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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第142号

メールマガジン

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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第142号(平成31年1月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【新年のご挨拶】
【お知らせ】
・第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催について(受付終了間近)
・横須賀市児童生徒ふれあいフェスタ「ワークショップの部」の開催(終了
報告)
・平成30年度第3回高等学校における通級による指導に関わる指導者研究協
議会の開催(終了報告)
【NISEトピックス】
・平成30年度国立特別支援教育総合研究所セミナーのご案内
【連載コーナー】
・共同研究「インクルーシブ教育場面における知的障害児の指導内容・方法
の国際比較~フィンランド、スウェーデンと日本の比較から~(平成28-29
年度)」の研究成果報告書から [第6回]
・地域実践研究員だより [第3回]
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】
 
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【1】新年のご挨拶
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 皆様、明けましておめでとうございます。本メールマガジンをいつもご愛
読いただき、誠にありがとうございます。
 平成28年(2016年)度から始まった、本研究所の第四期中期目標・中期計
画期間も、今年は4年目を迎えます。2020年度の第四期終了を前にして、当
初の計画がねらい通り進められるよう、努力してまいりたいと思います。今
年も、国の政策課題や教育現場の課題に対応した業務運営を行い、個々の子
どものニーズに即した教育の実現を目指して、様々な活動を工夫していきた
いと考えます。
 さて、昨年は、全国各地で、地震や豪雨などの自然災害に見舞われました。
研究所においても、石積みをチェックしたり、塩害によって傷んだ空調機器
の更新をしたりと、間もなく創立50周年を迎えるに当たり、施設・設備の点
検・修理が急務となっています。
 こうした中においても、特別支援教育の一層の充実のため、研究活動や研
修事業、情報収集や発信、インクルーシブ教育システムの構築や発達障害教
育に関わる研究等の推進に力を注いでまいります。
 また、2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、特
別支援学校等の体育・スポーツの普及・充実にも努めてまいります。
 併せて、本メールマガジンの一層の充実にも努力していく所存です。引き
続き、皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。
 
               独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
                      理事長 宍戸 和成
 
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【2】お知らせ
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●第4回NISE特別支援教育国際シンポジウムの開催について(受付終了間近)
 本研究所では、「障害のある子どもと障害のない子どもの交流をめざして
-日韓の取組から今後のインクルーシブ教育システム推進を展望する-」と
いうテーマで国際シンポジウムを開催します。テーマに関する様々な取組等
についての報告及びパネルディスカッションを行います。

◇内容及びシンポジスト・登壇者
  第1部 ・諸外国におけるインクルーシブ教育システムに関する動向
      ・韓国における特殊教育制度の解説
  第2部 シンポジウム
  話題提供者:オ ヨンソク 氏(韓国国立特殊教育院研究士)
        チェ ジョンヒ 氏(韓国大田市立ソナン初等学校教諭)
        岡野 陽一 氏(相模原市立青少年相談センター指導主事)
  指定討論 :鄭 仁豪 氏(筑波大学教授) 
◇日時:平成31年2月2日(土) 13時~17時30分(12時受付開始)
◇会場:一橋大学一橋講堂(学術総合センター内)
    (東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
◇定員:400名(日韓同時通訳有り)

 既に参加申込の受付を開始しております。お申込みは、次の2通りの方法
で受付しております。皆様のご参加をお待ちしております。 
(1)参加申込のWebページ「申込受付フォーム」からの申込み
(2)参加申込のWebページ掲載のチラシ裏面申込用紙でFAXによる申込み 

○NISE特別支援教育国際シンポジウム参加申込のWebページはこちら→

 http://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/special_symposium/h30

 

●横須賀市児童生徒ふれあいフェスタ「ワークショップの部」の開催(終了
報告)
 平成30年12月2日(日)に、横須賀市教育委員会との共同主催により
「横須賀市児童生徒ふれあいフェスタ」を開催しました。本イベントは、横
須賀市内に設置されている特別支援学級や特別支援学校等の幼児児童生徒の
作品を展示する「作品展の部」と、自閉症を含む発達障害に関する理解啓発
を図る「ワークショップの部」の2部構成で、平成30年度障害者週間キャン
ペーンYOKOSUKAの一環として実施しました。「ワークショップの部」では、
教材・教具等の展示や心理的疑似体験、配信動画によるミニ講義、研究紹介
を行い、体験的に理解を深めていただきました。さらに、横須賀市立横須賀
総合高等学校の障害理解に関する取組や、世界自閉症啓発デー(毎年4月2日)、
国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センター等につ
いても紹介しました。285名の教職員や保護者、福祉関係機関職員、一般市
民の方々にお越しいただきました。心より感謝申し上げます。

 

●平成30年度第3回高等学校における通級による指導に関わる指導者研究協
議会の開催(終了報告)
 12月10日(月)、11日(火)の2日間、標記指導者研究協議会(3回連
続型)の第3回を本研究所において開催しました。本研究協議会は、本年4
月より制度が運用されている「高等学校における『通級による指導』(以下、
高校通級)」の推進に向けて、指導的立場にある教職員による研究協議等を
通じ、担当者の専門性の向上及び高校通級の理解推進を図ることを目的とし
て、昨年度から年3回連続型として開催しているものです。今回は、全国か
ら担当指導主事や高校等教員108名と、多くの方に引き続き受講していただ
きました。
 第3回の今回は、全体会で、文部科学省による政策動向「高等学校におけ
る通級による指導の2年目に向けて」の説明、シンポジウム「高等学校にお
ける通級による指導の役割と今後期待される取組」が行われました。シンポ
ジストとして、日本学生支援機構の小越真一朗障害学生支援課長、高齢・障
害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センターの高瀬健一主任研究員にご
登壇いただき、高校卒業後に必要な力の視点から今後の高校通級の役割や在
り方について考える機会となりました。 
 コース別では、1コース(指導主事)は、情報交換「次年度以降の教育委
員会及び学校の取組」、2コース(教員)は、「通級による指導における自
立活動と個別の指導計画の実際」と題して、本研究所運営スタッフによる進
行のもと、9班に分かれて演習・班別協議を行いました。次に第1回、第2
回と同じく15班に分かれての班別協議を行い、各受講者から提出されたレポ
ート等に基づく報告や最新の情報等について、活発な協議・意見交換がなさ
れました。
 さらに、地域ブロック等に分かれての情報交換「次年度以降の教育委員会
及び学校の取組」も活発に行われました。
 なお、本研究協議会では、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課、田
中・庄司両特別支援教育調査官に、参画していただきました。

 
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【3】NISEトピックス
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●平成30年度国立特別支援教育総合研究所セミナーのご案内
 本研究所では、研究活動等の成果普及や教育関係者・関係機関との情報共
有を図るため、毎年、「国立特別支援教育総合研究所セミナー」を開催して
います。今年度のテーマは、「インクルーシブ教育システムの推進-多様な
学びの場における研究所のコンテンツ活用-」とし、平成31年2月15日(金)、
16日(土)の2日間、国立オリンピック記念青少年総合センターを会場として
実施します。
 1日目は、研修や専門的な指導、教育現場での実践等、様々な場面でご活
用いただける研究所の各部・センター(研究企画部、研修事業部、情報・支
援部、発達障害教育推進センター、インクルーシブ教育システム推進センタ
ー )が有する各種コンテンツを紹介するプログラムとしております。2日目
午前は、基幹研究の2年間の研究成果として、「視覚障害を伴う重複障害の
児童生徒等の指導について」、「精神疾患及び心身症のある児童生徒への教
育的支援・配慮に関する研究-「心の病気」のある子供への支援(Co-MaMe)
の提案-」と題した報告をいたします。また、今年度からの新たな取組とし
て、科研費による研究成果として「通常の学級における多層指導モデルMIM
-読みのつまずきの早期把握・早期支援-」、これまでの研究成果を地域実
践研究の中で活用した例として「校内における交流及び共同学習の充実~多
層的な支援システムを手がかりに~」を紹介します。加えて、2日目の午後
には、障害種別研究班によるポスターセッション、インクルDBやICT機器の
展示を実施いたします。その後、発達障害に関するシンポジウム「通級によ
る指導に期待されること~高等学校における在り方を考える~」を行います。 
 参加申込はすでに始まっております。下記の本研究所Webサイトよりお申
し込みください。皆さまのご参加をお待ちしています。
 
◇日時:平成31年2月15日(金) 12時~17時(11時受付開始)
2月16日(土) 9時30分~16時10分(9時受付開始)
◇会場:国立オリンピック記念青少年総合センター
    (東京都渋谷区代々木神園町3-1)
◇定員:500名
◇申込期間:平成30年12月4日(火)~平成31年1月18日(金)
◇国立特別支援教育総合研究所セミナーの詳細:
 http://www.nise.go.jp/nc/training_seminar/special_seminar/h30
◇参加申込先:
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=51947&lang=ja
 

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【4】連載コーナー
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●共同研究「インクルーシブ教育場面における知的障害児の指導内容・方法
の国際比較~フィンランド、スウェーデンと日本の比較から~(平成28-29
年度)」の研究成果報告書から
第6回 「事例5 小学校6年生の外国語活動の交流及び共同学習の実践」
                    知的障害教育研究班 神山 努
                       (研修事業部 研究員)
 
 本事例は、知的障害のある小学校6年生のEさんの、外国語活動における
交流及び共同学習の実践です。
 Eさんは、授業中に自分が考えたことや分かったことなどを積極的に発言
する様子がありましたが、授業の流れや内容を理解するのに個別的な配慮を
必要としていました。その一方で、6年生という学年段階であることもあり、
周囲から目立つような、明らかな特別扱いは受けたくない様子でした。
そのため、特別支援学級の担任は、交流及び共同学習の授業中に、Eさんに
必要な配慮を周囲から目立たない形で提供するようにして、Eさんが自然に
学級の児童と外国語活動に参加することを目指しました。
 ここでは「Turn right. 道案内をしよう」という外国語活動の単元について
紹介します。この単元は、場所の名前や道案内に関する英語表現に慣れ親し
むことをねらいとしていますが、Eさんは、配慮なしでは英語表現を理解す
るのが困難です。そこで、特別支援学級の担任は、Eさんが英語を話すため
の手がかりを伝えたり、Eさんが難しい課題ができた時に励ましたりしまし
た。その際、特別支援学級担任が常にEさんの近くにいるようにはせず、必
要な時だけEさんに近付くようにしました。これにより、Eさんが常に特別支
援学級担任に頼ることなく、同級生とともに学ぶ様子が見られるようになっ
ていきました。
 知的障害のある子どもの交流及び共同学習では、本人の学年や発達に合っ
た配慮を、学習内容の理解及び同級生とともに学ぶことの両方を視野に入れ
て、行っていくことが重要です。本実践は、6年生という学年段階を考慮し
つつ、同級生との学びを促進した一例と言えるでしょう。 
 本事例が詳しく掲載されている研究成果報告書は、以下のURLからダウン
ロードすることができます。
 
○本共同研究の研究成果報告書はこちら→
 http://www.nise.go.jp/nc/study/intro_res/joint
 
 次回は、小学校6年生の音楽における交流及び共同学習の実践事例を紹介
する予定です。どうぞお楽しみに。
 
●地域実践研究員だより [第3回]
 

「インクルーシブ教育システムの理解啓発に関する研究」

               地域実践研究員(長期派遣型)古川 和史

                    (静岡県藤枝市立藤枝中学校)

 

 「どんな知識を得ることができるのだろうか?」
 そんな気持ちを胸に、この国立特別支援教育総合研究所がある久里浜に向
かったことを昨日のことのように覚えています。そして、久里浜での生活も
あっという間に、残り2か月余りとなりました。
中学校の教員である私にとって、この地での「学び」は、その全てが新鮮で、
教員としての視野を広げてくれるものです。また、それは、特別支援教育に
関する新たな「知識」を得ることはもちろんのこと、これまでの特別支援教
育に関わる取組や普段の授業実践に関する「知識」を問い直す機会でもあり
ます。
 これまでの研究所での「学び」は、立場や見方・考え方の異なる研究所の
先生方からの助言や同じ地域実践研究員の仲間とともに協議することを通し
て、新たに得られた「知識」と既存の「知識」が関連付けられることによっ
て、より深い「知識」へと深化されていったように感じています。しかし、
ここでの「知識」は、本当の意味ではまだ学校現場での子どもの姿とは重な
っていないと考えています。この得られた「知識」を実際に子どもの姿と重
ね合わせ、様々な見方・考え方を手がかりに考えることを通じて、活用され
てこそ学校現場で生きて働く「知識」になるのだと、この地域実践研究を通
して強く感じている次第です。
 さて、私は、現在、地域実践研究として、「インクルーシブ教育システム
の理解啓発に関する研究」をテーマに、通常の学級における特別支援教育の
理解啓発に向けた「校内研修モデル」の開発に向けた研究を進めています。
本「校内研修モデル」は、研修成果を単なる「知識」で終わらせず、普段の
授業実践に生かすことのできるものとして深化させることを目指しています。
自らの研究所での学びとも重ね合わせながら、本研究成果によって、私たち
教員の学びが一層充実し、子どもたちの「笑顔」につながることを願って研
究に取り組んでいます。
 最後になりましたが、本研究所での貴重な学びの機会は、静岡県や藤枝市、
所属校などの多くの支えがあってこそ実現しているものと実感しています。
多くの方々への感謝の気持ちを忘れずに、残りの日々の研鑽に努めたいと思
います。

 

「交流及び共同学習における合理的配慮に関する研究」

              地域実践研究員(長期派遣型) 岩橋 是尚

                     (和歌山県立紀北支援学校)

 

 研究所に来てから9か月が過ぎました。研究所がある横須賀市野比は、野
比海岸から見える大きな海と尻こすり坂に象徴される山とが近接しており、
私が住む和歌山県にも似た長閑な土地です。坂が多いので自転車での買い出
しは苦労しますが、そんな生活も“当たり前”になってきました。
 研究所では、今までの教員生活では経験することのなかった研究の日々に、
戸惑いと不安を抱えていましたが、研究所の先生方の温かな言葉に助けられ、
また他県の地域実践研究員の方々と情報交換や意見交換をすることが励みと
なり、研究に向き合い取り組むことができています。
 地域実践研究では、交流及び共同学習における合理的配慮提供のプロセス
を明らかにし、特別支援学級での指導の充実につなげることを目的としてお
り、和歌山県教育委員会のバックアップのもと、和歌山県内の教育委員会及
び各学校等のご協力をいただきながら、研究を進めています。授業実践やイ
ンクルDBの分析を通して、児童生徒の困難さから合理的配慮を検討し、提
供していく上での課題や留意点を探っていきたいと考えています。
研究所の生活がもうすぐ終わると考えた時、“当たり前”だったものがとても
貴重なことで、かけがえのない経験や出会いであると感じるようになってき
ました。今まで“当たり前”だと思っていたことを見直すことで、進むべき道
や大切なものが見えてくるのだと思います。今回の研究で得られた知見を和
歌山県に少しでも還元できるよう、今後も努力していきたいと思います。

 

「3年目の地域実践研究」

                              横尾 俊

       (インクルーシブ教育システム推進センター 主任研究員)

 

 平成28年度から始まった地域実践研究も3年目となり、ご協力いただけま
す皆様のおかげで、ますます研究が充実してきました。今後とも、本研究に
ご参画いただいた教育委員会、地域実践研究員の皆様とともに、地域の課題
解決の一助となる研究になるよう、誠心誠意取り組んでまいります。
 平成30年度から始まった4つの研究は、中間まとめをし、その成果は参画
地域で行う地域実践研究普及フォーラムや各種学会等での報告をする予定で
す。また、研究活動の紹介は本研究所Webサイトで随時公開する予定です。
ぜひご覧いただけますと幸いに存じます。
 次年度も、多くの地域から地域実践研究にご参画いただく予定です。これ
からの研究につきましても、ご参画いただいた地域に成果を還元するととも
に、より多くの地域に普及できるように努めてまいります。

 
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【5】NISEダイアリー
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             「二通の葉書」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)
 
 昨年の11月頃に、教え子から葉書を貰った。さっと目を通したら、機織り
をしている教え子が、仲間と作品の展覧会を開くという。ある日曜日に会場
にいるので、見に来ませんかという案内状だった。
 そして、1週間もしないうちに、また同じ葉書が届いた。そそっかしい子
だったから、送ったのを忘れて、再度送ってきたのかと、勝手に思った。と
ころが違った。日曜日に子どもさんの行事が入ってしまい、会場に行けなく
なった。そこで、前日の土曜日の夕方、会場に詰めているとのこと。
 さらに、「都合が合えばお目にかかれることを楽しみにしています。」、
「会場は遠いので、無理をしなくて結構ですよ。」、「私の母が会場にいる
予定です。」などと、ワープロの字と手書きの小さな文字がしたためてあっ
た。
 私が、勝手に早とちりしたことを謝らねばならないと思うと同時に、様々
な気配りができるようになったことが嬉しかった。
 その教え子は、私が聾学校に勤めていた時、最後に受け持った子どもの一
人だ。彼女は、乳幼児教育相談を終えた後、別の聾学校の幼稚部に通い、小
1の時に改めて入学試験を受け、入って来た子どもだった。たまたま、私が
受け持つことになり、3年生まで担任をした。先に書いた通り、割とそそっ
かしいところがあり、考える前に行動してしまうタイプだった。でも、絵を
描くのが好きで、言葉の指導でも、絵を描かせるなどして一緒に考えた。何
より、当時のクラスメートが彼女を支えてくれた。失敗をしても、それを咎
めることなく、仲間として受け止めてくれた。3年生の最後に文集作りをし
た。3年間で書いた作文の中から、みんなで共有できるものを選び、私がワ
ープロで誤字脱字もそのままに打ち込み、子どもたちの考えるきっかけにし
ようと思った。絵の得意な子どもには、挿絵やカットを描かせ、それで隙間
を埋めるようにした。各ページ、人数分コピーしたものを綴じ、完成させた。
最後に、私の3年間の思い出と一人一人への願いを書いて、結びとした。
 今から30年も前の話である。子どもたちが文集のことを覚えていてくれれ
ばありがたいが、この30年で様々なことを経験しているはずである。小学部
高学年、中学部、高等部、そして社会に出て、周囲の人に助けていただきな
がら、それぞれが自分の人生を築いていることと思う。
 話題の彼女は、高等部を卒業すると、美術系の短大に行き、その後4年制
の課程に転学し、卒業後は京都の工房で修業したという。行動派の彼女らし
い生き方だ。全て、風の便りだったが、今回、久し振りに会い、作品
(着物と帯)を前にしながら、昔話に花が咲いた。
 改めて思う。子どもたちは社会に出てからの方が長く生きる。聾学校には、
乳幼児の頃から通うとは言え、せいぜい20年。その後、60数年は、社会の
人々と関わりながら生きていかねばならない。そう考えれば、周囲の人から
の支援が得られるような“人間性”を自ら作っていかねばならない。そのため
の基礎を聾学校(特別支援学校)で子どもたちに育てていかねばならないと
思う。思いやりや気配りは、言葉や知識・技能と同じ位大切だと気付かされ
た出来事だった。

 

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【6】研修員だより
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 今号は、平成29年度第一期特別支援教育専門研修を修了された加藤伸吾
先生からお寄せいただきました。
 

「私の活力源」
               加藤 伸吾(青森県立八戸第一養護学校)
 
 私は、平成29年度の専門研修(肢体不自由教育専修プログラム)に参加し
ました。あの濃い時間から、1年以上が過ぎましたが、今でも鮮明に思い出
されます。
 肢体不自由教育に携わって10年目という節目とも言える時期に参加した専
門研修でした。講義や演習、グループ協議などで、新しい知見を得ることが
できたとともに、これまでの自分自身の取組を顧みて、反省したり自信を得
たり、今後の活力となる2か月間でした。そして、全国から集まった志の高
い仲間と過ごした2か月間。熱い仲間ばかりで、朝から晩まで、教育につい
て語り、たまには(いや、頻繁に)くだらない話をし、仲間との濃密な時間
を過ごすことができました。このような仲間と出会えたこと、そして、仲間
が全国で活躍していることを聞くと、一層活力が湧いてきます。研修中も研
修後も頑張る元気をくれる、私にとってそんな研修でした。
 参加する経緯は、参加者それぞれかと思いますが、人見知りの私でもまた
行きたいと思える、本当に充実する研修です。これから、おすすめの研修は
何かと聞かれたら、「専門研修です。」と答えることでしょう。
 
○青森県立八戸第一養護学校のWebサイトはこちら→
 http://www.hachinohe1-shien.asn.ed.jp/
 
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【7】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力
のほどよろしくお願いいたします。
 
○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=57281&lang=ja
 
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【8】編集後記
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 明けましておめでとうございます。平成最後の年末年始、充実した日々を
過ごされたことと存じます。
 本研究所では、1月9日(水)から、第三期特別支援教育専門研修が始ま
ります。また、2月には第4回NISE特別支援教育国際シンポジウム、平成
30年度国立特別支援教育総合研究所セミナーの開催も予定されています。こ
のような機会も含めて、今後も学校現場で活用される研究成果の普及、情報
発信に努めてまいります。
 さて、昨年の11月に、「全国肢体不自由教育研究協議会福岡大会」に参加
いたしました。参加された先生方の熱気を感じる大会で、10の分科会のほか、
76本のポスター発表がありました。その内容を見ると、カリキュラム・マネ
ジメントの充実をはじめとした新学習指導要領に関するもの、タブレット端
末や視線入力機器等のICT機器の活用に関するもの、人工呼吸器の管理等を
含む医療的ケアに関するもの、特別支援学校のセンター的機能に関するもの
等、近年話題の発表が増えている一方で、自立活動の指導に関する発表も多
く見られました。新たな課題に対応しつつ、「不易」である子どもたちの教
育に必要な内容を充実させていくことが大切だと感じました。
 今月もメールマガジンをご愛読いただき、ありがとうございました。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。
                   (第142号編集主幹 吉川 知夫)
 
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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第142号(平成31年1月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
          ([アットマーク]を@にして送信してください。)
 
○研究所メールマガジンの利用(登録、解除、バックナンバーを含む)につ
いてはこちら→
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