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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第150号

メールマガジン

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      国立特別支援教育総合研究所(NISE)メールマガジン
         第150号(令和元年9月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・体育館の床面のリニューアル工事完了について
【NISEトピックス】
・NISE各部・センターの活動紹介(5) インクルーシブ教育システム推進セ
ンターの活動について
【研究紹介】
・精神疾患及び心身症のある児童生徒の教育的支援・配慮に関する研究
【研修報告】
・発達障害教育実践セミナーの終了報告
・特別支援教育におけるICT活用に関わる指導者研究協議会の終了報告
・特別支援学校寄宿舎指導実践協議会の終了報告
【NISEダイアリー】
【研修員だより】
【アンケートのお願い】
【編集後記】

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【1】お知らせ
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●体育館の床面のリニューアル工事完了について
 本研究所では、体育施設の経年劣化に対応し、8月5日(月)から11日
(日)にかけて体育館床のリニューアル工事を実施しました。本施設は、専
門研修で使用するほか、研修員や職員の福利厚生として使用しております。
また、本研究所では体育館とフットサルコートを、研究所の事業で使用する
時間以外は、一般の皆様への貸し出しを実施しています。
 予約状況については、研究所Webサイトで公表しておりますのでご覧くだ
さい。

○体育施設利用の案内についてはこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/physical_education

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【2】NISEトピックス
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●NISE各部・センターの活動紹介(5) インクルーシブ教育システム推進セ
ンターの活動について
 星 祐子(インクルーシブ教育システム推進センター長/上席総括研究員)

 インクルーシブ教育システム推進センターでは、地域が直面する課題に対
応した研究(地域実践研究)の推進、国際的動向の把握や諸外国の最新情報
の収集及び海外との研究交流、インクルーシブ教育システム構築事業を支援
するデータベースの整備・情報提供と支援を行っています。
1.地域実践研究事業の推進
 地域や学校が直面する課題を研究テーマに設定し、その解決を目指して、
研究所の研究員と各教育委員会より派遣された地域実践研究員が協働して研
究に取り組んでいます。今年度は、14県市の教育委員会に参画いただき、以
下のテーマについて15件の課題に取り組んでいます。
 ・教育相談・就学先決定に関する研究
 ・インクルーシブ教育システムの理解啓発に関する研究
 ・多様な教育的ニーズに対応できる学校づくりに関する研究
 ・学校における合理的配慮及び基礎的環境整備に関する研究
 来年度の地域実践研究については、各自治体が課題と考え、また教育施策
においても重要なテーマである以下の2テーマに取り組む予定ですので、参
画について是非ともご検討ください。 
 ・インクルーシブ教育システムの理解啓発に関する研究
 ・交流及び共同学習の推進に関する研究
 併せて、地域実践研究の4年間のまとめを行い、成果の発信に努めていき
たいと考えています。
2.国際的動向の把握と情報発信
 障害者の権利に関する条約の批准を踏まえた国際的動向の把握と情報発信、
海外の研究機関との交流等を進めています。
 今年度のNISE特別支援教育国際シンポジウムは、以下の日程・テーマで開
催します。
 日時:令和2年1月25日(土)13:00 ~17:30
 会場:一橋大学一橋講堂【学術総合センター内】(東京都千代田区一ツ橋
2-1-2)
 テーマ:子どもの学習のつまずきに速やかに対応する取組~フィンランド
の教育実践から今後を展望する~
 申込:令和元年11月~
3.情報発信・相談支援事業について
 インクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)にお
いて、合理的配慮の実践事例を紹介しています。現在までに、422事例を掲
載しています。保育所、幼稚園、認定こども園、小・中学校や高等学校の先
生方、関係者など、多くの方に閲覧・活用いただけるよう、利便性を図って
いるところです。

○インクルーシブ教育システム推進センターの事業についてはこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/about_nise/inclusive_center

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【3】研究紹介
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 ここでは、平成30年度に終了した研究課題について、研究概要並びに成果
報告をさせていただきます。

●精神疾患及び心身症のある児童生徒の教育的支援・配慮に関する研究
                       研究代表者:土屋 忠之

 病弱・身体虚弱教育を担っている特別支援学校・特別支援学級では、在籍
する児童生徒の病類の中で精神疾患及び心身症が最も多くなっています。ま
た、精神疾患及び心身症はこころの病気とも言われ、この中には発達障害の
二次的障害や、行動面や適応面に困難を抱えて不登校となっている児童生徒
が多く含まれ、特別支援学校のみならず小・中学校や高等学校等においても
支援が必要になっています。そこで、平成28年度に予備的研究として、精神
疾患及び心身症のある児童生徒が数多く在籍する特別支援学校(病弱)の教
員を対象に調査を行い、6領域40項目の教育的ニーズを明らかにしました。
本研究では、その教育的ニーズをもとに特別支援学校(病弱)の教員から具
体的な支援・配慮を記述式で集約し、データの整理・分析を行いました。そ
の結果から病状の3つの段階(受容期、試行期、安定期)により支援・配慮
を変化させる新たな支援方法「多相的多階層支援(Continuous Multiphase
and Multistage educational support)」(以下、Co-MaMe:こまめ)を得まし
た。
 また、この教育的ニーズ及びCo-MaMeから【アセスメントシート】、【支
援・配慮のイメージ図】を作成しました。これらを使うことで精神疾患及び
心身症のある児童生徒の実態や支援について「見える化」できるようになり、
学校内にて複数の教員で支援について共通理解しながら進めることが可能と
なりました。また、医療・福祉関係者等との話し合いや、小・中学校、高等
学校の教員間の話し合いも容易となり、発達障害の二次的障害や、行動面や
適応面に困難を抱えて不登校となっている児童生徒への対応に活用できると
考えられます。
 今年度は、この教育的ニーズ及びCo-MaMeから作成した【アセスメントシ
ート】、【支援・配慮のイメージ図】を活用して、特別支援学校や小・中学
校、高等学校の教員を対象とした研修会を行い、研究成果の普及を図ってい
ます。その研修会は「こころの病気のある児童生徒への支援普及セミナー」
という名称で、8月末までに6ヶ所で実施しました。また、今後は、「ここ
ろの病気のある児童生徒への支援ガイド」(仮称)の発行も予定しています。
そのガイドには【アセスメントシート】と【支援・配慮のイメージ図】を掲
載するのはもちろんのこと、多くの学校で活用しやすいように教育的ニーズ
ごとに児童生徒のエピソードを掲載する予定です。

○研究成果報告書はこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/wysiwyg/file/download/1/2703

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【4】研修報告
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●発達障害教育実践セミナーの終了報告

 7月17日(水)と18日(木)に本研究所研修棟にて「令和元年度発達障害
教育実践セミナー」を開催しました。本セミナーは今年で3回目になります。
 今年度は、家庭と教育と福祉の連携を推進する「トライアングル」プロジ
ェクト報告を踏まえ、「発達障害者支援における家庭と教育と福祉の連携を
推進するための教員研修の在り方」をメインテーマとしました。今回は、各
地方自治体における研修の充実に寄与すべく、参加対象を教育委員会及び教
育センターの研修担当の指導主事等に限定したセミナーとしました。
 当日は全国から指導主事等48名の皆様に参加いただきました。1日目は行
政説明と基調講演、2日目はパネルディスカッションと実践紹介、研究協議
を実施しました。
 行政説明では、文部科学省田中裕一特別支援教育調査官と厚生労働省加藤
永歳発達障害対策専門官から国の最新情報をお話しいただきました。
 基調講演では、信州大学本田秀夫教授より「発達障害児・者の支援に関す
る現状と課題」をテーマに、今の社会が抱える問題や家庭や福祉との連携の
在り方等、たくさんの示唆をいただくことができました。
 2日目のパネルディスカッションでは「教育と家庭・福祉・医療との連携
の在り方と教員に求められる専門性」をテーマとしました。家庭(日本発達
障害ネットワークJDDネット山岡修氏)、福祉(広島県発達障害者支援セン
ター西村浩二氏)、医療(国立障害者リハビリテーションセンター西牧謙吾
氏)の3名のパネリストからの提言をもとに、連携の在り方に関して活発な
議論が行われました。
 実践紹介では、宮城県総合教育センター若山洋氏、山梨県教育庁若槻洋貴
氏より、それぞれの地域の実情に応じた「効果的な研修の在り方」に関して
実践紹介をしていただきました。それを受けて参加者間で「通級による指導
の専門性」に関して協議を行いました。
 事後アンケートの結果では、行政説明、基調講演、パネルディスカッショ
ン、実践紹介のいずれのセクションにおいても「とても参考になった」が約
90%、「やや参考になった」を含めると100%の参加者から高い評価を得る
ことができました。
                     実施グループ長:玉木 宗久

●特別支援教育におけるICT活用に関わる指導者研究協議会の終了報告

 7月22日(月)及び23日(火)の2日間、特別支援教育におけるICT活用
に関わる指導者研究協議会を本研究所において開催しました。本研究協議会
は、インクルーシブ教育システムの充実を目指し、障害のある幼児児童生徒
に適切な指導・支援を行う上で必要なICT活用について、指導的立場にある
教職員による研究協議等を通じ、各地域の特別支援教育におけるICT活用の
推進を図ることを目的としています。今年度は、全国から特別支援学校、小
・中学校等教員や指導主事等77名が参加しました。
 1日目は、文部科学省による行政説明「新学習指導要領を踏まえたICT活
用」を踏まえ、本研究所の教材・教具班が有するICT活用に関する知見につ
いての情報提供を行いました。
 2日目は、ICT活用の推進に向けた先進的な取組として、鳥取県教育委員
会事務局特別支援教育課勝田浩司指導主事、広島県尾道特別支援学校中野紘
之教諭より、各自治体における取組について発表していただきました。また、
仮想事例を用いた校内・地域におけるICT活用に関する研修の在り方を考え
る演習や、研究所の施設見学を通した支援機器・教材の体験を行いました。 
 今年度の新たな取組として、班別協議において、参加者の学校・地域にお
ける取組が、どのような児童生徒像、学校像を目指しているのかについて事
前レポートに基づき確認し合うことから協議を始めることとしました。そし
て、各自の抱えている課題解決の方略を班内で話し合いながら、今後の課題
解決のための計画を作成しました。最後には、各自の計画をまとめた紙面に
基づき、ポスターセッション形式により受講者全体での振り返りを行いまし
た。本協議会においては、こうした振り返りの取組は初めての試みでしたが、
参加者からは「色々な話が聞けて良かった」「有意義な振り返りができた」
という感想をいただきました。
 本協議会を通して得た情報や整理された課題解決の方略等を今後の各自治
体等の取組に活かしていただけることを期待しています。
                      実施グループ長:杉浦 徹

●特別支援学校寄宿舎指導実践協議会の終了報告

 令和元年7月30日(火)本研究所において、2019年度特別支援学校寄宿舎
指導実践協議会を、全国特別支援学校長会(以下、全特長)との共催により
開催しました。寄宿舎指導員の全国レベルでの研修会、情報交換の場は非常
に少なく、各都道府県教育委員会等から推薦された63名の寄宿舎指導員等が
熱心に参加しました。
 午前中、文部科学省による行政説明が行われ、新学習指導要領の解説を含
めた特別支援教育の動向について説明がありました。続いて、全特長会長で
東京都立大塚ろう学校朝日滋也統括校長により「生涯学習の充実と寄宿舎指
導の在り方」と題した基調講演が行われ、生涯学習の視点をもった寄宿舎指
導の在り方について各自が考えを深めました。
 午後からは、視覚障害教育、聴覚障害教育、知的障害教育(2班)、肢体
不自由教育・病弱教育の各障害種に分かれて部会別協議を行いました。寄宿
舎生の多様化(障害の重度・重複化、年齢幅)、入舎生数の減少、避難訓練
の実施方法、舎生の携帯電話やスマートフォンの使用など、寄宿舎指導員が
日頃抱えている課題やその工夫などについて、協議しました。参加者のアン
ケートでも、企画内容について高評価を得ることができ、本協議会を盛況の
うちに終えることができました。
                     実施グループ長:北川 貴章

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【5】NISEダイアリー
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          「個性を生かした関わりを」
           宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

 この夏休み、特別支援学校(聴覚障害)の実践事例に目を通す機会があっ
た。読みながら、子ども達との関わりで、自分が試行錯誤していた頃を思い
浮かべていた。平成の時代をはさんで、40年近くも前のことである。
 聴覚障害教育においては、今も、指導上の本質的な課題は変わらないと思
った。確かに、機器の活用などは、新しくなっている。でも、聴覚障害の子
どもが抱える悩み、つまり、言葉の指導をどうするか、子どもの興味・関心
を如何にして引き出すか、基礎学力をどのようにして培うかなどは、変わっ
ていないと思った。
 しかし、変わらないことばかりではない。変化も見付けられた。聴覚障害
のある先生の子どもへの関わりである。以前は、聴覚障害のある先生は珍し
かった。そうした先生方が、どのようにして職場に馴染めるか、また、他の
先生方と如何に協力して職務を果たせるかに関心が集まっていた。そんな中
で、「いつか、聴覚障害のある先生方の個性を生かした教育ができるように
したい」、「聴覚障害のある先生だからこそ、分かる子どもの悩みがある。
それに寄り添いながら、指導する姿を見たい」と、願うようになった。
 まだ、完成とまではいかないが、そんな姿が想像できる実践例がいくつか
見られるようになった。聴覚障害のある先生方が、学校現場で自分の個性を
生かせるようになってきたと思えた。
 例えば、聞こえない生徒に対して、聞こえない先生が、自分の経験に基づ
いて、その悩みに対して、共に語り合う場面である。それに、聞こえる先生
がチーム・ティーチング(T・T)で加わり、一緒に話合い活動を行っていた。
教科指導においても、子どもの思考に寄り添い、具体物を提示するなどして、
細かなやり取りを工夫しているものもあった。
 話合い活動の具体例としては、聴覚障害のある先生の体験が例示されてい
た。それ故、聞こえにくい生徒にとっては、身近な話題であり、関心も高ま
っていた。具体的には、音に関する話題である。ジュースをストローで飲む
時の音、トイレの音などである。
 子どもの興味・関心に基づくこと、子どもの思考過程に寄り添うことなど
は、指導する側が、聞こえる、聞こえないに関わらず、指導の基本として、
重要視すべきことである。しかし、聞こえない先生が、自分の体験を基に、
話したり、子どもに気付きを促したりすることは、これまで、なかなかでき
なかったこと、見かけなかったことでもある。
 聴覚障害のある先生が増えることで、聴覚障害のある子どもの状態にこれ
まで以上にマッチした指導内容や方法が開発されたら、この教育も進むと思
う。
 そんな意味で、先生方の「個性を生かした関わり」が増えていくことを期
待したい。「指導法の開発」が、教育においては重要であると思う。試行錯
誤でよいと思う。すぐに正解は見つからない。失敗しながら、答えを見付け
る努力をしていけばいい。夏休み、実践例に目を通しながら、昔を振り返り
つつ、今を受け止め、これからを夢見ていた。

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【6】研修員だより
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 今号は、平成29年度第二期特別支援教育専門研修を修了された田中智樹先
生からお寄せいただきました。

            「理想の高校づくり2」
                 田中 智樹(岐阜県立不破高等学校)
 
 私は特別支援学校から高校に異動した平成29年度の専門研修に参加する機
会を頂きました。高校における通級による指導が始まるということで、課題
解決のきっかけをつかみたいという思いで参加しました。
 今回は平成30年5月号のメールマガジン(第134号)で研究協議グループの
班長が当時の様子を報告された続きを寄稿します。
 研究協議では、「理想の高校をつくるために」をテーマに議論をしました。
初めは各研修員の考えている方向がバラバラで、話がまとまるのか不安にな
り、研究所の先生方に相談したこともありました。しかし、納得がいくまで
協議を繰り返す中で、互いに主張するだけでなく、それぞれの考えを理解し
合うようになりました。
 研修の最後に「高校でのインクルーシブ教育はこれから。私達は全国それ
ぞれの場所で頑張ろう。そしていつか高校でも多様な学びの場が当たり前に
なったら、その時は研究所で同窓会をしよう。」と約束しました。先日、共
に学んだ仲間と「高校通級」について実践交流会を行いました。「こんな成
果があった」「こういうことが困っている」等の情報を交流しました。そし
て、「実践はそれぞれの場所だけれども、それぞれの場所で頑張っているこ
と」を確認し合いました。研究所の専門研修での出会いが日頃の実践の糧と
なり、つながっています。このつながりを今後も更に広げていきたいです。

○岐阜県立不破高等学校のWebサイトはこちら→
 https://school.gifu-net.ed.jp/wordpress/fuwa-hs/

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【7】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。

○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=24324&lang=ja

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【8】編集後記
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 夏休みに入り各地でスポーツや文化・芸術の大会などが開催されています。
今回は、この時期に思い出すことを紹介します。
 今から10年前、特別支援学校(聴覚)と特別支援学校(知的)そして高等
学校(普通科)の3校でチームを結成し、県高校新人駅伝大会に出場しまし
た。自閉症のあるAさんが出場することになり、コースの試走の際、「ピッ
トインしていいですか?」と私たちに告げ、駅前のロータリーで燃料の給油
やタイヤ交換などの仕草を楽しそうにするということがありました。Aさん
はF1レースが好きで、いつも下敷きを持ち歩いている生徒でした。練習中
は「3分以内に戻る」という約束が守れるようになりましたが、Aさんが大
会当日にピットインするのではないかと心配する生徒が多くいました。応援
の生徒も含めて手話や筆談を用いながらみんなで対応を考えました。
 大会当日、駅前のロータリーはたくさんの応援の方々で入口が塞がれ、A
さんはピットインすることもなく、次の走者へ襷をつなぎました。20チーム
中、区間4位の成績でした。大会終了後、関わった生徒から「Aさんの本来
の力が発揮できて良かった」というコメントが多くありました。
 障害のあるなしに関わらず互いを思いやり、工夫を考え、実行することの
重要性を生徒から教わったエピソードでした。このような「心のバリアフリ
ー」となる取組が広がることを期待したいと思います。 
                   (第150号編集主幹 井上 秀和)

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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第150号(令和元年9月号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
           E-mail a-koho[アットマーク]nise.go.jp
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 【発達障害教育推進センターwebサイト】
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