験が少ない方や初めて特別支援教育に触れる方にも分かってもら
えるような説明の仕方の工夫が求められる。これは、特別支援教育の専門性
を如何に砕いて易しくできるかが、問われているとも言えそうである。特別
支援教育に携わっている私たち一人一人の課題と考えたい。

 

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【5】特別支援教育関連情報
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●2019年度特別支援教育関連予算案について

 2019年度政府予算案の閣議決定に伴い、文部科学省において、本年1月、
予算案の発表資料が同省のWebサイトに掲載されました。詳しくは下記をご
覧ください。 

○文部科学省が公表した内容はこちら(特別支援教育関係は76ページよ
り)→
 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles
/afieldfile/2019/01/15/1412640_10_3.pdf

 
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【6】研修員だより
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 今号は、平成29年度第二期特別支援教育専門研修を修了された江口真治先
生からお寄せいただきました。
 

             「すべて感謝です」
                 江口 真治(佐世保市立相浦中学校)
 
 平成29年度の秋に特総研でお世話になりました。2か月間が毎日充実して
おり、今思えば一生分の贅沢をしたと言っても過言ではないと思っています。
 あらゆる角度からの特別支援教育に関する専門性に富んだ毎時間の講義、
特総研の素晴らしい先生方とのつながり、そして一緒に学び合い、時には酒
を酌み交わしながら語り合った全国の研修員の仲間、そのどれもがかけがえ
のない宝物となっています。
 その時のエピソードと言えば、数えきれないほどあります。いくつかをキ
ーワードで表すと、「居酒屋西2階(西棟ラウンジ)」「かぼすの生しぼり」
「百萬石」「NISEストラップ」「久里浜音楽隊」「焼きそばライス」「ゆう
じろう」などなど。このキーワードを見た同期の研修員の先生たちは懐かし
く、当時のことを鮮明に思い出されているはずです。
 また、「知っている人を、知っている」「接面」「死ぬこと以外は、かす
り傷」などの格言は、現在も私自身が実際の現場で、先生方や子どもたちと
接するときに大切にさせていただいているものでもあります。
 我々研修員の固いつながりは今でも続いており、29年度の専門研修員
(通称:F軍団)の同窓会が毎年開かれています。それも年に2回ずつ(夏と冬)!
 その度ごとに、仲間の地域での活躍を耳にしたり、各学校での悩みを共有
したりすることで、たくさんの元気をもらって地元に帰ることができていま
す。そして、同窓会の最後には、次回の開催地を決め、再会を約束してお開
きということにしています。
 また、先々月の話ですが、特総研の海津亜希子先生が長崎に来られ、MIM
についての講演をして下さいました。なんと、その講演会に、今までに特総
研の専門研修を受けられた長崎出身の先生方が来られていて、海津先生の講
演後に先生方が集まり、「チーム海津in長崎」が結成しましたことをご報告
させていただきます。
 最後に、今回の題名にさせていただいた「すべて感謝です」という言葉は、
29年度の専門研修期間中に、この研修がご縁で知り合うことができた、ある
偉大な元高校野球の監督だったお方から教えていただいた言葉です。今まさ
に、専門研修を通して、私と関わりをもって下さっている多くの方々とのご
縁、すべてに感謝をして、結びとさせていただきます。
 
○佐世保市立相浦中学校のWebサイトはこちら→
 http://www.city.sasebo.ed.jp/jh-ainoura/asp/default.asp
 
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【7】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力
のほどよろしくお願いいたします。
 
○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=39122&lang=ja
 
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【8】編集後記
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 「わたしは水仙 ここにいます」毎年1月から2月にかけて、野比海岸で
は水仙の花が一斉に咲きそろいます。冷たい風が吹きつける中、まっすぐに
伸びた茎の先に白い花をもたげて咲き並ぶその景観は、華やかというよりは
凛然とした印象さえ受けます。水仙はヒガンバナ科の多年草で、夏の間は葉
も枯れ落ち、球根だけになって土中に眠ります。そこに水仙の球根があるこ
とを知らない人が誤って掘り起こしたりすることがないように、地域の住民
の方が、球根があることを示す手作りの小さな看板を立てていらっしゃるの
ですが、その看板に書かれているのが冒頭の言葉です。「ここに水仙の球根
があります」と書いてあるよりも気を付けなければという気になります。
 今号にて終了報告しました研究所セミナーの発達障害に関するシンポジウ
ムでは、通級による指導に期待されることというテーマの下、4名のシンポ
ジストと指定討論者の方々から貴重なお話を伺うことができました。中でも、
ご自身にも発達障害がある綿貫愛子氏が発言された、「まずは自分の話に耳
を傾けて、特別支援教育の視点に偏ることなく一緒にニーズを探してほしい。」
「障害は私の一側面であり、すべてではない。」との言葉に、はっと胸を突
かれました。
 今後、インクルーシブ教育システムの構築が進んでいくと、学級の中にい
る多様なニーズのある子どもたちにますます目が向けられるようになると予
想されます。それは、障害のある子どもに限らず、貧困家庭に育つ子どもや
日本語の使用に困難さがある子どもたちも含めてのことです。この多様なニ
ーズに応えるためには、特別支援教育や生徒指導はもとより、教育や福祉と
いった枠組みを超えていかなければ対応していくことは難しいと考えます。
そして我々教育に携わる者には、子どものサインを見逃さず、子どもの声に
耳を傾け、子どもと一緒にニーズを探りながら、子どもと共に必要な指導や
支援を創造していくことがより一層求められるようになるでしょう。
 「わたしは ここにいます」見えない看板が片隅に小さく掲げられている、
編集を終えるに当たり、教室へと思いを馳せたところでした。
                  (第144号編集主幹 横山 貢一)
 
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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第144号(平成31年3月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
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