障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第39号

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      国立特別支援教育総合研究所メールマガジン
        第39号(平成22年 6月号)2010.6.1
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【目次】
■お知らせ
■NISEトピックス
 トピックス
 研究紹介
■研修員だより
■編集後記
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■お知らせ
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★NEWS★
●研究所の最新状況
◇衆議院文部科学委員会が研究所を視察

  5月26日に衆議院文部科学委員会(田中眞紀子委員長)委員15名が本研究
所を視察されました。委員一行は、現在開講されている特別支援教育専門研
修の視覚障害・聴覚障害教育コースや発達障害教育情報センター、iライブ
ラリーを視察され、その後、障害のある子どもたち一人一人に応じた教育の
推進について、理事長等と懇談されました。

◇研修現況報告 第一期特別支援教育専門研修開講

 視覚障害・聴覚障害教育コース(平成22年 5月10日~ 7月 9日)が開講し、
現在、全国から32名の教員が、研修員として日々研鑽に励まれています。
 なお、この『特別支援教育専門研修』(年三期制)は、障害のある幼児児
童生徒の教育を担当する教職員に対し、専門的知識及び技術を深めさせるな
ど必要な研修を行い、その指導力の一層の向上を図り、今後の各都道府県等
における指導者としての資質を高めることを目的としています。

 ○特別支援教育専門研修の内容等はこちら→
  http://www.nise.go.jp/blog/senmonkenshu.html

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■NISEトピックス
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★トピックス★
●平成22年度研究課題一覧

 本研究所の研究は、中・長期的な見通しを持って研究を着実に遂行するた
めに「研究基本計画」を策定し、体系的・系統的な研究を推進するために研
究班制を導入してその活動に取り組んでいます。
 平成22年度の研究活動の概要は、メールマガジン4月号で既にお示しした
ところです。
 この度、それぞれの研究の活動計画が確定しましたので、重点推進研究、
専門研究A・B及び共同研究について、詳細をお知らせします。

◇重点推進研究
 専門研究の内、重要性及び緊急性という観点から重点的に推進する研究で
す。
1.特別支援学校における新学習指導要領に基づいた教育課程編成の在り方に
関する実際的研究(22~23年度・新規)
2.特別支援学校(知的障害)高等部における軽度知的障害のある生徒に対す
る教育課程に関する研究(22~23年度・新規)
3.特別支援学級における自閉症のある児童生徒の「カリキュラムアセスメン
ト」(仮称)に基づいた教育課程編成に関する実証的研究(22~23年度・新
規)
4.発達障害のある子どもへの学校教育における支援の在り方に関する実際的
研究-幼児教育から後期中等教育への支援の連続性-(22~23年度・新規)

◇専門研究A
 障害種別によらない、特別支援教育推進のための総合的研究です。
 8課題(新規5課題、継続3課題)
 
◇専門研究B
 障害種別等に対応した専門的研究です。
 10課題(新規9課題、継続1課題)

◇共同研究
 本研究所において実施されている実際的・総合的研究と大学や大学共同利
用機関、医療・福祉機関等において実施されている基礎的・理論的な研究を
融合する研究です。
 4課題(新規2課題、継続2課題)

 ○研究所の研究についての詳細な内容はこちら→
  http://www.nise.go.jp/blog/kenkyunaiyou.html

 ○4月号のメールマガジンの内容はこちら→ 
  http://www.nise.go.jp/blog/2010/04/magabk_37.html

●米国ミネソタ州オッセオ学校区の高校卒業後の特別支援教育

         梅田 真理(発達障害教育情報センター・総括研究員)

 ミネソタ州ミネアポリス市近郊のオッセオ学校区にはOsseo Secondary 
Transition Center(以下OSTCと記す)という教育機関があります。ここは
障害があると判断されIEPのある生徒のうち、高校卒業後就労が困難である
と判断された者に、社会的自立に向けた様々な指導・支援を行っている機関
です。なお、障害種は問いません。生徒は高校卒業後(18歳)から21歳まで
OSTCに通います。
 ミネソタ州はカナダと五大湖に接する最北端の州(アラスカ州をのぞく)
です。冬が長く訪問した3月でも零下20度の日がありましたが、3月からは
サマータイムが始まり、学校も会社も始業は7時半(とても寒い!)、終業
は4時半です。そのためラッシュアワーは6時台となります。
 OSTCの青年たちは、日が昇りかけた7時頃に黄色いスクールバスで登校し
ます。IEPがあるため基本的に教育にかかる費用は無料ですので、経済的に
困難のある家庭の生徒たちもいます。朝食を食べてこない場合は、センター
内にあるお菓子の自動販売機でスナックかチョコレートを買い、食べながら
ホームルームに参加します。もちろん飲み物はコーラです。ただし、先生方
も休み時間はコーラを飲んでいるので違和感はありませんが、我々日本人に
とっては驚きでした。
 OSTCには「よき社会人を育成する」というミッションがあり、その達成に
向け(1)職業、(2)高校卒業後教育、(3)社会参加、(4)レクリエー
ション・余暇活動、(5)家庭生活の5つの領域を基本とした多岐にわたる
カリキュラムが組まれています。それぞれが具体的で、且つ社会生活につな
がる内容ですが、中でも自分自身の特性や才能を正しく理解し(もちろん障
害についても)、それを活かして生活していくことができるよう、力を入れ
て指導しています。OSTCで3年目の最終学年を迎えた知的障害のある女性が、
「私は知的障害があるの。一度では分からないことも多いけれど、何回か繰
り返せば身につけることができるのよ」と笑顔で語ってくれたことはとても
印象に残っています。OSTCのビジョンが、学生たちの中に深く根ざしている
ことを実感しました。

★研究紹介★
●重点推進研究「障害のある子どもへの一貫した支援システムに関する研究
-後期中等教育における発達障害への支援を中心として-」(平成20~21年
度)

 研究代表者 渥美 義賢(発達障害教育情報センター・上席総括研究員)
                                                                    
 障害のある子どもにとって、一貫した支援が重要であることは常に指摘さ
れることであり、それは発達障害のある子どもにとっても非常に重要な課題
です。本研究所では、平成18~19年度に「発達障害のある子どもの早期から
の総合的支援システムに関する研究」を行い、早期支援を中心に研究し「発
達障害支援グランドデザイン」を提案しました。本研究では、高等学校等の
後期中等教育における発達障害のある子どもへの支援の在り方を中心に研究
を行いました。
 発達障害のある子どもの支援を考える上で、後期中等教育段階は、義務教
育段階とは様々な面で異なる点があります。その中で主に留意すべき点とし
ては、症状の加齢変化や二次障害等により子どもの状態像がかなり変化する
こと、高等学校には、全日制、定時制、通信制の課程があり、主とする学科
には普通科、総合学科、専門学科の3種類がある等、後期中等教育機関は多
様であること、私立学校の占める割合が高いこと(生徒数で約3割)等のこ
とがあります。
 これらに対応しつつ発達障害のある子どもの教育的支援を充実させるため
には以下のことが必要と考えられました。1) 発達障害のある子どもの気づ
きに際しては、状態像が義務教育段階とは変化していることを踏まえ、発達
障害と判断できなくても、その可能性があって支援を必要としている子ども
を含めて支援ができるよう考慮すること。2)全ての高等学校の教員は、発
達障害がある可能性のある子どもが、進学校を含め全ての高等学校に在籍し
ている可能性のあることを知ること。3) 校内委員会等の校内支援体制とし
ては、生徒指導や教育相談等の高等学校に既存の委員会の活用や連携を図る
こと。4) 新指導要領に明記された「学び直し」は重要で有効であること。
5) 分かる授業の工夫が重要であること。6) 対人関係の形成等の社会生活
上で必要なことがらを、ロングホームルームの工夫や学校設定教科・科目を
活用して指導すること。7) 特別支援学校のセンター的機能等、学校外の資
源を活用すること。
 研究成果は報告書にまとめました。本年の8月頃には本研究所のWebサイ
トからダウンロードできるようになる予定です。

◆ちょっと一息

 皆さんいかがお過ごしでしょうか。私は、最近運動不足だなと感じ、先月
末から土日に短い距離のランニングを始めました。ランニング後はとても気
分が良いです。今年の12月には所内の先生や職員と駅伝に出場する約束をし
ました。10kmを走ることになりそうですが、今から無事走りきれるか心配し
ております。12月には、余裕をもって10kmを走れるようになっていたいと思
う今日この頃です。

                 (教育研修情報部 土井 幸輝 記)

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■研修員だより
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 今号は、平成19年度第一期特別支援教育専門研修修了の近藤公先生からお
寄せいただきました。

「NISE-TRAINEES-NETWORK ナイセイ-トレイニーズ-ネットワーク」

                近藤 公(山口県立宇部総合支援学校)

 今年 2月 6日、京都は夕方から雪が降り、五重塔や金閣寺に美しく積もり
ました。同日、市内において、NISE-TRAINEES-NETWORK地元実行委員による
「通常の学級における、発達障害のある子どもの指導・支援を考える」とい
う講演会が行われました。
 このネットワークは、前研究員の内田俊行先生の企画によるもので、主に
研修員のフォローアップや年度を越えたネットワーキングを目的としたもの
ですが、地域の教職員や保護者の方々にも参加していただける公開講演会を
という事で開催されました。1回目は広島で、研究所から渥美先生・笹森先
生を、2回目は、玉木先生・海津先生をお迎えすることができ、渥美先生に
は、2回ともご参加頂けました。会場は、地方にいながらにして、研究所の
講義室に早変わり。野比海岸の波の音を思い出しながら、特別支援教育最前
線のお話をうかがい、熱心な意見交換の後は、講師の先生方との懇親会。年
度や障害種を越えてネットワークが広がりました。また、同じコースの研修
員とは再会を喜び合い、地方のお菓子が飛び交う中での情報交換。翌日は、
現地観光という充実したNISETNの公開講演会です。次回も元気の出る企画を
地元研修員にお願いしつつ、この記事をご覧の皆さん、ご参加よろしくお願
いします。

 ○山口県立宇部総合支援学校のWebサイトはこちら→
  http://www.ube-s.ysn21.jp/

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■編集後記

 本メールマガジンを刊行してから4年目を迎え、国立特別支援教育総合研
究所メールマガジン編集部では、本メールマガジンがより一層読者の方々に
興味深く役にたつものとなるよう、検討を開始しました。毎週行われる編集
委員会で喧々諤々の議論をしていますので、変わる迄には少し時間がかかる
かもしれませんが、今後のメールマガジンにご期待ください。この過程で読
者の皆様にもアンケート等のご協力をお願いするかもしれません。その節は
よろしくお願いいたします。
 
                   (第39号編集主幹 渥美 義賢)

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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第39号(平成22年 6月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
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