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情緒障害のある子どもへの配慮

災害時における障害のある子どもへの配慮

1 情緒障害のある子どもについて

 情緒障害とは、情緒の現れ方が偏っていたり、その現れ方が激しかったりする状態を、自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に支障となる状態をいいます。
 情緒が激しく現れることは、一般の子どもや大人にも起こることですが、多くは一過性であり、すぐに消滅するのでほとんど問題にされることはありません。しかし、それが何度も繰り返され、極端な現れ方をして、社会的な不適応状態をきたす場合があります。そのような状態にある子どもについては、特別な教育的対応が必要です。
 情緒障害のある子どもは、情緒的な問題により、集団活動や学習活動など学校での社会的な適応が困難な状態にある様々な行動上の問題を有する子どもです。その原因や特性、特別な教育的な配慮や指導の内容の違いから二つのタイプに分けられます。第1のタイプは、発達障害に包括される障害である自閉症及びそれに類するものにより、言語発達の遅れや対人関係の形成が困難であるため、社会的適応が困難な状態にある子ども、第2のタイプは、主として心理的な要因の関与が大きいとされている社会的適応が困難である様々な状態を総称するもので、選択性かん黙、心理的情緒的理由により登校出来ない状態(不登校)、及びその他の状態(多動、常同行動、チックなど)にある子どもです。

2 情緒障害のある子どもへの配慮

 ここでは、第2のタイプの選択性かん黙、心理的情緒的理由により登校出来ない状態(不登校)の子どもを中心に説明します。自閉症等については、別途、自閉症の項で説明します。
 選択性かん黙等の情緒障害のある子どもは、何らかの心理的な要因により、社会的適応が困難な状態にあります。

〔選択性かん黙〕

 選択性かん黙とは、一般に、発声器官等に器質的・機能的な障害はないのですが、心理的な要因により、特定の状況で音声や言葉を出さない状態を示します。したがって、言語を習得し、理解することには特別な障害はないことに留意する必要があります。原因は、一般に、集団に対する恐怖、人間関係のあつれきなどが指摘されています。話さないことだけに注目してしまうと、話をさせようという働きかけが多くなります。そうした働きかけが極度の緊張と萎縮を生じさせ、さらに話すことを難しくしてしまう可能性もあります。故意に話さないのではなく、話そうとしても話せないという視点に立ち、緊張や不安、恐怖心を少しでも軽減するように関わることが大切です。
 災害時においても、基本的には、避難指示や伝えられた災害の状況を理解できますが、子どもから話すことがなくても、その様子に注意深く目を向け、不安な気持ちを汲み取り、適切な行動ができたことを認め励ますなどの配慮が必要です。

〔不登校〕

 不登校の要因は様々ですが、情緒障害教育の対象としての不登校は、心理的、情緒的理由により、登校できず家に閉じこもっていたり、家を出ても登校できない状態です。本人は登校しなければならないことを意識しており、登校しようとするができないという社会的不適応になっている状態にあります。
 災害時に家庭にいる場合には、家庭での対応が基本になりますが、安否の確認を含め、家庭との連絡を取りながら、他の子どもと同様に指導・支援をすることが必要です。
 情緒障害のある子どもは、状態像は異なっていても、共通に何らかの心理的要因が大きく関与しています。子どもとの信頼関係をつくること、安心できる場所を確保したりや時間を提供したりすることがかかわりの基本になります。