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本文 III 主要国における特別な教育的ニーズを有する子どもの指導について
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7.ボローニア市のホスピタルスクール(病院内学校)
 養護学校が全廃され、どのような障害があっても通常の学校で教育されることになっているが、病気で入院している児童生徒に対して病院内での教育が保障されている。第2次調査において、ボローニア市にはホスピタルスクールが3ヶ所設置されていることが確認できた。マッジョーレ病院内小学校、リッツオーリ病院整形外科内小学校(国立)、サントルソラ病院内学校(小・中学校、高等学校)である。3校のうち、長期にわたり入院している児童生徒が在籍し、高等学校まであるサントルソラ病院内学校の訪問は実現しなかったが、他の2校についてその実態を調査することができた。以下に報告する。

1)マッジョーレ病院内学校
 支援教師(女性)によるインタビューを行った。この学校は、教師1人で経営されている。この学校は、ボローニア市の1区にある3つの学校の一つである。校長は、他の小学校2つとこの院内学校の3つを兼ねている。
 マッジョーレ病院内学校は、午後13:00−17:30に開校されていて、一週間で22時間の学習時間が設定されている。10日以上在籍すると、入院前の小学校に病院内学校で行った学習課題や成果をまとめ報告書を送る。この学校に児童が出席すると、入院前の小学校では欠席にならない。私たちが訪問した日6人の児童が学校に来て教育のサービスを受けた。おおよそ1か月間で15人〜30人の児童の教育が行われているという。午後4時以降になるとボランティアが来て児童の面倒をみてくれるので、教師は教室に来ることができない児童のベットサイドに行き学習指導をする。この病院は、手術のために入院したり、治療も短期に終了したりするものが多く、長期入院が予測される児童に対しては、サントルソラ病院に転院することがしばしばあると言う。ここでは、絵を描いたり、ゲームをしたりして遊びを取り入れ、手術前の児童の心理的な安定を図ることに力を入れていた。いわゆる学習の空白や遅れに対応するものではなかった。進級試験をこの院内学校で実施することができる。

2)リッツオーリ病院(Ospedale Rizzoli)整形外科内小学校(国立)
 ヴェロニカ・ベラルディ(Veronica Berardi)教師(女性、支援教師資格あり)、ルイーザ・シニャーリ Luisa Signari教師(女性)、マリレーナ・ピエトラペロージ Marilena Pietrapelosi 教師(女性、3−6歳担当、代用教員)にインタビューを行った。この整形外科病棟には、上記の3人の教師が常駐し、整形外科病棟(36ベット数、学齢児は常時10人程度)に入院している児童に対して教育を行っている。白血病やがんなどの新生物を治療する化学療法科の病棟にも小学校教師一人が常駐しており、教育を行っていると言う。この教師にはインタビューを行うことができなかった。

写真3
写真3
 この病院内学校では、教科学習が行われていた。教科書等の教材は無料である。教師は、写真に示した病室の廊下を学習するスペースにし、移動が可能であればそこで学習を行っている。
 しかし、ギブス等で移動が困難な児童に対してはベットサイドで学習を行っている。教師は児童の学年で担当しているのではなく、病室担当にしている。理由は児童の移動の問題であるという。児童一人一人の実態に即した課題を提示し、教材を与え、学習を行っている。
 病院内からインターネットが可能であり、「私の街」、「私の手術」、「自己紹介」等テーマを決めて調べ学習をし、学校新聞に載せるという学習もしている。この病院内学校でも進級試験の実施が可能である。10日以上この学校で学んだ場合は、入院前に通っていた学校にいつ、どのような学習課題を実施し、評価はどうであったかを報告するという。
 2つの病院内学校について報告してきたが、入院児の様々な問題、例えば、ターミナル期のアプローチの仕方やカウンセリングなどの専門性をいかに研修するかと言う質問に対しては研修する場がないこと、機会がないことを強調していた。サントルソラ病院内学校の教師と連絡を取り合い、情報交換を行ってお互いを高めていきたいと我々に話してくれたことが印象に残った。

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