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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン第176号

メールマガジン

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      国立特別支援教育総合研究所(特総研)メールマガジン
         第176号(令和3年11月号)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NISE(ナイセ)━━━
■目次
【お知らせ】
・研究所公開のご案内
【NISEトピックス】
・令和4年度地域支援事業募集について
・創立50周年記念講演・記念植樹の開催
・神奈川県教育委員会と特総研 連携・協力協定を締結
・韓国国立特殊教育院第27回国際セミナー
【連載コーナー】
・「特別研究員」だより[第2回]
【研究紹介】
・社会とのつながりを意識した発達障害等への専門性のある支援に関する研
 究-発達障害等の特性及び発達段階を踏まえての通級による指導の在り方
 に焦点を当てて-
【高齢・障害・求職者雇用支援機構からのお知らせ】
【NISEダイアリー】
【アンケートのお願い】

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【1】お知らせ
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●研究所公開のご案内

 9月号でお知らせしたとおり、今年度の研究所公開は、Webによる開催です。
本号では、公開を予定している内容をご紹介します。
 
 開催日程:令和3年12月3日(金)~令和4年1月31日(月)

<内容>
・特総研バーチャルツアー
・地元とコラボ!特総研の施設を紹介します。
・重複障害のある子供の教育についての調査の結果
・触って分かる教材について
・特別支援学校(聴覚障害)等の取組
・ようこそ、言語班へ
 ~ことばやコミュニケーションについて考えてみませんか~
・肢体不自由教育班からの情報提供
・病弱班の作成した成果物の紹介
・「知的障害特別支援学級担当者のための授業づくりサポートキット
 (小学校編)すけっと(Sukett)」の紹介
・自閉症のある子どもに関わる先生を応援!!
 ~子どもと先生の笑顔のために~
・二次的な障害の予防・低減に向けたリーフレットの紹介
・障害のある児童生徒のキャリア教育及び就労支援に関する研究班
(キャリア班)の紹介
・多様な子どもたちの育ちを支える乳幼児期の特別支援教育
・障害のある外国人児童生徒等の学びの充実に向けた研究活動について
・ボッチャを遠隔対戦してみよう
・とくそうけん キッズルーム
 ~みんな友達! 知ろう 学ぼう 考えよう~
 
○研究所公開はこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/laboratory_release

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【2】NISEトピックス
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●令和4年度地域支援事業募集について

 特総研では、令和4年度に地域支援事業(インクルーシブ教育システム構
築のための地域支援事業)に参画する教育委員会を募集しています。
 地域支援事業は、令和2年度まで実施していた地域実践研究事業の成果を
活用し、教育委員会の事業に特総研が協働することで地域のインクルーシブ
教育システム構築に寄与することを目的とするものです。
 特総研では、インクルーシブ教育システム推進センターの職員を中心に、
参画する教育委員会と連携して事業を推進します。教育委員会には、地域で
主体的に課題解決に向けた取組を行っていただきます。年3回程度、特総研
への来所、またはリモートによる会議において、実施状況等を報告していた
だきます。また、事業終了時には報告書を提出していただきます。
 事業実施に係る費用のうち、特総研の職員が教育委員会に協議等のため出
張する際の旅費、成果普及に係る費用(会場費、旅費等)は、原則として特
総研が支出することとし、教育委員会の担当者が特総研に来所する際の旅費
等は、自治体が支出することとしています。
 令和3年度は、10道府県の13市町教育委員会に参画いただいています。8
月に実施した会議(地域支援事業推進プログラム)では、進捗状況の報告に
止まらず、各教育委員会におけるインクルーシブ教育システム構築の現状や
ユニークな取組等について活発に情報交換が行われ、今年度後半の事業推進
に拍車がかかりました。
 令和4年度も、インクルーシブ教育システムの構築を一層推進するため、
多くの教育委員会に参画していただきたくご案内申し上げます。
 なお、本事業の申請は、令和3年12月10日(金)を期限としています。
市区町村教育委員会が申請される場合には、申請書を都道府県教育委員会に
お届けいただき、都道府県教育委員会から特総研にお送りいただきますよう
お願い申し上げます。

○令和4年度地域支援事業募集についてはこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/about_nise/inclusive_center/regional_support

○インクルーシブ教育システム推進センターの事業についてはこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/about_nise/inclusive_center


●創立50周年記念講演・記念植樹の開催

 台風16号の影響により延期していました記念講演・記念植樹を10月22日に
行いました。
 記念講演では株式会社沖ワークウェル代表取締役社長 堀口明子様を講師
としてお迎えし、『夢を拡げる働き方~ICTを活用した企業と学校の取組~』
をテーマとして、多くの障害のある方が在宅勤務している株式会社沖ワーク
ウェルの取組や障害者支援の在り方などについてお話しをいただきました。
 記念講演終了後、記念植樹を行いました。記念植樹では、宍戸理事長、中
家監事、西垣久里浜特別支援学校長、堀口株式会社沖ワークウェル代表取締
役社長が記念樹の河津桜に土入れをしました。
 記念講演、記念植樹の様子については、先に行いました記念式典とともに
後日HPで公開する予定ですので、ぜひご覧いただければと思います。


●神奈川県教育委員会と特総研 連携・協力協定を締結

 神奈川県教育委員会と特総研は、調査研究活動や教員研修等を通じて、神
奈川県の公立学校における特別支援教育の充実及び特別支援教育に係る国の
政策立案・施策の推進に寄与することを目的とした連携・協力に関する協定
を令和3年10月20日(水)に締結しました。
 締結式では、桐谷次郎神奈川県教育委員会教育長と宍戸和成本研究所理事
長が協定書に署名し、その後、宍戸理事長からは、「本協定に基づいて、よ
り一層、神奈川県下の特別支援学校等と、共に実践的・実証的な研究に取り
組むことにより、その研究成果が全国の学校や教育委員会の課題解決に貢献
できるものと確信している。」、桐谷教育長からは、「教育環境の整備とと
もに特別支援教育を担う教員一人ひとりの専門性の向上、そして資質の向上
が不可欠と認識しており、研究所とより一層の連携・協力を締結できたこと
は、本当に心強い。」と述べられた。
 今回の協定締結が神奈川県教育委員会と特総研の双方にとって有益なもの
になるとともに、特総研のミッション(使命)である、障害のある子供一人
一人の教育的ニーズに対応した教育の実現に、より一層貢献することが期待
されます。

○締結式の様子はこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/news/page_20211021015210


●韓国国立特殊教育院第27回国際セミナー

 令和3年10月13日、韓国国立特殊教育院で開催された「韓国国立特殊教育
院第27回国際セミナー」について紹介します。今回のテーマは「Covid-19時
代における障害学生の教育の国際動向」でした。韓国の他、アメリカ、フラ
ンス、日本の研究者が招聘されました。
 今回は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の下、オンラインでの開催と
なり、現地のZoomによる参加者のほか、Youtube配信も行われました。
各国の報告に先立ち、韓国国立特殊教育院長イ・ハンオ氏の挨拶と、
ユ・ウネ社会副首相兼教育部長官によるビデオメッセージがありました。
アメリカからは、ファン・ユンジェ氏(米国オクラホマ州立大学人文科学部
教授)が、自閉症者の社会的交流に役立つ人工知能を活用した社会ロボット
の教育における有用性を報告。日本からは、特総研情報・支援部の青木高光
主任研究員が、タブレットPCをうまく活用することにより、特別支援教育対
象者も通常の学級で同じように授業を受けることができるようになった事例
を報告しました。フランスからは、アン・ショタン氏(フランス国立特別支
援教育高等研究所教師)が、コロナによる外出禁止令下で自閉症のある児童
生徒の支援を行った、「障害者地域センター」の活動を報告。韓国からは、
ガン・ウンヨウン氏(韓国中部大学校教授)が「ポストコロナのニューノー
マル時代の、変化する未来の特殊教育の展望」と題して、特殊学校の教師は、
今後どのような変化があってもすぐに適応し、変化した状況に適合する能力
を備えなければならないと報告しました。
 4氏の報告の合間には、特殊教育現場スケッチと題して、米国、日本、イ
ギリス、韓国の特別支援教育に従事する教師へのビデオインタビューが上映
されました。日本からは、筑波大学附属大塚特別支援学校高津 梓先生と長
野県伊那養護学校矢島 悟先生へのインタビューが流れました。
オンライン開催により、多数の参加者が随時チャットによる質問を投げかけ、
韓国国立特殊教育院のセミナーの運営者側で回答していました。

○本セミナーの動画(韓国語)はこちら→
 https://www.youtube.com/watch?v=pRSGdmLPK9Q
 特総研の青木高光主任研究員の発表及び質疑応答
 https://www.youtube.com/watch?v=j0I89wNIMWc
 https://www.youtube.com/watch?v=3hVydK0Xbvk
 ビデオインタビュー(日本)
 https://www.youtube.com/watch?v=VSWZMiJPInI

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【3】連載コーナー
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●「特別研究員」だより[第2回]

「知的障害教育における授業づくりと学習評価に関する研究」
          特別研究員 但野智哉(埼玉県立和光特別支援学校)

 埼玉県の長期派遣研修として、本研究所の特別研究員になり7ヶ月が過ぎ
ました。4月末に東京都に緊急事態宣言が発出され、その後もコロナ禍が収
まらない中、感染予防のためにテレワークを交えながら研究活動を行ってき
ました。本研究所の様々なインフラのおかげで、テレワークでも大きな不便
はなく、研究に参加することができています。
 研究チーム内では、主に以下の内容に取り組んでいます。
(1)単元計画支援シート(仮)の作成
  学習指導要領の改訂に伴い、特別支援学校(知的障害)においても、育
 成を目指す資質・能力が明確化され、各教科等の目標及び内容が三つの柱
 で再整理され、学習評価についても三観点に整理して示されました。
  そこで、学習指導要領の目標に準拠した観点別学習状況の評価を適切に
 実施し、指導改善に役立て、カリキュラム・マネジメントを機能させてい
 くために、現場の教員が使いやすいExcelベースのシートの作成をしていま
 す。
(2)埼玉県の研究協力校での実践研究
  埼玉県においても、本研究テーマに関わる内容は課題となっています。
 研究協力校では、特別支援学校(知的障害)の教育課程の特色でもある、
 各教科等を合わせた指導の生活単元学習を取り上げています。具体的には、
 学習評価に焦点を当てた授業実践事例を提供していただくとともに、上記
 (1)のシートを用いた実践をしていただき、シートの有効性と改善点を
 検証します。
  研究をする中で、日々自分の力不足を感じつつも、特別支援教育研究の
 トップランナーである本研究所の先生方からの刺激を受け、研鑽と修養に
 励んでいる毎日です。そのほか、今年度はオンラインで実施されている特
 別支援教育専門研修を聴講したり、研究員の先生方と情報交換をしたりし
 ている経験は、今後の教員人生の大きな財産になることは間違いありませ
 ん。本研究所で得た知見や人間関係を埼玉県の特別支援教育の発展に生か
 すことができるよう努めてまいりたいと思います。


「知的障害教育における授業づくりと学習評価に関する研究」
            特別研究員 深澤 雅子(長野県若槻養護学校)

 四方を山に囲まれた景色から一変し、目の前に広がる海と静かな波の音。
長野県では味わえない一生に一度の環境での生活も、早半年が過ぎました。
学校現場を離れて行う研究活動は、取り組む内容も思考の働かせ方も異なり、
戸惑うこともあります。しかし、同じ研究チームの先生方はもちろん、廊下
等ですれ違う先生方も気さくに声をかけてくださり、温かく見守られている
中で研究に取り組めることに心から感謝しております。
 さて、私が参画している「知的障害教育における授業づくりと学習評価に
関する研究」チームでは、実態把握に基づいた年間指導計画や単元計画の立
て方、学習状況の評価の方法について、情報収集及び実践研究を行っていま
す。その中で私は、学習指導要領に基づいた授業づくりや観点別学習評価を
実施するためツールとなる「単元計画支援シート(仮)」の作成に携わって
います。
 長野県でも各教科等を合わせた指導について、学習指導要領に基づき、合
わせている教科や扱う目標・内容について整理をしていますが、学習指導要
領の理解や目標設定の仕方等に苦慮している先生方が多い現状にあります。
 また、子どもたちを主体とした授業づくりの中で、各教科等の内容に基づ
いた観点別学習評価をしていくにあたっても、今後さらに課題が出てくるこ
とが考えられます。チームの研究を通して得た知見を、長野県の今後の授業
改善に活かせるような形で持ち帰りたいと思います。
 先日、千葉県の特別支援学校の研究授業を参観させていただき、実際の授
業や子どもたちの姿を通して協議することの大切さを改めて感じました。
「目の前の子どものよりよい育ちのため」ということを忘れずに、残り半年
の研究活動に精一杯取り組んでいきたいと思います。

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【4】研究紹介
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 ここでは、令和2年度に終了した研究課題について、研究概要並びに成果
報告をさせていただきます。

●社会とのつながりを意識した発達障害等への専門性のある支援に関する研
 究-発達障害等の特性及び発達段階を踏まえての通級による指導の在り方
 に焦点を当てて-
                       発達・情緒班 井上秀和
 発達障害のある児童生徒の多くは、通常の学級に在籍し、必要に応じて通
級による指導を受けている。その特性は生涯にわたるが、状態像は変わって
いく。適切な理解や支援があれば適応状態は改善していく場合も多いが、適
切な理解がなかったり、支援が受けられなかったりして、不登校や精神疾患
等の二次的な障害を生じている児童生徒もいる。本来の障害の特性ではない
二次的な障害は、その兆候が気付かれにくく、行動上の問題や不登校等の状
態が顕在化してから対応されることが多い。社会に出てから生きづらさを感
じることなく、適応して生きられるようになるには、医療・福祉機関との連
携による支援を含め、学齢期に適切な支援を受けることが重要である。
 このような現状を踏まえ、発達・情緒班では、「社会とのつながりを意識
した発達障害等への専門性のある支援に関する研究~二次的な障害の予防・
低減に向けた通級による指導等の在り方に焦点を当てて~(令和元年度~2
年度)」に取り組んだ。
 本研究において、二次的な障害とは、併存症を扱う医学的な「二次障害」
と同等ではなく、障害に関して適切な対応の不足により起きてしまうといっ
た順序性を伴うという意味での「二次的な障害」を教育分野における概念と
して位置付けた。
 本研究では、二次的な障害の予防を主眼に、発達障害のある児童生徒の適
応上のさまざまな困難の実態と関連する要因を、学校教育のみならず、医学
や福祉機関、矯正教育等、発達障害のある児童生徒の支援に尽力する他分野の
関連機関とも協働しながら現状の分析・整理を行った。その結果、二次的な
障害を予防・低減するために、学校での指導・支援に期待される視点として、
「学びへのアクセス(大半の時間を過ごす通常の学級での日々の学習活動へ
の参加をスムーズにし、障害による障壁をなくし子供の能力を最大限に発揮
できる状況を創り出すこと)」「自己理解に関する指導支援(なりたい自分
を出発点に、成功体験による自信の獲得や自己肯定感の向上を軸として、自
分の良さや課題となる点への理解と必要な対応方法を検討すること)」
「信頼感を育むこと(安定した対人関係や困ったときに人に頼る際に必要と
なる気持ちを育むこと)」が重要であることが明らかとなった。
 これらの視点は、これまでも重要視されてきたものであるが、教育の中で
常に意識して実践していくことは容易ではない。児童・生徒が社会の中で自
己実現できるよう、友人や教員などと信頼感を育みながら学びを楽しみ、な
りたい自分に少しでも近づけるよう早い段階から支援することが重要である。
 研究成果は、通常の学級の教員にも参考となるリーフレットや成果報告書
としてまとめ、特総研のWebサイトで公開している。

○研究成果報告書はこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/report_material/research_results_publications/specialized_research/b-372

○リーフレットはこちら→
 https://www.nise.go.jp/nc/cabinets/cabinet_files/download/1079/08f50f2da9864d68fd321cb3595a1aaa?frame_id=1235

 

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【5】高齢・障害・求職者雇用支援機構からのお知らせ
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●高齢・障害・求職者雇用支援機構より「働く広場」11月号のご案内

「働く広場」は、障害者雇用に取り組む企業事例を中心に、身近な障害者
雇用問題を取り上げた月刊誌です。成人期を迎えた障害者の働き方や、障害
者雇用を進める先進的な取組のヒントとして、ご覧ください。

○11月号(10月25日発行)の掲載内容
 アビリンピックや社内競技会に取り組むほか、特別支援学校技能検定に協
力し社内外の人材育成に取り組む企業への取材記事 ほか

○最新号URL:https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html

*このご案内は教育現場と就労をつなぐために掲載しております。

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【6】NISEダイアリー
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         「もう一度、考えてみたいこと」
            宍戸 和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)

 第二期専門研修も残り10日余りとなり、研修員はレポートをまとめるのに
忙しい頃かもしれない。
 私も、時折、専門研修の講義を聞かせていただいた。それを通して、学習
指導要領等の改訂に関して、もう一度、考えてみたいと思うことが頭に浮か
んできた。それは、知的障害教育における自立活動のこと。
 平成11年3月告示の学習指導要領等において、養護・訓練が自立活動に改
称された。それを機に、知的障害教育における自立活動の考え方が整理され
た。平成12年3月刊行の解説「自立活動編」では、知的障害の子供には「言
語、運動、情緒・行動などの面で、顕著な発達の遅れや特に配慮を必要とす
る様々な状態が知的障害に随伴してみられる。」とし、「知的発達の遅れに
応じた各教科の指導等のほかに、…随伴してみられる顕著な発達の遅れや特
に配慮を必要とする様々な状態についての特別な指導が必要であり、これを
自立活動で指導することとなる。」と説明している。
 この考え方は、平成21年3月告示の学習指導要領等にも引き継がれた。
 しかし、学校教育法第72条の一部改正により、自立活動の目標の文言は
「種々の困難」から「学習上又は生活上の困難」に改められた。当時は、
あまり話題に上らなかったが、この「学習上の困難」は何を意味し、それに
対しては知的障害の教科で対応するのか、自立活動で対応するのかが、上記
の「整理」との関連でずっと気になっていた。
 平成21年6月刊行の解説「自立活動編」では、自立活動に関して、障害毎
の取組例を細かく説明している。その中では、知的障害教育における自立活
動の指導内容をどのように設定するかなども解説されている。「養護・訓練
(自立活動)は、合わせた指導の中でやっています。」という従前からの声を
再考する形で説明がなされた。知的障害に随伴してみられる顕著な発達の遅
れや特に配慮が必要な状態の例として、自己理解に関すること、手指の巧緻
性等に関すること、人への関心や人からの働き掛け、コミュニケーション手
段等に関することなどが挙げられている。
 こうしたことは、平成29年4月告示の現在の学習指導要領等にも引き継が
れ、平成30年3月刊行の解説「自立活動編」において、より詳しく説明され
た。手指の巧緻性、認知面の課題、コミュニケーションにおける代替手段等
が知的障害教育における自立活動の指導内容例として挙げられている。
 以前から頭の片隅にずっとあること。つまり、平成11年3月告示の改訂に
おいて整理された知的障害教育における自立活動は、今、学校現場でどのよ
うに受け入れられているのかが「もう一度、考えてみたいこと」の一つであ
る。
 実は、通勤途上で、施設に通所する知的障害の方に出会う。大きな声でバ
スの運転手さんに挨拶をする人。一方では、定期券を見せて頭をこくりと頷
き、黙って降りていく青年。こうした方たちは、学校にいる時に声の大きさ
や挨拶すること、自己理解等について学習していれば、もっと生きやすくな
るのではないかと思う。
 教科でやるか、自立活動でやるか。あれから20年程経過したが、まだ結論
が出ていないことなのかもしれない。次期改訂までの宿題だ。
 是非学校現場で知的障害教育の自立活動を考えて欲しいと思う。

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【7】アンケートのお願い
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 今号の記事について、以下のアンケートにご回答いただきたく、ご協力の
ほどよろしくお願いいたします。
 
○アンケートはこちら→
 https://www.nise.go.jp/limesurvey/index.php?sid=87432&lang=ja
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次号も是非ご覧ください。
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国立特別支援教育総合研究所メールマガジン 第176号(令和3年11号)
       発行元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所内
           国立特別支援教育総合研究所メールマガジン編集部
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