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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第161号

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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第161号(令和2年8月号)
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 このたびの「令和2年7月豪雨」で被災された九州地方や中部地方などの
皆様に、心からお見舞い申し上げます。
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■目次
【お知らせ】
・特別支援学校における遠隔授業や動画配信の取組の掲載について
【NISEトピックス】
・NISE各部・センターの活動紹介 (4)令和2年度の発達障害教育推進セン
ターの活動について
【研究紹介】
・我が国におけるインクルーシブ教育システムの構築に関する総合的研究
-「インクルCOMPASS(試案)」の活用の検討-
【NISEダイアリー】
【ホームページの充実に向けたアンケートへのご協力のお願い】
【研修員だより】
【高齢・障害・求職者雇用支援機構からのお知らせ】
【アンケートのお願い】


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【1】お知らせ
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●特別支援学校における遠隔授業や動画配信の取組の掲載について
 インクルDBのページに、全国の特別支援学校の遠隔授業や動画配信の取組
を掲載いたしました。先月号で、インクルDBのページに、新型コロナウイル
ス感染症予防対策についての学校の取組を掲載したことを案内いたしました
が、今回、新たに、同ページに、遠隔授業等の取組の一部を掲載いたしまし
た。どうぞご覧ください。なお、当研究所において把握した取組から紹介し
ていることをご承知おきください。

○取組の詳細はこちら→
 http://inclusive.nise.go.jp/?page_id=117

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【2】NISEトピックス
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●NISE各部・センターの活動紹介(4)令和2年度の発達障害教育推進センタ
ーの活動について

      笹森 洋樹(発達障害教育推進センター長/上席総括研究員)

 発達障害教育推進センターでは、発達障害に関する最新の情報について、
Webサイトや展示室の公開等を通じて、幼稚園・小学校・中学校・高等学校
等の教員や保護者をはじめ幅広く国民に提供し、理解啓発を推進するととも
に、教育現場で必要な基本的な知識と指導・支援に関する具体的な情報を提
供しています。また、発達障害教育実践セミナーの開催、教育委員会や福祉
機関との協働による地域理解啓発事業等の実施を通じて、発達障害に関する
理解を深め、より実践的な指導力の向上と支援の充実を図っています。
 Webサイトでは、「指導・支援の事例解説」、「研修講義の動画配信」、
「教材・支援機器の紹介」、「研究や文献等の紹介」、「国の施策や法令」、
「教育相談のQ&A」、「公的機関主催のイベント情報」等の情報を掲載し
ています。展示室では、発達障害に関する理解の促進、適切な対応や支援の
充実を目的として、パネル展示や参考図書等の紹介、教材・教具の展示をし
ています。発達障害のある子供の特性や困難さを体験的に理解できるコーナ
ーもあります。現在は感染症の影響もあり見学を中止していますが、見学が
可能になりましたらホームページにてお知らせ致します。
 特に令和2年度は、発達障害者支援に係る教育と福祉の関係者が連携・協
働するための研修実践を通して、教育と福祉の人材育成の体系的なモデル案
を検討する「人材育成プロジェクト」事業に取り組んでいます。平成30年3
月に文部科学省と厚生労働省により「家庭と教育と福祉の連携『トライアン
グル』プロジェクト報告」がまとめられました。発達障害教育推進センター
では、本報告を踏まえ、令和元年度に文部科学省、厚生労働省、国立障害者
リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センターと連携し、有識者
による検討会議を設置し、発達障害者支援に係る教員や福祉関係者が連携・
協働して支援を行うために必要な専門性を整理するとともに、人材育成のた
めの研修コアカリキュラム(案)を作成しました。「人材育成プロジェクト」
事業では、6つの自治体に協力をいただき、研修コアカリキュラム(案)を
活用した研修の実践検証から、その成果を体系的なモデル案としてまとめ、
全国に普及するための取組を行います。

○発達障害教育推進センターのWebサイトはこちら→
 http://cpedd.nise.go.jp/

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【3】研究紹介
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 ここでは、令和元年度に終了した研究課題について、研究概要並びに成果
報告をさせていただきます。

●我が国におけるインクルーシブ教育システムの構築に関する総合的研究
-「インクルCOMPASS(試案)」の活用の検討-
                                                             研究代表者:星 祐子

 我が国が目指す共生社会の形成においては、障害者の権利に関する条約に
基づくインクルーシブ教育システムの理念が重要であり、そのためには、特
別支援教育を着実に進めていく必要があります。
 そこで、本研究は、5年間(平成28~令和2年度)の研究を通して、地域
や園・学校におけるインクルーシブ教育システムの構築に向けた現在の取組
状況を把握し、さらに取り組むべき事項等が明確になる指標の作成に着手し
ました。
 平成30年度には、平成28~29年度において作成した「評価指標(試案)」
について、研究協力機関での試行を経て、インクルーシブ教育システムの構
築に向けて、それぞれ実施している取組の現状を把握し、課題や今後の方向
性を見出すことのできる「インクルCOMPASS(試案)」として改善を図りま
した。
 そして、令和元年度においては、研究協力機関である園・学校計15機関に
7観点(体制整備、施設・設備、教育課程、指導体制、交流及び共同学習、
移行支援、研修)とその具体的項目で構成された「インクルCOMPASS(試案)」
を使用してもらうことで、その使用方法や活用の可能性について検討しまし
た。また、「インクルCOMPASS(試案)」の使用事例とインクルーシブ教育
システムの構築及び推進に向けた園や学校での主体的取組の事例の収集を行
いました。事例の収集において、研究協力機関である園・学校が、インクル
ーシブ教育システムの構築に向けた重点的な取組としてあげた事項としては、
研修が最も多く、指導体制、交流及び共同学習等、様々でしたが、その取組
を推進するためには、校内(園内)の体制整備が重要であることが取組事例
から確認できました。また、園や学校における取組をいかに継続させ、浸透
させるか、その仕組みづくりの大切さも示されました。
 園や学校において、インクルーシブ教育システム構築の進捗状況、強みや
課題等を把握し、次なる展開の方向性を考えるツールとして、「インクル
COMPASS」が活用されることを期待しています。
 最終年度である今年度は、各教育委員会の協力を得て、教育委員会用「イ
ンクルCOMPASS)」の作成を行い、その活用方法を検討します。併せて、昨
年度、研究協力機関である園・学校で収集した「インクルCOMPASS」の活用
事例に基づき、インクルーシブ教育システムの推進に向けた主体的取組をま
とめた事例集を作成する予定です。

○園・学校用「インクルCOMPASS」とその活用についてはこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/study/intro_res/backbone_crossing/inclusi
ve

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【4】NISEダイアリー
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             「いろいろな船」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

 研究所の前には、海(金田湾)が広がっている。右手には、三浦海岸、左手
には、鋸山が望める。三浦半島と房総半島が、広い東京湾を囲む形で、その
入り口を狭めている。東京の晴海埠頭や横浜港、千葉港などに向かう船は、
皆、研究所の前を通り過ぎていく。昔、黒船が横須賀に姿を見せたのも、こ
んな地形が影響しているのだろう。晴れた日には、いろいろな形の船が姿を
見せる。地球儀を半分に切ったような球体を幾つか載せた船。これは、LNG
(液化天然ガス)を運ぶ船だ。横から見ると台形を逆さにしたような形の大き
な船。これは、自動車を運ぶ船だ。そして、遠くから見るとマッチ箱をたく
さん積んでいるように見える船も。これは、コンテナ船だ。
 休日にテレビを眺めていて、偶然、「超巨大コンテナ船に乗せてもらいま
した」という番組に出くわした。英国から日本まで、25,000kmの道のりを同
乗して取材したものだ。「超巨大」と銘打っているだけに船首から船尾まで
の長さは400m。東京タワーの高さよりも長い。そして、2万個ものコンテナ
を積んでいた。コンテナ1個の輸送料は30万円とのこと。日本の輸出入の
99.6%が船による輸送らしい。そんな説明の中で、私が興味をもったのは、
この巨大コンテナ船を乗組員26人で運行していること。さらに、その中に若
い女性が一人加わっていたこと。「どうして航海士になったのだろう?」と
思いながら見ていた。すると、幼い頃、父親の仕事で外国に暮らしていた。
その頃に日本にいる祖母からいろいろな品物が届いたそうだ。「どうやって
届くのだろう?」と、「物流」に興味をもったのが、船乗りになるきっかけ
だったという。
 食料品などの荷揚げの際は、男性の乗組員に交じって作業をするが、腕力
などはどうしても男性にかなわない。そこで、一度に運ぶ荷物を少なくし、
回数を多くする工夫をして、自分の役割を果たしたという。
 地中海からスエズ運河を通って中東へ。すると、アデン湾での海賊対策。
緊張しながらの当直勤務の様子にも、仕事に取り組む真剣さが感じられた。
 シンガポールから中国へと近づくにつれ、日本のコロナ禍の情報が入って
くる。結局、日本には戻れず、またヨーロッパへ向かう航海へ。なかなか、
予定通りには進まない。突発的な出来事にいかに臨機応変に対応するか、こ
れは、教育においても同じだなと思いながら見入る。
 ふと頭に浮かんだことは、コロナ禍の中での教員の研修はいかにあるべき
かということ。研究所においても、新型コロナの影響で、集合型、対面型の
研修は中止になった。代替策として、期間短縮等によるオンライン研修に切
り替えた。しかし、受講者の時間の確保という課題は残る。さらに、学ぼう
とする意欲も必要だ。これは、「こんな仕事をしたい」という動機、その場
に応じた自助努力、突発的な困難への対応、チームでの協力等、船乗りと教
員、仕事は異なるが、両方に共通する視点がありそうだ。テクニックも必要
だが、やはり志が大切な気がする。そして、OJT (On the Job Training:
実際に仕事をしながら行う研修など)も。今の時期だからこそ、自分を見つ
め直し、教育に取り組む気持ちを改めて喚起したいものだ。

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【5】ホームページの充実に向けたアンケートへのご協力のお願い
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 本研究所は、ホームページを通じて、各研究班/研究チームの各研究課題
に対する研究成果物、研究所が主催する研修/セミナーの開催情報、研究所
が有する各種コンテンツ等を教育関係者はもとより、研究者、一般の方々に
公開しております。
 研究所から発信するこうした情報を特別支援教育に関わる皆様に、今後益
々活用していただくために、また、ホームページの更なる充実を図っていく
ために、メールマガジンの読者の皆様を対象としてホームページに関するア
ンケートを行うことにいたしました。ご負担のないところでご協力いただけ
ればと思います。ご協力いただける方は、数問の設問にご回答いただければ
と思います。
 アンケート期間は、2020年8月3日(月)~8月31日(月)です。詳しく
は、後述のURLをご覧ください。

○調査(アンケート)ページはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=78983&lang=ja
 
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【6】研修員だより
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 今号は、令和元年度第三期特別支援教育専門研修を修了された岩田大輝先
生からお寄せいただきました。

             「激動の2か月」
                岩田 大輝(島根県益田市立高津小学校)

 大きな期待とちょっぴりの不安を抱きつつ、研究所までの道のりをびしょ
濡れになりながら移動した研修初日が昨日のことのように思い出されます。
 専門研修は新たな学びの連続でした。第一線で活躍されている先生方の講
義や演習は本当に新鮮で、刺激的な内容。一言一句聞き逃すまいとノートに
書き留めました。貴重な資料やノートはかけがえのない財産となっています。
 また、研究協議は「教員の専門性」をテーマに議論を深めました。協議の
中から私が影響を受けたことはとても多く、子供の見方、考え方の転換に繋
がるほど充実したものとなりました。
 一方で、2か月の研修期間中に新型コロナウイルスの感染拡大や自粛ムー
ドの高まり、全国一斉休校など、研修初日には誰もが想像すらしなかった世
の中の大きな変化が起こりました。宿泊棟の屋上で海を眺めながら一緒に食
事をした仲間、夜遅くまで語り合った仲間…。「みんなどうしているかなぁ」
と思いを巡らすことがよくありますが、この状況の中でそれぞれが奮闘され
ていると思います。私も全国の仲間に負けないよう、専門研修での学びや経
験から得たものを子供たちや地域の先生方に還元していきたいと考えていま
す。

○島根県益田市立高津小学校のWebサイトはこちら→
 http://www.iwami.or.jp/takatu_s/

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【7】高齢・障害・求職者雇用支援機構からのお知らせ
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●高齢・障害・求職者雇用支援機構より「働く広場」8月号のご案内
 「働く広場」は、障害者雇用に取り組む企業事例を中心に、身近な障害者
雇用問題を取り上げた障害者雇用の月刊誌です。成人期の働き方の情報とし
て、また障害者雇用を取り巻く先進的な取組のヒントとして、ご覧ください。
○8月号(7月25日発行)の掲載内容
 重度の知的障害のある社員による、高いレベルの清掃業務を展開する企業
への取材記事 ほか

○最新号の詳しい内容はこちら→
 http://www.jeed.or.jp/disability/data/works/index.html
*このご案内は教育現場と就労をつなぐために掲載しております。

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【8】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。
 
○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=96533&lang=ja

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【9】編集後記
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 いつもメルマガをお読みいただきありがとうございます。
 今号で紹介しました発達障害教育推進センター(【1】NISEトピックス)
のWebサイトですが、リニューアルされていますので、ぜひ一度ご覧くださ
い。
 さて、夏といえば、お祭り、花火、プールなど毎年、楽しいイベントがい
っぱいですよね。しかし、今年は、新型コロナウイルスの影響により、軒並
みそれらが中止になっている地域も多いのではないでしょうか。このことに
一番がっかりしているのは、おそらく子供たちでしょう。
 お話大好きな我が子のことになりますが、「給食中や密な状況でのおしゃ
べり禁止」など、しかたがないことではありますが、学校でも何かと窮屈な
日々を強いられているようです。
 今年は、夏休みが短くなってしまう地域も多いでしょう。4月からの長期
休校による学習の遅れなど、それぞれいろいろな心配ごとがあるとは思いま
すが、子供たちには、とにかく夏の楽しいひと時を満喫してほしいと切に願
います。
                   (第161号編集主幹 玉木 宗久)

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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第161号(令和2年8月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
          ([アットマーク]を@にして送信してください。)

○研究所メールマガジンの利用(登録、解除、バックナンバーを含む)につ
いてはこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/about_nise/mail_mag

-*-*-*-*-*-*- リンク集 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

> NISEweb(研究所webサイト)
  https://www.nise.go.jp/nc/

> 発達障害の情報を知りたいとき
 【発達障害教育推進センターwebサイト】
 http://cpedd.nise.go.jp/

>「合理的配慮」や「基礎的環境整備」の実践事例が知りたいとき
 【インクルDB】
  http://inclusive.nise.go.jp/

> インターネットで講義を聴講したいとき
  https://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/online

> 免許法認定通信教育について
  http://forum.nise.go.jp/tsushin/

> 教育支援機器、教材について知りたいとき
  http://forum.nise.go.jp/ilibrary/

> 障害のある子供のためのインターネットギャラリー
  https://www.nise.go.jp/kenshuka/jokan/gallery/ichiran.html
 
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