通常ページ

国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第168号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第168号(令和3年3月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・世界自閉症啓発デー2021イベントについて
・盲ろう教育公開講座の開催(終了報告)と小冊子発行のお知らせ
・発達障害教育実践セミナーの開催(終了報告)
・令和2年度こころの病気等のある子どもへの教育支援(Co-MaMe:こまめ)セ
ミナー開催(終了報告)
【NISEダイアリー】
【特別支援教育関連情報】
・令和3年度特別支援教育関連予算案について
【研修員だより】
【高齢・障害・求職者雇用支援機構からのお知らせ】
【アンケートのお願い】
【編集後記】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】お知らせ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●世界自閉症啓発デー2021イベントについて
 毎年4月2日は、国連総会が定めた世界自閉症啓発デーです。本研究所を
含む関係団体で組織された日本実行委員会では、自閉症に関する理解を広め
ることを目的として「世界自閉症啓発デーONLINE2021-輝く人・照らす人-」
を開催する予定です。今年は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点か
ら、動画配信形式で開催します。動画配信の開始日は令和3年4月2日(金)
です。
 本イベントでは、セサミストリートの体験型オンライン読み聞かせ「スト
ーリータイム」や、世田谷区が制作した発達障害理解のための啓発動画「ハ
ッタツ凸凹あるある」をご紹介します。また、スポーツが自閉症の方々に与
える素敵な力についてもお伝えしていきます。
 令和3年4月2日(金)には、東京タワーブルーライトアップの点灯式を
実施する予定ですが、集客を伴う啓発イベントは実施されません。
 これらのイベントの詳細等については、世界自閉症啓発デー・日本実行委
員会の公式サイトをご確認ください。

○世界自閉症啓発デー・日本実行委員会の公式サイトはこちら→
 http://www.worldautismawarenessday.jp

●盲ろう教育公開講座の開催(終了報告)と小冊子発行のお知らせ
 盲ろう教育公開講座を1月16日(土)、1月23日(土)の2回に渡って、
オンラインにて開催いたしました。本公開講座の第1回は、「先天性および
若年性の視覚聴覚二重障害に対する医療支援」と題して、国立病院機構東京
医療センターの聴覚・平衡覚研究部部長で耳鼻咽喉科の医師である松永達雄
氏から盲ろうに関する一体的診療体制の取組、サポート体制の現状と課題等
について、第2回は、「ICT機器の活用可能性と就労-盲ろう当事者の立場
から-」と題して、先天性の盲ろう当事者である森敦史氏から現在の就労に
至るまでの教育や社会での学び、ICT機器の活用による社会参加等について、
それぞれ講演いただきました。
 本公開講座には、教育関係者、行政・福祉・医療関係者、当事者、保護者、
学生、企業など様々な立場の方、のべ140名程に参加いただき、講演後の質
疑応答も活発に行われるとともに、多くの感想や今後への期待が寄せられ、
関心の高さを示していました。
 本研究所では、盲ろう幼児児童生徒の教育に関わる、あるいは興味関心の
ある教職員等が情報を共有し、教育活動や日常生活の支援等に活かすことを
目的として平成29年度から毎年度、盲ろう教育実践セミナー等を開催してき
ましたが、今回、セミナー等の内容を小冊子にまとめ、各特別支援学校等に
配布することとしました。併せて、本研究所ホームページに掲載し、ご覧い
ただけるようにする予定です。

●発達障害教育実践セミナーの開催(終了報告)
 本研究所は、『家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト
報告 (平成30年3月)』等を踏まえ、令和元年度に文部科学省と厚生労働
省、国立障害者リハビリテーションセンターと連携して、発達障害者支援に
係る教員や福祉関係者が連携・協働して支援を行う人材育成のための研修コ
アカリキュラム案を作成しました。令和2年度は、研修コアカリキュラム案
を活用した取組として、全国6つの協力自治体(秋田県、福井県、山口県、
徳島県、宮崎県、川崎市)を対象として「人材育成プロジェクト」を実施し
ました。
 発達障害教育実践セミナーでは、「人材育成プロジェクト」の取組の成果
を全国の教育委員会の研修担当者等と共有し、発達障害教育の実践的な指導
力の向上を推進するための今後の研修の在り方について、パネルディスカッ
ション等による協議を行いました。
 セミナーを開催する前に、協力自治体の取組を事前動画としてまとめ、ホ
ームページで閲覧できるようにしました。当日(令和3年1月28日(木))
は、全国の都道府県等からZoomウェビナー及びYouTubeを合わせて、約120
名の参加がありました。パネルディスカッションは、前半を「研修の企画・
評価」、後半を「研修の実践・評価」として、協力自治体の取組紹介や教育
と福祉の連携、人材育成に関する協議を行いました。最後に、これらの発表
や紹介があった取組を踏まえ、文部科学省特別支援教育調査官や発達障害情
報・支援センター長から参加している自治体に対して、今後期待する取組な
どについて助言をいただきました。
 事後アンケートの結果では、ほぼ全ての参加者から「とても参考になっ
た」、「やや参考になった」という評価を得ることができました。

●令和2年度 こころの病気等のある子どもへの教育支援(Co-MaMe:こまめ)
セミナー開催(終了報告)
 1月16日(土)と1月30日(土)に、本研究所病弱班主催の「こころの病
気等のある子どもへの教育支援(Co-MaMe:こまめ)セミナー」を開催しま
した。セミナーでは、Zoomを使用し、オンラインで、精神疾患・心身症、
発達障害の二次的障害等のこころの病気等のある子供への多相的多階層支援
(Co-MaMe:こまめ)ついての講義と演習等を行いました。セミナーには、
第1回と第2回合わせて、280名の小学校・中学校・高等学校、特別支援学
校、教育委員会等の皆様にご参加いただきました。
 ご参加いただきました皆様からの終了後のアンケートには、セミナー開催
について「今後に役立つ内容であった。」という意見を多数いただきました。
開催に当たり、多くの関係者の方々にご協力いただきましたことに感謝いた
します。
 本セミナーを契機として、学校等でこころの病気等のある子供への支援に
関わっておられる方々の役に立てるよう、次年度以降も、Co-MaMeセミナー
の開催等の取組を進めていきたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【2】NISEダイアリー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
             「転換と移行」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

 令和3(2021)年度に、特総研は創立50周年を迎える。その準備も佳境に
入りつつある。今年度の研究所セミナーは、1年前だが、それを記念して、
「インクルーシブ教育システムの推進-共生社会を目指した新しい時代の特
別支援教育を考える-」と題して、2月27日に開催された。新型コロナウイ
ルス感染症の収束が見通せない中、インターネットによる配信で実施した。
オンラインパートとオンデマンドパートに分け、オンデマンド配信は、3月
26日まで視聴可能である。
 オンラインパートの記念講演を担当することになり、昭和46(1971)年10
月に設置された本研究所が、50年間でどのような歩みをしてきたのか、自分
なりに振り返ってみた。すると、平成13(2001)年で区切りよく、二つに分
けられることが分かった。その年度は、本研究所が文部省直轄の研究所から
独立行政法人に移行した年である。前半の30年間が直轄の研究所であった時
代。後半の20年間が独立行政法人としての研究所の時代に当たる。独法は、
5年間の中期目標期間を繰り返しながら、運営することになる。したがって、
令和2(2020)年度で第4期を終え、令和3年度からは第5期中期目標期間
を迎えることになる。
 ここでは、平成19(2007)年度から国立特別支援教育総合研究所に改称し
た頃のことについて述べよう。
 平成18年の通常国会で、学校教育法の一部改正が行われ、それまでの特殊
教育から特別支援教育に移行した。その頃にしばしば「特別支援教育への転
換」という言葉が用いられた。それまでの特殊教育は盲・聾・養護学校と小
・中学校における特殊学級や通級による指導での教育が中心だったが、これ
からは、小・中学校等の通常の学級における支援の必要な子供への教育も行
う特別支援教育に変わるのだと言われた。それが転じて、特別支援教育は発
達障害の子供たちへの教育を指すのだという誤解も耳にした。過渡期である
からこそ、このような現象が生じたのだろうと、今になって振り返れば、そ
う思う。
 視覚障害や聴覚障害等の従来から指導してきた障害のある子供たちへの教
育も、特別支援教育は含むのだが、当時、話題になりがちなのは発達障害の
子供たちであった。
 その原因の一つは、特殊教育から特別支援教育への転換という表現であっ
たように個人的には思う。特殊教育を否定して特別支援教育を際立たせる、
そんな形で話題にされがちだったからだ。特殊教育の時代に教員として育て
られた私は、何故か否定されているような感覚さえ覚えた。特殊教育にもい
いところはある。引き継ぐべきものがある。それを意識してもらうためには、
転換よりも移行の方が、ニュアンスとして適切であるように思っていた。
changeよりも、transitionか。研究所のこれからを作るためには、これまで
の足跡を振り返りつつ、前を見詰めたい。決して、安易な前例踏襲に陥るこ
となく、これまでの経験を生かして前進したいものである。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【3】特別支援教育関連情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●令和3年度特別支援教育関連予算案について
 令和3年度政府予算案の閣議決定に伴い、文部科学省において、本年1月、
予算案の発表資料が同省のWebサイトに掲載されました。詳しくは下記をご
覧ください。

○文部科学省が公表した内容はこちら→
 https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h31/1412639_00002.htm
(特別支援教育関係は初等中等教育局の各資料をご覧ください)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【4】研修員だより
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 今号は、令和元年度第二期特別支援教育専門研修を修了された崎原和廣先
生からお寄せいただきました。

               「挑戦」
               崎原 和廣(沖縄県立那覇特別支援学校)

 「重度重複障害児童生徒に対する教科指導とは」と、すごく悩んでいた時
に第二期特別支援教育専門研修(視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・病弱教
育コース)に参加させていただきました。その際、子供たちのために何もで
きていない自分の不甲斐なさをどうにかしたいという『挑戦』の気持ちで研
修に望みました。研修を振り返ってみると、新学習指導要領の熟読不足によ
り、用語の理解や講義自体についていけるのか、学校の課題解決に向け、研
究がまとめられるのか不安でいっぱいでしたが、一緒に参加された先生方が
優しく講義の内容についてアドバイスしてくれたり、夜の懇親会も開催し、
語り合ったりしたことで充実した2か月を送ることができました。研修では
自分のできることから取り組もう、何事にも挑戦する気持ちで、グループ協
議の班長や筑波大学附属久里浜特別支援学校での音楽コンサートでのエイサ
ー披露など、様々なことに挑戦しました。初めて現場を離れ、全国の仲間と
共に学べたことは普段の教員生活では得られない、大きな学びになりました。
 現在は、県教育委員会の研究校指定を受け、研究主任として教育課程編成
について挑戦し続け、研究に取り組んでいます。その際、専門研修で頂いた
資料を見返す機会が何度もあり、とても役立っています。今後も、子供たち
のために自分のできることから何事にも挑戦し、前進していきたいと思いま
す。
 最後に肢体不自由研修プログラムで出会えた仲間達に感謝しています。こ
れからも連絡を取り合い、情報共有を図りながら頑張っていきましょう。

○沖縄県立那覇特別支援学校のWebサイトはこちら→
 http://www.naha-sh.open.ed.jp/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【5】高齢・障害・求職者雇用支援機構からのお知らせ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●高齢・障害・求職者雇用支援機構より「働く広場」3月号のご案内
 「働く広場」は、障害者雇用に取り組む企業事例を中心に、身近な障害者
雇用問題を取り上げた障害者雇用の月刊誌です。成人期の働き方の情報とし
て、また障害者雇用を取り巻く先進的な取組のヒントとして、ご覧ください。
○3月号(2月25日発行)の掲載内容
 2020年12月に開催した「働く広場」公開座談会「発達障害者の雇用を促進
するために~若年求職者の支援を考える~」の採録 ほか

○最新号の詳しい内容はこちら→
 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html
*このご案内は教育現場と就労をつなぐために掲載しております。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【6】アンケートのお願い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。
 
○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=26371&lang=ja

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【7】編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 3月である。弥生の由来は、草木がいよいよ生い茂る月「木草弥や生ひ茂
る月」が詰まって「やよひ」となったという説が知られている。子供たちを
学校から送り出す季節が巡ってきた。教員として知の種を植え、それが根を
張り生い茂ってくれたのだろうかと自問し反省する時期でもある。卒業する
と、答えのない問いに行き当たる。主体的・対話的で深い学びは習慣づけら
れているだろうか。さかなクンこと宮澤正之氏が、新種の深海魚の解説をテ
レビでしているのを観た。1.3メートルのヨコヅナイワシより大きなのが見
つかったらとの質問に、「ヨコヅナの上だからオヤカタでしょうか。オヤカ
タイワシ」と応じていた。そもそも、日本のイワシと西洋のsardineは指し
ている範囲が異なる。アクティブ・ラーニングを進めていくと、深海魚のセ
キトリイワシ科をイワシと呼ぶのは日本だけであることに気づくであろう。
ニシン科マイワシとは似ても似つかぬイワシにはどんな魚が含まれるのか。
日本語の鰯の語源とは。魚を食べる日本の習慣から連想して、宇宙日本食に
なったイワシのトマト煮の開発の経緯とは。問いも答えも一つではないこと
がわかってくるだろう。深い学びを得てもらいたいと願う。
                   (第168号編集主幹 生駒 良雄)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次号も是非ご覧ください。
「メールマガジン」へのご意見・ご感想はこちら

国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第168号(令和3年3月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
          ([アットマーク]を@にして送信してください。)

○研究所メールマガジンの利用(登録、解除、バックナンバーを含む)につ
いてはこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/about_nise/mail_mag

-*-*-*-*-*-*- リンク集 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

> NISEweb(研究所webサイト)
  https://www.nise.go.jp/nc/

>特総研LINE公式アカウント
 https://lin.ee/jhnGAG7

> 発達障害の情報を知りたいとき
 【発達障害教育推進センターwebサイト】
 http://cpedd.nise.go.jp/

>「合理的配慮」や「基礎的環境整備」の実践事例が知りたいとき
 【インクルDB】
  http://inclusive.nise.go.jp/

> インターネットで講義を聴講したいとき
  https://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/online

> 免許法認定通信教育について
  http://forum.nise.go.jp/tsushin/

> 教育支援機器、教材について知りたいとき
  http://forum.nise.go.jp/ilibrary/

> 障害のある子供のためのインターネットギャラリー
  https://www.nise.go.jp/kenshuka/jokan/gallery/ichiran.html
 
-*-*-*-*-*-*--*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━