障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第22号

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      国立特別支援教育総合研究所メールマガジン
        第22号(平成21年 1月号)2009.1.5
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【目次】
■新年のご挨拶
■お知らせ
■NISEトピックス
 トピックス
 研究紹介
■特別支援教育関連情報
■研修員だより
■特別寄稿
■編集後記
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■新年のご挨拶
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 皆様、新年明けましておめでとうございます。本メールマガジンいつもご
愛読いただき、誠にありがとうございます。
 特別支援教育の本格実施が2年目に入った昨年は、研究所の業務組織、研
究体制の大幅な見直を行いました。特に、業務組織では、発達障害に関する
教育情報をWebにより発信する発達障害教育情報センターを4月に設置しまし
た。8月27日のWebサイトの開設以来、多くの方にご利用いただいております。
また、研究所が行う調査のマネジメントや関係校長会との連携に関する担当
も新設し、これらの機能の強化を図りました。
 研究体制では、各障害種別等の研究計画の立案や研究の実施母体となる「
研究班」制を導入するとともに、中長期を展望した研究テーマから当面5カ
年程度を目途として取り組む喫緊の課題まで、今後取り組む研究課題を整理
した研究基本計画を8月に策定しました。
 本年も、これらの体制・計画をベースに、研究活動、研修事業などを通じ
て障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に一層貢
献したいと考えております。
 なお、平成19年 4月に創刊されましたこのメールマガジンも、毎号順調に
登録者数を増やし、現在では、PC、携帯を合わせて4,000人を超える方々
にご覧いただいております。今年も特別支援教育に関する最新の情報を提供
できるよう、更なる内容の充実を図っていきたいと考えておりますので、ご
意見、ご感想などをお聞かせいただければ幸いです。
 どうぞ、本年もよろしくお願い申し上げます。

           独立行政法人国立特別支援教育総合研究所理事長
                              小田 豊

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■お知らせ
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★NEWS★

●平成20年度 国立特別支援教育総合研究所セミナーII参加のご案内

 標記セミナーについて、下記のように実施いたします。多数のご参加をお
待ちしております。

▼平成20年度セミナーIIのテーマ ------------------------------------
発達障害のある子どもの支援を考える-これまでとこれから-
--------------------------------------------------------------------
■期日 平成21年 2月13日(金)
■会場 国立オリンピック記念青少年総合センター
■定員 700名
■主催 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
■内容 
 ◆シンポジウム
  関係機関の連携・情報の共有化による総合的な支援の確立を目指して
 ◆発達障害教育情報センターの取組の紹介
 ◆ポスター発表
 ◆分科会
  【第1分科会】 一貫した支援システム-後期中等教育に焦点を当てて-
  【第2分科会】 発達障害の脳機能に迫る-脳科学からの理解-

■申込期間 申込期間を延長しております。

 ○セミナーIIの詳細および参加申し込みはこちら→
  http://www.nise.go.jp/blog/2008/06/post_865.html

●「発達障害教育情報センター」Webサイトの最新情報!

 「トピックス」欄には、文部科学省の委嘱を受け全国LD親の会が中心とな
り研究、作成した教材・教具のデータベースの情報を掲載しました。実際に
使われている教材等の情報が掲載されていますので、ぜひご活用ください。
 また、配信講義では「乱暴な言葉や態度を示す子」を追加しました。周囲
のできごとに過敏に反応し、ついつい乱暴な言葉や態度を示してしまう子ど
もたちへの対応の仕方について、まとめました。ぜひご覧いただき、ご意見、
ご感想をお寄せください。

 ★1月Webサイト更新情報
 ・「教材・機器」コーナー(「手指の巧緻性を高める2」などの掲載)
 ・「研修講義」コーナー(「乱暴な言葉や態度を示す子」の配信講義)
 	
 Webサイトへの新規アクセス数が(2万2千件)を超え、海外からのアクセ
スも(41か国)からとなり、ホンジュラス、スリランカから新たなアクセ
スもありました。これからも、ますます皆様のお役に立てるようがんばって
まいります。
 今後も新しい情報を全国に向けて発信し、充実したWebサイトにしていき
たいと考えております。
 皆様のご意見、ご感想をお寄せください。

 ○本センターWebサイトはこちら→http://icedd.nise.go.jp

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■NISEトピックス
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★トピックス★ 
●NISE障害者週間関連行事報告

 先月号までご案内しました、以下の2つのNISE障害者週間2008の行事は、
おかげをもちまして 、無事すべて終了いたしました。
 学校関係者のみならず地域の方々など一般の方々にも多数ご来場頂きまし
た。お忙しい中、お越しいただきました皆様にはこの場をお借りしてお礼申
し上げます。

(1)第28回アジア・太平洋特別支援教育国際セミナー/パネル展
 
 12月 1日から12月 4日の4日間にわたりセミナーは行われ、2008年度開催
テーマに基き、参加11か国代表者により貴重な報告と活発な意見交換が行わ
れました。

 ○「国際セミナー」概要については、こちらをご参照ください。→
  http://www.nise.go.jp/blog/2008/11/post_891.html

(2)障害者週間「連続セミナー」発達障害児の支援にむけて

 渥美義賢発達障害教育情報センター長による講演、発達障害教育情報セン
ターホームぺージの概要説明、疑似体験会を行いました。

 ○「連続セミナー」概要については、こちらをご参照ください。→
  http://icedd.nise.go.jp/blog/activity/report/report081206.html

★研究紹介★
●専門研究C「地域の支援をすすめる教育相談の在り方に関する実際的研究
・そのII-関係機関と協働して行う総合的支援体制の構築-」(平成19~20
年度)

        研究代表者 後上 鐵夫(教育相談部・上席総括研究員)

【本研究の目的と経過】
 「地域の支援をすすめる教育相談の在り方に関する実際的研究・そのI」
では、教育相談における具体的なコンサルテーション事例から学ぶガイド
ブックとケースブックを作成しました。
 そして、本研究「そのII」では、「地域における教育相談機能の質的向上
を図る」という目的を達成するために、まず、教育相談担当者が身に付ける、
3つの「学ぶ」を提案しています。それが、(1)教育相談事例から学ぶ(教
育相談事例のデータベースの作成)、(2)研修会等で学ぶ(実践研究協議会
の開催)、(3)実態把握の仕方を学ぶ(総合的アセスメントの試作)です。
 次に、相談担当者が把握しておく、3つの「知る」を提案しています。そ
れが、(1)教育相談事例を知る(教育相談事例のデータベースの作成)、(2)
実態把握の方法を知る(総合的アセスメント試案の実施検討)、(3)地域の
特徴の違いによる支援体制の違いを知る(支援体制実態調査の実施)です。
 この相談担当者にあるべき2つの姿勢を支援していくために、1.地域の
特性を活かした関係諸領域と連携した相談支援体制(モデル案)の収集、
2.コンサルテーションにかかる教育環境全般を含めたアセスメント法の開
発、3.教育相談・コンサルテーション事例の収集、4.収集事例の整理と
内容面の検討を基にデータベースのコンテンツの試作をすること、の4点を
体系化することで、具体的な地域への支援の在り方を提示していくことが進
められています。
 こうした研究活動の結果は、「学ぶ」ことと「知る」ことという観点で整
理しながら年度末に報告書としてまとめる予定です。

●共同研究「病弱教育におけるICTを活用した教育情報アーカイブの在り方
に関する実証的研究」(平成19~20年度) 

        研究代表者 滝川 国芳(教育研修情報部・総括研究員)

【本研究の背景と目的】
 特別支援学校(病弱)は、分校や分教室があることが多く、病弱・身体虚
弱特別支援学級は、小・中学校内だけでなく小児科病棟等のある病院内にも
設置されています。そのため、少人数による学習の場が点在しており、教育
活動を進めていく上で、児童生徒の集団による授業、教員の移動などの面で
大きな制約を受けることになります。また、担当する教師は、病弱教育に関
する指導法等の情報も得にくい状況になります。
 そこで、本研究では、上記における病弱教育に関する情報について、ICT
(Information and Communications Technology)を用い、蓄積・活用する
ためのアーカイブの在り方について、実証的研究を行い、病弱教育を改善す
ることを目的としています。本研究は、株式会社ウェストフィールドとの共
同研究です。

【研究の概要】
 実証フィールドを、大阪市、横浜市、沖縄県、福島県としています。各フ
ィールドにおいては、教育情報を蓄積するためのSNS(Social Networking 
Service)を運用しています。ここでは、病院内教室と病室、病院内教室と
児童生徒の前籍校をインターネット等で結び、Web会議を行うための情報イ
ンフラの在り方を探っています。
 また、全国特別支援学校病弱教育校長会とともに作成している病弱教育支
援冊子の編集は、CMS(Content Management System)やWebコミュニケーシ
ョンシステムを活用して、時間と場所の制約を受けない遠隔会議によって行
っています。このようにICTを活用して、全国各地に散在している教育情報
を、教員の連携により集約、蓄積、発信する方法についても研究しています。

 ○研究の概要はこちら→
  http://www.nise.go.jp/blog/2008/05/ict_1.html

 ○支援冊子「病気の子どもの理解のために」はこちら→
http://www.nise.go.jp/portal/elearn/shiryou/byoujyaku/supportbooklet.html

◆ちょっと一息 季節のたより - お正月といえば -

 お正月に欠かせない食べ物といえば、お雑煮でしょう。よく言われること
ですが、お雑煮に入っているお餅の形や出汁の味付けは、地域によってだい
ぶ異なっているようです。私の故郷は関東地方にありますが、焼いた角餅、
鶏、醤油ベースのあっさりとしたお雑煮が定番になっていました。
  改めてインターネット上で調べてみますと、本当にたくさんのお雑煮があ
ることに驚かされます。例えば、岩手ではクルミだれの入った別椀にお餅を
つけるそうですし、福井では味噌仕立ての汁に丸餅と茎付きのカブを入れて、
「株が上がる」と縁起を担ぐそうです。京都は白味噌に丸餅、島根では岩海
苔を入れたりもするそうです。新潟ではサケとイクラが入っているとか...。
 普段、何気なく食べているものですが、その地域それぞれに風情が違って
いるのですね。メルマガ読者の皆様は、今年はどんなお雑煮を食べられたの
でしょうか?

                   (教育相談部 植木田 潤 記)

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■特別支援教育関連情報
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●平成21年度特別支援教育関係予算の概要
           (文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課)

 はじめに

 ご存知のとおり、教育基本法においては、障害のある子どもが十分な教育
を受けられるよう必要な支援を講ずることが規定され、また学校教育法にお
いて、特別支援学校のみならず、幼稚園、小学校、中学校、高等学校等にお
いても、在籍する障害のある子どもに対してしっかりと教育を行うことが求
められています。
 そのような動きの中、昨年7月に閣議決定された教育振興基本計画では、
障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援する
という視点に立ち,幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持
てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及
び必要な支援を行う特別支援教育を推進することと明記されています。
 今後、本計画等を踏まえ、関連施策の推進に取り組む必要があります。
   このように、特別支援教育を推進することが求められている中、今回は、
特別支援教育に関連する平成21年度政府予算(案)の主な内容について紹介
します。

<子ども一人一人のニーズに応じた特別支援教育の推進>
1 趣 旨

 幼稚園から高等学校までを通じて、発達障害を含む障害のある幼児児童生
徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、子
ども一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導及び必要な支援を行うため、
外部専門家の活用を含めた特別支援教育の体制整備を総合的に推進する。

2 内 容

【初等中等教育局特別支援教育課に計上】
 1.発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業
                     503,284千円(503,052千円)
  発達障害を含む全ての障害のある幼児児童生徒の支援のため、外部専門
 家による巡回指導、各種教員研修、学生支援員の活用などを実施すること
 により、特別支援教育を総合的に推進する。
      ○委嘱先:47都道府県

 2.発達障害等に対応した教材等の在り方に関する調査研究事業(新規)
                      39,075千円(新規)
  発達障害等のある児童生徒の教科学習等における困難を改善するため、
 一人一人の障害特性、発達段階、教科の特性などに応じた教材等の在り方、
 それらを活用した効果的な指導方法や教育的効果等について、実証的な調
 査研究を実施する。
      ○委託先:3団体

 3.発達障害早期総合支援モデル事業     64,420千円(122,964千円)
  発達障害のある幼児の早期発見・早期支援を強化するため、モデル地域
 において、関係機関が連携した支援体制の整備や保護者等への相談支援の
 在り方等について実践的な研究を実施する。
      ○委嘱先:10地域

 4.高等学校における発達障害支援モデル事業
                                         61,081千円(51,071千円)
  発達障害のある高校生の支援のため、国公私立の高等学校をモデル校と
 して指定し、当該高等学校に在籍する発達障害のある生徒に対して、専門
 家を活用したソーシャルスキルの指導や授業方法・教育課程上の工夫、就
 労支援等について実践的な研究を実施する。
     ○指定校数:20校

 5.特別支援学校等の指導充実事業       100,006千円(100,086千円)
  特別支援学校等の教育課程や職業教育の改善、PT(理学療法士)、OT(
 作業療法士)、ST(言語聴覚士)等の外部専門家を活用した指導方法等の
 改善及び自閉症の特性に応じた教育課程の在り方等について実践研究を実
 施する。
      ○委託先:40都道府県市

 6.発達障害を含む特別支援教育におけるNPO等活動体系化事業(新規)
                        28,662千円(新規)
  NPOを含む民間団体における教育支援活動について、支援団体間の連携
 及び支援活動の協同等のネットワークの構築及び、課題とされている分野
 への活動の促進等を図ることにより、団体間の連携、情報共有、支援活動
 の互助を推進するための体系化を推進する。
      ○委託先:3団体

 7.特別支援教育就学奨励費負担等     7,106,917千円(6,850,371千円)
  特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級等への就学の特殊事情をか
 んがみ、障害のある児童生徒等の保護者等の経済的負担を軽減するために
 必要な援助を行い、就学を奨励する。

 8.独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
   (運営費交付金、施設整備費補助金)
                    1,307,971千円(1,223,198千円)
  我が国唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして、国や地方公共
 団体等と連携・協力しつつ、国の政策的課題や教育現場の課題に柔軟かつ
 迅速に対応するために必要な運営に係る経費。

 9.その他(学習指導要領等の編集改訂等) 
                      62,973千円(75,419千円)

【初等中等教育局財務課に計上】
   特別支援教育の充実のための定数改善(小・中学校の通級指導の充実等)
                         (拡充)382人
   小・中学校の通級指導の充実及び特別支援学校のセンター的機能の充
  実等のための定数改善を行う。

【平成21年度地方財政措置予定】
  特別支援教育支援員(幼・小・中学校)        約387億円
      発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する学校生活上の介助や
  学習活動上の支援を行う「特別支援教育支援員」の配置に必要となる経
  費の地方財政措置について、これまで措置されてきた小・中学校に加え、
  新たに幼稚園についても拡充予定。
    
      ○幼 稚 園(新規)  21年度措置予定額        約27億円
     (支援員   3,800人相当 全公立幼稚園数の7割相当)
      ○小・中学校         21年度措置予定額        約360億円
          (支援員 30,000人相当 全公立小中学校数相当)


●特別支援学校学習指導要領等及び高等学校学習指導要領の改訂案の公表に
ついて
  (文部科学省初等中等教育局教育課程課・特別支援教育課・参事官付)

 文部科学省では、昨年1月17日の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、
中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」を受
け、高等学校学習指導要領並びに特別支援学校幼稚部教育要領、小学部・中
学部学習指導要領及び高等部学習指導要領(以下「特別支援学校学習指導要
領等」という。)の改訂案をとりまとめ、12月22日(月)に公表しました。

 改訂案の本文その他関係資料は、12月23日(火)に文部科学省の「新しい
学習指導要領」ホームページに掲載しましたので御覧ください。
  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

 本稿では、改訂案の主なポイント、実施のスケジュール(案)等について
お知らせいたします。

■特別支援学校学習指導要領等改訂案の主なポイント

1.今回の改訂の基本的考え方 
 今回の特別支援学校学習指導要領等改訂案の基本的な考え方は、以下の3
点です。
○幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の改善に準じた改善
○障害の重度・重複化、多様化に対応し、一人一人に応じた指導を一層充実
○自立と社会参加を推進するため、職業教育等を充実

2.教育内容等の主な改善事項 
○一人一人に応じた指導の充実
・一人一人の実態に応じた指導を充実するため、すべての幼児児童生徒に「
個別の指導計画」を作成することを義務付け
・学校、医療、福祉、労働等の関係機関が連携し、一人一人のニーズに応じ
た支援を行うため、すべての幼児児童生徒に「個別の教育支援計画」を作成
することを義務付け
○自立と社会参加に向けた職業教育の充実
・特別支援学校(知的障害)における職業教育を充実するため、高等部の専
門教科として「福祉」を新設
・地域や産業界と連携し、職業教育や進路指導の充実を図ることを規定
○「交流及び共同学習」の推進
・障害のある子どもと障害のない子どもとの「交流及び共同学習」を計画的、
組織的に行うことを規定
○障害の重度・重複化、多様化への対応
・障害の重度・重複化、発達障害を含む多様な障害に応じた指導を充実する
ため、「自立活動」の指導内容として、「他の人とのかかわりに関すること」
などを規定
・重複障害者の指導に当たっては、教師間の協力した指導や外部の専門家を
活用するなどして、学習効果を高めるようにすることを規定

■高等学校学習指導要領改訂案の主なポイント

1.今回の改訂の基本的考え方 
 今回の高等学校学習指導要領改訂案の基本的な考え方は、以下の3点であ
り、幼稚園、小・中学校学習指導要領等の改訂と同様です。
○教育基本法改正等で明確となった教育の理念を踏まえ「生きる力」を育成
○知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視
○道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな体を育成

2.卒業単位数等の教育課程の基本的な枠組み
・卒業までに修得させる単位数は、現行どおり74単位以上
・共通性と多様性のバランスを重視し、学習の基盤となる国語、数学、外国
語に共通必履修科目を設定するとともに、理科の科目履修の柔軟性を向上
・週当たりの授業時数(全日制)は標準である30単位時間を超えて授業を行
うことができることを明確化
・義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設けること
を促進

3.教育内容の主な改善事項 
○言語活動の充実
・国語をはじめ各教科等で批評、論述、討論などの学習を充実
○理数教育の充実
・遺伝など、近年の新しい科学的知見等を踏まえ内容を充実、統計に関する
内容を数学Ⅰに導入
・日常生活や社会との関連を重視した改善
・数学Ⅰに〔課題学習〕を導入したり、科目「理科課題研究」を新設したり
するなど、知識・技能を活用する学習や探究する学習を重視
○伝統や文化に関する教育の充実
・歴史教育(世界史における日本史の扱い、文化の学習を充実)、宗教に関
する学習を充実
・古典(国語)、武道(保健体育)、伝統音楽(芸術「音楽」)、美術文化
(芸術「美術」)、衣食住の歴史や文化(家庭)に関する学習を充実
○道徳教育の充実
・学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育について、その全体計画を作成
することを新たに規定
・現代社会や特別活動において人間としての在り方生き方に関する学習の充
実
○体験活動の充実
・ボランティア活動などの社会奉仕、就業体験を充実するとともに、職業教
育において、産業現場等における長期間の実習を取り入れることを明記
○外国語教育の充実
・指導する単語数を増加するとともに、授業を実際のコミュニケーションの
場とするという観点から、授業は英語で指導することを基本とするなどの改
善
○職業に関する教科・科目の改善
・職業人としての規範意識や倫理観、技術の進展や環境等への配慮、地域産
業を担う人材の育成等、各種産業で求められる知識・技術等を身に付けさ
せる観点から科目構成や内容を改善
※各教科等の改訂の要点については、ホームページから資料を御参照くださ
い。

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■実施のスケジュール(案)

1.特別支援学校

(1)幼稚部
 平成21年度から実施

(2)小学部・中学部
 小学校又は中学校に準ずる各教科等については、小学校又は中学校の実施
スケジュールに準じて実施することを予定しています(平成21年度から移行
措置、平成23年度から小学部実施、平成24年度から中学部実施)。ただし、
次の教科等については先行して実施する予定です。
・総則及び自立活動:平成21年度から実施
・特別支援学校(知的障害)の各教科:平成21年度から新学習指導要領によ
ることも可能

(3)高等部
 高等学校に準ずる各教科等については、高等学校の実施スケジュールに準
じて実施することを予定しています。ただし、次の教科等については先行し
て実施する予定です。
・総則、道徳、自立活動:平成22年度から実施
・専門教科(保健理療、理療、理学療法、印刷、理容・美容、クリーニング、
歯科技工):平成22年度から新学習指導要領によることも可能
・特別支援学校(知的障害)の各教科:平成22年度から新学習指導要領によ
ることも可能

2.高等学校

 平成25年度入学生から新学習指導要領を年次進行で実施することを予定し
ています。ただし、次の教科等については先行して実施したいと考えていま
す。

・総則、総合的な学習の時間及び特別活動:平成22年度から実施
・数学、理科及び専門教科(理数):平成24年度入学生から学年進行で実施
・専門教科(福祉):平成21年度から新学習指導要領によることも可能
・保健体育、芸術及び専門教科(体育、音楽、美術):平成22年度から新学
習指導要領によることも可能
 
 数学、理科を1年早く新学習指導要領によることとしたのは、平成21年度
に中学校に入学した生徒が、中学3年間で新学習指導要領の内容を前倒しし
て学習してきていることに配慮したものです。


■今後のスケジュール(予定)

 文部科学省では、改訂案及び実施のスケジュール(案)について本年1月
21日まで意見公募手続(パブリックコメント)を実施しています。
 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public

 今後、いただいた御意見を踏まえ、2月~3月を目途に官報告示を行う予
定です。

 改訂案等について、広く皆様からの御意見をお待ちしております。

●「季刊 特別支援教育31号」(12月下旬発刊)

 特別支援教育に関する最新情報や実践事例等をわかりやすくお届けします!
<主な内容>
《特集》
 ○ 教員の資質向上 -免許の更新制度との関連-
《子どもをささえるネットワーク》
 ○ 誰もが地域で主人公に
《特総研だより》
 ○ 発達障害教育情報センターの開設について
               その他役立つ情報が満載! 絶賛発売中!

 ○お問い合わせ(株式会社 東洋館出版社)はこちら→
  http://www.toyokan.co.jp/zassi1/tokushi.htm

●平成20年度辻村賞について(財団法人障害児教育財団)

 当財団では、我が国の特別支援教育の第一人者として、その振興発展のた
めに尽力された故辻村泰男先生のご遺徳を永く記念するため、特別支援教育
の領域において特に顕著な功績のあった方や特に優秀な研究を行った方に対
して、「辻村賞」を授与しております。
 第22回(平成20年度)の辻村賞は、健康科学大学教授の香川邦生様が受賞
され、平成20年12月18日に、当財団の鈴木勲理事長から、賞状と記念品が授
与されました。

●平成20年度自閉症教育実践研究協議会 参加申込1/23まで!
 「自閉症児のための教育課程の研究開発Ⅱ
 -社会参加と自立を促す幼稚部、小学部一貫した教育課程の編成-」

                 (筑波大学附属久里浜特別支援学校)

 本校は、文部科学省から研究開発学校の指定を受け、我が国唯一の自閉症
の学校で、毎年その最新の研究成果発表を行っています。今回は第20号(11
月号)でご案内した自閉症教育実践研究協議会の分科会詳細情報をお知らせ
します。

 ■日時 平成21年 2月 6日(金)9:20 ~ 16:30
 ■会場 国立オリンピック記念青少年総合センター

◆詳細情報 
【第1分科会】
 生活に広がる「個別の課題学習」の取組
 -指導内容整理表及び各種シートを活用した授業の取組と生活への広がり-
                      (幼稚部・小学部低学年)

             指導・助言者 筑波大学准教授 川間 健之介

 本研究グループは、「個別の課題学習の指導内容整理表」を使った幼稚部、
小学部の系統的な指導について検証し、作成した指導内容整理表と各種シー
トの有効な活用方法を探りました。
 ここでは、これらの実践を報告するとともに、本学川間准教授の指導・
助言を交えながら、皆さんと学校における「個別の課題学習」を生活に広
げるための実践の在り方について意見交換を行います。    

【第2分科会】
 家庭に広がる「生活関連活動(幼)」「社会生活の指導(小)」の取組
 -家庭支援を視野に入れた授業実践を通して-(幼稚部・小学部低学年)

             指導・助言者 筑波大学准教授 野呂 文行

 本研究グループでは、家庭支援を視野に入れた、幼稚部「生活関連活動」、
小学部低学年「社会生活の指導」の指導実践を行い、(1)家庭での生活課題
の確認と指導内容への反映、(2)学校で培った力を家庭に広げる授業改善、
(3)保護者支援や「家庭への訪問指導」の活用の在り方、の3点から検証し
ました。
 ここでは、これらの実践を報告するとともに、本学野呂准教授の指導・
助言を交えながら、皆さんと家庭支援を視野に入れた授業の在り方につい
て意見交換を行います。
 
【第3分科会】
 家庭や地域に広げる「余暇活動の指導」の取組
 ―指導内容の整理と授業改善、家庭との連携を通して-(小学部高学年)

               指導・助言者 香川大学教授 武藏 博文

 本研究グループでは、新領域「自律生活」の中心的な指導の形態の一つで
ある「余暇活動の指導」の授業と、その指導の成果を家庭や地域の中で生か
すためのシステムについて検証しました。
 本分科会では、これまでの実践を、(1)余暇活動の指導内容の整理、(2)「
余暇活動の指導」の授業作り、(3)家庭との連携の在り方、の3点から報告
するとともに、香川大学武藏教授の指導・助言をいただきながら、皆さんと
児童や家庭・地域の実態やニーズを踏まえた「余暇活動の指導」の在り方に
ついて意見交換を行います。

◇このほか会場では、自閉症の特性に応じた自作教材の展示や各研究グルー
プ、寄宿舎、養護教諭・看護師、栄養教諭のポスター発表など、多彩なプロ
グラムをご用意しております。
 
◆参加者申し込み受付中!
 参加者には、資料集のほか、明日からの授業づくりに使える実践事例集(
カラー)をお配りします。どなたでも参加いただけます。締め切り間近!

○お申し込み、詳細はこちら→http://www.kurihama.tsukuba.ac.jp
○会場へのアクセスはこちら→http://nyc.niye.go.jp/facilities/d7.html

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■研修員だより
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 今号は、平成19年度特別支援教育研究研修修了の佐々木千尋先生からお寄
せいただきました。

「そして今・・・」

             佐々木 千尋(島根県立出雲養護学校・教諭)

 私は、研究研修員制度の第1期生として平成19年度に一年間研修させてい
ただきました。研修中は『自閉症教育実践マスターブック』の編集のプロジ
ェクトに関わらせていただき、自閉症の特性や教育課程、「7つのキーポイ
ント」等について学ぶことができました。また、学校コンサルテーションに
同行させていただき、客観的に教育現場を見ることができ、自分自身の指導
についても考え直す機会になりました。
 現在私は、小学部3年生の学級担任をしています。6名が在籍しており、
全員が自閉症です。本校では数年前に校内組織の見直しが行われ、学級と分
掌を兼務する教員と、学級のみの業務に専念する教員の2つのタイプに分け
られました。私は、今年度は学級担任ということで、学級業務に専念するこ
とができています。つまり、研修したことを実践する場を作っていただいた
ことになりました。以前から自閉症の教育については、自分の経験だけで指
導することに不安を感じていましたが、今回の研修を通して指導の裏づけと
なるものを得ることができ、指導に対して少し自信が持てるようになりまし
た。
 そして、今、研修から現場に戻った私の役割は、自分で実践し成果を出す
ことと、この研修で得た知見を校内の教員に伝え、自閉症のある人に適切な
支援ができる教員を増やすことだと思っています。自主勉強会も企画し、週
末には有志を集めて1時間ほど自閉症について語り合っており、充実した日
々を送っています。有意義な研修をさせていただいたことに感謝します。研
究所の先生方、だんだん(出雲弁で「ありがとうございます」)。

 ○出雲養護学校のWebサイトはこちら→
  http://www.shimanet.ed.jp/izumoyougo/

 ○「自閉症教育実践マスターブック」について知りたい方はこちら→
  http://www.kyoikushinsha.co.jp/books/87.html

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■特別寄稿
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『人のつながりを特別支援教育の充実へ』

         西川 公司(筑波大学附属久里浜特別支援学校・校長)
               (昭和50年度長期研修修了) 

 一年間の長期研修生として研究所でお世話になったのは、私がまだ20代の
時でした。長期研修生は39名でしたが、昭和54年度の養護学校教育義務制施
行を間近に控えていたこともあって、それぞれの地域の特殊教育をどのよう
にしていくべきかについて、毎日のように活発な議論が展開されていました。
 研修生活を通じた研究所の先生方や長期研修生との出会いは、私のこれま
での歩みの中で、極めて重要な役割を果たしてくれました。
 学校現場の時代には、その時々の最新の情報を教えていただいたり、指導
や学校研究で行き詰まった時には、方向性をご教示いただいたりすることが
できました。また、こうした情報や指導・助言の内容をほかの学校等にお知
らせすることで、地域の特殊教育の質的充実にも貢献することができました。
文部行政に携わった時代には、研究所や全国で活躍していた仲間の長期研修
生の先生方に、学習指導要領の改訂、指導書や手引書の作成、全国各地での
研修会等の際に大変お世話になり、特殊教育の充実や教職員の資質の向上を
図る職務を全うすることができました。
 こうした人のつながりを更に広め、特別支援教育の充実にいかしていくこ
とは、現在勤務している自閉症の子どもたちを教育する学校でも大切にして
います。研究所で研修を受けられた先生方には、今後の歩みの中で、研修で
築かれた「人のつながり」をいかし、それを更に広げて、各地域の「特別支
援教育の充実」へとぜひつなげていってほしいと思います。

 ○筑波大学附属久里浜特別支援学校のWebサイトはこちら→
  http://www.kurihama.tsukuba.ac.jp

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■編集後記

 今号には、特別寄稿として、本研究所の隣接する筑波大学附属久里浜特別
支援学校の西川公司校長から原稿を寄せていただきました。西川先生は、文
部省の特殊教育教科調査官をされたあと、国立久里浜養護学校の校長として
赴任され、そして現在は我が国唯一の自閉症学校の校長として、自閉症教育
の発展にご尽力されています。2月には実践研究協議会が開催されます(詳
細は今号の特別支援教育関連情報に掲載)。関心のある方は、ぜひご参加く
ださい。
 研修員だよりは、研修研究員制度一期生の島根県の佐々木千尋先生にお願
いしました。研修されたことを活かされ、現場において自閉症教育の推進役
としてご活躍されている様子が伝わってきました。
 お忙しいところご執筆いただいた西川先生、佐々木先生に、この場をお借
りして感謝申し上げます。
 平成21(2009)年がスタートし、このメールマガジンも刊行されて、2度
目の新しい年を迎えました。今年も、特別支援学校の学習指導要領の改訂の
告示など、特別支援教育の充実に向けて多くの施策や事業が実施される予定
です。
 これらの動向を捉えつつ、皆様のご要望、ご期待に応えるべく内容の充実
に一層努めて参りたいと思います。本年も、どうぞよろしくお願いします。

                   (第22号編集主幹 井上 昌士)

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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第22号(平成21年 1月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
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