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本文 III 主要国における特別な教育的ニーズを有する子どもの指導について
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4.エジンバラ地方教育局の事例
 エジンバラは、スコットランドの中心地であり、スコットランドの教育制度は、基本的にはイングランドと同じであるが、わずかに異なる部分もある。英国内閣には、スコットランド大臣がいて、スコットランドの教育は、スコットランド教育産業省が独自に管轄する。スコットランド教育法令は、スコットランド議会において定められている。イングランドの教育法の影響は受けるが、基本的には独立の法律で、独自のシステムを維持している。
 イングランドの理念、制度を吟味する上でも、スコットランドの理念・制度を知る意味は大きいと考えたので、地方教育局の取り組みを取り上げた。

1)スコットランドの特殊教育の概略
 イングランドの1981年教育法にあたるのが、スコットランド1980年教育法であり、イングランドの「判定書」を、スコットランドでは「ニーズの記録(Record of Needs)」という。
 1999年にReport into the Education of Children with Severe Low Incidence Disabilities(低出現率の障害のある子どもの教育の改革:行動計画書)をまとめ、特別な教育的ニーズとSLID(障害)の2つの概念を使い分けた。特別な教育的ニーズのある子どもへの支援の改善とともに、障害のある子どもの施策も同時に展開されている。Low Incidence とは、「出現頻度が低い」ことであるが、3%の障害のある子どもを示すものである。特別な教育的ニーズのある子どもの20%に比較して、「低い」と表現している。
 1997年の統計的な概略(イングランドとの比較)を表17に示した。

表17.スコットランド現状
  特別学校在籍率 記録保持者率* SLID
スコットランド 1.0% 1.9% 1.1%
イングランド 1.2% 3.0% -
*記録とは、判定書(イングランド)、又はニーズの記録(スコットランド)である。SLIDは、低出現率の障害を意味する。
2)エジンバラ地方教育局の取り組み
(1)エジンバラの教育
 エジンバラ(人口443,000)の学校教育の状況(1999/2000)を、表18に示した。特別学校(私立も含む)が14校で、838人の子どもが在籍している。これは、全児童生徒数の約1.5%にあたる。近年、特別学校に在籍する子どもは、減少傾向にある。特殊学級が5学級で、48人の子どもが在籍している。
 1.6から1.7%にあたる950名の子どもが「ニーズの記録」有し、そのうち600名は特別学校で、350名は通常学校で教育を受けている。
 エジンバラの方針は、特別学校に在籍する子ども数を減らすことと、それに伴って、特殊学級を増やすことである。
 特殊教育を、特別な教育的ニーズのある児童生徒を対象とする教育としている。特別な教育的ニーズは概念が広いため、限定的に使用することが必要である場合に、「低出現率の障害(Severe Low Incidence Disabilities;SLID)」という用語を使用している。
(2)インクルージョンの方向
 スコットランドの国レベルでの法律又は方針としては、スコットランドの教育省が1998年に刊行した指導マニュアル:A Manual of Good Practice in SEN(Information Pack for Staff)がある。エジンバラでも、これに基づきながら特別な教育的ニーズのある子どもの教育施策を展開している。
 基本的には、インクルージョンを推進しているが、「保護者の要望」「子どものニーズ」「政策方針」の3つの要点のバランスを、どのように取るかが重要と考えられている。インクルージョンヘの機会は提供しなければならないが、必ずしもそうしなければならないわけでない。つまり、"should have opportunity to inclusive"であるが、"not must"である。保護者は通常学校へ希望する場合もあるし、丁寧な教育を求めて特別学校を希望する場合も多い。現在は特別学校に在籍する子どもの割合は、2.0%程度だが、将来的には、0.5%程度にしたい。確かに現在では、障害の理解が進み、すべての通常学校に特別な教育的ニーズのある児童生徒が在籍している。
(3)取り組みの実際
 施策の一つとして、地方教育局における学校支援班(Support Services Group)の充実がある。1996年に巡回スタッフは14人程度であったが、現在では48人に増加している。近々、予算上の都合により、地方教育局から学校に配属し、所属を変更する予定である。その他に、アシスタントや保母を配置して、支援体制を整備してきている。予算的措置をして、これらの施策のために2.5ミリオンポンド(約4億5千万円)が組まれている。
 小中学校における支援も重要であるが、特別学校における教育についても、重要な課題であり、それに対する施策が検討されている。

表18.エジンバラの学校教育の状況
  Nursery Primary Secondary Special School Special Classes Total
学校数 96 103 23 14 5 241
子ども数 6,068 30,700 18,800 838 48 56,454
(エジンバラ地方教育局 Pupiles Support Services の資料から)
(徳永  豊)
資料・文献
・A Manual of Good Practice in SEN(Information Pack for Staff)
・Effective Provision for Special Edticational Needs: The city of Edinburgh council.
・Education annual report 1997/1998: The city of Edinburgh council.
・A-Z a guide to council service :The city of Edinburgh council.
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