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本文 III 主要国における特別な教育的ニーズを有する子どもの指導について
トップ(目次) > III章トップ(目次) > 2.フランス-03
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2.フランスの特殊教育の現状
1)制度の概略
 その概略は図2の通りである。
 図のように、特殊教育を管轄する省は文部省(Ministère de l'Éducation Nationale, de la Recherche et de la Technologie)のみではなく、厚生省(正確には雇用連帯省:Ministère de l'emploi et de la solidarité(注)、及び法務省(Ministère de la Justice)も管轄する施設やサービスがある。
 文部省系の特殊教育システムは、適応・統合教育部門(Le secteur de l'adaptation et de l'intégration scolaires)と呼ばれており、厚生省系(法務省を含む)のシステムは、医療-教育部門(Le secteur médico-éducatif)、社会-教育部門(Le secteur socio-éducatif)、医療部門(Le secteur sanitaire)に分けられる。
 このうち、医療-教育部門は厚生省の中の社会事業担当庁(Ministère en charge de Affaires social)の管轄であり、医療部門は保健担当庁(Ministère en charge de Santè)の管轄である。
 社会-教育部門は、家族のサポートを受けられなくなった子どもの保護のための施設・サービスと、危険な状態に置かれている子どもおよび非行の子どもの法的保護のための施設・サービスからなる。これらのうち、前者は厚生省の中の社会事業担当庁の管轄であり、後者は法務省(Ministère de la Justice)の管轄である。この部門の対象の子どもは、日本では特殊教育の対象とは言えないが、フランスでは、特殊教育の枠組みのなかに含められている。
 文部省系の機関は、特殊教育学校、地域適応学校などの学校の他、統合学級、適応教育学級、統合教育ユニットなどの通常学校内の特殊教育セクションをもっている。一方、厚生省系の医療-教育施設および医療施設も、日本で言えば、特殊教育諸学校に当たるものと言える。施設とは言っても、そのなかで、文部省から配属される教師による学校教育も行われている。また、施設の外で学校教育を受ける場合もある。ただし、子ども達の中には、学校教育を受けていない子ども達もいる。そうした子ども達は一般に、それだけ障害が重いと考えられる。

図2.フランスの特殊教育体系
図2.フランスの特殊教育体系(溝上(1997)の図を元にして改変。矢印は支援の流れを示す。)

 他に、サービスとして、文部省系では、初等教育で学習に困難を抱える子どものための「特別援助ネットワーク」がある。厚生省系では、「通常環境での特殊教育および治療教育のサービス」(SESSAD)や「早期医療-社会支援センター」(CAMSP)によるサービスなど各種のサービスがある。
 注:この省の中に、社会事業担当庁(Ministère en charge de Affaires social)と保健担当庁(Ministère en charge de Santè)がある。

2)歴史的経緯
 以上のように、それぞれ管轄する省が異なる特殊教育機関が存在する理由としては、各省庁のもつ財源をもとに、それぞれの機関を作ってきたという理由による。
 特に、厚生省(社会事業担当庁)管轄の医療-教育施設に関しては、その大部分が1950年頃から、障害児の親の会の要望により作られたものであり、その当時創出された社会保障費が、その創設のための強力な財源になった。その当時は、それらの障害児を受け入れる文部省管轄の機関はほとんどなかった。そこで、親の会の要望により、それらの施設が作られていったという事情がある。この経緯により、現在でも、障害児の親の会(association 協会)は、特殊教育に対し、重要な役割をもっているようである。現在でも、この施設及びサービスの80%以上は協会(association)の管理下にある。
 しかし、その頃から、同時に文部省も、図2のような特殊教育の体制を整えていった。
 このように、文部省系と厚生省系の特殊教育関連機関がともに存在する中で、最近は文部省主導による特殊教育を推進しようとしている。(シュレーヌ国立センター所長による)

3)特殊教育の対象
 1975年の障害者基本法(La loi d'orientation en faveur des personnes handicapées)では、障害者について、その定義をしていない。代わりに、この法では、県特殊教育委員会(CDES)(あるいは、その下位の区特殊教育委員会)が、就学措置や経済的援助措置など、何らかの措置を行う対象を障害者であるとしている。
 特殊教育の体系のなかでは、知的障害、聴覚障害、視覚障害、運動障害、病弱、行動障害、重複障害、盲聾など、日本で一般に障害児と言われる子どもを対象としているとともに、学習に困難を抱える子ども、及び、社会的保護が必要な子ども、法的保護が必要な子どもも対象としている。
 また、特殊教育機関の種類で見ると、文部省系の初等教育における特殊学級である統合学級は4種あり、それぞれ、知的障害児、聴覚障害児、視覚障害児、運動障害児を対象としている。厚生省系の医療-教育施設(établissement)は、知的障害児のための「医療-教育施設(institut)」、行動障害児のための「リハビリテーション施設(institut)」、「運動障害児のための施設」、「重複障害児のための施設」、「重度聴覚障害児のための施設(institut)」、「重度視覚障害児のための施設(institut)」、「盲聾児のための施設(institut)」(注1)がある。
 表1に、1999−2000年度の、初等教育及び中等教育対象の子どもの全数と、特殊教育対象の子どもの数(注2)、及びその割合を示す。文部省系と厚生省系を合わせた特殊教育対象の子どもが、全体にしめる割合は2.4%である。
 また、表2に、統合学級の種類別の在籍者数と割合を、表3に医療-教育施設の種類別の数と在籍者数及び割合を示す。

 注1:盲聾児施設については文献4)(1997)には記載されていないが、統計資料である文献8)(2000)には記載されている。
 注2:表4に示す諸機関在籍者の総数による。

表1.フランスの初等教育・中等教育の児童・生徒数と
特殊教育の割合(1999-2000)(フランス本土、文献7)による)
  児童・生徒数
初 等 教 育 (1) 6,256,500
中 等 教 育 (1) 5,325,500
特 殊 教 育 (2) 287,107
11,869,107
特殊教育の割合(%) 2.4%

表2.統合学級の種類別の在籍者数(1999-2000)(フランス本土、文献8)による)
統合学級の種類 児童数 割合(%)
知的障害(CLIS1) 41,351 92.6
聴覚障害(CLIS2) 1,514 3.4
視覚障害(CLIS3) 591 1.3
運動障害(CLIS4) 1,221 2.7
44,677 100.0

表3.医療-教育施設の種類別の数と在籍者数(1999-2000)(フランス本土、文献8)による)
施設の種類 施設の数 施設の割合(%) 在籍者数 在籍者の割合(%)
知的障害児施設 1,028 64.0 67,487 65.3
行動障害児施設 292 18.2 15,641 15.1
運動障害児施設 113 7.0 7,507 7.3
重複障害児施設 61 3.8 2,585 2.5
聴覚障害児施設 53 3.3 4,698 4.5
視覚障害児施設 52 3.2 4,525 4.4
盲 聾 児 施 設 8 0.5 908 0.9
1,607 100.0 103,351 100.0

4)特殊教育の各機関について
 以下、図2の中の学校・学級・施設及びサービスについて、より詳しく、それぞれ説明する。

A.文部省系(適応・統合教育部門)(Le secteur de l'adaptation et de l'intégration scolaires)
 文部省系の特殊教育システムは、適応・統合教育部門(Le secteur de l'adaptation et de l'intégration scolaires)と呼ばれており、以下の諸機関がある。

初等教育(premir degré)
 ・特殊教育学校 (écoles spécialisées):現在全国に約60校存在する。ただし、初等教育段階で、これだけしか特殊教育学校がないのではなくて、他に厚生省系の医療-教育施設や医療施設があり、これも特殊教育諸学校にあたるものである。
 この学校は、聴覚障害や視覚障害等に対応する学校である一方で、その寄宿舎を利用して社会的な保護が必要な子どもを受け入れる等、当初の障害種別とは関連のない子どもの受け入れも行っている。
 ・統合学級(CLIS Les classes d'intégration scolaire):以前の特殊学級を1991年に置き換えた。通常の小学校内(まれには幼稚園内にも)に設置される学級である。
 知的障害、聴覚障害、視覚障害、運動障害の4種のCLISがある。それぞれ、CLIS1、CLIS2、CLIS3、CLIS4と呼ばれている。
 通常学級に最初から入ることは難しいが、特殊教育学校・施設に入ることは勧められない子どもが対象とされている。その目的は、障害児を通常学校に集団的に統合することである。これは「集団での統合」(l'intégration collective)と呼ばれている。一方、障害児一人一人が通常学級に最初から入る場合は、「個別の統合」(l'intégration individuelle)と呼ばれている。
 この学級は、「集団での統合」にとどまらず、全時間であれ部分的にであれ、通常学級での「個別の統合」へのステップであり、それを志向している。
 なお、この学級に在籍する子どもは、厚生省系の医療-教育部門や医療部門によるサービスも受けることができる。医療-教育部門のサービスとしては、後述の「通常環境での特殊教育および治療教育のサービス」(SESSAD)や「医療-心理-教育的(pedagogique)センター」(CMPP)によるサービスである。
 後述の、中等教育における「統合教育ユニット」や「感覚障害児と運動障害児の集団での統合方策」も、この学級と同趣旨のものであり「集団での統合」を行うものである。
 ・特別援助ネットワーク(resaux d'aide spécialisées):1970年につくられた教育-心理援助グループを1990年に代替した。心理学、特殊教育、リハビリテーション等の専門家および担当教員からなるチームで、通常学級に在籍する、学習が困難な子どもに対する援助を行う。

中等教育(second degré)
 ・地域適応学校(EREA Les établissements régionaux d'enseignment adapté):以前の国立養護学校を1985年に代替した。重度の障害児、および、感覚および運動障害児のためのものである。
 これは寄宿制の学校で、12歳から18歳までの子どもを受け入れる。後述の、適応教育学級への在籍が妥当と考えられる子どもについても、その社会的条件により、寄宿舎へ入ることが適当である場合は、この学校が受け入れる。この学校の校長(directeur)は特殊教育のディレクターの資格をもっている。
 第二次調査で訪問した、「ジャック・ブレル地域適応学校」は、この学校のうちの、運動障害児を対象とするものである。
 ・適応教育学級(SEGPA Les sections d'enseignement général et professional adapté):特殊学級を1989年に代替した。通常のコレージュ内に設置されている。通常のコレージュ内に設置されていることで、かつ小人数の学級で、一般教育と職業教育を共に保障するものである。
 在籍年齢は一般に12歳から16歳だが、学級によっては、在籍期間の延長が認められているものもある。
 コレージュの校長(principal)の監督下で、この学級に対応したスタッフとして、一般に、特殊教育のディレクターの資格をもった「副校長」(directeur adjoint)、特殊教育教員Fの資格をもった特殊教育教師、職業リセの教師がいる。このうちで、特殊教育教員資格のFは、中等教育での学習の困難に対応するものである。また、職業リセの教師は職業前教育及び職業教育を行う。
 ・統合教育ユニット(UPI Les unités pédagogiques d'intégration):1995年より設置された。コレージュ内に設置され、知的障害児に対するものである。知的障害の統合学級(CLIS1)の延長である。これも、「集団での統合」である。その数はまだ、少ない。
 ・感覚障害児と運動障害児の集団での統合方策(dispositifs colléectifs d'intégration):10年弱前から感覚障害児(聴覚障害児と視覚障害児)と運動障害児をそれらの障害種別に集団で通常学校に受け入れる試みがなされている。これも、「集団での統合」である。その数はまだ、少ない。また、これは、上記の諸機関のような法的な規定をまだ受けてはいない。

B.厚生省系
 ・医療-教育部門(Le secteur médico-éducatif):この部門の施設およびサービスは、その80%以上が、非営利の協会(associations)によって管理(運営)されている。

施 設
 この部門の施設の総称は、「医療-教育施設」(établissments médico-éducatif)である。そのなかに、知的障害児のための「医療-教育施設(institut)」、行動障害児のための「リハビリテーション施設(institut)」、「運動障害児のための施設」、「重複障害児のための施設」、「重度聴覚障害児のための施設(institut)」、「重度視覚障害児のための施設(institut)」、「盲聾児のための施設(institut)」がある。
 これは、前述のように、日本で言えば、それぞれの対象とする障害児を受け入れる、特殊教育諸学校にあたると考えられる。
 施設内では障害に対応した治療教育が行われると共に、学校教育も行われている。その教師は文部省の資格を持った教師である。
 なお、これらの施設の財源としては、社会保障費、特に疾病保健金庫(caisses d'assurance maladie)である。
 第一次調査で訪問した国立盲学校、第二次調査で訪問したカサノバ統合学校は、後述のように、ともに独特の性格をもったものではあるが、タイプとしては、このタイプの施設である。
 他に、この部門の施設として、医療-心理-教育的(pédagogique)センター(CMPP)と早期医療-社会支援センター(CAMSP)がある。
 前者は神経・精神障害や行動障害の子どもの診断と治療を行うものである。後者は、障害を持つ0歳から6歳までの子どもの検診と治療を行う。

サービス
 この部門のサービスとして、以下のようなものがある。

a.「通常環境での特殊教育および治療教育のサービス」(SESSAD: services d' éducation spécialisée et de soins à domicile)
 その目的は、障害児にとって必要な特殊教育および治療教育のサービスを提供して、障害児ができるだけ通常の環境で生活及び学習できるように支援することである。
 統合学級(CLIS)や統合教育ユニット(UPI)に在籍する子どもなど「集団による統合」の対象となる子どもも「個別の統合」の対象となる子どももこのサービスを受けることができる。
 このサービスは、基本的に、各障害別の医療-教育施設に属し、その対象とする障害児に対応する。
 知的障害児、運動障害児、重複障害児に対する各サービス、0歳から3歳までの視覚障害児と聴覚障害児に対する各サービス、3歳以降の聴覚障害児に対するサービス、3歳以降の視覚障害児に対するサービスに分かれている。
 例えば、0歳から3歳までの聴覚障害児のためのサービスの正式名称は、「家庭支援と早期教育サービス」(service d'accompagnement familial et d' éducation précoce, SAFEP)であり、3歳以降の聴覚障害児のためのサービスは、「家庭教育および統合教育の支援サービス」(service de soutien à l'éducation familiale et d'intégration scolaire, SSEFIS)である。第二次調査では、この2つを合わせたものにあたる、通常幼稚園内に設置された「聴覚障害支援センター:SESSD APIDAY」を訪問している。また、「カサノバ統合学校」も、この2つのサービスを提供している。
 また、3歳以降の視覚障害児のためのサービスは、「自立および統合教育支援サービス」(service d'aide à l'acquisition de l'autonomie et l'intégration scolaire, SAAAIS)である。第一次調査の際、シュレーヌ国立センターで視覚障害専門の職員からこのサービスの話が出たが、その人は、これをリソースセンター的役割として位置づけていた。第二次調査では、これにあたる「オードセーヌ県視覚障害児統合教育センター」を訪問している。

b.早期医療-社会支援センター(CAMSP:Centres d'aide méico-sociale précoce)による援助
 前述のように、0歳から6歳までの障害児の検診、治療を行うが、このセンターは、障害児の幼稚園への統合の援助も行っている。

社会-教育部門(Le secteur socio-éducatif):社会的および法的な保護を行う施設、およびサービスである。施設内では学校教育も行われている。前述のように、フランスでは、この対象となる子どもも、特殊教育の枠のなかに含まれている。
 この部門の、社会的保護のための施設としては、「県児童会館」(les foyers départemanaux de l'enfance)、「社会福祉児童ホーム」(les maisons d'enfants à caractère social)がある。サービスとしては保護(母親)アシスタント(assistante maternelle)の家に児童を受け入れることが挙げられる。
 法的保護のための施設としては、「教育活動ホーム・センター」(les foyers et centres d'action éducative)がある。サービスとしては、自宅に置かれた子どもへの教育活動が挙げられる。
 ・医療部門(Le secteur sanitaire):病気および精神疾患の子どものための施設、およびサービスである。施設内では学校教育も行われている。
 この部門の施設としては、集中的なケアを行うための「医療センターの小児科」(les services de pédiatrie des centres hospitaliers)、特に精神疾患の子どもに利用される「デイホスピタル」(les hopitaux de jour)、恒常的な医療を必要とする子どものための「医療児童ホーム」(les Maisons d'enfants à caractère sanitaire)がある。
 サービスとしては、在宅のサービスとして、「医療-心理センター」(les centre médico-psychologiques)による精神疾患の予防、検診、および治療のサービスがある。

5)各機関の在籍者教
 表4に、上記のそれぞれの学校、学級、施設等の諸機関の在籍者数を示す。ただし、統合教育ユニット及び感覚障害児と運動障害児の集団での統合については不明であった。この統計によれば、文部省系の諸機関に57%、厚生省系の諸機関に43%の児童・生徒がそれぞれ在籍している。
 また、統合学級と適応教育学級の在籍者総数が、全体にしめる割合は、52%であり、社会-教育施設を除いた全体にしめる割合は、53%である。

表4.特殊教育諸機関の在籍者数(1999−2000)
(フランス本土及び海外県を含めた場合)(1)
管轄 機 関 児童・生徒数 海外県を含む






特殊教育学校(2) 2,111  
統合学級(3) 42,679  
小計 44,790 48,153



地域適応学校 11,571  
適応教育学級 106,721  
小計 118,292 123,847
163,082 172,000



医療-教育施設 103,351 105,770
社会-教育施設 7,669 7,866
医 療 施 設 13,005 13,095
124,025 126,731
総計 287,107 298,731
(1) 文部省系の統計については、文献7)によるものであり、厚生省系の統計については、文献8)によるものである。なお、表の形式は、溝上(1997)を参考にした。
(2) 文献7)の3.8.1の表のÉtablissments spécialisésの数字による。
(3) 文献7)の3.8.1の表のÉtablissments ordinairesの数字による。


6)就学の仕組み
 文部省管轄の学校及び厚生省管轄の医療-教育施設については、特殊教育委員会(県特殊教育委員会及び区特殊教育委員会)が就学指導を行い、特殊教育機関への措置、及ぴ、通常の学校への統合も行う(注)。ただし、その決定には親の同意が必要である。また、シュレーヌ国立センターでの調査では、委員会のメンバーには親の会推薦の代表者も含まれるとのことであった。
 統合教育に関しては、親の側からすると、子どもの通常学校での統合教育を望む場合は、幼稚園(école maternelle)、小学校(école élémentaire)、コレージュ及びリセの校長に申し出る。その校長の判断で統合可能であれば就学できる。それが特殊教育委員会に通知される。校長が統合は難しいと判断すれば、特殊教員委員会に申し出る。特殊教育委員会は他の措置を考える。
 校長が統合は難しいと判断する場合でも、親が就学させたいと言えば、就学させる。そして、うまくいかなかったら再度検討する。(シュレーヌ国立センターで視覚障害担当者による)

 注:他の厚生省及び法務省管轄の施設やセンターについては、親およびそれぞれの機関の判断による。

7)教育財政
 特殊教育に対する財政措置としては、教師については文部省が財政を担当し、学校、施設についてはそれぞれ設置した省の担当となる。
 また、通常学校の維持、修理、運営については市町村(小学校及び幼稚園の場合)、県(コレージュの場合)、地域圏(リセの場合)が経費を出すが、その学校で統合教育が行われる場合、それぞれの自治体は、その施設の改善の経費を出したり、補助員を雇うこともある。
 もしも子どもが治療教育的あるいはリハビリテーションの支援を必要とすれば、それについては社会保障金庫(les caisses de sécurité sociale)が資金を提供する。

8)特殊教育教員養成
 現職の教員が特殊教育の教員資格を取るというかたちで行われている。(注)
 その免許状は、「適応教育と統合教育の特殊教育免許状」(CAAPSAIS Le certificat d'aptitude aux actions pédagogiques spécialisées d'adaptation et d'intégration scolaires)で、7つのオプションがある。即ち、 A.聴覚障害 B.視覚障害 C.身体疾患(malades somatiques)、身体障害(déficients physiques)、運動障害(handiccapés moteur) D.情緒障害(troubles importants à dominante psychologique) E.初等教育での学習の困難 F.中等教育(コレージュ)での学習の困難 G.リハビリテーション(rééducations)。
 この免許状および7つのオプションは、以前の特殊教育免許を1984年及び1987年の政令により、統合教育を含めた新しい教育組織に対応するためにつくられた。
 これらの特殊教育教員養成は各大学区の、特殊教育部門のある教員養成施設(IUFM Instituts universitaires de formation des maitres)かシュレーヌ国立センターで受け持つ。IUFMはオプションD.E.F.G.を担当している。シュレーヌ国立センターでは、A.B.C.を担当している。
 養成期間は最低2年最高3年である。ただし、この養成研修の受講なしに試験を受けることもできる。
 なお、校長(directeur)、視学官に関しても特殊教育を担当する校長、視学官には資格が必要であり、これらの養成もシュレーヌ国立センターで行っている。
 校長については、教員資格の他に、特殊教育分野での5年の経験が基礎資格である。その養成期間は1年間である。ただし、これについても、この養成研修の受講なしに試験を受けることができる。
 視学官については、初等教育の視学官であることが基礎資格であり、2年にわたって9週間の養成研修の受講が必須である。ただし試験はない。
 また、シュレーヌ国立センターでは、中等教育で障害児を受け入れた教師達が集まって具体的な対応のための知識を学ぶというような研修も行っている。(シュレーヌ国立センター所長による)

 注:一般の教員の初期養成において、特殊教育についての全部で42時間の授業があるが、それでは不十分であり、その初期教育のなかで大きな位置を占めているわけでもない。

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