NISE 本文へ 独立行政法人 国立特殊教育総合研究所
English お問い合わせ一覧
このウェブサイトについて 交通案内
TOP(What's NEW)
研究所の概要
各種お知らせ
Q&A
研究者・研究内容
研修・セミナー
教育相談の案内
国際交流
刊行物一覧
図書室利用案内・データベース
教育コンテンツ
研究所の運営について
関連リンク
情報公開
刊行物一覧
本文 III 主要国における特別な教育的ニーズを有する子どもの指導について
トップ(目次) > III章トップ(目次) > 3.ドイツ-05
< 1 | 2 | 3 | 4 | 5 >
2.バイエルン州
特殊教育行政についての調査項目
調査期日: 2000年5月19日
回答者と職名: Mr. Dr. Elmar Schaar
  (バイエルン州文部省特殊教育部長)
  Mr. Dr. Bruno J.Schor
  (バイエルン州立教育研究所特殊教育部長)

調査票の項目に基づく状況報告
 
1.特別な教育的ニーズのある子どものインクルージョンに関する州レベルの法律及び規則としてどのようなものがありますか。
「バイエルン州では統合教育を規定している法律はない」(バイエルン州文部省特殊教育部長)なお、ドイツ連邦共和国としては、常設州文部大臣会議(ボン)の「ドイツ連邦共和国における学校の特殊教育的助成について」を1994年5月6日に決議し、基礎学校段階での統合教育の原則を勧告している。

2.就学前(小学校に入るまで)の特別な教育的二ーズのある子どもについて、州レベルではどのような対応が行われていますか。
・施策について
 0から6歳までは、2万人の子どもたちが早期の援助を受けている。家庭訪問を行い両親と障害児が共に生活する事を援助する。援助は、リハビリテーション(理学療法、作業療法等)、様々な技術的援助(補聴器のフイッティング)等である。
 バイエルン州には135の総合療育センターがあり、12657人の子ども達が在籍している。これらのセンターでは、障害児あるいは障害をもつ可能性がある子どもに対して、超早期から医学、心理学及び教育の専門家による治療教育を行っている。また、このセンターには学校入学の準備をしている小さい単位のグループがある。この小さいグループは376グループあり、8702人の子どもが所属している。また、この中18.5%の子どもは学校入学を1年間遅らせている。

3.通常学校における特別な教育的ニーズのある子どもについて、州レベルではどのような対応か行われていますか。
・施策について
 バイエルン州では全ての障害のある子どもの半分を通常学校で教育しようとしている。現在1万1千人の障害のある子ども達が通常学校で学んでいる。通常学校に障害のある子どもが就学するとMobile Lehrer(移動教育教員)が通常学校に派遣される。障害のある子どもが通常の学校に在籍した場合には通常教育教員と特殊学校教員の双方が必要である。移動教育教員は特殊学校に所属するが特殊学校では授業を担当しない。モビール教師の研修はコミュニケーションに関することと授業の方法に関することが中心である。障害のある子どもを受け入れる通常学級の教員は3週間の研修を受ける必要がある。
 モビール教員は現在520名いる。目標は毎年70〜100人ずつ増やし、5年間で1100人にする計画である。移動教育教員の一人の子どもに関する週の時間数は1週間に1〜2回だが対象の子どもの必要に応じて学校で決める。
 5万人の子どもたちが特殊学校(Forder schule)で教育を受けている。
 子どもたちにとって大事なのは、職業をもって社会で暮らしていく事であり、職業をもつことが最も最善の社会的な統合であると考えている。したがって、学校教育段階においても、学年が進むに従い、特殊学校で分離した教育を受けている割合が次第に減っていくことが大事であると考えている。そして、学校教育から職業への以降段階で社会的に統合されることが望ましいと考えている。
 通常学校の障害児は特殊学校からの移動教育教員による援助を受ける。援助の内容は、(1)障害児を担当している通常学校教師へのアドバイス (2)障害のある子どもに直接教える。(3)障害のない他の子どもに教える。(4)親に教える。聴覚障害の子どもの例にとると、通常学校の教員へのアドバイスとして、補聴器の調整、障害児の精神的あるいは体調を判断する手だて、授業中の言葉の使い方、筆談の方法、また、学級の障害児以外の子どもへ手話の指導等がある。

・予算的措置について
 特殊教育教員の給与は州が負担している。

4.特殊学校における特別な教育的ニーズのある子どもについて、州レベルではどのような対応が行われていますか。
・施策について
 バイエルン州では現在、(1)障害のある子どもの早期対応、(2)学校における子どもの教育、(3)職業教育に関して重点をおいて教育行政を進めている。
(1)早期対応(0歳から6歳)については、バイエルン州では約2万人の子どもが早期対応の援助を受けている。家庭訪問により両親が障害のある子どもと生活することに必要なアドバイスを受けている。アドバイスの内容は、例えば聴覚障害の場合は、補聴器のこと、リハビリのこと、ことばの指導等である。
(2)学校における子どもの教育については学校実験を行って教育の充実を図っている。例えば聴覚障害学校や知的障害の学校にコンピュータを導入して指導法の研究を行っている。(学校実験を参照)
(3)職業教育については1万人の障害のある青年たちに職業学校(Berufschule)で指導を行っている。教育期間は3〜5年間である。バイエルンでは障害のある人々のために123種の職業がある。職業は社会の中でのインテグレーションのための一番の場所であるである。職業教育に関する実験(リサイクリングの組立等)は企業(BMWやアウディ等)と契約を交わし協同で開発している。

5.バイエルン州レベルの統計
(1)義務教育対象児童生徒の総数
 (1221103人)

(2)そのうち特殊学校に在籍する児童生徒数
 (56902人)
 また何%ですか。
 (4.6%)

(3)1)のうち特殊教育の対象となる児童生徒数(不明)

(4)特別な教育的ニーズのある子どもたちに対して、どのような分類カテゴリー(分現用語)について  
(1)Blind 全盲、(2)Sehbehinderte 弱視、(3)Gehörlose 聾、(4)Schwerhörige 難聴、(5)Körperbehinderte 肢体不自由、(6)Individuellen Lebensbewaltigung 知的障害、(7)Individuellen Sprachförderung 言語障害、(8)Individuellen Lernförderung 学習国難、(9)Erziehhugshilfe 教育支援、Kranke 病弱は(Förderschule)は別枠)

(5)特別な教育的ニーズのある子どもたちの分類カテゴリー(分類用語)毎による児童生徒の統計について
 障害のある子どものためのVolksschule (Grundschule plus Hauptschule)における障害種別児童数と特別なニーズのある子の児童数(1998/99)(表9)

表9.障害のある子どものためのVolksschule (Grundschule plus Hauptschule)における障害種別児童数と特別なニーズのある子の児童数(1998/99)
障害と特別なニーズ クラス数(クラス) 児童数(人)
15  105 
弱視 35  358 
62  422
難聴 83 774
肢体不自由 142 1484
知的障害 712 6398
言語障害 256 3232
学習困難 1158 16221
教育支援 191 1757
Sic(病弱) 172 1917
重複障害 209 1433
統合クラス* 32 450
治療センターでの特殊教育 693 9797
分類と個別指導クラス 1098 12974
Total 4858 57322
*一般のVolksshule(基礎学校と基幹学校とを一緒にした学校)で統合教育を受けている障害のある子ども

6)バイエルン州における学校種及び学校区分による基礎データ(表10)
表10.学校種及び学校区分による基礎データ
学校種及び学校区分
(公私立学校を含む)
学校数 生徒数 学級数 教員数 週あたりの
授業時間数
生徒数
/学級
週授業
/学級
生徒数
/教員
フルタイムと
パートタイム
合計
国民学校総計 2859 861374 36147 42464 46590 1150514 23.8 31.8 18.5
うち  基礎学校
   基幹学校
 
540032
321342
22349
13798
23501
18963
26026
20564
647512
503002
24.2
23.3
29.0
36.5
20.7
15.6
障害児国民学校総計 383 62189 5295 6536 7180 174857 11.7 33.0 8.7
うち  学習困難国民学校
   他の障害国民学校
 
25293
36896
1772
3523
2306
4230
2533
4647
60992
113865
14.3
10.5
34.4
32.3
10.0
7.9
自立学校種非依存 1 741 24 46 46 977 30.9 40.7 16.1
総合/区分統合総合制学校 3 3013 120 215 220 4863 25.1 40.5 13.7
自由ヴァルドルフ学校(1−13学年) 16 6604 243 420 466 10960 27.2 45.1 14.2
うち  自由プァルドルフ学校(1−4学年)
   自由プァルドルフ学校(5−10学年)
   自由ヴァルドルフ学校(11−13学年)
 
2219
3289
1096
77
108
58
106
238
76
118
264
84
2713
6270
1977
28.8
30.5
18.9
35.2
58.1
34.1
18.8
12.5
13.0
実科学校 329 154889 5606 8652 9166 207949 27.6 37.1 16.9
障害者実科学校 5 431 46 74 78 1668 9.4 36.3 5.5
3及び4段階経済学佼 67 21802 848 1302 1402 31953 25.7 37.7 15.6
夜間実科学校 4 417 20 19 22 386 20.9 19.3 19.0
ギムナジウム総計 399 317942 12771 19589 21259 435739 24.9 34.1 15.0
うち  ギムナジウム(5−10学年)
   ギムナジウム(11−13学年)
 
234504
83438
8487
4284
12829
6756
13925
7334
292265
143474
27.6
19.5
34.4
33.5
16.8
11.4
夜間ギムナジウム 5 709 38 23 44 824 18.7 21.7 16.1
補習高等学校 6 1200 69 114 121 2238 17.4 32.4 9.9
職業学校総計 185 281849 12437 6823 7364 168389 22.7 13.5 38.3
うち  職業教育基礎年限
   職業学校:パートタイム
 
7789
274060
377
12060
775
6048
836
6528
19157
149232
20.7
22.7
50.8
12.4
9.3
42.0
障害者職業学校総計 47 13676 1326 917 997 23004 10.3 17.3 13.7
うち  職業教育基礎年限
   障害者職業学校:パートタイム
 
2399
11277
215
1111
352
565
383
614
8832
14172
11.2
10.2
41.1
12.8
6.3
18.4
職業構築学校 33 1103 42 73 76 1658 26.3 39.5 14.5
職業熟練学校 286 21546 979 1614 1953 46953 22.0 48.0 11.0
保健施設の職業学校 271 18805 861 1184 1642 40427 21.8 47.0 11.4
熟練上級学校 62 25927 984 1356 1482 30165 26.3 30.7 17.5
職業上級学校 52 7521 331 572 604 12562 22.7 38.0 12.5
熟練学校 289 16098 798 972 1362 32046 20.2 40.2 11.8
熟練単科大学 82 7837 - 849 995 22779 - - 7.9
総計 5384 1825672 78985 87280 103070 2400911  
参考
ミュンヘン欧州学校
外国人のインターナショナルスクール
1
11
1239
1454
77
68
72
137
110
141
2638
2627
16.1
21.4
34.3
38.6
11.3
10.3
"Schule und Bildung in Bayern 2000" バイエルン教育文化省から訳出

<参考資料> ○ドイツ各州における学級あたりの週の時間数(表11)
表11.ドイツ各州における学級あたりの週の授業時間数
学校種(公私計)
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) 全国平均
基礎学校 24.7 29.0 29.7 25.0 28.5 35.1 25.9 25.8 25.7 25.8 27.9 26.2 28.1 25.7 25.3 27.7 26.6
第2領域 I :
年齢段階5-6
33.6 33.0 36.9 31.6 34.4 37.2 34.7 31.1 33.1 32.2 34.0 32.1 32.6 29.0 29.5 31.0 32.9
基幹学校
実科学校
ギムナジウム
学校種外
総合制学校
33.2
33.6
33.7
41.2
46.0
33.2
32.9
32.4
40.7
40.1
-
-
31.5
37.1
39.7
-
-
-
31.6
32.0
-
-
-
34.2
-
35.5
-
34.0
48.9
42.5
25.4
40.3
32.9
34.6
36.8
29.8
31.1
31.0
-
33.2
51.5
23.5
34.5
32.6
44.0
32.4
30.6
30.3
-
39.0
35.8
32.3
31.6
-
41.2
33.0
37.5
28.6
-
37.6
-
-
32.3
-
-
-
-
28.0
28.9
-
29.6
28.8
29.0
-
33.4
-
-
29.5
-
33.9
32.9
32.1
31.6
32.8
38.4
第2領域 I :
年齢段階7-9/10
36.1 37.9 39.4 39.9 36.5 40.4 34.5 32.1 33.7 35.8 33.9 36.4 37.1 32.5 33.3 34.0 35.8
基幹学校
実科学校
ギムナジウム
総合制学校
36.3
36.2
35.8
46.0
39.6
37.5
35.7
42.2
39.7
38.7
35.3
44.8
-
36.3
34.5
43.7
33.6
35.5
35.7
44.9
38.5
37.5
33.4
50.3
35.2
38.4
29.9
36.0
32.5
31.4
31.9
36.7
34.2
32.2
33.0
46.8
37.8
33.7
32.3
42.6
35.8
32.4
31.6
41.2
34.8
35.7
32.8
43.6
-
-
35.7
-
29.8
33.1
32.4
40.5
32.5
32.6
33.0
40.6
-
-
34.6
36.0
36.8
34.8
33.6
42.7
第2領域 II :
共通の啓発学校
- - - - - - - - - - - - - - - - -
第2領域 II :
職業学校/全日制
- - - - - - - - - - - - - - - - -
職業実習年
職業基礎教育年
職業構築学校
職業熟練学校
熟練上級学校
熟練学校
32.6
54.1
33.1
39.4
-
39.3
45.8
49.2
40.0
48.0
35.2
48.4
35.5
41.0
-
42.4
34.0
41.0
-
-
-
23.3
24.4
27.7
29.2
23.3
49.0
32.0
28.1
40.2
46.3
-
-
36.6
28.2
32.9
36.8
29.7
27.6
29.6
29.7
28.5
42.8
-
-
34.0
37.4
30.8
39.2
52.5
28.0
36.0
31.7
29.1
30.7
38.1
-
34.2
31.6
32.7
33.3
33.4
-
36.0
32.9
36.3
36.8
48.0
18.0
37.9
26.3
32.7
38.1
39.4
-
33.6
29.5
33.1
31.0
42.7
-
25.4
25.9
29.9
36.5
42.3
-
32.0
32.8
32.6
31.6
32.7
-
34.0
30.9
34.0
36.0
42.9
35.9
35.5
31.0
34.8
第2領域 II :
職業学校/定時制
- - - - - - - - - - - - - - - - -
職業学校
熟練上級学校
熟練学校
12.4
-
19.6
12.4
26.8
21.9
13.3
18.5
15.8
12.7
-
16.3
12.1
19.9
20.2
13.3
10.9
17.1
11.8
28.5
15.3
12.2
-
14.8
10.0
10.2
16.1
11.0
12.7
14.4
10.5
11.9
11.2
12.7
14.3
10.9
14.6
36.4
16.5
11.2
-
23.7
11.5
16.0
18.2
11.4
-
12.1
11.8
19.0
15.9
特別学校
 学習困難
 他の障害種
29.6
48.2
34.4
32.4
38.8
33.1
31.1
46.5
41.4
50.2
38.7
42.0
35.5
42.9
28.5
30.4
28.1
33.2
31.9
42.5
33.0
23.4
33.2
30.9
33.9
34.0
28.4
29.3
26.1
35.4
-
-
31.5
38.4
"Schule und Bildung in Bayern 2000" バイエルン教育文化省から訳出
州の名称
(1)Baden Würtenberg (2)Bayern (3)Berlin (4)Brandenburg (5)Bremen (6)Hamburg (7)Hessen (8)Meckl.-burg Vorpommern (9)Niedersachsen (10)Nordrhein Westfalen (11)Rheinland Pfalz (12)Saarland (13)Sachsen (14)Sachsen Anhalt (15)Schleswig Holstein (16)Thuringen

【参考文献】
1)窪島 務:ドイツにおける障害児の統合教育の展開.文理閣.1998.
2)滝坂信一:ドイツにおける統合教育の試みと創造的な学校制度の構築−NRW州ケルン市における総合制学校の例から−,「平成10〜11年度科学研究費補助金基盤研究((A)(2))障害児教育分野における協力・連携関係(パートナーシップ)の形成に関する調査研究」国立特殊教育総合研究所,2000.
3)滝坂信一:ドイツNRW州ケルン地域における統合教育の実態−関係者からのインタビュー結果から−,「世界の特殊教育(XV)」,国立特殊教育総合研究所,2001.

目次に戻る 本章のトップへ戻る 次のページ(イタリア)へ

Copyright(C)2003 独立行政法人 国立特殊教育総合研究所