日韓特別支援教育協議会
諸外国の最新動向の把握と国際交流
インクルーシブ教育システム推進センター
2024年度日韓特別支援教育協議会報告
特総研では、韓国国立特殊教育院と相互の理解を深めるために日韓特別支援教育協議会を毎年実施しています。今年度は国立特別支援教育総合研究所がホストとなり、日本での開催しました。協議会と併せて、横須賀市立諏訪小学校訪問や特総研の職員との交流会等も行いました。
横須賀市立諏訪小学校訪問(7月17日)
協議会に先立って、7月17日(水)には、横須賀市立諏訪小学校を訪問しました。黒川理美校長による学校概要の説明のあと、特別支援学級の水泳の授業や通常の学級の算数の授業等を参観しました。参観を通じて両国の学校教育の現状等について情報交換を行いました。
(写真)学校概要等を説明いただいている様子
役員懇談及び研究所見学(7月17日)
特総研では、理事長や理事との懇談と記念品の交換、「あしたの教室」等の施設見学を実施しました。
(写真)左は役員との懇談の様子、右は記念品の加賀手毬を贈呈する様子
(写真)「あしたの教室」見学の様子
研究所職員との交流会(7月17~18日)
今回初めての試みとして、特別支援教育における研究や本研究所と韓国国立特殊教育院の各々の業務に関して、三つのテーマに基づき情報交換を行いました。
一つ目の「重度・重複障害の教育課程」について、韓国では「日常生活活動」という教育課程(自立や生活を中心とした内容)が新設されたが、特殊学級担任が実施に苦慮しているとの話があり、特総研の研究員からは日本の特別支援教育における自立活動の現状を説明し、日本でも自立活動の内容が担任に委ねられているという課題はあるが通常の学校においては特別支援学校のセンター的機能を利用したり、チームで話し合ったりして対応していることを共有しました。
二つ目の「障害のある児童生徒の進路・職業教育」については、韓国国立特殊教育院では、現場研修の支援や進路職業教育担当者のワークショップを実施していること、関係機関と協力して就職のフォロ ーアップをしていることについて説明がありました。特総研からは、日本においては3年以内の離職率の高さから進路先・就職先決定の指導ではなく、キャリア教育を重視し、本研究所でもキャリア教育の充実に関する研究に取り組んでいることについて報告し、互いの進路・職業教育の現状を共有しました。
三つ目の「行政・財政に係る業務」については、互いの機関におけれう業務内容や財政事情について情報交換を行いました。事務職員の研修や自己研鑽の機会の設定についても話題になり、韓国国立特殊教育院では民間の研修プログラムを受講するための財政支援があることを伺いました。
(写真)職員との交流の様子
日韓特別支援教育協議会(7月18日)
日韓特別支援教育協議会は、以下の3点を目的としています。
・日本および韓国の特別支援教育における政策や実践、現状や今後の課題についての情報共有および協議を行うこと。
・国立特別支援教育総合研究所と韓国国立特殊教育院との国際交流、国際協力関係を拡大すること。
・日本および韓国の障害のある子供の教育についての専門家の交流を推進すること。
今回は、「共生社会の実現に向けた障害理解教育の取組」をテーマとし、それぞれの機関の現状と事業の紹介も含めて、現在取り組んでいる研究等に関する発表を行いました。
最初に韓国側から、教育課程政策チーム、ペク・スジン教育研究士による「韓国国立特殊教育院の現状と主な事業の紹介」について、また韓国教育部特殊教育政策課、キム・ドンギュ教育研究士による「韓国における統合教育の政策の理解-障害認識教育を中心に-」についての発表がありました。
次に日本側から、小林努総務部長による「国立特別支援教育総合研究所の現状と主な事業の紹介」について、また久保山茂樹インクルーシブ教育システム推進センター上席総括研究員(兼)センター長による「共生社会の担い手を育む教育に関する研究-障害理解教育の検討を中心に」についての発表がありました。
質疑応答やその後の研究協議も含め、両国の発表に関する様々な情報交換が行われ、韓国からは特総研の研究における調査対象と方法や日本の幼稚園における障害理解教育の現状について、日本からは韓国における通常の学級における特別な支援を必要とする子どもへの支援の仕方についての質問がありました。またキム・ドンギュ教育研究士の発表の中にあった、韓国の統合教育施策の一つである「学校障害認識指数の活用」についても、会場から高い関心が寄せられました。
(写真)左はペク・スジン教育研究士による発表の様子、右は小林努総務部長による発表の様子
(写真)会場の様子
今回は、協議会の様子を日本と韓国にライブ配信しました。日本では事前申し込みが233名あり、多数の方にご覧いただくことができました。
2日間を通じて特総研の多数の職員が韓国国立特殊教育院の職員と交流することができ、両研究所の協力関係を確かなものにすることができました。今後も特総研は海外の研究機関との積極的な交流を継続するとともに、海外の教育に関する情報収集と発信に努めてまいります。