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本文 III 主要国における特別な教育的ニーズを有する子どもの指導について
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3.ドイツにおける特別な教育的ニーズを有する子どもの指導に関する調査
I .ドイツの教育
1)教育制度の特徴
 ドイツの教育制度及び実態を理解するうえで必要と思われる特徴は下記の通りである。
(1)行政単位
 ドイツは連邦主義を採っており、連邦を構成する16各州は単なる地方行政単位ではなく、それぞれ独自の権力を持つ国家である。したがって、教育行政も各州により行われている。但し、高等教育、学術研究や職業教育に関する連邦全体の制度的枠組みについては連邦教育・研究省が権限を有している。また、常設文部大臣会議があり、基本的な教育政策や方針について州間の情報交換や調整を行っているが、会議自体に各州の教育行政に対する強制力はない。なお、州文部省は教員を州公務員として採用し学校を設置・維持するが、個別の学校管理運営には直接関与しない。

(2)義務教育
 義務教育は6歳から始まり多くの州は9年間(4州は10年)である。
 (1)初等教育:「基礎学校(Grundschule)」において4年間(2州のみ6年間)行われる。中等教育前期に進学する段階で3種類の学校に別れる。進学に当たっては、保護者の意向が重んじられる。
 (2)中等教育前期:初等教育(基礎学校)から中等教育前期への移行段階で、生徒の能力・適性に応じて「基幹学校(Hauputschule)」、「実科学校(Realschule)」、「ギムナジウム(Gymnasium)」の3種類の学校に別れる学校制度を基本としている。

(3)中等教育後期(義務教育終了後の進学)
 基幹学校は、第5〜9学年の5年制であり、修了後に就職して職業訓練を受けるものが進学する。実科学校は、第5〜10学年の6年制であり、修了後に上級専門学校等に進学する。ギムナジウムは、第5〜13学年の9年制であり大学進学希望者が主として進学する。なお、この他「総合制学校(Gesamtschule)」が、ノルトライン=ヴェストファーレン州、ヘッセン州等の一部の州にある。これは基幹学校、実科学校、ギムナジウムの学校種を包括しながらカリキュラムを共通化し、全ての生徒が共通の教育をうける学校形態である。

(4)教育費負担
 ドイツにおいては、幼稚園から大学に至るまでごく少数ある私立大学を除き、基本的に保護者や本人の教育費負担はない。さらに、通学に要する費用なども優遇措置がとられ無料に近い。

(5)教員養成
 教員養成は大学で行われている。州が行う第一次国家試験により教員養成第一段階が修了し、試験に合格した者は試補教員(給与が支給される)として1年半〜2年間の実習とスーパービジョンに基づく養成を受ける。その後試補教員としての勤務修了時に第二次国家試験が行われ、合格者に州から教員資格が授与される。教員研修は州立教員研修所等で行われている。
 ドイツの場合、多くの教員養成課程では通常の教育教員と特殊教育教員とが別立てで行われており、この場合通常の教育教員が特殊学校で教えることはできない。同様に特殊教育教員が通常の学校で教えることはできない。

(6)特殊教育
 特殊学校は以下に示す10種類である。盲学校(Schule für Blinde)、聾学校(Schule für Gehörlose)、知的障害学校(Schule für Geistigbehinderete)、肢体不自由学校(Schule für Kölperbehinderte)、病弱学校(Schule für Kranke)、学習困難学校(Schele für Lernbehinderte)、難聴学校(Schule für Schwerhörige)、弱視学校(Schule für Sehbehinderte)、言語障害学校(Schule für Sprach behinderte)、行動障害学校(Schule für Erziehungshilfe)。  ただし、学校種の呼称については州によって差異がある。特に近年、障害に関する用語の見直しが急速に進んでおり、本報告書が刊行される時点でこれらの呼称が既に用いられなくなっている可能性がある。

2)統合教育の経緯
 ドイツにおける統合教育に関する経緯は、以下の通りである。
 1960:西ドイツ常設州文部大臣会議「特殊教育制度の整備に関する監査報告」を行う。特殊学校の名誉回復と特殊学校制度の拡大が図られた。
 1968:ヘルブリュッケ*の指導のもとミュンヘンのモンテッソーリ幼稚園で統合教育が試みられた。
 1972:西ドイツ常設州文部大臣会議「特殊教育制度の整備に関する勧告」、特殊学校生徒を総合制中学校へのインテグレーション問題に取り組んだ。この勧告は,先の1960年報告を基本に、特殊学校を独立した学校として位置づけ、特殊学校の拡大と充実に向けた方向性を確認した。
 1973:西ドイツ教育審議会「障害及び障害に脅かされている子ども及び青少年の教育的対応について」、インテグレーションを全面に掲げた勧告をした。
 1994:常設州文部大臣会議の勧告「特殊教育的対応について」を決議;特殊教育の対応を特殊学校の独占から切り 離し,学校の種類等に関係なく、「学校における」と一般化した。

*Prof.Dr. Theodor Helbrügge 障害のある子どもに関する小児医学に社会発達的な観点を導入したことで知られる。障害の早期発見・早期対応の重要性を早くから指摘した彼の考えはドイツの小児神経センター設置をもたらし、この制度が我が国の早期療育システム・心身障害児総合通園センターのモデルとなった。

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