理事長あいさつ
国立特別支援教育総合研究所(NISE)は、我が国における障害のある子供の教育の充実・発展に寄与するため、昭和46年に当時の文部省直轄の研究所(国立特殊教育総合研究所)として設置され、平成13年に行政改革により設置主体が独立行政法人へと移行しました。その後、平成18年の学校教育法等の改正により、翌年の平成19年に「特殊教育」から「特別支援教育」へ制度改正等がなされ、研究所も同年より現在の「国立特別支援教育総合研究所」と名称を変更して現在に至っています。
前述した平成19年度からの特別支援教育の本格的実施という大きな制度改正をはじめ、平成25年には学校教育法施行令の一部改正による、本人・保護者の意向を最大限尊重し、合意形成を行うことを原則とする就学先決定の仕組みの改正が行われました。平成26年には障害者の権利に関する条約の批准、平成28年には障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の施行、平成29年から平成31年にかけては、障害のある子供たちの学びの場の柔軟な選択や学びの連続性を踏まえた学習指導要領の改訂が行われるなど、特別支援教育を取り巻く環境は大きく変化しています。また、令和4年12月に公表された文部科学省の調査で、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」児童生徒の割合が小・中学校の通常の学級に8.8%の割合で在籍している可能性があることが公表されるなど、小・中学校においても特別支援教育の重要性が一層高まっている状況です。
このような中、本研究所は、令和6年度に第5期中期目標・中期計画期間の4年目を迎えます。
本年度の取組として、研究活動では、障害種の枠を超えて国の特別支援教育政策の推進等に寄与する「重点課題研究」4課題のほか、障害種別に喫緊の課題解決に寄与する研究を実施する「障害種別特定研究」1課題、テーマ別研究班・障害種別研究班による基礎的研究活動に取り組みます。また、将来的な教育政策の検討資料や教育実践の選択肢、特別支援教育研究における新たな手法等を提示することを目指した研究を実施する「先端的・先導的研究」として「知的障害のある児童生徒に対する系統的なプログラミング教育推進のための先導的研究」に取り組みます。
研修事業では、特別支援教育専門研修をオンラインと来所を組み合わせて実施しつつ、WithコロナAfterコロナに対応した効果的な研修の実施に向けて柔軟な見直しを行い、その充実を図っていきます。また、特別支援教育に関する講義コンテンツをインターネットで視聴できるNISE学びラボの運用や、特に免許状取得率の低い視覚障害者教育領域及び聴覚障害者教育領域について免許法認定通信教育を引き続き実施するとともに、放送大学と特別支援学校教諭免許状取得率向上に向けた連携を図っていきます。
情報普及活動に関しては、Webサイトより研究成果をはじめ、発達障害に関する各種情報、インクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)、特別支援教育教材に関する情報などを発信するほか、研究所セミナーの開催や特別支援教育の指導の経験のない又は経験年数の少ない教員に向けたリーフレット「特別支援教育リーフ」を刊行するなど、特別支援教育に関する情報を幅広く発信していきます。
特別支援教育の推進には、日ごろの地道な取組が重要です。そのため、本研究所は、関係諸機関との連携協力に努め、種々の活動の更なる充実を図っていきたいと考えています。
今後とも、国民の皆様をはじめ、関係各位の一層のご理解とご支援をお願い申し上げて、挨拶とさせていただきます。
令和6年5月
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
理事長 中村 信一