3.統合教育に関するフランスの現状 |
法的には、1975年の障害者基本法(La loi d'orientation en faveur des personnes handicapées)により、統合教育が法的に認められた。また、その具体的な推進のために、1982年、1983年、1991年、1995年に、通達が出されてきた。また、1989年の教育基本法(La loi d'orientation sur l'éducation)により、あらためて統合教育の原則が確認されている。
しかし、現状としてはあまり進んでいない。少なくとも、後述の「HANDISCOL計画」が示すように、フランスでは、統合教育を、現状よりも進めようとしている。
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表5.初等教育で統合教育を受けている児童数(1999−2000)
(フランス本土および海外県を含めた場合、文献7)による)
統合の程度 |
児童数 |
海外県を含めた場合 |
全時間の統合 |
19,303 |
20,347 |
部分時間の統合 |
7,218 |
7,516 |
計 |
26,521 |
27,863 |
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表6.中等教育で統合教育を受けている生徒数(1998−1999)
(フランス本土と海外県の合計、文献7)による)
統合の程度 |
中学校の生徒数 |
高等学校の生徒数 |
計 |
全時間の統合 |
6,008 |
4,171 |
10,179 |
部分時間の統合 |
1,408 |
910 |
2,318 |
計 |
7.416 |
5,081 |
12.497 |
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初等教育および中等教育で、統合教育を受けている子どもの数は、表5、表6の通りである。
中等教育の統計は1998−1999年のものであるが、1999−2000年の統計も、これと大差がないと考えて、表4、表5、表6から、海外県を含めての、特殊教育を受けている児童・生徒数(注)に占める、全時間の統合教育を受けている児童・生徒数の割合を推定すると、9.3%となる。
また、溝上(1997)によると、1990年で7%という統計がある。この時の他国の統計は、イタリアが91%、アメリカが67%である。
統合教育が進まない理由として、今回の訪問調査で、以下のような意見が得られた。
・通常学校のカリキュラムが重く評価が厳しい。
・文部省系と厚生省系の管轄機関があるなど特殊教育のシステムが複雑であること。(以上、OECD)
・通常学校の教師の意識として学業を教えるという意識が強い。生活の指導者ではないと考えている。これは、障害児が通常の学級に入れば、生活指導も必要になるという意識である。(文部省)
また、「統合教育」ということの定義に関わって、以下のような意見があった。
・通常学級での全時間の統合教育のみを統合教育とは考えない。部分的な統合であっても、統合教育と考える。統合学級でも、特殊教育諸学校でも、それぞれの場での統合教育がある。例えば視覚障害でも、他にも障害がある場合は全時間の統合は難しい。(シュレーヌ国立センター所長)
・特殊教育諸学校に在籍する場合でも、それが他の機関や地域に対して開かれたものであれば、それも統合教育と考える。(シュレーヌ国立センターで特殊教育学校校長)
注:文部省系と厚生省系の在籍者数の合計に、全時間の統合教育を受けている子どもの数を加えたものとする。
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