障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第3号

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     国立特別支援教育総合研究所メールマガジン   
        第3号  2007.6.1
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【目次】
■研究所からのお知らせ
■今月の特集
■研究所の研究活動
■特別支援教育トピックス
■研修員だより
■編集後記
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■研究所からのお知らせ
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●平成19年度研究課題が決まりました。

 平成19年度の研究所の新規及び継続の研究活動の課題が下記のとおり決ま
りましたのでお知らせします。

◇プロジェクト研究
1.小中学校における障害のある子どもへの「教育支援体制に関する在り方」
 及び「交流及び共同学習」の推進に関する実際的研究(16~19年度)
2.特別支援学校における自閉症の特性に応じた指導パッケージの開発研究-
 総合的アセスメント方法及びキーポイントとなる指導内容の特定を中心に
 -(18~19年度)
3.小・中学校における特別支援教育への理解と対応の充実に向けた総合的研
 究(18~19年度)
4.発達障害のある子どもの早期からの総合的支援システムに関する研究(18
 ~19年度)

以上の研究課題一覧は下記からもご覧になれます。

 ○こちら→http://www.nise.go.jp/blog/projectkenkyu.html

◇課題別研究
1.盲学校等における視覚障害教育の専門性の向上と地域におけるセンター的
 機能を果たすための小・中学校等のニーズに対応した支援の在り方に関す
 る実際的研究(18~19年度)
2.聾学校におけるコミュニケーション手段に関する研究-手話を用いた指導
 法と教材の検討を中心に-(18~19年度)
3.難聴・言語障害児を地域で一貫して支援するための体制に関する実際的研
 究(18~19年度)
4.知的障害者の確かな就労を実現するための指導内容・方法に関する研究
 -職業教育の視点から-(18~19年度)
5.肢体不自由のある子どもの教育活動における「評価」及び「授業の改善・
 充実」に関する研究(18~19年度)
6.我が国の病気のある子どもの教育の在り方に関する研究-病弱教育と学校
 保健の連携を視野にいれて-(18~19年度)
7.重複障害児のアセスメント研究-自立活動のコミュニケーションと環境の
 把握に焦点を当てて-(18~19年度)
8.ICF児童青年期バージョンの教育施策への活用に関する開発的研究(18~19
 年度)
9.通常の学級で学習する障害のある子どもの日本語の音韻・音節の認識に関
 する研究-書き言葉において間違えやすい日本語の特殊音節の特性の分析
 と指導方法の開発-(18~19年度)
10.小中学校における自閉症・情緒障害の児童生徒の実態把握と教育的支援
  に関する研究-特別支援学級及び通級指導教室における実態調査から-
 (19年度・新規)
11.障害のある子どものための情報関連支援機器等に関する研究(19~20年
  度・新規)
12.地域の支援をすすめる教育相談の在り方に関する実際的研究・そのⅡ-
  関係機関と協働して行う総合的な支援体制の構築-(19~20年度・新規)
13.盲ろう教育における教員の専門性向上のための研究(19~20年度・新規)
14.障害のある子どもの教育に応用できる脳科学に関する研究(19~20年度・
 新規)

以上の研究課題一覧は下記からもご覧になれます。

 ○こちら→http://www.nise.go.jp/blog/kadaibetsu.html

●研究所公開・学校授業公開
 来る6月30日(土)に研究所の一般公開と筑波大学附属久里浜特別支援学校
授業公開を下記のとおり実施いたします。
ご近所やお仲間と連れ立ってお気軽にお越しいただきますようお待ちしてお
ります。

 ◇主な催しもの(予定)
 ■パネル展示 9:00~12:00 -特総研って、どんな事業活動をしているの?

  研究所の概要や事業活動の紹介(研究・研修・相談・国際交流活動など)
  今取り組んでいる重要な研究課題や研究成果の紹介
  障害とは・・・?(障害種別の解説、研究紹介をとおして)

 ■体験デモ  9:00~12:00 -障害があるって、どんな感じなの?

  弱視擬似体験、車いす体験、検査装置デモンストレーション、パソコンに
  よる実演など。

 ■授業参観  9:30~10:30 -久里浜特別支援学校ではどんな勉強をしてい
  るの?

  校内で行われている授業や施設を見学することができます。(授業参観は
  申し込み制)

 ◇日時:平成19年6月30日(土) 9:00~12:00

 ◇場所:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
    〒239-8585 神奈川県横須賀市野比5-1-1
 ◇費用:無料

 ◇研究所公開に関するお問合せ先
  国立特別支援教育総合研究所 総務部企画調整課 
  TEL:046-839-6810(平日9:00~17:30)   

 ◇久里浜特別支援学校の授業参観への参加申し込み
  6月18日(月)までに氏名・住所・連絡先を明記し、郵送・メール・
  FAXのいずれかの方法で下記まで。
   筑波大学附属久里浜特別支援学校  担当:馬場副校長
  〒239-0841 神奈川県横須賀市野比5-1-2
  TEL 046-848-3444 (直通) FAX 046-848-3740    

 ○詳細はこちら→http://www.nise.go.jp/blog/2007/05/post_645.html

●ちょっと一息 季節のたより -海辺のホタル-

 研究所のある横須賀市野比地区は三浦半島でも最大規模のホタル生息地と
いわれ、ホタルの他にもトウキョウサンショウウオなどの珍しい水生生物が
今なお生息する貴重な水辺があります。そこは、蛙の鳴き声の聞こえる自然
豊かな谷戸で、横須賀の原風景とも言えるような懐かしいところです。その
脇を流れる沢にゲンジボタル(6月上旬~)、ヘイケボタル(6月下旬)が
現れます。研究所にお越しの際は、是非夕暮れを待って・・・。4秒に1回
(東日本)点滅するというホタルの優しい光に出会うのも楽しいかもしれま
せん。

○6月・・・ナガミヒナゲシ、昼咲きモモイロツキミソウ、トキワツユクサ、
キバナコスモスなど。

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■今月の特集
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●医療・福祉・保健と教育の連携の現代的意義
             西牧 謙吾(教育支援研究部・上席総括研究員)

 現在、教育改革は粛々と進められている。教育基本法改正、学校教育法改
正は、戦後の教育そのものをよりよいものに変えるダイナミクスである。で
は教育改革の中にあって、特別支援教育の理念はどの様に活かされるのだろ
うか。「障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を
支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、
その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な
指導及び必要な支援を行う」意義を、連携という視点から考えてみたい。
学校現場では、学力向上やいじめ・不登校対策など多くの課題を抱えている。
これらの課題は、子どもを中心にみればこころの育ちの状況や子どもの障害
などが関連していることが多い。幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把
握し、適切な指導と必要な支援を行うためには、教職員として子どもをよく
観察し、授業に参加できる状況を作り出すことから始める必要がある。クラ
ス経営や授業づくりを計画的に実施する中で、さらに手厚く支援が必要な子
ども(教育的ニーズを抱えた子ども)には、TTや支援員、通級による指導
など個別支援プログラムを導入することになる。さらに、教職員を孤立させ
ず、校内支援体制の構築が求められる。このように、特別支援教育の推進に
は、教育現場の土台作りが欠かせない。
 また、世界的な社会経済変化は、青年期の変化をもたらした。高等教育が
拡大する一方、高校中退者が増加し、親への依存期間が長期化し、青年層の
生活基盤が不安定化している。そしてフリーターやニートに代表される青年
の就労問題が顕在化した。力のある若者は企業を興し、莫大な富を短期間に
手に入れることが可能になる一方、サービス業で長時間低賃金の単純労働に
従事せざる終えない若者も数多くいるのも事実である。少子人口減少社会で
は、生産人口が支える非生産人口の比率が急激に高まるため、障害のある人
も経済的に自立しながら応能負担が生じる方向に動いている。
 このように、特別支援教育への期待は、障害のある子どもの教育保障だけ
ではなく、卒後の子どもの人生への活用へと向けられる。教職員は、障害を
もつ子どもの生き方を子どもや保護者と一緒に模索する必要があり、教育行
政としては限られた資源を有効に使うために、計画性と評価の視点が避けら
れない。
 かつての日本は地縁血縁で結ばれた地域社会で人の生活を支えていた。日
本は経済成長に支えられて、家族の個人化が進み、かつての地域社会は見ら
れなくなった。その代わり、知識の縁(知縁)や個人のニーズで結びつくネ
ットワークが形成されつつある。これが、学校や福祉施設など、地域にある
既存の社会資源を結びつけるきっかけとなり、地域における障害のある人を
支える大きなセーフティネットに育つ可能性が出てきた。現代社会における
自立は、個人のエンパワーメントなくしては成り立たないが、自ら自分にあ
ったサービスを探す力を持つことを必ずしも意味しない。人に任せる力、人
に助けてもらう力があればいい。それを、繋ぐ人として「コーディネーター」
が生まれ、必要なサービスをマネージメントしてくれるのである。この方が、
一人一人の障害を改善・克服するより、よほど効率的で効果的であると考え
られる。個別の教育支援計画の目指すところも、ここにある。特別支援教育
への転換は、普通教育や医療・福祉・保健サイドへ、現在の日本が抱える青
少年問題と障害者問題の処方箋を示すことを期待されており、この改革の本
質がノーマライゼーション社会の実現にあることをよく理解し、少子人口減
少社会という新たな局面で特別支援教育を推進しなければならないことを、
教育関係者は十分認識する必要があると思う。

 ○参考文献
 独立行政法人国立特殊教育総合研究所プロジェクト研究報告(2006):
 「個別の教育支援計画」の策定に関する実際的研究

 ○西牧 謙吾(にしまき けんご)
   →http://www.nise.go.jp/blog/2005/03/post_86.html

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■研究所の研究活動
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 このコーナーでは、研究所の研究活動について紹介します。
今回は、プロジェクト研究と課題別研究を1件ずつご紹介します。

●プロジェクト研究「特別支援学校における自閉症の特性に応じた指導パッ
ケージの開発研究-総合的アセスメント方法及びキーポイントとなる指導内
容の特定を中心に-」(平成18~19年度)

 前回のプロジェクト研究(H15年度からH17年度)では、養護学校等に在籍
する自閉症を併せ有する幼児児童生徒の割合が約3割であることを明らかに
しました。そして、国内外の自閉症教育に関する研究成果を整理し、教育的
支援に役立つガイドブックを作成するなど、指導内容等の在り方について研
究を進めました。
 今回の研究では、さらに自閉症の特性に応じた指導内容や指導法の開発、
学校・学級環境の整備について、自閉症教育で核となる学習内容、自閉症教
育のキーポイントを明確にし、自閉症の特性に応じた指導パッケージの開発
研究に取り組んでいます。この取組を基礎に、学校における授業を評価・改
善するためのツールを提案し、その活用例をまとめる予定です。
 我が国の自閉症教育のスタンダートを確立し、より質の高い学校教育の実
現を目指しています。

○本プロジェクト研究の概要→
http://www.nise.go.jp/blog/2006/06/post_581.html

○前のプロジェクト研究の概要、報告書(2006年3月)→
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-56.html
○自閉症ガイドブック→
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-210.html
○自閉症ケースブック→
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-52.html
○書籍の出版案内→
http://www.kyoikushinsha.co.jp/

●課題別研究「言語に障害のある子どもへの教育的支援に関する研究
  -吃音のある子どもの自己肯定感形成を中心に-」(16~18年度)

 吃音は現在までのところ原因が解明されておらず、確実に症状を消失させ
る治療法・指導法は見い出されていません。結果的に症状が消失することも
ありますが、生涯にわたり吃音を抱えることも多く、その予測も困難です。
また、流暢に話すことの困難さのみでなく、話すことや人に対する恐怖、自
己否定等、吃音があることによって生じる様々な問題を抱えることも少なく
ありません。本研究では、吃音のある子どもが自己の吃音と上手く向き合い、
自己に対する肯定的な捉えを育んでいくために、ことばの教室等、教育の場
ではどのような支援が可能なのか、具体的な実践内容・方法を検討しました。
研究報告書には、通常の学級で学ぶ発達障害等の子どもへの支援においても、
「自分自身を知る」という実践等で応用可能な知見が多く含まれています。

 ○研究の概略はこちら→http://www.nise.go.jp/blog/2005/03/post_638.html

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■特別支援教育トピックス
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 このコーナーでは特別支援教育に関連する最近のトピックスを紹介してい
ます。

●学校教育法等の一部を改正する法律を踏まえた
盲・聾・養護学校の校名変更状況調査の結果が文部科学省のWebサイトに
公表されています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/011.htm

●教育再生会議において本研究所の渥美義賢が情報提供を行いました。
(教育再生会議Webサイト)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/2bunka/dai10/10gijisidai.html

●新たな「重点施策実施5か年計画」の策定に向け、
障害者施策推進本部が動き始めました。(内閣府Webサイト)
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/d6/index.html

●厚生労働省のWebサイトに
障害者雇用対策の概要がまとめられています。
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=116809

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■研修員だより
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 このコーナーでは、研究所に研修に来られた方々からの寄稿やさまざまな
情報提供を行っていきます。今号は、平成18年度短期研修員(知的障害教育
コース)の久保田和枝先生からお寄せ頂きました。

●ここ沖縄ではうりずん(初夏)の季節を迎えました。週末になると全国の
同期の研修員から届くメールで楽しい情報交換を行っています。教員生活20
年目という節目で念願かなって研修を受けることができ、本当に感謝の気持
ちでいっぱいです。国総研における研修プログラムは実に綿密に構成されて
いたと思います。印象に残ったのは、「組織づくりと運営」や「研究協議」
等です。個人の専門的知識や技術を習得する中で、それを現場に戻っていか
に反映していくかが私たちに求められていることと分かりました。すぐに学
校全体を動かすことはできなくても、まずは所属している学部や学年から、
そして、保護者にも資料提供をしながら学んだことを再度整理して実践に活
かしているところです。研修で出会った方や体験したことは、私の財産にな
りました。それを心の糧にし、笑顔と輝きを失わずにがんばります。

                沖縄県立島尻養護学校教諭 久保田和枝

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■編集後記

 早いもので衣替えの季節となりました。ゴールデンウィーク明けから始ま
った特別支援教育専門研修4コース(視覚、聴覚、言語、自閉症・情緒)
112名の皆さんも、当初の緊張した面持ちから、和やかな雰囲気に変わって
きました。ウイークディーはしっかりと研修し、時にはアフターファイブの
時間までそれぞれの課題について議論を交わし、週末は鎌倉や横浜へ繰り出
してリフレッシュするという大変充実した時間を過ごしているようです。
 さて、今月号はいかがでしたか?平成19年度の課題研究が決まり、それぞ
れの取組が具体化されてきています。また特集でも「医療・福祉・保健と教
育の連携の現代的意義」ということで、特別支援教育への転換が、普通教育
や医療・福祉・保健等、社会全体でどのような意味を持つのか、西牧謙吾上
席総括研究員の分かりやすい解説がありました。今月末には研究所公開も予
定されています。どうぞ研究所のさまざまな活動にご期待下さい。
                    (第3号編集主幹:澤田真弓)

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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第3号
          発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
                 メールアドレス:a-koho @nise.go.jp
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