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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第136号

メールマガジン

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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第136号(平成30年7月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
大阪府北部地震で被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
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■目次
【お知らせ】

・新しい本研究所ホームページのご案内
・研究職員の公募について
・第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催について(第1次案内)
・平成30年度自閉症班公開研究成果報告会の開催(案内)
【NISEトピックス】
・業務部の活動紹介(3) 情報・支援部のチャレンジ
【研究紹介】
・本年度より実施する研究課題の紹介
【海外情報の紹介】
・生体医工学関連の国際会議(2018 World Congress on Medical Physics &
Biomedical Engineering)への参加報告
【特総研ジャーナルの紹介】
・諸外国における障害のある子どもの教育及びNISEトピックスについて
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】
 
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【1】お知らせ
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●新しい本研究所ホームページのご案内
 本研究所ホームページについて、平成28年度に実施した小・中・高等学校
の教員を対象にしたアンケート調査及び外部機関の診断結果を受け、平成29
年度に改定し、平成30年度から公開となりました。トップページはシンプル
な構成とし、利用者の視点から、「教育関係者の方」「研究者の方」「障害
者・ご家族・一般利用者の方」と、それぞれ別の入口を設けて利便性を図っ
ております。また、旧ホームページの掲載内容は継続しつつ、アンケートで
意見がございましたバナーの表示方法の改定やスマートフォンへの対応等の
改善を行うとともに、特別支援教育に関する情報を新しい内容に改めました。
 例えば、「教育関係者の方」向けには、「特別支援教育を学ぶ方・教育者
の方へ」のページに、本研究所が作成した「特別支援教育の基礎・基本 新
訂版―共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築―(ジア
ース教育新社)」のテキスト部分を章ごとにPDFデータで掲載しています。
 さらに、「研究者の方」向けには、従来あった「研究成果・刊行物」のペ
ージに加えて、「研究者・実践者(専門家)の方へ」のページにおいて分野
別の研究成果[特別支援教育全体と各専門領域(各障害種)別]を紹介して
います。そして、「障害者・ご家族・一般利用者の方」向けには、「一般の
方へ[特別支援教育のQ&A(作成中)]」のページを整備しているところで
す。
 今後も細やかな更新を行っていきますが、研修等を含めた様々な情報発信
の機会にアンケート調査等を再度実施したり、メルマガの読者の皆様に意見
をいただいたりすることで、さらに利用しやすいように改善を図っていきた
いと思います。ぜひ様々な場面で本研究所ホームページを活用していただけ
ますと幸いです。
 
○本研究所の新しいホームページはこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc
 
●研究職員の公募について
 研究職員を下記のように募集しています。
 
◇採用予定職種 総括研究員(研究職4級)、主任研究員(研究職3級)
        又は 研究員(研究職2級)
       (採用職種は、経歴等を勘案して決定する。)
◇任  期 任期なし。ただし、経歴等を勘案し、任期付(任期は3年
      以内、再任あり)となることもある。
◇募集人員 1名
◇担当職務  主として、下記の全ての職務に従事することとなるが、
      他の業務も担当することもある。
 (1)幼児期における特別支援教育に関する研究(乳児期の支援に関す
    る研究、小・中学校等における特別支援教育との連続性に関する研
    究等を含む)
 (2)本研究所が実施する研修等における講義・実習等及び本研究所が
    実施する諸事業の担当
 (3)所属部署における業務
◇応募資格
 (1)修士以上の学位(採用予定日までに取得見込みを含む)又はそれと
    同等の研究業績を有すること。
 (2)幼児期における特別支援教育又は乳幼児期における障害児保育・療
    育並びに就学等に関する研究業績(実践に関する研究発表等を含む)
    があること。
 (3)教育機関、福祉機関、医療機関等において、障害のある乳幼児に係
    る保育、相談・指導等の業務の経験があることが望ましい。
◇採用予定日 平成31年4月1日
◇応募期限  平成30年7月30日(月)(必着)
 
○提出書類や問い合わせ先など詳細はこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/about_nise/recruit
 
●第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催について(第1次案内)
 本研究所では、「障害のある子どもと障害のない子どもの交流をめざして
-日韓の取組から今後のインクルーシブ教育システム推進を展望する-」と
いうテーマで国際シンポジウムを開催します。
 本シンポジウムでは、諸外国におけるインクルーシブ教育の動向に係る調
査結果や韓国の教育制度と基本情報、韓国の教育現場における障害のある子
どもと障害のない子どもの交流の様々な取組等についての報告及びパネルデ
ィスカッションを予定しています。
 申込は11月に開始いたします。内容の詳細は本研究所ホームページをご覧
ください。
 
◇日時:平成31年2月2日(土)13:00 ~ 17:30
◇会場:一橋大学一橋講堂(学術総合センター内)
   (東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
◇定員:400名
◇申込開始:平成30年11月
 
○NISE特別支援教育国際シンポジウムの詳細はこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/special_symposium/h30
 
●平成30年度自閉症班公開研究成果報告会の開催(案内)
 自閉症研究班では、平成26~平成27年度と平成28~平成29年度に実施し
た2つの研究の成果を広く学校現場に還元、普及することを目的として公開
研究成果報告会を開催いたします。本報告会では、研究協力者、研究協力機
関として本研究にご協力いただきました先生方による実践報告や対談、また、
分科会等を通して自閉症のある子どもの指導について理解を深めます。皆様
のご参加をお待ちしております。
 
○「特別支援学級に在籍する自閉症のある児童生徒の自立活動の指導」に関
する第3回公開研究成果報告会
◇日時:平成30年8月8日(水)10時30分~16時20分(9時30分受付開始)
◇会場:国立特別支援教育総合研究所 研修棟
◇定員:【第1部:実践報告・講義】130名程度、【第2部:分科会】「基
    礎・基本コース」30名、「応用コース」15名(いずれも先着順、
    参加費無料)
◇参加対象:小・中学校の自閉症・情緒障害特別支援学級や知的障害特別支
      援学級の担当教員、特別支援学校(知的障害)教員等
 
○「自閉症のある子どもの指導目標の設定におけるポイントと授業改善」に
関する第1回公開研究成果報告会
◇日時:平成30年8月9日(木)10時30分~15時10分(9時30分受付開始)
◇会場:国立特別支援教育総合研究所 研修棟
◇定員:130名(先着順、参加費無料)
◇参加対象:特別支援学校(知的障害)教員、小・中学校等で自閉症のある
      子どもの指導に携わっている方等
 
 本報告会に関する具体的な内容や参加申込方法の詳細は、本研究所ホーム
ページをご覧ください。
 
○平成30年度公開研究成果報告会の開催要項及び参加申込方法はこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/news/2018/0518
 
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【2】NISEトピックス
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●業務部の活動紹介(3) 情報・支援部のチャレンジ
            新平 鎮博(情報・支援部長/上席総括研究員)
 
 本研究所の情報・支援部は、二つの業務を担っております。情報普及を中
心に行う「情報戦略」担当、校長会等の関係機関との連携を進める「学校教
育支援・連携」担当です。
 情報戦略担当では、昨年度の業務の一つとして、本研究所のホームページ
改定に取り組んできました。また、ナショナルセンターとして、特別支援教
育にとって大事な支援機器等(ICT)の情報収集を行いながら、ポータルサ
イトでの情報提供、本研究所内にあるiライブラリー(教育支援機器等展示
室)の運営を行っています。また、平成27年度より、実物を触れる機会を提
供するために、地域での展示会を各都道府県の教育センター等の協力を得て
行っております。そして今年度の取組として、教育現場での利用を支援する
ために、機器の貸出も行っていきます。
 学校教育支援・連携担当では、インクルーシブ教育システム構築のため、
本研究所創設以来より協力関係がありました全国特別支援学校長会(以下、
全特長とする)に加えて、関係する全ての校長会・園長会等との連携を進め
ていきたいと取り組んでおります。担当の者が訪問する場合には、よろしく
お願いします。昨年度は新たに、特別支援学校「体育・スポーツ」実践指導
者協議会を、全特長の協力を得て実施し、障害者スポーツの理解啓発に取り
組んだところです。また国際分野では、ナショナルセンターとして、日本人
学校の支援と、海外に赴任される時に帯同される障害のある子どもの教育相
談も実施しています。さらに充実した支援体制構築の検討を重ねております。
 情報・支援部の大事なミッションとして、全ての教員の本研究所に対する
認知度50%以上を目指しております。本研究所における研究成果や収集した
情報に基づくコンテンツ等を幅広く発信するのが情報・支援部の役割です。
「研究所を知る」=「特別支援教育を知る」「役立つ情報を研究所から得る」
ことですので、校長会等での情報提供や研究所セミナー等を通じて、まずは、
研究所のコンテンツを知っていただき、全ての教員が本研究所ホームページ
にアクセスして利用することが、障害や病気のある子どもたちの教育支援に
つながるよう、情報・支援部はチャレンジを続けます。本研究所の情報普及
について、アイデアがありましたら、ぜひご意見をお寄せください。
 
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【3】研究紹介
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●本年度より実施する研究課題の紹介
                     研究企画部総合研究推進担当
 
 本研究所で実施する研究において、より教育現場のニーズに対応すること
を目的として平成30年1月に実施した「平成30年度に研究所が実施する新規
研究課題等に係る意見」調査では、多くの方々よりご回答いただきましたこ
とを心から御礼申し上げます。頂戴した貴重なご意見やご要望を踏まえて、
新規課題における今後の取組について紹介します。
 
1)基幹研究「我が国におけるインクルーシブ教育システム構築に関する総
合的研究 ―インクルーシブ教育システム構築の評価指標(試案)の検証―」
(平成28年度~平成32年度)
                                                          研究代表者:金子 健
 
 本研究は、各地域で展開されているインクルーシブ教育システムの構築の
成果や課題を可視化する評価指標(試案)を作成し、その検証を行うととも
に、各地域、各機関のインクルーシブ教育システム構築の取組の状況を明ら
かにすることを目的としています。
 いただいたご意見の中では、同取組の状況は、各地域において差があるこ
とから、この、地域の差異や特性を前提として研究を進めてほしいとの意見
が多くありました。評価指標についても、その差異を明らかにするものにし
てほしいというご意見がありました。一方、各地域の差異を前提としつつ、
どの地域でも共通する事項を取り上げてほしいとの意見もありました。評価
指標の内容として取り上げるべき事項についての意見(研修、教員の知識・
理解、機関連携、交流及び共同学習等が挙げられていました)とともに、評
価指標の改訂や活用における留意事項として、研究を進めていきたいと思い
ます。
 また、各地域、各機関の同システム構築の具体例として、その取組の状況、
課題への対応等を知りたいとの意見も多くありました。本研究では、評価指
標の検証を通して、各地域、各機関における同システム構築の実際について、
その具体的な状況を調査します。その中で、各地域における各機関(教育委
員会、幼稚園、小・中・高等学校、特別支援学校等)の取組、課題、対応等
について、有用な情報を得て、研究成果として示していきたいと考えていま
す。
 
2)基幹研究「特別支援教育における教育課程に関する総合的研究-新学習
指導要領に基づく教育課程の編成・実施に向けた現状と課題-」(平成30年
度~平成32年度)
                        研究代表者:横倉 久
 
 平成29年に小学校・中学校学習指導要領及び特別支援学校小学部・中学部
学習指導要領、平成30年に高等学校学習指導要領(以下、新学習指導要領と
する)が公示されました。この新学習指導要領の円滑な実施を支援すること
は、本研究所の重要な役割であり、このため、平成28年度から平成32年度ま
での5年間のメインテーマを「特別支援教育における教育課程に関する総合
的研究」として研究を実施することとしています。
 新学習指導要領では、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どの
ように学ぶか」等の観点から枠組みが整理され、「子ども一人一人の発達を
どのように支援するか」ということについても具体的に記述されています。
また、障害のある子どもたちの学びの実現のためには、多様な学びの場にお
ける教育課程の連続性を考慮し、障害の状態や発達の段階に応じた組織的・
継続的な指導や支援の必要性が指摘されています。
 こうした新学習指導要領の理念の実現のためには、「文部科学省、国立特
別支援教育総合研究所、都道府県等教育センター、特別支援教育に関する研
究団体等が連携し、特別支援教育に係る教育課程の編成・実施についての実
態把握、教育課程の改善のための研究開発に取り組み、各学校での教育課程
の編成や学習指導の改善・充実を支援していくことが重要である」こと、
「さらに、将来の学習指導要領の改訂に資するよう、新学習指導要領に基づ
く教育課程編成、実施について、全国的な状況を経年で把握・分析していく
こと」が極めて重要であると考えます。
 そこで、本研究では、関係団体と連携した研究体制を構築しながら、新し
い学習指導要領に基づいて編成・実施される教育課程のもとで、育成を目指
す資質・ 能力の指導の状況や、学びに必要な一人一人への支援状況などを
把握することを目的とした研究を実施することとしました。
 
3)基幹研究「言語障害のある中学生への指導・支援の充実に関する研究」
(平成30年度~平成31年度)
                       研究代表者:滑川 典宏
 
 本研究は、言語障害特別支援学級及び通級指導教室(以下、「ことばの教
室」とする)に通う言語障害のある中学校段階の生徒が必要とする指導・支
援内容、体制について明らかにし、言語障害のある中学生への支援を充実さ
せるための方策を考察・整理することを目的としています。
 皆様からは、「思春期を迎えた中学生に対する具体的な指導・支援内容に
ついて提示してほしい」、「中学生が通いやすい体制について各地の現状を
知りたい」との意見が多数ありました。その他にも「中学校のことばの教室
担当教員の専門性の向上」や「他の教職員に対する理解啓発の必要性」を訴
える意見もいただきました。今後、いただいた意見を活用して、質問紙調査
の参考にさせていただき、言語障害のある中学生や担当者のニーズを明らか
にしていきたいと思います。
 また、事例研究では、言語障害のある中学生のニーズに応じた具体的な指
導・支援の内容や通いやすいことばの教室の在り方について、ことばの教室
の担当教員と協力して検討していきたいと思います。
 本研究の成果につきましては、報告書を作成し、言語障害のある中学生の
指導・支援している先生方に活用していただけるように本研究所ホームペー
ジで公開して、成果の普及に努めていきます。
 
4)基幹研究「聴覚障害教育におけるセンター的機能の充実に関する研究      
-乳幼児を対象とした地域連携-」(平成30年度~平成31年度)
                        研究代表者:山本 晃
 
 本研究は、全国の特別支援学校(聴覚障害)における乳幼児相談に係る組
織体制の現状を確認した上で、(1)教育機関と医療・福祉・保健の各機関
との連携の状況、(2)家族支援等の状況等を把握・検討することを通して
これまで制度として位置付けられることなく、各自治体において実施されて
いた乳幼児教育相談の実施状況を分析し、パターン化することにより、乳幼
児教育相談に係る課題の整理を行い、早期からの教育相談・支援体制構築に
係る今後の我が国の施策に資することを目的としています。
 皆様からは、「連携の在り方についての提案をしてほしい」「有効な地域
連携の手立てを示してほしい」「医療・福祉等関係機関との連携の在り方も
含めたセンター的機能の必要要件を明らかにしてほしい」「県の規模、面積
等の地理的条件に応じたセンター設置・運用の在り方等を事例集等で紹介し
てほしい」「幼児、乳幼児を対象にした充実した支援を継続して行うための
工夫(担当者の研修、専門知識の向上など)を明らかにしてほしい」との意
見を多数いただきました。また、「特別支援学校のセンター的機能の取組に
ついて、特別支援学校、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、関係機関(医
療、福祉等)のそれぞれの視点からの課題とそれを踏まえた今後の展望につ
いて示唆がほしい。」という意見もありました。
 これらのことは、研究成果の報告の時期に、リーフレットや本研究所ホー
ムページによって研究成果を公開し、学校現場へ還元させていただきたいと
考えております。また、平成31年度の8月には、本研究で得られた知見等に
ついて、研修会という形で、報告し、意見をいただく場も設けようと考えて
おります。
 
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【4】海外情報の紹介
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●医学物理学及び医用生体工学に関する国際会議(2018 World Congress on
Medical Physics & Biomedical Engineering)への参加報告
           西村 崇宏(発達障害教育推進センター 研究員)
               土井 幸輝(情報・支援部 主任研究員)
 
 平成30年6月3日から8日にかけて、チェコ共和国のプラハにあるプラハ
コングレスセンターで開催された医学物理学及び医用生体工学に関する国際
会議(2018 World Congress on Medical Physics & Biomedical
Engineering、以下WC2018)に参加しました。世界各国から関連する分野
の研究者や企業の技術者などが集まり、日本からの参加者も数多くいました。
この国際会議は、3年に1度開催される医学物理学及び医用生体工学に関連
する世界最大規模の学会の一つです。WC2018では、アシスティブテクノロ
ジーやバイオメカニクス、リハビリテーションといった23のトピックスが設
けられており、合計900演題以上の口答発表と800演題以上のポスター発表
がなされました。世界の先進的な研究成果に触れることのできる貴重な機会
となりました。また、科研費で取り組んだ研究成果の発表を行い、他国の研
究者からも高い関心を示していただきました。こうした取組を通じて、研究
成果を広く普及するとともに、様々な視点から議論を行い、今後の展開に繋
げていければと考えています。
 また、WC2018への参加に合わせて、プラハにある2つの大学を訪問しま
した。1校目は、中欧において長い歴史を有するカレル大学の教育学部を訪
れ、障害のある学生への支援の現状についてお話を伺いました。視覚障害の
ある学生に対しては、連絡事項や講義資料などの文章の電子データを提供す
るなどして支援を行っているとのことでした。2校目は、チェコ工科大学の
電気工学部を訪問し、視覚障害者支援技術に関する研究について情報収集を
行いました。視覚障害者が白杖による単独歩行を行う際に活用することので
きるナビゲーションシステムの開発研究についてお話を伺うことができまし
た。
 目的地までの道のりを人間が話しているかのような自然なニュアンスで説
明する文章を自動生成するシステムであり、実証実験なども進められている
とのことでした。
 今回の国際学会への参加と大学訪問を通じて得られた情報は、本研究所の
専門研修や研究事業などにも還元していければと考えております。
 
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【5】特総研ジャーナルの紹介
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●諸外国における障害のある子どもの教育及びNISEトピックスについて
 本研究所では、本研究所の研究をはじめとする様々な活動内容を紹介する
「国立特別支援教育総合研究所ジャーナル(通称:特総研ジャーナル)」を
毎年作成し、本研究所ホームページに掲載しています。前号に引き続き、こ
の3月に発行した特総研ジャーナルの内容を紹介します。
 今月は諸外国における障害のある子どもの教育及びNISEトピックスに関し
てご紹介します。
-諸外国における障害のある子どもの教育-
平成29年度に日本の学習指導要領が改訂されたことを踏まえ、「通常教育
及び障害のある子どもの教育課程」に焦点を当て、アメリカ、イギリス、イ
タリア、オーストラリア、韓国、スウェーデン、フィンランド、フランスの
計8か国の教育課程の基準について報告しています。また、各国における通
常教育に関する基本情報及び近年の教育施策の動向についても掲載していま
す。
-NISEトピックス-
 本研究所が平成29年度に情報普及・理解啓発活動として実施した各種イベ
ントや研究協議会等の様子を紹介しています。
 
○諸外国における障害のある子どもの教育及びNISEトピックスに関する記事
はこちら→
 http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/14368/20180522
-112036.pdf#page=108

 
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【6】NISEダイアリー
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           「放課後等デイサービス」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)
 
 6月の初め、今年度の特別支援教育担当者会議が文部科学省で開催された。
お昼をはさんで、前半は、文部科学省の行政説明が行われ、後半は、厚生労
働省の障害者施策に関する担当課の行政説明がなされた。
 一日、話を聞かせていただきながら、頭に浮かんだことを述べてみよう。
 以前は、厚生労働省の様々な施策は、「参考」という印象が強かったが、
今は、密接に関連していると思う。放課後等デイサービスや医療的ケア、就
労支援等がその例として挙げられる。ここでは、最初の事項について考えて
みたい。
 毎日、下校時刻になると、賑やかな声が聞こえてくる。隣の久里浜特別支
援学校の子どもたちや先生、迎えに来たヘルパーさんたちが挨拶を交わす声
である。時々、学校現場が懐かしくなり、下校風景を眺めさせてもらう。子
どもたちの笑顔とともに、最近気が付くのは、ヘルパーさんたちの車の数が
増えていることだ。学校の前庭などにある駐車スペースを埋め尽くすほど。
こうした状況は、先日の厚生労働省の説明を裏付ける。平成24年に児童福祉
法の改正が行われ、障害児の支援を強化するため、障害種別で分かれていた
サービス体系を、通所・入所の利用形態の別により一元化した。そして障害
児通所支援の一つとして、「放課後等デイサービス」が新たに位置付けられ
た。
 その支援の内容は、「授業の終了後又は学校の休業日に、生活能力の向上
のために必要な訓練、社会との交流の促進その他必要な支援を行うもの」と
されている。そして、このサービスを利用する保護者の方々は、年々増加し
ているとの話であった。隣の学校の子どもたちの下校時刻に、ヘルパーさん
の迎えの車が増えているのも、宜なるかなと思った。
 以前、私が文部科学省で仕事をしていた頃に、課題として挙げられていた
のは、下校のスクールバスの発車時刻をいつにするかということだった。つ
まり、学校の授業時間を確保するために、少しでも、遅らせられないかとい
うことだった。しかし、スクールバスの台数には限りがある。交通渋滞等で
長時間、子どもを乗車させておくわけにもいかない。かといって、授業時間
を減らすわけにもいかない。そんなジレンマが学校現場にはあったと思う。
 特に、小学部の高学年ともなれば、授業時数が増える。放課後の活動も計
画し、いろいろなことを指導したい。でも、スクールバスに乗せなければい
けない。そんなわけで、先生方は時間割の編成にも苦心していた。
 今、特別支援学校における個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成は、
当たり前のことになった。こんな時に考えたいのは、学校だけで子どもを育
てるのではないということ。つまり、地域の資源をうまく活用して、社会全
体で子どもを育てるという視点だろう。個別の教育支援計画を利用すること
も大切だが、まずは、放課後等デイサービスを行っている事業者やヘルパー
さんと学校の先生、そして保護者との「コミュニケーション」である。
 それが意味のあるものとなるよう、個別の教育支援計画の利活用も含めて、
関係機関の連携・協働が求められていると思う。協力関係がうまくいってい
る事例の紹介、そのコツなども共有していきたいものである。
 
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【7】研修員だより
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 今号は、平成28年度第一期特別支援教育専門研修を修了された久賀弘太郎
先生からお寄せいただきました。
 
「特総研で見つけたこと」
                久賀 弘太郎(名古屋市立高蔵小学校)
 
 私の教員生活は、通常の学級の担任をすることから始まりました。一斉指
導と個別の指導の両立の難しさに直面し、個別の指導について深く学びたい
と思うようになりました。そして、転勤を機に特別支援学級の担任になるこ
とを志願しました。それから数年、通常の学級の担任と特別支援学級の担任、
ちょうど同じ年数を経験する年に、久里浜の地を踏みました。
 特総研での講義、学校や就労施設での実地研修を通して、多くを学ぶこと
ができました。中でも研究協議では、「インクルーシブ教育システムを具体
化してみよう」と、学校種や担当種の異なる7人で協議を重ね、それぞれの
思いや、現場の難しさを織り交ぜながら、特別支援学校と通常の学校との交
流及び共同学習の計画を立てました。それは、個別の支援を子どもたち同士
でつくり出すという『社会の中で生きづらさを感じている人が、生き生きと
生きていくためには』という命題に、子どもたちが向き合うことのできるも
のでした。
 数年前、私が感じていた一斉指導と個別の指導の両立の難しさに対する、
一つの答えを、特総研で見つけることができたと思います。それを実現して
いくことが、今の自分の目標です。
 
○名古屋市立高蔵小学校のホームページはこちら→
 http://www.takakura-e.nagoya-c.ed.jp/
 
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【8】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。
 
○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=13344&lang=ja
 
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【9】編集後記
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 この度の大阪府北部を震源とする地震により被災されました方々に心より
お見舞い申し上げます。また、亡くなられました方々のご冥福を心からお祈
り申し上げますとともに、ご遺族の皆様に謹んでお悔やみ申し上げます。
 皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
大阪府高槻市では小4女児が倒壊した学校のブロック塀の下敷きになり亡
くなるという事故がありました。報道によれば、安全の点検・確認のチャン
スは複数回あったとのこと。東日本大震災では「想定外」という想像力の欠
如が災害を大きくすることを学びました。今回の事故は、点検・確認の「妥
当性」や「質」の、それこそ点検・確認が必要だということを教えてくれて
いるのではないでしょうか。
 さて、「研修員だより」では平成28年度第一期特別支援教育専門研修修了
の久賀弘太郎先生よりメッセージをいただきました。研究協議班のみんなで
ああでもない、こうでもないと、現場の厳しさを分かち合いながら、話し合
った日々を懐かしく思い出しました。久賀先生は学校に戻られてから、研修
で学んだことを活かした授業づくりに取り組んでいるとのことでした。生命
の安心・安全はもちろんのこと、子どもたちの心の安心にも腐心し、知的障
害特別支援学級の子どもたちと通常の学級の子どもたちの双方が安心して自
分を発揮できる学校生活作りに取り組んでいらっしゃいます。
 子どもたち同士の温かな関係は、災害時も含めたピンチの時にも、きっと
互いを助けてくれる基盤となることでしょう。
 下記は、本研究所ホームページにある「災害時における障害のある子ども
への配慮」のリンク先です。平常時から準備しておくことも書かれておりま
す。広くみなさまにご活用いただければ幸いです。
                   (第136号編集主幹 涌井 恵)
 
○「災害時における障害のある子どもへの配慮」はこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/report_material/disaster/consideration
 
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次号も是非ご覧ください。
「メールマガジン」へのご意見・ご感想はこちら
 
国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第136号(平成30年7月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
          ([アットマーク]を@にして送信してください。)
 
○研究所メールマガジンの利用(登録、解除、バックナンバーを含む)につ
いてはこちら→
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