共生社会の担い手を育む教育に関する研究-障害理解教育の検討を中心に-
重点課題研究
研究紹介
- 研究代表者
- 久保山 茂樹
- 期間
- 令和5年度〜令和7年度
研究概要
(1)本研究の背景、意義、必要性、アウトカムについて
小学校学習指導要領の前文には「一人一人の児童が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓ひらき、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる」とあります(幼稚園、中学校、高等学校、特別支援学校にも同様の記述)。これは、多様性を理解し尊重できる人を育てていくことが今後の教育の目指す方向性であるとするものであり、「共生社会の担い手を育む」ことを教育全体で目指していると解釈できます。また、『ユニバーサルデザイン2020行動計画』に基づき『心のバリアフリーノート』が小・中・高等学校の児童生徒及び教師用に作成されました。こうしたことからも、「共生社会の担い手を育む教育」の推進が重要であると考えられます。
しかし、こうした教育が小・中学校の通常の学級で実際にどのように実施され、どのような効果があったかなど、現状と課題を検討した研究は見られません。そこで本研究は、「共生社会の担い手を育む教育」について、特別支援教育の見地から、障害理解教育を中心に検討します。
一方、短時間の授業で一時的な教育実践で多様性を理解し尊重できる子どもを育むことは困難です。日常の授業や学級経営において多様性を理解し尊重する態度が身につくような実践が継続的になされる必要があります。
本研究では、障害理解教育と日常の授業や学級経営における実践の両方を対象に、通常の学級における「共生社会の担い手を育む教育」の実施内容や方法等を検討し、多様性を理解し尊重する態度が身につくような教育実践のガイドを作成することを目指します。
また、ガイドの作成と併せて、学校現場の条件や状況(例えば、リソースの多寡、取組の特徴等)を考慮して、それぞれの条件や状況に合う形で実施されている事例を提示することで、全国のどの小・中学校においても「共生社会の担い手を育む教育」が推進されることを目指します。
(2)目的
本研究は、小・中学校の通常の学級において、多様性を理解し尊重できるようになるための教育、つまり、共生社会の担い手を育む教育について、具体的な内容、方法を検討し、教育現場に提供することを目的とします。そのため以下を明らかにし、学校現場の条件や状況にあった実践モデルを提供します。
①小・中学校で行われている障害理解教育(特別支援学校による出前授業も含む)の現状と課題
②小・中学校の授業や学級経営で行われている多様性を理解し尊重するための実践の現状と課題
③上記①・②を踏まえた「共生社会の担い手を育む教育」のガイド作成と、実効性の検討
研究者紹介
久保山 茂樹(研究代表者)
伊藤 由美
小林 秀之
竹村 洋子
谷戸 諒太
柘植 美文
平沼 源志(研究副代表)
山本 晃
横尾 俊
これまでの研究と令和7年度の研究計画
本研究は「共生社会の担い手を育む教育」を、全国のどの小・中学校でも実施できる実践ガイドを作成することを目指している。そのため、以下のような計画で研究を推進してきました。
令和5年度は、①「共生社会の担い手を育む教育」に関する知見の整理、②小・中学校における多様性を理解し尊重するための教育に関する訪問調査、③特別支援学校による「障害理解教育」(小・中学校への出前授業)に関する予備的な調査を実施し、幅広く探索的な情報収集を行いました。
令和6年度は、①小・中学校の通常の学級における障害理解授業等に関する実態調査、②特別支援学校が小・中学校を対象にして実施している障害理解教育に関する全国調査、③小・中学校の通常の学級における多様性を理解し尊重するための実践に関する調査を実施し、小・中学校における障害理解教育や多様性を理解し尊重するための教育について実態を明らかにしました。
令和7年度は、以下の「研究①」から「研究④」を実施し、それらの結果と過去2年間の研究成果を踏まえて、「共生社会の担い手を育む教育」のガイドを作成する計画です。ガイドは、研究協議会等を通じて小・中学校における実効性について検討、修正したうえで公表します。
1.「私たちがめざす共生社会とはどのようなものか」の理論的検討(研究①)
2.共生社会の担い手を育むための「障害理解授業」の在り方に関する研究(研究②)
3.通常の学級における多様性を理解し尊重するための授業や学級経営に関する研究(研究③)
4.多様性を理解し尊重するための学校経営に関する研究(研究④)