障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に貢献します。

国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第4号

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      国立特別支援教育総合研究所メールマガジン
          第4号  2007.7.2
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【目次】
■研究所からのお知らせ
■今月の特集
■研究所の研究活動
■特別支援教育トピックス
■研修員だより
■特別寄稿
■編集後記
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■研究所からのお知らせ
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●平成19年度研究所要覧刊行のご案内

 平成19年度の研究所の事業の概要を示した「研究所要覧2007」が完成しま
した。下記から、PDFでダウンロードできますのでぜひご覧ください。
 ○こちら→
  http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-256.html

●平成18年度に実施した研究について、下記教材・教具を試作し、公開しま
した。

1.新しい詳細読みの一覧(田町読み)
 視覚障害児にも理解しやすい漢字の説明表現一式。パソコン画面読み上げ
 ソフトに組み込まれており、学校でも利用可能。
2.漢字の読み方辞典	
 漢字を入力すると、小学校段階の読み方を表示するソフト。障害の有無に
 関わらず全児童・教諭が利用可能。
3.音声提示による同音異義語練習問題	
 同音異義の漢字を正しく使い分けるための練習問題集。盲児が利用できる
 よう音声で問題を提示するが、障害の有無に関わらず全児童が利用可能。
4.単語親密度チェッカー	
 単語の親密度(単地味の度合い)を提示するソフト。児童に説明する単語
 として適当かどうかを判断するのに用いられる。障害の有無に関わらず全
 児童・教諭が利用可能。
5.辞書説明読みプログラム	
 視覚障害者障害児・者向けの新しい漢字説明方式の試作プログラム。画面
 読み上げソフトに組み込んで利用可能。

 ○上記1~5についてはこちら→http://www.nise.go.jp/kanji/

6.視覚障害教育用真空成型半立体教材	
 視覚障害者用に、触覚を活用して学習する野菜や魚の図鑑として利用作成
 マニュアルデータ。→本研究所の「iライブラリー」に展示しました。
7.触る絵(フェルメール「牛乳を注ぐ女」)	
 視覚障害者用に、絵画を浮彫に翻案して、触覚的に観察できるようにした
 もの →本研究所の「iライブラリー」に展示しました。

●平成19年度共同研究の課題が決まりました。

◇共同研究
 研究所の実際的・総合的研究と外部機関の基礎的・理論的な研究と有機的
に連携し、より効果的な研究成果の向上を図ります。現在、確定している研
究は以下のとおりです。また、下記以外にも、本年度中にスタートする新規
課題を企画中です。

1.全盲児童の図形表象の評価に関する研究:(東京工芸大学)
2.学習障害、注意欠陥多動性障害、高機能自閉症等に関連する脳機能障害の
 解明を目指した予備的研究 ~脳機能の非侵襲計測を中心に~:
 (独立行政法人国立病院機構 久里浜アルコール症センター)
3.病気のある児童生徒等へのPHSによるICTを活用した情報ネットワー
 クによる授業形態に関する実証的研究:
 (株式会社 ウェストフィールド)
4.地域における障害のある子どもの総合的な教育支援体制の構築に関する実
 際的研究:(横須賀市役所、神奈川県立保健福祉大学)
5.構音障害のある子どもが自ら学べる動画教材と配信技術の開発:
 (独立行政法人理化学研究所)
6.高等教育機関における発達障害のある学生の支援に関する研究―評価法の
 開発と教職員への啓発―:(日本学生支援機構)

以上の研究課題一覧は下記からもご覧になれます。
 ○こちら→http://www.nise.go.jp/blog/kyoudoukenkyu.html

また、上記の課題以外にも、本年度中にスタートする新規課題を企画中です。
決定次第、追ってお知らせ致します。

●ちょっと一息 季節のたより -野比海岸-

 7月に入ると近郊からの海水浴客で賑わう三浦海岸の北端、研究所の目の
前に広がる野比海岸は、海の家も無く、夏でものんびりと過ごすことが出来
る穴場的な海岸です。しかし、それは同時に、深刻な海岸浸食と隣り合わせ
であるということも見逃せません。潮流の変化による砂の流出のため、年々
砂浜が減少し、水深が急に深くなるため、遊泳禁止、高波による道路や住宅
などへの被害が絶えません。そしてその根底には、地球温暖化、再開発があ
ると言われています。
 ここ研究所から眺めると、前方に三浦半島を一望し、その奥に大島、伊豆
天城山、貨物船の激しく行き交う浦賀水道をはさみ、対岸に房総半島の美し
い山並み。夕方になると、太陽がこの海を赤く染め、ダイナミックな落日の
光景、そして、海岸沿いの街明かりが1つ2つと弧を描いて灯りはじめ、自
然美と人工美の織りなす夜景。1日を通して、まるでドラマを見るように展
開するこの美しい景観を、私たちはいつまでも大切に残したいと思わずにお
れません。この美しい夜景の一部でもある研究所では、今年も夏期の省エネ・
節電対策を実施いたします。皆さんのご理解・ご協力をお願いします。

※先月号でお知らせしたホタル、今年もたくさん確認できました。夏の夜空
に青白い光がふわふわと漂い、まるで優しい光で心をなでられたように癒さ
れました。ご報告まで。

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■今月の特集
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●小・中学校等における特別支援教育と特別支援学校のセンター的機能
                  大内 進(企画部・上席総括研究員)

 特殊教育から特別支援教育への転換に伴い、小・中学校等に通う障害のあ
る幼児児童生徒に対してそのニーズに応じた適切な教育を行っていくことが
大きな課題となっています。これまで障害のある幼児児童生徒の教育に関す
る専門機関として実践を積み上げてきた特別支援学校には、この面での経験
やノウハウが蓄積されています。「センター的機能」とは、特別支援学校が、
こうした資源を活用して、地域における障害のある子どもの教育の中核的機
関として小・中学校等を積極的に支援していこうとする役割を意味していま
す。
 本研究所では、この「センター的機能」の本格的実施に先立ち、「小・中
学校における特別支援教育への理解と対応の充実に向けた総合的研究」を立
ち上げ、先導的な研究に取り組んできました。この研究において、その機能
が7つの内容に分類できました。これらの成果は、中央教育審議会関連の委
員会に報告され、その後も「センター的機能」の内容検討の基礎資料として
活用されてきました。
 さまざまな協議を経て、この内容は概ね次の6つの機能に整理されていま
す。
 1) 小・中学校等の教員への支援機能
 2) 特別支援教育等に関する相談・情報提供機能
 3) 障害のある幼児児童生徒への指導・支援機能
 4) 福祉、医療、労働などの関係機関等との連絡・調整機能
 5) 小・中学校等の教員に対する研修協力機能
 6) 障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供機能。
 今後、特別支援学校には、「センター的機能」の充実がますます求められ
てくることになります。この機能を発揮するためには、特別支援学校の豊か
な資源と教員の高い専門性が不可欠なことはいうまでもありませんが、特別
支援教育の充実のためには、小・中学校等との十分な連携をとり、小・中学
校自身の教育力が高まるような支援を行っていくことにも留意する必要があ
ります。

 ○これまでの研究報告
 「特殊教育諸学校の地域におけるセンター的機能に関する開発的研究」
 プロジェクト研究報告書 
 詳細はこちら→
  http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-47.html
  http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-48.html
  http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-49.html

 ○関連研究
 「小・中学校における特別支援教育への理解と対応の充実に向けた総合的
 研究」
 詳細はこちら→http://www.nise.go.jp/blog/2006/06/post_581.html

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■研究所の研究活動
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 このコーナーでは、研究所の研究活動について紹介します。
今回は、プロジェクト研究と課題別研究を1件ずつ紹介します。

●プロジェクト研究「発達障害のある子どもの早期からの総合的支援システ
ムに関する研究」(平成18~19年度)について

 LD、ADHD、自閉症等の発達障害のある子どもについては、早期から
発達段階に応じた支援を行っていくことが重要であり、早期発見・早期支援
の必要性はきわめて高いと思われます。この早期発見・早期支援を具体化す
ることについては、発達障害者支援法においても国の責務として明記されて
います。本研究では、文部科学省・厚生労働省を含む発達障害に関係する分
野の研究者や行政・教育等の現場で実践されている様々な関係者の研究協力
を得て、国内の先進地域の実地調査、諸外国の情報収集、研究協力者との意
見交換等から目指すべきシステム案を作成し、発達障害のある子どもの早期
発見・早期支援の総合的なシステムの構築について、国及び地方自治体の行
政上の施策に資するものを提案することを研究の目的にしています。

 ○詳細はこちら→http://www.nise.go.jp/blog/2006/06/post_583.html

●課題別研究「慢性疾患児(心身症や不登校を含む)の自己管理支援のための
教育的対応に関する研究」(16~18年度)

 慢性疾患とは、急症状が急激・重篤ではないものの、長期間の経過をたど
る疾患の総称です。子どもの慢性疾患としては、ぜんそく、悪性新生物、慢
性腎疾患、慢性心疾患、糖尿病、先天性代謝異常、血液疾患、神経・筋疾患
などがあります。これらの子どもにとって、身体的・精神的な健康と生活の
質の維持、増進を図ることは重要な課題となります。そして、この課題解決
には、子ども自身による日常生活の自己管理が不可欠となります。本研究で
は、心身症や不登校も含む慢性疾患児に対する自己管理支援のための教育的
対応の在り方について検討を行い、日常の生活に必要な自己管理支援のため
のガイドブック等を作成しました。また、知的障害のある子どもの健康問題
に関する全国調査を実施し、知的障害児の自己管理の在り方、他者からの支
援の在り方について学校教育の観点から検討し、健康問題の啓発のための基
礎的資料を得ることができました。

 ○研究の概略はこちら→
          http://www.nise.go.jp/blog/2005/06/post_112.html

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■特別支援教育トピックス
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 このコーナーでは特別支援教育に関連する最近のトピックスを紹介してい
ます。

●文部科学省の Webサイトに、平成19年度「発達障害早期総合支援モデル事
業」及び平成19年度「高等学校における発達障害支援モデル事業」について
掲載されました。
 ○詳細は、こちら→
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/06/07060609.htm
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/06/07060608.htm

●文部科学省の Webサイトに、「特別支援教育関係 ボランティア活動事例
集」が掲載されました。
 ○詳細は、こちら→
  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/012.htm

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■研修員だより
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 このコーナーでは、研究所に研修に来られた方々からの寄稿やさまざまな
情報提供を行っていきます。今号は、平成18年度短期研修員(肢体不自由教
育コース)の仲谷 智先生からお寄せ頂きました。

 昨年度、短期研修員として約2ヶ月間北海道の真冬を逃れ、初めて雪のな
い温かい久里浜で過ごしました。とても冬とは思えない環境の中、充実した
講義は刺激的で今までの自分を振り返ることができ、我々教師は専門性を生
かした授業の充実を図らなければならいということを改めて感じました。本
校でも今年度の研究テーマ「互いに情報を共有しあい、話し合いを大事にし
た授業づくりをめざして」ということで取り組みをはじめています。保護者
をはじめとする関係者に説明責任の果たせる授業づくりをめざしたいと思っ
ています。最後に、この研修で研究所の先生方をはじめ、共に研修を行った
全国の仲間達との出会いは一生の宝となり、励みとなっています。このネッ
トワークを大切にしていきたいと思います。

                   北海道真駒内養護学校・仲谷 智

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■特別寄稿
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 研究所で実施した日本・マレーシア経済連携研修の第1期研修プログラム
(6月4日~29日)に、マレーシアから6名の研修員の方々が参加しました。
今回は、そのメンバーであるイダさんとシュコールさんが寄稿してください
ました。

○イダさん
 私の名前(フルネーム)は、Nor Sahlda binti Mohd Sallehです。私は、
マレーシアのアロールアカール中高等学校で、聴覚障害のある生徒たちを教
えています。私は他の5人の教員と共に、日本で特別なニーズに応えるため
にどのような取り組みが行われているかを学ぶため、NISEに来ました。
そして、特別なニーズのある子供への取り組みについて情報交換を行うこと
ができました。私は、私の担当している生徒たちに役立つさまざまな情報を
持って帰ることができます。
 NISEに滞在した期間に、私は日本における特別なニーズのある子供の
教育について多くを学ぶことができました。また、テクノロジーが特別なニ
ーズのある生徒が社会で生活していく上で、どのように役立つのかを学ぶこ
とができました。私は、NISEで、多くの研究者の方々からたくさんの知
識をいただけたことに感謝しています。
 NISEに滞在した期間に得ることのできた多くの知識と情報によって、
マレーシア政府や、私の担当している生徒たちに、何かを返していくことが
できると思います。
 NISEの研究者の皆様、ほんとうにありがとうございました。

○シュコールさん
 私は、マレーシアから来たAbdul Shukor bin Johariです。私は、日本・
マレーシア経済連携プログラムのため、1ヶ月間、国立特別支援教育総合研
究所(NISE)に滞在し、ICTコースに参加しました。私がみたところ、
NISEは、日本の特別支援教育の発展に大きな役割を果たしていると思い
ます。NISEで取り組んだプログラムは、肢体不自由のある子供の教育に
おけるICT活用について、私にとって大きな収穫となりました。また、
NISEで研究が行われている教育方法や教育機器に関する最新の情報に触
れることができました。そして、私は日本の文化、特に、日本の食べ物に興
味を持ちました。私はこの研修で、高度な技術を活用した発展した国の状況
をみることができ、幸せに思います。

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■編集後記
 研究所メールマガジン第4号をお届けします。今号では、特集として、特
別支援学校のセンター的機能について大内 進上席総括研究員が解説しまし
た。また、研究所で実施している2つの研究課題を紹介しました。研修員便
りのコーナーには、平成18年度短期研修員の仲谷 智先生から原稿をお寄せ
いただきました。また、6月にマレーシアから来られた研修員の方々からも、
特別に寄稿していただきました。研究所のスタッフと取り組んださまざまな
活動が、マレーシアの障害のある子供の教育にも生かされていくことと思い
ます。梅雨が明けるのが待ち遠しいですが、夏はすぐ近くにきています。こ
れからも読者の皆様に新鮮な記事をお届けできるよう、編集メンバー一同努
力していきます。お知り合いの方々にも、ぜひこの研究所メールマガジンの
ことをお伝え下さい。多くの方々に研究所メールマガジンを知っていただけ
ればと思います。
                    (第4号編集主幹 渡邉 章)

 ○「メールマガジン」へのご意見・ご感想をお寄せください。
  こちら→ a-koho@nise.go.jp

 ○研究所メールマガジンのバックナンバーは、こちら→
   http://www.nise.go.jp/magazine/back.html

 ○研究所メールマガジンの利用については、こちら→
   http://www.nise.go.jp/magazine/policy.html

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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第4号
          発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
                 メールアドレス:a-koho@nise.go.jp
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