8.その他 |
1)視覚障害(点字)教育相談センター (Centro di consullenza tiflodidattica) |
現行のイタリアの公教育制度では、特殊教育諸学校は存在しないが、今回の現地調査において、障害児の教育を学校外から支援する機関の存在を知ることが出来た。
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写真4
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この視覚障害教育相談センターは準公的な機関で、実際にはレジーナ マルゲリータ イタリア盲人図書館(Biblioteca Italiana per Ciechi "Regina Margherita")によって運営されており、業務としては視覚障害児童・生徒への指導方法のアドバイスや教材・教具類の支援を行っていた。
1995/96年のデータによるとイタリアの各地方で視覚障害児者として認定されている児童生徒の人数は表5に示すとおりである(ロマニョーリ盲児施設提供の資料より)。
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表5.イタリア各州における視覚障害児者数
(1995/96ロマニョーリ盲児施設提供の資料より)
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地方 |
幼稚園 |
小学校 |
中学校 |
上級学校 |
合計 |
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Piemonte |
10 |
49 |
29 |
60 |
148 |
Valled' Aosta |
0 |
1 |
1 |
1 |
3 |
Lombardia |
26 |
113 |
106 |
70 |
315 |
Trentino Alto Adigel |
1 |
23 |
11 |
10 |
45 |
Veneto |
6 |
56 |
49 |
56 |
167 |
Friuli Ven. Giulia |
2 |
24 |
27 |
12 |
65 |
Liguria |
10 |
21 |
21 |
16 |
68 |
Emilia Romagna |
13 |
46 |
50 |
25 |
134 |
Toscana |
8 |
41 |
39 |
36 |
124 |
Umbria |
1 |
8 |
7 |
5 |
21 |
Marche |
15 |
21 |
13 |
21 |
70 |
Lazio |
29 |
88 |
58 |
63 |
238 |
Molise |
2 |
4 |
4 |
4 |
14 |
Abruzzo |
7 |
57 |
22 |
19 |
105 |
Campania |
36 |
135 |
87 |
36 |
294 |
Puglia |
25 |
77 |
72 |
40 |
214 |
Basilicata |
2 |
9 |
3 |
2 |
16 |
Calabria |
14 |
45 |
28 |
22 |
109 |
Sicilia |
24 |
128 |
97 |
44 |
293 |
Sard e gna |
12 |
22 |
23 |
21 |
78 |
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こうした分布に対して、視覚障害教育相談センターが、全国20州のうち、15州に設置されていて(一部は複数の県を管轄)、視覚障害児者や学校への支援活動を展開している。そのセンターは具体的には表6のとおりである。
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表6.視覚障害教育相談センター
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Agrgento (C/o Unione Italiana Ciechi) |
Assisi (C/o Istituto Serafico) |
Bolonga (C/o Istituto Cavazza) |
Cagliari (C/o Unione Italiana Ciechi) |
Caserta |
Catania |
Chieti |
Firenze |
Foggia (C/o Unione Italiana Ciechi) |
Genova |
Lecce |
Padova (C/o Istituto Configlachi) |
Reggio Calabria |
Roma (C/o Istituto Romagnori) |
Trieste (C/o Istituto Rittmeyer) |
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これら15の視覚障害教育相談センターのうち、今回の調査では、2ケ所の施設を訪問することができた。ローマのロマニヨーリ育児施設とボローニャのF.カヴァッツア盲人施設である。ロマニヨーリ盲児施設は、当初から訪問が予定されていたが、もう一つのF.カヴァッツア盲人施設については、ロマニヨーリ盲児施設見学の際にアドバイスされて急遽訪れることになったイタリア盲人協会(Unione Italiana Ciechi)にて紹介された施設である。以下に両施設および視覚障害教育相談センターの概要について報告する。
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2)ロマニョーリ盲児施設 (Istituto statale "Augusto Romagnoli") |
(1)施設の概要
本施設は、1920年代に盲老女性のための寄宿舎として作られた。創立者はアウグスト・ロマニョーリである。この施設の土地は、マルゲリータ女王の寄付によるものである。現在も盲女性のための老人ホームを運営している。
1960年代の法律によって、ロマニョーリ盲児施設が設立され、当時は、先生と生徒がこの施設にきて専門の教育を行っていたという説明を受けた。つまり、盲学校としての視覚に障害のある児童の教育機関としての機能を果たしていたものと思われる。70年代に統合教育が開始され、それに伴って、児童生徒数も減少し、現在は以下に記すような事業を行うようになっている。統合教育が行われるようになってから、施設の維持になみなみならぬ努力をしているという報告がスポルッテリ(Sportelli)副所長よりあった。
(2)現在の業務
a.視覚障害教育相談センター
3歳から19歳までの視覚障害児者を対象とし、地域の学校および家庭と連絡を取り合って、就学前指導・進路・歩行・医学的ケアを担っている。50のローマ地域を管轄しており、現在200ケースのケアにあたっている。150がローマを中心とした地域で、50は全国に及んでいるということであった。この事業を進める上での一番の課題は、該当する視覚障害児者を施設に導くことだという。本施設の知名度が低く、眼科医がここの存在を知らないことも多いということであった。
訪問時、9月から通常の小学校へ就学する児童が、その準備のために指導を受けていたが、直接の指導だけでなく、学校のスーパーバイズ、コンサルテーション視覚障害児者の在籍する通常の学級の教員や支援教師に対して、点字や歩行の指導法、教材の支援をおこなっている。
また、教材・教具のリソースセンターとしての役割もはたしており、点字作成や教材作成室があり、各種教材が準備されていた。
b.教員を対象とした研修事業
教員を対象とした視覚障害教育のメソッドに関する研修を実施している。これには短期コース(30時間)、長期コース(1年間)の2つのコースがある。スタッフは、心理職、医師、教師、点字作成専門職、教材作成専門職などから構成されている。
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