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日韓特別支援教育協議会

諸外国の最新動向と国際交流

インクルーシブ教育システム推進センター

2025年度日韓特別支援教育協議会報告

 特総研では、韓国国立特殊教育院と相互交流と連携を深めるために日韓特別支援教育協議会を毎年実施しています。今年度は韓国国立特殊教育院がホストとなり、韓国での開催となりました。同協議会出席のための韓国国立特殊教育院への訪問と併せて、肢体不自由特別支援学校であるナザレセクム学校と忠清南道教育庁教育課程評価情報院を訪問しました。

ナザレセクム学校 訪問(6月12日午前)

 ナザレセクム学校は、重度重複障害を含む肢体不自由のある児童生徒を対象とした韓国の特別支援学校です。今回の訪問では、実際の授業場面を見学しながら、教材・教具の工夫、医療的ケアの体制・対応、施設・設備の整備状況などについて視察しました。

 医療的ケアについては、学校内に配置された医療専門職との連携体制や、呼吸管理・栄養管理の実施、教員と医療職が協働する場面について説明を受けました。

 教材・教具に関しては、スイッチ教材などの支援機器やICTを活用した教材が紹介され、実際に手に取って体験しながら説明を受けることができました。重度重複障害のある子どもたちが主体的に学びに参加できるよう、多様な工夫がなされている様子が印象的でした。

 意見交換を行う様子 ICTを活用したスポーツゲームの教材

[写真](左)意見交換を行う様子(右)ICTを活用したスポーツゲームの教材

忠清南道教育庁 教育課程評価情報院 訪問(6月12日午後)

 忠清南道教育庁教育課程評価情報院では、「健康障害のある児童生徒」を対象とした遠隔教育支援システムである「School for You」について説明を受け、実際に配信が行われている施設・設備を見学しました。

 この取り組みは、長期入院や自宅療養などにより通学が困難な児童生徒に対して、学習機会を保障するものです。教育課程評価情報院の職員による同時双方向型やオンデマンド型の動画配信による学習支援に加え、スマートフォンのチャット機能を活用した体調・心理面への支援など、多面的なアプローチが行われていました。また、複数の児童生徒がオンライン上で一緒に学習する様子を収めた録画映像も紹介され、支援の具体像を理解することができました。

 システムの運用方法や「School for You」と地元学校との連携体制についての説明もあり、我が国の病弱教育の今後を考える上で大変示唆に富んだ内容でした。

「School for You」についての説明 「School for You」等の配信施設設備

【写真】(左)「School for You」についての説明 (右)「School for You」等の配信施設設備

VR映像を体感できる設備 「School for You」等の配信施設設備

【写真】(左)VR映像を体感できる設備 (右)「School for You」等の配信施設設備

日韓特別支援教育協議会(6月13日)

 協議会のテーマは「重度重複障害のある子どもへの教育支援(医療的支援、病弱、その障害種にかかわる教師の専門性等)」でした。

 韓国からは、キム・ヒョンテ教育研究士が「韓国国立特殊教育院事業案内」を、ファン・インヨン教育研究士が「韓国における重度重複障害児への教育支援の現状」を発表しました。

 特総研からは、土屋忠之総括研究員が「国立特別支援教育総合研究所の紹介」を、杉林寛仁主任研究員が「重度・重複障害のある子供への教育支援」を発表しました。

 研究協議では、医療的ケア体制や教員研修制度、教育課程編成の実際に関する関心が高く、韓国の出席者からは法制度や専門職の役割分担などについて多くの質問が寄せられました。

 本協議会を通じて、重度重複障害児への支援や医療的ケアについて、日韓双方が直面する共通課題と、それぞれの法制度や教育現場での対応の違いが浮かび上がり、海外との交流の必要性を再認識するとても貴重な機会となりました。また、教育研究機関同士の連携強化のみならず、教育現場の実践に即した交流の継続的な推進の重要性が改めて確認されました。

杉林主任研究員による発表の様子 研究協議の様子 

[写真](左)杉林主任研究員による発表の様子 (右)研究協議の様子

記念撮影の様子

[写真] 記念撮影の様子

 今回、ナザレセクム学校、忠清南道教育庁教育課程評価情報院及び韓国国立特殊教育院から得た情報を当研究所の活動や日本の特別支援教育の充実・発展に生かせるように、また、日韓特別支援教育協議会が一層有意義なものになるように、今後も努めて参ります。

過去の日韓特別支援教育協議会