第8回韓日特殊教育セミナー
概要
平成20年2月25日(月曜日)、韓国国立特殊教育院(KISE)において、第8回韓日特殊教育セミナーが開催された。本セミナーは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(NISE)と韓国国立特殊教育院(KISE)が1995年11月に研究協力協定を締結したことに基づき、毎年開催されているものである。
今回は、日本から、本研究所の小田 豊理事長、原田公人総括研究員(教育支援部)、滝川国芳総括研究員(教育研修情報部)の3名が参加し、「韓・日の障害者の全生涯における段階別の教育支援の現況」をメインテーマとして、韓国国立特殊教育院(KISE)を会場に開催した。また、それぞれのサブテーマ毎に日本側、韓国側からの発表と研究協議が行われた。セミナーには韓国国立特殊教育院の職員の他、ソウル近郊の特殊学校に勤務する教員など、約60名の参加者があった。
なお、セミナーの詳細については、以下の原田公人総括研究員(教育支援部)の報告に詳しいのでご参照ください。
- 第8回韓日特殊教育セミナー報告
(国立特別支援教育総合研究所メールマガジン第14号より)
メインテ-マ
生涯段階別(幼・小(初)・中・高・成人)の支援体系について
サブテーマ
- 韓国と日本の義務教育段階の支援について
- 韓国と日本の幼児教育について
- 韓国と日本の高等教育の支援について
日程
平成20年2月25日(月曜日) 第8回韓日特殊教育セミナー
- 開会挨拶 韓国国立特殊教育院 院長 李 孝子氏
- テーマ1 発表
- 日本における病気のある子どもの教育支援
国立特別支援教育総合研究所 総括研究員 滝川国芳 - 韓国の義務教育課程の教育支援に関する現況―健康障害の学生に関する教育の現況を中心として―
教育人的資源部 特殊教育政策課 教育研究官 金 恩珠氏
- 日本における病気のある子どもの教育支援
- テーマ2 発表
- 日本の幼児教育の動向と発展 -保育内容の歴史的な変遷を通して-
国立特別支援教育総合研究所 理事長 小田 豊 - 韓国における幼児の特殊教育の支援体系及び課題
壇國大学校 特殊教育科教授 李 炳仁氏
- 日本の幼児教育の動向と発展 -保育内容の歴史的な変遷を通して-
- テーマ3 発表
- 日本の高等教育における障害学生の支援について-発達障害を中心に-
国立特別支援教育総合研究所 総括研究員 原田公人 - 発達障害のある学生の高等教育課程における支援体制
カトリック大学校 特殊教育科教授 朴 熙贊氏
- 日本の高等教育における障害学生の支援について-発達障害を中心に-
- 全体討議
- 閉会挨拶
韓国国立特殊教育院 院長 李 孝子氏
国立特別支援教育総合研究所 理事長 小田 豊
平成20年2月26日(火曜日) 国立ソウル盲学校、国立ソウル聾学校見学
会場
韓国 国立特殊教育院(KISE)
韓国 国立特殊教育院(KISE)にて
左から滝川国芳総括研究員、小田豊理事長、原田公人総括研究員
発表者 韓国側
金 恩珠 (Ms. Eun-ju Kim) (教育人的資源部 特殊教育政策課 教育研究官)
李 炳仁 (Mr. Bueng-in Lee) (壇國大学校 特殊教育科 教授)
朴 熙贊 (Mr. Hee-chan Park) (カトリック大学校 特殊教育科 教授)
発表者 日本側
小田 豊 (本研究所 理事長)
原田 公人 (本研究所 教育支援部 総括研究員)
滝川 国芳 (本研究所 教育研修情報部 総括研究員)
韓日特殊教育セミナーを終えて
原田公人 (教育支援部 総括研究員)
平成20年2月25日、韓国国立特殊教育院において第8回韓日特殊教育セミナーが開催されました。本研究所からは小田豊理事長、滝川国芳総括研究員、原田公人総括研究員の3名が参加しました。
本セミナーは、1995年11月に本研究所(NISE)と韓国国立特殊教育院(KISE)が研究協力協定を結んだことに基づき、2001年より年1回、互いの国を訪れてセミナーを開催しています。
今回のメインテーマは、「韓・日の障害者の全生涯における段階別の教育支援の現況」でした。このテーマに基づき、病弱教育、幼児教育、発達障害学生支援をサブテーマとして、日本と韓国からの発表と研究協議が行われました。セミナーには、韓国特殊教育院の職員の他、ソウル近郊の特殊学校に勤務する教員など、約60名の参加がありました。
セミナーは、国立特殊教育院院長の李孝子氏の心温まる歓迎のことばと趣旨説明から始まりました。この後、病弱教育の現状と課題について、本研究所の滝川総括研究員と韓国教育人的資源部特殊教育政策課の金恩珠教育研究官より発表がありました。続いて、特別支援教育における幼児教育について、本研究所の小田理事長と壇國大学校特殊教育科の李炳仁教授の発表。最後のセッションとして、発達障害のある学生の支援について、本研究所の原田とカトリック大学校特殊教育科朴熙贊教授から発表がありました。
韓国では、2007年に「障害者などに関する特殊教育法」を制定し、特別支援教育に関して大きな法整備が進められました。内容としては、3歳未満の障害のある幼児の教育の無償化、3歳から17歳までの特殊教育対象者の義務教育の権利、特殊教育支援センターの設置、統合教育の支援、個別化教育(IEP)の策定、特殊学級設置基準の見直しなどです。課題としては、法的基準を整えて日が浅いため、教育現場に十分浸透していない面もあり、実態調査をしつつ実現を図っていくという説明がありました。
各発表に対する協議では、インクルージョンに関する取組の状況など、基本情報の交換だけではなく、障害種別や各発達段階に応じた支援の内容などについて深めることができました。また、本セミナーを通して、個のニーズに対応した特別支援教育の展開、教員の専門性や生涯学習の重要性などについて、日韓両国が共通の課題認識をもっていることが確認できました。今後は、日韓共同研究の設立など、両国のナショナルセンターとして組織的連携に努めていくことが期待されています。
